主人公は米軍のパイロット(イケボ)。市街地上空を飛行中、突然至近距離に現れた大きいUFOに
対してとっさに回避行動をとり、理由を報告したら精神疾患扱いで地上勤務にされちゃった設定。

バーで知り合ったその優男は、俺の話を黙って聞いていた。
「・・・本当に至近距離だった・・・ああしなければ間違いなく街にも被害が出てたから
判断に後悔はしてない・・・パイロットとして死んだけどな」
イジメにも厳しい訓練にも耐え研鑽努力し続けた結末がこんな不条理とは、誰が想像できただろう?
いつしかやり場のない気持ちにいきり立ち荒むことすら疲れた男は、カウンターで飲みかけのビール片手に力なく笑った。
・・・いくら相手が聞き上手だからってこれは引くだろう。酔った覚えはないが、気付けばさっき知り合ったばかりの
相手に、話すつもりの無かったことまでこぼしている。まるで口が勝手に動いているみたいだ。
キチ〇イ扱いがオチだというのに、何やってんだ俺は。「はは。酔っ払いの冗談だ。忘れてくれ」
「・・・知ってるよ。君はイカレてない。・・・本当に飛んでたんだ」そいつは神妙なしたり顔で重々しくうなづいた。
悪い奴じゃないみたいだが、ちょっと変わっていた。
「マスター、ブラッディ・マリーのウォッカ抜きお代わり。・・・意外と美味いなこれ」
トマトジュースじゃねえか。

「いい話聞かせてもらったから、俺もとっておきの話してやるよ」ジョンと名乗ったそいつは、
奇妙な表情で俺を見つめた。
「信じないかもしれないけど、あの時さ・・・俺もあそこにいたんだ。あんなギリギリで回避したのは見事だったよ。
立て直し方もスマートだった」
グラスをUFOに見立て、ペンのキャップで俺の飛び方を表わした軌跡は正確だった。
・・・今なんて言った? よりによって、偶然入ったバーで俺は目撃者と会ってるのか!? 全身が総毛立ち手が震える。
だがあの日は雲が多くて地上から空はほとんど見えてなかったはずだ。もっと晴れていれば多くの目撃者がいたはずで、
何度悔しがったことか・・・
「うそだろ・・・アレが見えてたのか!?」