[怒りの葡萄]ジョン・スタインベック
憤るカインに神は罪は治まるのだと約束したのか(欽定訳)
それとも罪を治めなさいと命じたのか(米国標準版)
リーがこの部分にこだわって
サンフランシスコの一族の長老たちに相談する
彼らはヘブライ語を一から勉強してtimshelはmayestという結論に達する
つまり人間は選択することが可能であるというのだ
このことこそ人間を人間たらしめているものであり
魂の偉大もそれによって開かれた可能性にあるという
この話のあと
サムはアダムにキャシーがケイトと名を変えてサリーナスで最低最悪の娼館を経営していると告げる
アダムは生きるか死ぬかの危機に向かい合わねばならなくなったのだ
馬(頌歌)に揺られて帰ってゆくサミュエルの雄々しい後ろ姿に惜別するリー
暗黒と星々と静寂の夜であった 毎日ごくろーさんだなオッサンw
精々頑張ってくれオッサンw サミュエル・ハミルトンの葬儀の帰り
強いラム酒を飲んだアダム・トラスクはキャシーの娼館に行く
そして酒を飲んで本性をむき出しにしたキャシーは
アダムを壊すべく双子の父親は弟のチャールズだと言う
さらにベッドへ引きずり込もうとするが
アダムにとってキャシーはもはや性悪な猿にしか見えなくなっていた
思い出に笑い掛けつつ、ようやくキャシーに別れを告げるアダムなのであった リーはアダムに自分の将来の計画を打ち明け
出来ればサンフランシスコに行きたいと申し出るが引き留められる
そんなときにベーコン一家が雨宿りにトラスク家を訪れる
これがキャル(ケイレブ)とアロン(アーロン)とアブラの出会いとなる
誰からも愛されるアロンはアブラの好意を自然に得る
これに応えるべく
アロンは射止めたウサギに恋文まで添えて立派なプレゼントを整えるのだが
キャルの奸計に引っ掛かったアブラはそれをあっさり捨ててしまう
蟻の巣を見つけたときのそれぞれの異なった態度が
双子の性格の違いの例証として挙げられているのだが
こういうベタな説明もそれなりに味があって悪くない
そもそもそういうベタな話なのだ キャシー/ケイトと再会し心の整理のついたアダムは
息子たちとようやくまともな会話が出来るようになったものの
キャルに母親の墓の話題を振られると動揺してしまう
一つの嘘がそのほかの真実を損なうことを恐れるリーは
双子に母親の真実を語るべきだとアダムに忠告する
そして自分の出生の話をする
自分を身ごもっていた母は
父の甥と偽って広東から送り込まれた鉄道労働者たちに交って働いていたが
女であることが露見して性に餓えた男たちに強姦されてしまう
その直後に血まみれの肉体から父によって取り上げられた赤子のリーを
母を犯した者たちを含むであろうこの労働者たちが
母親代わりとなって育てたという
この話を聞いたアダムはチャールズに会うことを思い立ち
リーのペンとインクと便箋を借りて手紙を書くのだった ウィル・ハミルトンのところから買ったT型フォードで
郵便局へ郵便を取りに行く
チャールズの弁護士からの手紙が来ていて、チャールズは死んだと
遺書によると遺産はアダムと彼の奥さんとで等分してくれと
どうしたもんかとアダムがリーに相談しているのを
キャルが盗み聞きする
僕だって下劣でありたいわけじゃないんだ
と、彼なりに苦悩してはいるのである アダムは結局キャシー/ケイトにチャールズの遺産の件を伝えに行く
その帰り、オリーヴのところに引き取られているリザを訪問する
リザはトムを気にかけてやってくれと頼む
さらに双子の教育のためにサリーナスに家を探しているということで
デッシーが実家に引き上げるので彼女の家が空くことを教える
孤独に暮らし
ポエムを時々書いたりすることから
ウィルにはダメ人間の烙印を押されているトムだが
帰郷したデッシーと暮らすことで未来が開けるか(海外旅行!)と思ったのも束の間
デッシーは病で死んでしまう(内臓のがん?)
自殺は罪だと知りながら
それを糊塗する手紙を書き残し、投函し、死ぬ(S&W)
サミュエルがアイルランドから来て痩せ地に築いたハミルトン家の終わりである
ここまでが第三部 自分が死んだら誰かが喜ぶだろうか?
自分は果たして良い人間だったろうか?
サリーナスの学校に転校してきた双子はそれなりに順応している
リーもなんだかんだいっても戻って来た
この人の思索の源泉には孤独があるなあ
アロンはアブラから彼の母親が生きているということを聞いたと告げられる
父親は嘘つきなのだろうか?
アロンの単純で素直な心は母親に心を閉ざして平衡を得る
優しさはしばしば寂しさである 自由に好きなことを書き込めるのが5ちゃんの良いところですが
他人のHNを使うのは良くないと思いますよ
第四部はエリア・カザンの映画とそこそこ筋が重なっているけれど
やっぱり全然別物
偶然再会したラビットを酔わせてケイトの娼館へ行ったキャルが
そのあまりの事実の重さに耐えかねてリーの部屋をノックするところとか
キャルなりの悩み方がさすがに小説では丁寧に描かれている
氷詰レタスで失敗して貧乏になったトラスク家の子供ということで
アロンはかなりいじけてしまう
揚句エスコパル教会にのめり込んでアブラを心配させたりしているのだが
こんなアロンに母親の真実なんか教えられないよな
とクラッシャーのキャルも今のところは自制しているのである チャイナタウンの賭場に居合わせてしょっ引かれたキャルをアダムが引き取りに行く
俺も昔、豚箱にいたんだよ
お前は何も悪い事をしていないので恥じることはないんだが、俺は盗みを働いたんだよ…
父子の距離は一気に縮まりようやく情愛の気が二人の間に醸し出される
キャルはさらに母親にも相対する
そして、自分の中にあなたはいないと言い放つのだった
キャシー/ケイトの両手のアースライティスがどうにも痛々しい キャルがキャシー/ケイトを圧倒したのには
彼女がエセルの脅迫を処理するのに神経を消耗させていたってことがある
流れっていうものはあるもので
キャルはウィル・ハミルトンの信頼も楽々勝ち取る
そして戦時物資である豆の投機にも勝利する
一方、アロンも一年繰り上げで大学入試にパスするが
アダムがサプライズでパーティやら金時計を用意していたのに
教会のラルフ師とのディナーに行ってしまう
リーの諭し、身に染みるなあ
世界って、そんなに良くもなければ悪くもないのだ アブラとキャルの会話
もう、このへんでアブラの気持はキャルに行っているよね
しかし本当の自分とはなんだろうか?
獣の欲望を根に持つ善き人間という無理な存在?
私は悪い子です、と開き直ってしまうのも違うんだろうなあ 娼館の用心棒兼雑用係のジョーのエセル探索
そしてエセルが握っているだろうケイトのフェイ殺し疑惑のネタで
勝負に出ようということなんだが
さて、このくだり要るか? 第一次世界大戦がはじまると
サリーナス在住のドイツ人仕立て屋への風当たりは強くなる
戦争だものなあ
アダムは町の徴兵委員になるのだが
かつて自分が参加したインディアン掃討戦の悲惨さを憶えており
他家庭の若者を戦場に送り出さねばならぬことに心を傷めている
でも、もうすぐ感謝祭
アロンがスタンフォードから帰ってくるのが待ち遠しい サリーナスのもう一軒の娼館の黒人マダム、ジェニー死す
ジョーはフェイからケイトへの不審なオーナーチェンジの聞き込み調査
火のないところに煙は立たず
人の口に戸は立てられず 感謝祭でキャルはアダムに1万5千ドルを贈るのだが拒否られる
アダムにしてみれば
自分が他人の子供たちを死地に赴かせているその戦争で儲けた金を受取れない
まあ、分らなくはないがキャルにしてみれば傷つくよな〜
完全にブチ切れてしまった彼は
アロン(母親似だから父に愛されているとキャルは思っている)を壊す
例の娼館に連れていってケイト/キャシーと対面させてしまうのだった
アロンはサンホセのリクルート・オフィスで入隊 ケイト/キャシーはジョーの裏切りにどう対処するのか?
アロンの運命は?
罪を犯したキャルにアダムはどうこたえるのか?
リーの役割は?
アブラの愛の行方は?
メロドラマ全開の最終盤なのだが
ネタバレになると悪いのでこのぐらいにして
ちょっと他のものを読んでみようかな オクラホマの赤い土、灰色の土
最後に降った雨は優しかった 雨でなく
砂が降る
非常に細かい砂
コーンが育たない
枯れてしまう
男も女も子供も、そりゃみんな心細くなるよな 全部で三十章
今日は第二章
ヒッチハイクお断りのステッカーがあるのに乗っちゃうのね
人殺しでお勤めしてたとトラックドライバーに告げる
やっぱ知らない人乗せるのって怖いよなあ
一日一章、ゆっくりよむ 陸ガメが移動する藁
カラス麦の種が蒔かれる
動くことは危険が伴うけれど
必ず何かが起こるのだよね 亀を抱えたトム・ジョード
柳の下に元説教師のジム・ケーシー発見
昔、洗礼してもらった人だ
信者の女と寝てしまい罪の意識からいまは一般人
二人連れだってジョード家にやって来るがどうも様子がおかしい 農業の国際競争力について時々議論されるけれど
そもそも人の生命を維持するものを輸出産品化していいのだろうか?
小規模農家を潰して大規模生産体制をとればそりゃ競争力はつくけど
しかし生きるための農業という考え方を
資本主義に馴染まないからといって簡単に切り捨てていいとは思えないなあ 食べるというのは面倒くさいのである
ウサギだって自ら進んで人間の食餌になってはくれないのである
捕まえるのも大変
皮を剥ぐのも大変
腑分けするのも大変
簡単なことなど何一つない
ちゃんと自分の口に入れようと思ったら
しっかり火を熾し
腹を据えて肉を焙らなければならないのである 車に限らず
中古のものを買うのは大変である
売り手にしてみれば
これは腕の見せどころ大有りのマーケット
カモがひいふうみい ジョード家は三世代
爺ちゃん婆ちゃんは汚いがしぶとく生きている
父ちゃんはここ最近衰えが目につくが母ちゃんがデーンとしているで大丈夫
トム、アル、ロザシャーン、チビふたり
おっと、長男のノアがいた
不思議な人
天使的、といっていい
父ちゃんが取り上げたとき
ちょっとひねってしまってこうなったというが
本当のところは分からない おっといけない
ジョン伯父忘れていた
若い嫁が腹痛で
医者呼んでくれって言うのに呼ばなかった
結果、盲腸で死んじまって
それからというもの孤独で偏屈な人としての人生なのだ 土地を離れる際に家財道具を売り払う
流れ者の単身者のようにスッと出発できればいいのだが
家族となるとそうはいかない
自分のものだけではない思い出の品々が次から次へと出てくるのだ
さらに風景ともなるとどうにもならない
スパッといかないんだなあ
ベキベキとか
ミシミシって感じなんだなあ
離れ方外れ方が ジョード一家名簿から落ちてたのは
長女のローズオブシャロン
その婿のコニー
二女ルーシー
末っ子ウィンフィールド
それにしてもスタインベックは助動詞にこだわるの好きだな
出来るかどうかじゃなくて
やるんだよってことね
見送るミューリーの姿がとっても寂しいのであった ルート66
25万人
5万台
4ドルか3ドル50セント
数字を睨んでいて思ったのだが
文学の価値というのは
数値化できないけれども明らかにあるなにものかを
見えるもの以上に感じさせるということにあるのではないか 途上での出会いと別れ
個人営業のガスステーションのおっさんのところでは
ここでは犬が轢かれて死んじまう
おっさんともここでバイバイ
ウイルソン夫妻のところでは
じいちゃんがいきなり卒中で死んじまう
そして一家はこのカップルに一緒に西へ行こうと提案する
出会いは別れの始めだけれど
それが誰と誰との出会いと別れなのかは
後になってみないと分からないんだよなあ イイ話ではあるのだけれど
もしかしたらこのロードサイドショップってのは
貧乏ななりをさせた男と子供二人を雇ってんじゃないかって
そんな不謹慎な想像をめぐらせてしまった藁
つまりお人好しのトラックドライバーたちに対して
人情芝居の一幕を提供してるというわけ
それで結構儲かってるんじゃないかって
まあ、そういうことを考えちゃいけないのだろうけど トムがヒーローたりえているのは
なんと言ってもメカニックとして優秀だからだ
もちろんこの場での優秀さではあるのだが
四の五の理屈を並べるだけでは前には進まないという
直面している状況に対するメンバーの認識が強固なのだ
しかしあの止血方法というのはハンパない藁 言葉のないケーシーの祈りの内容を知る由もない我々としては
せめてセイリ―・ウイルソンの歌声を耳にしてみたいものだと
詮無いリクエストを繰り返すしかないのだろう
モハーヴィ砂漠を横断して
新天地としてのキャリフォーニア・ヴァリーを目に焼き付けるのは
年寄りではなく子供たちだ
古いものが朽ち果て
新しいものが芽吹く
それが自然である ばあさんはそれなりの葬式をしてもらいたかっただろうが
なかなかそうもいかないんだ
土地を追われた極貧者が人並みの葬式を出そうなどと考えてはいけない
そのへんは日米今もってあまり変わっていないように思う
死んだばあさんに立派な棺桶作ってやるより
腹をすかしている子供たちに腹いっぱい食わしてやる方がずっといい
だいたい死んだ者は
飢えから解放されたことを
まず喜ぶべきなのだ
それ以上を望んでは罰が当たるというものだ トムが保安官助手に刃向う気持はよく分かる
そうしないと死んだように生きるしかなくなるからだ
それをとめる母ちゃんの気持もよく分かる
そりゃここで自爆するわけにはいかんもの
貧しさと自尊心は両立し難いのがこの世なのだ
とはいえそんな世の中がいつまで続くのか
その行く末を見届けるのは金持ちじゃなくて
わたしら貧乏人なのさと
なぜか彼女は確信しているのであった ウィードパッチみたいな良い所にも
狂信者じみたひとはいるわけで
マネジャーも大変だ
まあ、居住者全員まともなひとたちなんてこたーありえないのだ
しかし妊婦のロザシャーンを脅すなんてのはひどいよなあ
人が不安定な状態にあるのを見越して声かけてくるからタチが悪い 土曜のダンスの監視員として組むハーフインジャンのジュール
こういうちょこっと出てくる人物もいいんだなあ
ウィードパッチを出ていく際にダーラムを呉れたり
そうかと思うと娘の心配をしたりしていて
人物の輪郭がすごくくっきりしてるんだよなあ
いいやつなんだよ、たぶん
トムだってほんとうはここに留まりたいんだけど
仕事がないんじゃしょうがない
母ちゃんが起き出して
さあ、朝立ちだ ありついた仕事はスト破りの桃捥ぎ
ああ、ケイシーの頭が割られ
ああ、トムがまた人殺し
帯電の夜に血も涙も雨と流れる
ガソリン代ができたら速攻トンズラ
北へ向かえばコットン摘みだ
クラッカージャックで喧嘩をするな
黒雲が星を過ればサヨナラだ まあ母ちゃんの言う通り
というか秋元作詞美空歌唱の川の流れのように女は生きていくのだろう
その一方で父ちゃんとジョン伯父のトホホぶりが痛々しい
そもそもなるようにしかならないってことがどういうことなのか
わかる人とわからない人とにわかれるんだろうなあ
さて、これでひとまず怒りの葡萄はおしまい
面白かったなあ
しばらく余韻に浸っていることにしよう >>146
この作品の暗誦を始めました、よくもまあ短いセンテンスで含蓄が深いものだと感心しながら、頭から覚えていっています 野崎孝訳は良いねえ
集英社の世界文学全集でしか読めないのがネックだけど 怒りの葡萄新潮文庫とハヤカワ文庫どちらがいいですか
値段の安さと入手しやすさに無難な表紙で新潮に惹かれるんですが翻訳の内容はハヤカワの方が良いみたいなので悩んでます