旧制高校の学生の論文みっけた [無断転載禁止]©2ch.net

**吾輩は名無しである** · 2017/01/26(木) 22:37:16.32

学都仙台の由来らしい
以下、貼ってく

**吾輩は名無しである** · 2017/01/26(木) 22:38:17.42

　學都たらしめよ
（新來の諸君を迎えて）
　冷露五城の山河に降りて、萬籟(ばんらい)是れ笙竿、秋色將に瀟灑、二百の英俊校に來れり。學に大學に游ばんとする其門や少なからず、其特に五城に來る當に大に期する所あらむ也。
　蓋し此地や、山水秀麗を以て聞こゆ、殊に醜陋俗惡(しゅうろうぞくお)なる帝都を去る北の方一百里の平原にありて、獨眼龍の霸鬪三百年、自然の區畫は風俗に特種の發達を與えて、ここに篤實健剛なる氣風を生ずるに至れる也。
　乞う先ず去って青葉山頭に立ち靜に睇望(だいもう)せよ、文明の惡魔が持ち來たる轟々たる輪聲と濛々たる煤煙とは、殆ど之れなくして、全都青葉に掩わるるを見ば誰か吁學都、吁宗教都と叫ばざるを得べき。

**吾輩は名無しである** · 2017/01/26(木) 22:39:16.26

　之を以て開校已に二十年、人文の燈光微かなる東北の野にありて、勤勞を標彰せる蜂章の下に、自主、自由、素朴、嚴然として高く尚志の歌を唱えて解放の校是を發展し得たりし也。諸君の大に來り學ばんとする所以也。

**吾輩は名無しである** · 2017/01/26(木) 22:42:38.00

　　然れ共注視せよ。初夏杜鵑(ほととぎす)血に啼いて山風冷雨老(ろう)杉(さん)を搖る所、宏壯なる建築は之れ青葉城健兒團の本據にして、春時宮城野原亂れ咲くの菜花と、榴ヶ岡上爛熳たる櫻花とを隔つるは是れ榴岡健兒團の本據なるを。
元より兵團健兒は吾人の尊敬する所、されど彼の情と涙とを禁絶せられ人生青春の意氣を抑えらるる事大き故、ややもすれば肉に趨(はし)らんとするは免れ難き處也。近時獨乙(ドイツ)に於ける軍隊には墮落漢(だらくかん)游冶郎(ゆうやろう)極めて多しとの事に非ずや。
而して理想なく信仰なき我利一面の民生又ただ肉にあこがるるのみ。加之(これにくわえて)、肉體的の學校の存するあらば更に之れが、勢いを高め得るに非ずや。近時唱道せらるる學生氣風衰退論の如きは蓋し此間に生れ出でたるに過ぎざる也。

**吾輩は名無しである** · 2017/01/26(木) 22:43:20.12

　獨立評論記者、曰く、現時の日本に於いて學生だけは慥(たしか)に墮落したりと感ず、試みに餘の見るところを語らむ乎(か)彼等は學問を以て衣食の計とす。
學校をもって役人になる楷梯とす、彼等は粧飾(しょうしょく)に餘り多く注意す、彼等は美しくなれり行儀よくなれり大人らしくなれり、而して此れと共に蠻氣を失えり、最も著しきは彼等の讀書力が昔に比して減じたること此れ也、
彼等が論語孟子聖書の如き經典を有せざる事也、彼等の間に英雄的神經の衰弱したる事也、と、餘は其直言直筆に耳を掩わずんばあらざる也。

**吾輩は名無しである** · 2017/01/26(木) 22:45:12.92

　更に内村鑑三氏曰く、「學生の最大多數は身の快樂のために己の自由と靈魂とを賣る者也、今の社會に於いて最も非勇なる者は學生中に殊に多し矣」と、
先輩の吾人を見る事、何ぞ夫れ酷なるの甚だしき。然れ共吾人は、此れに對して、絶對に『否(ノー)』と叫び得ざるを奈何せむ。
　墮落腐敗せる首都の學會は云ふに足らず、一千年淫卑の中心地たりし西都又固より論ずるに價せず、其他金澤、岡山、某々の地、多く之れ學都たるの名を冠し得ざる者也と聞く。
斯くして僅に餘し得たる者は、ただ此五城の地たるのみ。内村氏曰く、眞個日本の中心骨髓は之れを關東以北に限るべき也と、然らば即ち、吾が五城や誠に日本骨髓の骨髓に非ずや。故に萬一此地にして、學都たる能はざるに至らむか、我邦の悲痛幾何ぞや。
此故に吾人は市内有志の學生保護會を設立し某々校生を監督せんとするの意を諒とする者也。

**吾輩は名無しである** · 2017/01/26(木) 22:45:55.57

　然れ共自ら國士を以て任じ猶且つ此警察的手腕の下に監督せらるるが如きは學生の恥辱此上もなし、須らく反旗を飜せと絶叫せん。
然りと雖此地における一般學生の一人たりとも、其靈を屈して肉に降り、兵都的氣風に陷れる者あらば奈何。
　然れども吾人は信ず我校同窓は斷じて斯くの如き醜陋恥辱の干渉下に立つ者に非ずと。然らば即ち斯會の存立するが如きは、殆ど山頂よりして山腹の雲あるを顧みるに等し。
八朶の秀峯玲瑯として益高からん也。吾人は一日も早く此雲散じて、民衆をして靈山の全容を仰ぎ見るを得せしめんことを期する者也。

**吾輩は名無しである** · 2017/01/26(木) 22:46:51.31

　今や文運日に千里を走りてよく墮落の風習を傳ふ、加之、戰勝の邦家、奢侈優柔に陷るは古今其の軌を一にす。吾人の衷心憂にたえざる所以也。
由來、物質と心靈と、兵都と學都と、墮落と向上と、相爭ひて而も決せざる因由は、多く其の中心修養の根本義を忘却せるがため也、吾人は技術的活動、運動的修養の、徳風向上、校風發展上、功果空零なるを見て、痛恨に堪えず。
　多數は此れ勢力也、中心より活動せる校風の一團となりて、先づ某々校生を感化せよ、一般學生を感化せよ、滿都の市民を善化せよ、更に進んで兵團をも學都化たらしむるの勢力を作れ。
かくして此仙都をして。最善最美なる日本唯一の學都たらしめよ、斷じて腐敗の市都たらしむる勿れ。是れ諸君が三ヶ年の秀麗なる山河の補育と純朴なる空風の呼吸とに對する、報恩の最たる者に非ずや。
　之れを聞く、明治初年における札幌農學校長たりし一基督教徒の感化は猶ほ、彼都をして宗教都たらしむとに非ずや、努力豈徒爾ならむや。
　敢て新入の諸君に贈り、自ら修めんと欲する所以也。　（舞鳶生）

**吾輩は名無しである** · 2017/01/26(木) 22:48:24.36

以上
全体的に青臭いっていうのが率直な印象です

**吾輩は名無しである** · 2017/01/26(木) 23:04:41.37

日露戦争勝利後に書かれた？
読書力が昔より落ちたとか、一般に？学生には勇敢でない者が多いと言われてるとか、面白い指摘だ。

**吾輩は名無しである** · 2017/01/26(木) 23:17:42.71

明治38年に尚志会雑誌（旧制二高の校内誌）に掲載されたので、ちょうどその頃ですね

**吾輩は名無しである** · 2017/01/26(木) 23:36:18.51

仙台って、行く前はどんなに緑の濃いところなんだろうと畏れめいた期待があったが、いざ行ってみると、少なくとも平地は南国と変わらない緑の濃さで安心した。

**吾輩は名無しである** · 2017/01/27(金) 00:18:26.35

春樹が英米文学にかぶれた文体だとすると、この人のは漢文にかぶれた文体だな

**吾輩は名無しである** · 2017/01/27(金) 00:25:56.06

かぶれどころか
文語文は漢文訓読の形でしょ

**吾輩は名無しである** · 2017/01/27(金) 01:46:23.63

つまり、学問を立身出世の道具としてのみ評価する
首都の喧騒から離れたこの地にこそ真の学問と学徒が存在するのだ、と

大正時代には土井晩翠とかが流行ったそうだけど
どこか自分に酔っているような気がする

**吾輩は名無しである** · 2017/01/27(金) 12:15:00.90

漢文訓読体つうのは
香り高いが
内容がクソなのが多いのが残念

藤村らの新しさと内容の充実がよくわかる

**吾輩は名無しである** · 2017/01/27(金) 12:19:10.15

ひとつは写実が弱いので読み手の
感性的発見が少ない
そして考えを句法に当てはめていくので
論理的だが漢文の枠内での美文さが
まず優越してしまう

中 ◆ldttYiOHPQ · 2017/01/27(金) 20:19:45.43

北大の寮歌集とか普通に100年以上前の学生の詩とか乗ってて面白いよな

**吾輩は名無しである** · 2017/02/09(木) 16:18:24.21

一般の人の日記や手紙などは開戦前後あたりに面白いものが多い
漢文の素養が感じられる口語文

**吾輩は名無しである** · 2017/02/10(金) 09:31:52.98

面白いのは文体がミックスしているからな
字体も統制が弱いのでバラバラ

戦後すぐの本が新旧混ぜこぜで独特なのと
一緒