ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【84】

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1ぷっぎゃああああっす!2018/02/10(土) 20:56:33.98ID:cZ2+QTng
オリジナルの文章を随時募集中!

点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

評価依頼の文章はスレッドに直接、書き込んでもよい!
抜粋の文章は単体で意味のわかるものが望ましい!
長い文章の場合は読み易さの観点から三レスを上限とする!
それ以上の長文は別サイトのURLで受け付けている!

ここまでの最高得点は76点!(`・ω・´)

127この名無しがすごい!2018/02/14(水) 11:43:39.43ID:fP8gYbF9
「ずっと一緒にいられるといいね」芹奈はそう言って俺の肩にもたれかかった。居酒屋の店員と客として出会い、不思議と意気投合した。本当に当然の流れのように。俺は1969年産まれであいつは1992年。25歳、申年、5月7日産まれの雄牛座。
 初めてキスしたのは3年前の5月7日。バイトしながら役者を目指す若きエンターテイナーだった。昭和生まれの俺と平成産まれのあいつが不思議と惹かれ会った。別れた妻の誕生日さえ覚えていなかった俺が、あいつのことはなんでも覚えていた。
 しかし俺は心底あいつに惚れないように気を配っていた。
「ねえ、あたしね、主任にご飯誘われちゃった」
 俺はわずかな嫉妬に目を瞑って気の無いふりをする。
「ふーん、何食べるの」
 芹奈は軽くふきだす。
「んなわけないじゃんあんな軽薄そうな男とご飯なんか、当然断ったよ」
 俺に合わせようと、普段は大人の女を演じていてもこういう所はやはり子供だ。なんとか俺の興味をそそろうと必死なのだ。だがあいつが期待するような反応はしない。だが俺の反応に関して、執拗な追求をしないのも芹奈は心得ている。
 お互い興味の無い演技をしながら沈黙が流れた。長い間を置いて、俺は雑誌に目を向けながら隣に座る芹奈に言う。
「あのさ、いい男が見つかったらいつでもそっちに行っていいんだぞ、こんなバツイチのおっさんに構う事は無いんだから」
 また沈黙が流れた。今度は俺の方が、思ったような反応が返ってこずに、芹奈に目を向け、そしてぎょっとした。

128この名無しがすごい!2018/02/14(水) 11:43:54.09ID:fP8gYbF9
 真剣な眼差しで、口を歪め、大粒の涙を流している。
「なんでそんな事言うの……」
 俺はうまく言葉が見つからずに思わず抱きしめた。涙に濡れた声で芹奈が呻いた。
「ねえ、私はよっしーのなんなの?」
 いくら人生経験があっても、こうなってくると誰だって勘違いする。
 デパートの一角にある小さな箱と、20畳にも満たない板が彼女の夢の種子だった。彼女はこの小さな箱庭のスターだった。限られた舞台でできるように練られたストーリー。暗転を繰り返して場面転換をする涙ぐましい努力。
 俺はいつもスタジオの右後ろの隅で彼女を見守った。だがある日、彼女が見せ場のシーンでステージにへたりこんだ。俺は夢中で駆け出して、舞台に飛び乗り、彼女に手を伸ばしたが、はっとして背後を見回した。
 立ち上がって驚愕の表情で俺と芹奈を見つめる人達。彼女のファン達だ。彼氏がいる、という事は死んでもバレてはいけない。しかもこんな……。役者仲間が心配そうに近づき、そして俺に怪訝そうな顔を向けた後
うつろな目で俺を見る彼女を引きずっていく。そう、俺は単なる変態……、ストーカーだ。俺は焦る気持ちを抑えてステージを降りた。俺は別れを考え始めていた。
「赤ちゃんがいるみたい」
 すぐに復活した芹奈の言葉に俺は目を丸くしたが、全く予想できない事ではなかった。避妊の手段が無い状況で甘えてくる。婦人体温計さえ持っていないのに安全日だと言う。穴だらけの避妊法でこうならないわけもなかった。
 そういう事なんだろうと思った。俺は愚かにも先ほどまでのネガティブな考えがふっとんだ。暗い顔で告白した芹奈は、俺の拒絶反応を心配しているのだと判断したのだ。
「結婚しよう」
 俺はいつか若い頃に経験した気持ちになっていた。しかし芹奈は顔を伏せたまま沈黙した。俺は自分の顔が硬直していくのを感じて、初めて自分が満面の笑みになっていた事に気づいた。
「今は……、産めない」
 そうか。彼女には未来がある。俺のような男の為にそれを犠牲にはできない。当然の事だ。しかし彼女の体に宿った命の半分は俺のものだ。それを殺してこのまま続けて行けるわけがなかった。そして彼女の若さと将来。あまりにも不毛すぎる。
 俺は彼女の口座に金を振り込んで連絡を断った。アパートの鍵を変え、チャイムが鳴っても、狂ったようにドアを叩かれても沈黙し続けた。息を潜め、そして起き出して夜の町で酒を浴びた。

 いつ知り合ったのか記憶にない女。だが不思議と気が合い、店に通うようになり、プライベートでも会うようになった。25歳だった。俺の事を優しいと言って甘えてくる。週末に電話がかかってきて、俺が町に出るといえばそいつも店に出てくる。
 先週末、ロックバンドの超レアなライブチケットが当選したと、判明1分後に半狂乱で電話してきた。当たれば奢ってやると言っていたからだ。そして一人で行くと言っていたのになぜかチケットが2枚とれたという。
 店に出ると、俺にDVDを見て予習しろと胸に押し付けて強要してきた。一緒に見ようと家の場所を聞かれたが、教えなかった。そして今日、2月14日。8時に料理屋に呼び出された。いつもは週末にしか会わないのに。

 俺は今、彼女への言い訳を考えるか、自分への言い訳を考えるか迷っている。

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