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小説書いたんで見てください
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0001この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:10:22.75ID:HXZUc/zB
転校生

 高校に入るときに買ったクロスバイクはギアの回りが悪くなってきていて、坂道を漕ぐのがきつい。しかしあの頃この辺りに来たときはもっとボロボロの自転車だったはずなのに、もっと速く漕げていた気がする。俺は道を思い出すのを諦めてふらふらと適当な脇道に入り、一息つくことにした。甘く湿った風だ。四月がもうそこまで来ている。
0002この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:11:41.56ID:HXZUc/zB
 十歳の誕生日、放課後一目散におさがりの青い自転車をすっ飛ばしてずっと気になっていた商店街の外れにある店に入ることにした。『地球堂』、なんだかスケールの大きい店名にそそられる。看板の下には赤いビニールのひさしが張られていて裏庭は白樺やらツツジやら雑多に植えられている。夏になってもそこだけ原生林の様に涼し気だった。
0003この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:12:37.75ID:HXZUc/zB
pixivにも上げてます
タイトルの「転校生」か種足隼人っていう名前で検索してくれれば出ると思います
0004この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:13:23.45ID:HXZUc/zB
 円盤状に切り出された幹の押手が付いたガラス戸を押し、薄暗い店内に入る。店主の姿は見当たらないが今日は休みではないはずだ。観葉植物、コンパス、何だかわからない植木、金色の地球ゴマ、クロムメッキのじょうろ......アンティークを売っているのか植物を売っているんだかよくわからない。その中で一番目を引かれたのは......虹の斑点が入った卵だった。ガラス細工の皿に時計なんかをしまうための深紅のクッションを敷いた上に置かれていた。
「それはドラゴンの卵だよ」
いつの間にか現れていた店主に驚く。ハンチング帽を被った白髪の老人、左目の前に紐でレンズをぶら下げているのはいかにもな感じだ。
「ドラゴン、それって本当に?」
「本当さ。ソイツは君に会ったからもうすぐ生まれるだろう」
この卵は今にも割れようとしているのだ。俺はそれがどんなものなのかえらく気になった。
「ください。ドラゴン、見てみたいです」
 店主は満足げな笑みを浮かべた。
「いいよ。お代は五七○円ね」
 ちくしょう高い。
0005この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:14:14.63ID:HXZUc/zB
 卵をそっと右手で抱え、自転車を転がして帰った。寝る前には机の上に自分の枕を敷いてそこに置いてやった。もしこれが本当に孵ってドラゴンが生まれたなら名前を付けよう。『ジェレミー』そうだ、それがいい。なんとなくそんな気がした。
0006この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:15:02.24ID:HXZUc/zB
 翌朝、転校生が来た。二学期始まって三日目に転校してくるなんて変わってるな。まさに爽やか系って感じで自己紹介の受けも悪くなかったからアイツはきっと人気者になるのだろう。
0007この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:15:44.33ID:HXZUc/zB
 その夜、夢の中で顔を誰かに撫でられる夢を見ていた。でもその手の甲は乾燥してチクチクと荒れているようで少し気になるときもある。次第に意識が明らかになって目を覚ました時目の前に翼の生えた小さな赤いトカゲのような奴がいた。びっくりしてベッドから落ちそうになったが落ち着いて考えた結果、もっと驚いた。その子はキュルキュルと甲高い声で鳴いていた。俺は出来るだけ優しい声で
『初めまして、ジェレミー』
 そう言った。
0008この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:16:14.92ID:HXZUc/zB
 ジェレミーは父にも、母にも、祖母にも誰に見せてもわかってもらえなかった。どうやらこの子は他の人には見えないらしい。でもその方が嬉しかった。だってこれでジェレミーを学校へ連れて行ってもバレないんだから。それからこの子はなんでもよく食べる。日に日に成長していくからいい加減冷蔵庫から野菜や果物をかっぱらってあげるのも難しくなってきた。学校の草むらで取ってきたバッタやコオロギなんかもバクバク食べるけど、こんなのでは腹の足しにならなそうだ。
0009この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:17:31.03ID:HXZUc/zB
土曜授業の日、俺はついにジェレミーを連れて登校した。ランドセルの中に隠しているのだがたまにバサバサ羽ばたかれるせいでくすぐったい。授業が始まってもジェレミーは大人しく僕の机の上でノートをついばんでいたりした。まあそれを見て、横の女子は怪奇現象か何かと勘違いしていたのだけれど。
0010この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:20:48.11ID:HXZUc/zB
 でも弱ったことにどうやら転校生には見えていたらしい。そのドラゴンはもう学校には連れてこない方がいいよ、見える人は意外といるからさと忠告までされてしまった。
0011この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:24:07.51ID:HXZUc/zB
それから半年後ジェレミーはすっかり大きくなった。体高は三メートル近くあるし、大きな翼は一振りでその体を空高くへ運んでいった。ジェレミーは一人でに遊びに行ってしまった。多分また夜になれば帰ってくるだろう。そして今日は俺も転校生と遊びの約束があるのだ。
0012この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:24:45.65ID:HXZUc/zB
 家のそばの陸橋を越え、土手の上の桟橋を抜けると丘陵地帯に出る。そこには山間部へつながる無数の坂道があり、今日はそこを探検しようとのことだった。二人で黙々と坂道を上り続ける。たまに僕が来たことのある道だと言うとそっちはやめだとどんどん知らない方へ進んでいった。昼間から漕ぎ続けてもう夕方だ、太ももはすでにパンパンで膝はギシギシいう始末である。しかも今日一番のとんでもなく長い坂を上っている。こんなところ全然来たことがなかった、間違いなく今日が冒険距離人生最長だ。ここを一気に下っていったら楽しいんだろうな。風でキャップ帽が脱げてしまうかもしれない。
そろそろ休憩にしないかと言おうとした時、急に長い坂道は終わった。顔を上げると嘘みたいに綺麗な桜に覆われていた。夕日が桜の中にこぼれてそこだけ少し涼しい風が吹いている。坂の向こうには下りの道が続いていて、横断歩道を挟んだ右手側には小学校の角がある。豪勢な学校だ、なんとなくいい意味で金持ちそう。その塀は児童が描いた絵で満たされていた。校舎、遊具、児童たちの似顔絵......そしてそれを描いた子どもの名前。
帰りはその小学校に沿って何周も回りながら螺旋状に降りて行った。山の中にバカみたいに広い二層ものグラウンドがあり、ますます普通の小学校じゃない気がした。最後に一番下まで降りた後、湖のほとりを走って元来た道へ引き返した。まだ春の日差しだが、お互いシャツは汗で重くなっていた。
0013この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:25:48.05ID:HXZUc/zB
 その日の夜、またもや夢現のところをジェレミーに起こされた。とは言ってもあの子はもう大きすぎて俺の部屋には入らないので、外から窓を叩かれたのだが。言葉は交わせないけれど目を見た時何となくすべてわかって悲しくなった。俺は部屋の窓をこじ開け、パジャマ姿のまま何とか身を乗り出した。ジェレミーはそれを見て嬉しそうに背中を差し出した。
0014この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:26:19.97ID:HXZUc/zB
 凄いスピードだ、果たして本当に夜間飛行しているのか夢の中なのかわからない。ジェレミーはどんどん高度を上げて行く。けれどその赤くて硬い鱗の背中に体をうずめていると少しも寒くなかった。町が小さく見える、俺は昼間行ったあの山の中の坂道を指した。そこへあっという間に降下すると校門の前に錆びた自転車と共にうずくまっているボロボロの男性を見つけた。その人はどことなく転校生のようにも思えたし、俺のようにも見えた。どうしようこの人を早く明るいところへ、人がいるところへ連れて行ってやらないと......そうあたふたしていると、ジェレミーは任せろといった風にその人を背に乗せ、両足で自転車を掴んだ。男性はあぁ、ジェレミーだとかすれた声で泣いて喜んでいた。そんな、この人もジェレミーを知っているのか、いや......そうだ、ジェレミーはみんなが知っているドラゴンじゃないか! ドラゴンと言ったら誰もがジェレミーを思い浮かべる、それくらい当たり前のことだったんじゃないか!
0015この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:27:03.21ID:HXZUc/zB
男性と自転車を大通りの明かりの側で下ろしてあげた後、俺たちは土手へ戻った。風が強く草木の葉がたなびいている。ジェレミーはそっと優しく頭を下げて、俺はそれを抱きしめた。そしてサヨナラと言うように一振りで風を巻き起こしながら去って行った。俺は紫紺の空に赤い点が見えなくなるまで見つめていた。
0016この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:27:39.35ID:HXZUc/zB
 翌日、転校生はまた転校すると言った。どうやら今度は昨日行ったあの山の辺りの小学校に行くらしい。俺はどうせまた簡単に会えるだろうし、そんなもんかと大した感情もわかなかった。けれどその日の放課後再び地球堂を訪れ、そこが随分前から辞めていたことを知った時は流石に驚いた。まあでもいいんだ、そんなことまた後で調べられるだろうから。今はそんな面倒なことをしなくてもいいのだ。
0017この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:57:18.07ID:HXZUc/zB
 けれどそれからあの小学校を探してもどうにも道が思い出せずたどり着けなかった。それでも山の中には行った帰りにあの二層のやけに大きなグラウンドを見かけることはあった。しかしそれも中学三年生になって山へ行かなくなってから見つからなくなってしまった。だから高校へ入ってからはもうそんな山なことも、あの桜も、転校生も忘れてしまっていた。
0018この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:57:44.77ID:HXZUc/zB
 休憩を終えまた長い坂に入る。俺は何故あの時転校生に電話番号すら聞かなかったのだろう。バカだった、迂闊だった。アイツにとって転校っていうのはそういうもんだとわかっていたんだ。まるで一度降りたらもう二度と上れない階段みたいだ。そんな後悔をつらつら思い返しながらうつむいて一心不乱に漕ぎ続ける。汗が路面に落ちて染みになっていく。もう限界だ、そう顔を上げた瞬間不意に長い坂は終わっていた。こんな長い坂きっと降りたら気持ちいいのだろう。多分風で目が見えなくなりそうだ。でも知っている、この坂は初めてじゃなかった。嬉しい、懐かしい、泣きそうだ。帰ってきたんだ、この場所は繋がっていたんだ。ずっと途切れることなく俺を待っていた。クロスバイクを降り、ふらりふらりと吸い寄せられるように小学校の塀へ歩み寄る。そこには児童が描いた絵があって、大きく赤い竜がいた。それは『ジェレミー』と書かれたドラゴンだった。
0019この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 04:58:20.60ID:HXZUc/zB
以上です。もしよかったらpixivにコメント書きに来てください。
0020この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 14:35:50.10ID:hveFoXh9
文章力がないんだから黙ってファンタジーやザマァ書けばいいのに
身の程知らず
0021この名無しがすごい!
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2021/04/10(土) 20:07:55.65ID:PEPgrxsy
何の話なのかよくわからんって印象
タイトルの割に転校生じゃなくドラゴンメインだし、かと思うとどうとも言いにくい匂わせもあるし
なんでジェレミーをみんなが知ってるってことになったのかもイマイチピンと来なかった
ついでにところどころ一人称が「僕」になってるのが気になる

文章自体は結構ちゃんとしてて読めるんだけど表現力がまだ足りない感じです
0022この名無しがすごい!
垢版 |
2021/04/15(木) 21:35:27.09ID:c5JEZNcz
ありがとう
すごく良い作品だった。

世界観の描写に透明感があって、
スッと入れた。
最初のうちはマイナスイメージのつく単語を極力排除してて綺麗な文体だった。

ドラゴンの卵というフィクション要素を取り入たあとの文書でも、
世界観の描写を維持できたのは地力がついてるからだとうかがえる。

別れの予感を少しずつ出すためにマイナスイメージの「寒い」などの単語を使い出したのもかなり丁寧に、物語を閉じようとしていたね。

ドラゴンの生活に必要以上に触れないことで様々なメタファーになりえる余地を残していたんだろうと思う。

例えば幼少期の空想であったり、転校生との出会いの予感であったりとか、主人公の感情の代弁者とか。

終わりに向かう展開は急いでたから、
ジュブナイル物としてあと2つ3つくらいは心理描写が見たかった。

てかこれ作者が見た夢の話だよね?
終わりが急なところとか
脳が覚醒に向かってるとき話をまとめるタイミングが似てるわ。
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