『裏切りのサーカス』でコントロールを演じた故ジョン・ハートは、プロヒューモ事件のコールガールの手記を
映画化した『スキャンダル』で重要な役を演じていた。
そのプロヒューモ事件の発覚で時の保守党内閣が総辞職し、ハロルド・ウィルソン率いる労働党が政権を奪還したのが1964年。

その頃にMI-5に在籍し、長官のロジャー・ホリスをソビエトのスパイではないかと疑い
退職後に『スパイキャッチャー』を著したのがピーター・ライト。

そのライトが本を書く前に、ヴィクター・ロスチャイルド(ロスチャイルド家の当主)からライトのゴーストライターに
なってくれと頼まれたが断ったチャップマン・ピンチャー。

MI-5が労働党政権の倒閣を企てていたことを匂わせた『スパイキャッチャー』が出版差し止め命令を受けて訴訟になった際の
ピーター・ライトの不誠実な態度に憤り
ピンチャーは 『対決 - スパイキャッチャー事件の舞台裏』を刊行。

ハロルド・ウィルソン首相の不可解な突然の辞任に至る経緯とイギリス諜報史の汚点を調査し詳らかにしたデヴィッド・レイの『首相はスパイ?』

『スパイキャッチャー』と『対決 - スパイキャッチャー事件の舞台裏と『首相はスパイ?』
この3冊は相互補完的な内容で実に面白い。

それと、クリストファー・クライトンの『ナチスを売った男』には、1945年に極秘作戦のためにドイツに向かうクライトンのチームに
密命を帯びた2人のMI-5の職員が途中から加わる描写があるが
この2人とは、ロジャー・ホリスとアンソニー・ブラント(=ケンブリッジファイブの1人、ソビエトのスパイ)である。

2人の任務についてクライトンは曖昧にしか語っていないのだが、ある文書の奪還と推測される。
おそらくはドイツ贔屓のエドワード8世がヒトラーに送った手紙だろう。
ドイツがイギリス王家に仕掛けたハニートラップ (シンプソン夫人を使った工作) は、全てソビエトに筒抜けだったわけである。