えろくないGANTZを創作しよう

1名無し物書き@推敲中?2011/04/30(土) 08:40:48.39
とあるマンションの一室。そこには、同じ様に死んだはずの人々が集められていた。
部屋の中央にある謎の大きな黒い球。
彼らは、その「ガンツ」と呼ばれる球に、星人を「やっつける」ように指示され、別の場所へと転送されていく。

原作のガンツはエロい!なのでグロイだけのガンツを創作しよう。
っというスレです!

【注意事項】
・都合上、登場人物が死亡したり残酷な場面が含まれます。
・このスレはちなみに15禁です。R18ではないです。ご注意を…。
・エロ描写を書く人は基本スルーです。(厳しめにとります)
・荒らしもスルーです。
・ある程度まとまるとまとめサイトを作成します

103名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 01:24:59.35
桜高軽音部、ガンツ部屋に転送される。
完。

次、
ガンツの主人公、けいおん!世界に転送される。

104名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 01:51:48.79
「おおッ、和泉罰ゲーム!」「おめ〜」
 昼休みに俺の机で始まった人生ゲームは、いつの間にか終わッてた。
 ロン毛の超絶美男子和泉が、転校早々クラスのブスに告るという悲惨な目に合うことがたッた今決定されたらしい。
 どーでもいい。岸本も死んだ。加藤も死んだ。これから一人で戦わなきゃなんねー。またあの部屋に呼ばれて、ギャグみたいな星人とガチの殺し合いをしなきゃなんねー。
 昨日はマジでヤバかった。あと少しで一匹取り逃がすところだッた。ペナルティでガンツに殺されてたかもしれなかった。
「いけッ、和泉」
「いけ!」
 こいつらの青春って、平和だよな。
 人生ゲームのルーレットが指示した先。教室端のコケシみたいな女の元へ、和泉が歩み寄る。
「なぁ」
「は、はい」
「俺と付き合わねぇ?」
 いきなりかよ。もっと屋上に呼び出したりとか方法あるだろ。面白いからいいけど。
「ええッ、告白?」
「小島告られてる。和泉に!」「まじか!」
 ほら、教室はすぐに騒ぎになった。小島とかいうコケシ女の返答に、注目が集まる。
 小島は周りを気にしつつ、「はい」と言って頷いた。
 おいおい、超格差カップル完成……。
「和泉〜、お前漢だな」
「ブス専なんだろ、実は。いやにスムーズだったぞ」
「小島っていうのか、あの子」戻ってきた和泉が席につく。「よく見たら可愛い子だった」
 はァ? コケシじゃねーか。もしくは篠原ともえ。
「やっぱブス専だろ、和泉〜」
「美人ばッかと付き合ってて、好み一周しちゃったんじゃねーの」
「そうかもな」和泉は視線を外す。イケメンの余裕のようなものが見えた。
 こいつ、相当モテてきたんだろうな。
 いいよな、おい。
 結局、一緒に暮らしてた岸本とは何もなかったし、ヤラせてくれそうな姉ちゃんに勢いで「セックスさせてよ」とか言ってみたけど、罵倒されて終わったし。
 ガンツに巻き込まれたことで微妙に期待してた非日常の青春ってやつは、ことごとく実らず。
 モテない奴はどこ行ったってモテねーってことか。
 クッソ……。現実が嫌になってきた。

105名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 01:54:20.23

 和泉に磨かれたのだろうか。クラス一地味な女子だった小島多恵は、みるみるうちに美少女へと変貌していった。
 一週間もすると、和泉と小島は誰が見てもお似合いの美男美女カップルとなり、校内の羨望の的となっていた。
「玄野」
 二階渡り廊下の手すりに寄りかかって、和泉が言った。
「俺、卒業したら小島と結婚しようと思う」
 俺は飲んでいたオレンジジュースを大量に噴き出した。
「あいつ、漫画家目指しててさ。マジ才能あんだよ。だから俺、働いて応援してやりてーって思って」
「そ、そッか」
「お前にしか言わねーけど」和泉の目は異様に澄んでいた。「俺さ、こんな世界つまんねーッてずっと思ってて。よくわかんねーけど、心がヤバいスリルを求めてたんだよな、ずっと」
 へぇ。
「戦争が起こればいいッて、思ってた」
 なんつーか、こういう奴が部屋にくればいいのにな。
「でも、小島と接してるうちに、そんな考えが馬鹿げてるッて思うようになった」ふっと笑った。「俺はあいつに変えられたんだ」
 マジめでたい奴。俺はいつ来るやもしれないミッションに常時ガクブルなんだよ。
 勝手に結婚でも妊娠でも出産でもしてろ。ばーッか。
「おめでとう。大切にしてやれよな」
「ああ」
「式には呼んでくれよ」
「当然だろ」
 和泉の純な笑顔に負けた。俺達は固く握手を交わした。


106名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 01:56:17.17

【くろのは今回15点以上取らないと】
 んだこれ。
 転送直前にガンツに表示された警告文。「取らないと」の先が文字化けしてて読めねぇ。
 どーなンだ、クソッ。前回タイムアップしたせいだ。つーか、あんなんどう考えても一人じゃ無理だった。幕張メッセの恐竜博、模型恐竜が全部星人だッたんだぞ。
 今回も俺一人だ。ちくしょう、泣けてきた。
 ふざけんな。ざけんなガンツ……。

「ざッけんな!!」
 高空からの落雷を躱し、Xガンのトリガーを引く。
 オニ星人ボスの頭部が爆ぜる。周囲の一般人の歓声が上がる。なんで不可視が解除されてんだよ。意味わかんねー! ッつーか、
「あと二十秒!」
 端末で確認する。どう考えても間に合わねー。まだ池袋の各地にザコ星人が点在してやがる。
 あと十秒。
「くッそッ」
 五秒。
「あああああ!!」
 どうなるんだ。タイムアップで獲得点は0点。ペナルティが下される。
 死ぬのか。明確に書かれてないから想像しようがねー。
 くそ……。終わッた。
 端末に0の数字が並んだ。転送が始まる。
 でもわかる。今度は普通の転送じゃねぇ。頭皮で感じる風が、明らかに室内のものとは違う。地獄にでも送られてるんじゃないのか。
 くそ、つまんねぇ人生だった。
 彼女、一回ぐらい欲しかった。クソ……。

107名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 02:03:06.27

 見慣れない繁華街の雑踏の中に、俺は突っ立っていた。
「あれ……?」
 スーツも銃もない。俺は制服だった。どうなってんだ。
 若者や学生達で溢れる道。あまりに日常的な風景は、地獄のそれだとは流石に思えなかった。

 ギャギャギャギャギャギャギャギャーーアアアアアン!!
「うお゛お゛お゛おおおお!!!!」

 うっせ! 思わず耳を塞いだ。
 突如の轟音と奇声。素で星人かと思ったが、どうやら通りにある楽器屋からの音らしい。
 店入口が開いて、二人の女子高生が慌てて出てきた。
「唯先輩、ちょっと弾かせてもらうだけなのに叫ぶのはやめてくださいよ!」
「ごめん〜」
 な……んか、頭身おかしくねーか? あの二人。つーか、その辺の通行人も全員奇妙なスタイルしてやがる。やッぱ星人なのか。こいつら全部……。まさか、星人の星に送られたんじゃねーのか、俺は。
「ざ、ざけんなくそ」
 銃もスーツも持ってねぇ。戦えねーぞ今は。女子高生二人はこッちに向かってきやがる。逃げようにも、ここが異星ならどこにも逃げようがない。足が震え出す。俺に気づくか……。一人だけ頭身が違う俺に……。
「でねでね、デス声はとにかく喉の開き加減が重要なんだよー」
「ほんと変な技法ばっかり身につけますよね、唯先輩って」
 二人は仲良く談笑をしながら、俺の横を通り過ぎて行った。背の低い方がちらっと俺を見た気がしたが、危惧していたようなことは何も起こらなかった。
 どーなッてんだ。

 目についたゲーセンに入り、トイレの鏡を見たとき、半分、答えはわかッた。
 俺の頭身も縮んでいやがった。
 マジで不気味な話だが、アニメっぽくディフォルメされてる。目とか、超でけぇ……。
「んだこれ。可愛いじゃん……」
 微妙に琴線に触れた。

108名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 10:52:35.18

 俺に今起こっている事態はよくわからないが、直ちに危険な状況じゃねーッてことはわかった。よく考えたら、星人がいるような場所だったらわざわざスーツ無しで転送されるわけがねぇ。
 戦わなくていい。軽く安堵してゲーセンを出た俺だが、即座に次の問題に直面する。
 ――じゃあ、何をしろっていうんだ。
 俺はなんのためにここに転送されたんだ。目的が見えねー。
 まさかここで一生を過ごせってか。んな馬鹿な。
「……」
 いや、あり得る。俺の外見がこの世界仕様になってたのが、まさにそれを意味してる気がする。
 ミッションも何も起こらなくて、ただ日常を過ごすだけのペナルティなのか。
 ッて、そう考えるのは尚早すぎか。もしかしたら、この世界にもガンツの部屋があるかもしんねー。俺は異動を食らったってことかも。
 とりあえず歩き出した。何か動きながらの方が頭が回る気がした。
 まずは寝床だ。真夏ならともかく、この時期に野宿はしたくねぇ。けど、どこにも行くとこがねぇ。金も持ってねー。クソ、岸本の気持ちがわかった気がする。
 こうなったら意地もプライドも捨てて、その辺の人に泊めて下さいって頼んでみるか? どうせ知らない世界だ。恥ずかしくなんかねー。むしろ快感かもしれない。
 どうせなら、カワイイ女を見つけて、駄目元でそれをやってみるか……。もしかしたらもしかするかも……。
 そんな考えに行き着いたとき、道端の交番が目に入る。
 普通に国家権力、市民の味方に助けてもらうか。流石に変態やる勇気はねぇ。女ッて言っても、アニメ調の女ばッかだろうし。
「す、すいません」
 交番に入ったはいいが、土壇場で何て説明したらいいか混乱した。
「あのー、俺ッ、玄野計ッていって……あ……住所探してるん、ですけど」
 謎……。
「住所って、自分の家だろう」椅子に座った警察官。
「ああ、はい。そうなんですけど。なんつーか、泊まるとこなくて、……あ、いや、俺若干、記憶喪失で」
「学校はどこ?」
 言ったって多分わかんねーだろ。この世界の学校じゃねーし。
「勢綾高校」
「聞いたことないね」
 ほらな。
「ちょっと待っててね。えーと、クロノケイ。どう書くの?」
「玄界灘の玄に、野グソの野」なんかもうヤケクソだった。「計算機の計」

109名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 10:58:28.66
 警察官は傍のパソコンを叩き始めた。
 やがて、聞き慣れない住所が述べられる。
「この街に住んでることになってるけど?」
「はい?」
「住所、忘れたんだろう? 今言った番地が君のアパートだよ。言葉もはっきりしてるし、記憶喪失なんて変だけどね」
 なんで俺の家だけあんだよ。しかもそれ、住民登録もされてるッてことじゃねーか。
「桜校の生徒だよ、君。勢綾高校なんかじゃないよ」
 なんだそれ……。
「あれ、でも桜校って女子校じゃなかったかな……」警察官は首をひねった。
 すると、室内奥からもう一人の警官の声がして、「去年から共学だよ。男子は一割しかいないけど」
「ああ、そうだったな」彼は納得する。
 わッけわかんねー。とりあえず、この世界で俺は普通に生活できるようになってんのか。
 終始訝しむ様子の警察官から住所地図のメモをもらって、俺は交番を出た。

 夕暮れの中、見知らぬ街を歩き、俺の住居らしいアパートへと向かう。途中、犬の散歩をする主婦や、学校帰りの小学生達とすれ違うが、どいつもユルい外見をしてやがる。なんだかもう見慣れてきた。鏡を見れば同じ雰囲気の俺が映るし、まぁ見慣れるしかねーんだろうけど。
 アパートに着いたのは日没しきってからだった。元住んでたところと外観が似ている。部屋番も一緒だ。住民票もこれもガンツが用意したのか。
「あッ、鍵……」
 ドア前で思い当たる。多分持ってねーぞ。
 ひとしきり制服の中を探して、なかったので諦め、なんとなくドアノブを回したら、普通に開いた。
「なんだよ……」
 靴を抜いで部屋に入った。元の俺の部屋と同一の光景があッた。だが間取りが微妙に違う為、ポスターの位置なんかがおかしなことになってる。不気味だ……無理矢理俺の部屋を持ってきたみたいだ。
 とりあえず習慣でテレビをつけると、当然だが映ってる人間もみんな頭身が低かった。それに、知ってる芸能人が一人もいねー。紳助とかどこ行った……って違うか。どの局に変えても、印象薄い感じの芸人やアイドルばかりだ。改めてここが異世界なんだと思い知らされた。
 待てよ。
 異世界だとしても、ただアパートだけが用意されてんのはおかしい。保証人だって要るし、ってことは、俺の親がこの世界にも存在してなきゃおかしい。

110名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 11:00:53.36
 携帯、どッかにねーか。テーブルの上、机の上……探した挙句、ベッドの上の充電スタンドに接続されてたのを発見。実家の番号を呼び出して、発信する。
『プルルルルルル、プルルルルルル』
 よし、コール音だ。俺の実家も、この世界には存在してる。
 ごちゃ、と音がした。受話器を取る音だと思って「もしもし?」と口走ったが、冷静に考えれば違った。
『…………け……いー』
 声が聞こえた。
『け…………い……ー…………かけちゃだめ…………』
 直後、グチャグチャグチャと回線が絡まるような音。俺は電話を放り投げていた。
 こ、怖えーッ! なんだ今の!
 どういうことだおい。
 矛盾を突いちゃいけないってことか? ガンツが捻じ曲げた世界の継ぎ目を引き剥がすのは、まずいのか?
 クッソ、マジでヤバかった。下手な星人よりビビった。
 つまり迂闊に嗅ぎ回らず、ここでの生活に順応しろッてことかよ。ざッけんな……。

111名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 11:03:09.15

 翌日、誰が買ったんだかわからない食パンで朝食を済ませ、俺は自分が在籍しているらしい私立桜が丘高校に登校してみることにした。
 机の引き出しの中で見つけた学生証。俺は二年生とある。元の世界と同じだ。
 知らねー学校の知らねークラス。別に律儀に登校する気分でもないんだが、サボるということは学校側から親への連絡が発生しかねない。
そうなればまた矛盾に突き当たる可能性が出てくる。なんとなく、あの電話の声はヤバい気がした。何度も繰り返せば、異世界への通路が開く……そんな空気を感じた。
 ともかく、この世界を探索する方向で行動を起こすしかねー。制服を着て、鞄を持って、アパートを出た。
 携帯の地図を参照しつつ、朝の道路沿いを歩く。目的地に近づくにつれて、学生の姿が増えてくる。見事に女子高生しかいねー。元女子校、男子一割の共学ッて言ってたな。
 ってそれ、めちゃくちゃいい環境なんじゃねーか……? この世界の人も見慣れて、女なら可愛いと思えるようになってきたし。うひゃー、やっぱ登校しといて良かったか?
 女ばッかに紛れて、校内に入る。ようやく一人、二人、男子の姿が見えた。一割ッてことは、四十人のクラスならたったの四人……逆に恐ろしい気もしてきた。
 廊下を行き、階段を上って、所属の二年二組の教室に入る。当然、室内は知らない顔ぶればかりだ。何故か注目されてないが、挨拶もされない。どういう扱いになんだ。俺は昨日までもこの教室にいたことになッてんのか。つーか、俺の席どこだよ。
 視線を動かしていると、元の世界での自席――窓側最後列が空席だということに気づいた。ひょっとしてあそこか。これまでも、元の世界と対応する場面がいくつかあった。多分このクラスでの俺の席もあそこだ。
 一直線に窓際に向かい、鞄を机にかける。椅子を引き、座ろうとしたところで声がかかった。
「玄野君、そこは……」
 前に座る、眼鏡でショートの女が振り向いた。
「唯の席なんだけど」

112名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 11:05:34.04
「えッ」
 人の席だったのか。おいおい、恥ずかしいな、おい。
「あなたの席は」教室に中央の空席を指す。「あっち」
 眼鏡の女は微笑んだ。
「寝ぼけてたの? おはよう玄野君」
 同学年とは思えない、しっかりとした口調だった。
「お、はよ」
 挨拶を返して、指定された席に向かう。
 なんだ、この感覚は。あの女子に話しかけられた途端に。
 初めて玄野計として認識された。この世界であやふやだった自分存在が、あいつによって明確になッた。だからか?
 や、単純に女子と話すのが久しぶりだッたからか。
 そう思うと心が弾んできた。女子九割のクラス、普通に考えて凄い状況だ。楽しまない手はない。席にかけると、笑いが込み上げてきた。
ひょっとしたら、俺はミッションからも解放されてる。招集の恐怖に怯えることもなく、悠々自適な学生生活を満喫できる。俺の望んでいた状況じゃねーか。
 ガンツ! おいガンツ!
 何でこうなッたかよくわかんねーけど、心から感謝させてくれ!

 チャイムが鳴った。担任の男性教諭が教室にやってきて、朝の出席をとりはじめた。
「次――」
 俺を呼ぶ番になって、言葉が止まる。
「くろの、は……」俺の顔を見る。「昨日、お前いたか?」
 担任は出席簿を手繰る。そして首を捻る。……もしかして、全部空欄なんじゃねーのか。在籍の事実だけが用意されていて、担任が手書きでつける出席簿に関しての辻褄合わせは何もされてないんじゃ……。
「そもそもお前、このクラスの生徒」
 途端、彼の頭が踊った。一瞬、白眼を剥いたのを見た。
「生徒ぉ……だったな……うん」
 担任は一人で納得して、涎を垂らしながら点呼を続けた。
 戦慄した。
 この世界はガンツによッて、支配されてる。爆弾ルールに似た法則が、存在している。
 強く違反をすれば、殺されかねない。
 教室内も、彼に起きた突然の異常にざわめき立っていた。

113名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 11:58:28.35
「平沢、平沢ー」
 出席を取り続ける担任教師。明らかに脳をやられたような挙動も収まったみたいだ。
「平沢、遅刻かぁ?」
 さッきから一人の女子を呼んでるが、来ている気配がない。さっさと次いけよ。
 つーかこのクラス……今になって気づいた。男子は俺だけだ。マジかよ。
「平沢ぁー。……遅刻だな」
 担任が出席簿にチェックを入れようとした。
 そのとき、声が聞こえた。
「はいはいっ、はーーーい!」
 廊下を駆ける音。声の主は、開いていた後部扉から教室に飛び込む。
 ショートボブの、いかにも足りなそうな女子だった。
「セーフ……」
 教室内にシュールな拍手が起こる。
 平沢とされた彼女は、「おはよー」と抜けた挨拶をしながら、そのまま直進。俺がさッき間違えた窓際の席へと向かった。
「あれ?」
 ふと動きが止まる。
「この鞄、誰のだろ」
 あ……俺のだ。やべぇ、かけっぱなしだッた。
「それ、玄野君のよ」前の席のしっかり眼鏡が言う。
「くろのくん?」
 教えられ、俺の方を向いた。
 よく見たらこいつ、昨日の楽器屋から出てきた女じゃねーか。
 あん時は無視された。同じクラスのはずなのに。
 ッてことは、まさか……。
「誰?」
 平沢は首を傾げた。
 その口が、さらに次の言葉を紡ごうと、動く。まずい。
「あんな人、いなかっ」
 がぁん! 音が鳴った。平沢は大きく仰け反り、背後のアルミサッシに頭をぶつけていた。
 教室がざわめく。「唯!」しっかり眼鏡が立ち上がる。
 平沢はゆっくりと顔を戻し、「だっておかしいよ。そもそもこの学校、男子なんていなか」

114名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 11:59:05.43
 頭が振り子のように暴れた。机に顔を打ち付ける。即座に反対に引かれ窓ガラスに打ち当たる。
 たッ、タブーに触れてんだ……。誰がやめさせろ……!
 それでも彼女は言葉を紡ごうとした。
「その」
 ガン!
「その人」
 ゴン!
「このクラスの人じゃない」
 ゴシャガシャン!
 教室後ろのロッカーに頭からダイブしたところで、その現象は収まった。
 死んだか……。俺は思ったが、彼女は平然と起き上がってきた。
 鞄を手に取り、ずかずかとこちらに向かってくる。
「はい、くろのくん」
 目の前で、腕を伸ばして渡された。
 頭から、鼻から、大量出血をしていた。
「私は認めたわけじゃないからね」
 全力で睨まれた。
「きっと君は、宇宙人だよ!」
 そう言って、ばたんと仰向けに倒れた。
「誰か保健室に連れてけ!」担任が慌てる。
「私が行きます!」しっかり眼鏡。
 平沢は起こされ、肩を担がれて連れられて行った。
 ……凄ぇ。ガンツの法則に抗える存在、初めて見たぞ。
「窓、ヒビ入ってる」
「うわ……」
 俺は先入観からか、てっきりガンツの力がこの平凡な世界を侵食支配してるんだって、そう思ッてた。
 でも、違うのかもしんねー。ガンツは俺を送り込んで、必死に寄生して、ルールで押さえつけているだけ。
 本当に異常なのは、この世界の方なんじゃねーのか。

115名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 12:02:15.79

 まるで俺は、野に放り込まれた一羽のうさぎ。四十名の女子に囲まれ、生活をする日々だった。
 あの衝撃の登場から強く絡んでくると思われた平沢唯は、次の日にはもう俺の存在を忘れているようだった。
「あれ、玄野君いたの?」音楽教師の山中さわ子。「ごめんね、気づかなかった。なんだろ、玄野君て昼行灯って感じね」
「せんせー、昼行灯ってなんですかー」田井中律というデコ女。
「うーん、なんか昼に灯りを燈してもわからない、みたいな。つまりこういう奴?」お茶目に笑って指を指した。クラスが爆笑の渦に包まれる。
 んだよ、これ……。元女子校だからか。男子の尊厳が軽んじられすぎだろ。

 数学、現国、歴史、勉強が面倒なのはここの世界も変わんねー。結局つまんねえ。女子九割ったって彼女ができるわけじゃねーし。確かに教室中いい匂いがするけど、それだけだし。
 三限目を終えて次の授業中までを寝て過ごそうと考えた。机に突っぷそうと肘を滑らせたとき、違和に気づく。
 クラス全体の視線が俺に集中していた。
「玄野君」しっかり眼鏡の真鍋が言った。「次の授業は、体育なの」
「はッ? え?」
「みんなここで着替えるから、ごめんなさい。出て行ってくれる?」
 そ、そッか。そうだよな。見回すと誰もが鞄から体操服を取り出し、着替える準備をしている。早々に退室しねーと。
 俺は鞄を手にして、教室を後ろへ。
「あれ、草野くんはどこで着替えるんだろう」平沢が言った。
 真鍋が返す。「そうね……何せ共学になったばかりだから、男子用の設備がないのよね」
 トイレも職員用トイレだ。
「どこかその辺で着替えてもらっていいかしら」
 優等生の真鍋和。彼女が口にした『どこかその辺で』という適当な言葉は、まさに俺が受けているぞんざいな扱いを象徴するものだった。
 教室を出て、後ろ手に扉を閉める。
 途端に、クラスは賑やかな声で湧いた。
「草野くんじゃないよ唯ー!」
「あたし笑いそうになっちゃったじゃん」
「ってかアイツ、なんで毎回小っちゃい『っ』の部分強調して言うの? くそウケるんだけど!」
 ざ、ざッけんな……!

116名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 12:08:26.77
 そのような学校生活も一週間が過ぎた頃、俺は軽音部の存在を知る。このクラスからの所属は三名。平沢と、田井中、そして琴吹紬というお淑やかな女子。
そこに他所のクラスの生徒を一人と、一年生を一人含めて、放課後ティータイムというバンドを組んで活動をしているらしい。
 興味ねーけど、楽器屋にいたのはそういうことだッたんだな。
「今度ライブハウスでライブをね……」
「凄いじゃない」と真鍋。
 ライブハウスとか、馬鹿の巣窟だろ。まぁ、そこまでマジにやってんのは凄ぇと思うけど。
 あー、ここの生活にも飽きたな。こいつら雰囲気ゆるすぎて恋愛の気とか皆無だし。予想した通りミッションがないのは助かったけど、今度は退屈過ぎてだりーッつーか。
 平沢達の盗み聞きをやめて大きく伸びをする。と、教室に担任が入ってきた。ホームルームが始まって、その後は放課だ。帰ッたらどうすッかな。もう平沢とか琴吹で抜くのも飽きたなぁ。次はいよいよ田井中いくか。
「えー重要な連絡事項がある」担任が咳払いをして言った。「最近県内で頻発ている交通事故や建物の倒壊だが、昨晩は巻き込まれた怪我人も出ている。まぁ皆もニュースで知っているとは思うが」

117名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 12:10:19.22
 んだそれ。軽部の出てねー時点でニュースなんて見てねーッつーの。
 ん……? つか、建物の倒壊ッてガンツっぽくねーか……。
「磁場がおかしくなっているとか原因は色々言われているが、はっきりはしていない。下校時何があるかわからないので、皆くれぐれも気をつけるように」
 臭え……。ガンツ臭え。逃れられたと思ったのに、こッちでもミッションかよ。
 や……、違うか。いま言ったのがミッションによるものなら、俺が今のとこ無関係ッてことの裏付けじゃねーか。ははッ、やった。なんか当事者外された寂しさみたいのもあるけど、実際他所でやッてもらえるならそれに越したことはねー。
 俺は小さくガッツポーズをした。
「昨日は特別ひどかったんだよねー」平沢が言った。俺の妄想でお前がひどいことになってるとは知らずに、無垢な顔してやがる。
「隣町だったな」と田井中。
「ビルが倒れたのよねぇ。本当なんなのかしら、怖いわね」頬に手を当てる琴吹。
 こいつら、ホームルーム中なのに離れた席で平然と会話しやがる。軽音部……。
「起立」真鍋の一声でクラスが一斉に立ち上がる。平沢達も慌てて続いた。
「礼」放課となった。

118名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 12:13:56.73

 冬休みに入ッた。行動の大半だった学校がなくなッて、俺はいよいよ猿のように手淫を繰り返した。ネタは腐るほどある。一日四回、クラス四十人を十日で一巡するペースだが、実際は三十九人しかできていない。
 真鍋和でどうしても抜けない。雰囲気から母性を感じる為だろう。越えてはいけない一線というものが彼女との前に大きく立ちはだかっていた。
「クソッ」平沢をネタにゴンゾ級のやッつけ仕事を完了すると、途端に襲う虚無感。「つまんねー、毎日こればッかじゃねーか」
 実りがねーんだ。これならまだミッションやッてた方が精神的にはいい。あの世界じゃ俺はヒーローだッた。モテはしなかッたが、輝いていた。
 1Kの部屋、廊下の冷蔵庫前に寝っ転がり(平沢が牛乳を飲みつつ俺に犯されるというシチュエーションだった)傍の携帯を開く。
 今日じゃねーか。軽音部が騒いでたライブの日。街のライブハウスで、他のアマバンドに混じって一般客相手に演奏するとか。
 連中はまさに青春を疾走してやがる。どーせヘボい音楽だろうけど、部屋から一歩も出ず日がな一日シコッてる俺よか断然いい。
「……」
 いや、それでもヘボい音楽には違いねーんだ。真面目に練習してる空気が微塵も感じられねー。事実、部活は琴吹が持ってきた菓子を食うだけで殆ど終わってるらしい。
 なんとなく……観に行ってみるか。素人の演奏だ。気負いせず、軽い気持ちで。丁度ネタにも飽きてきた頃だし。
 チケットとか、今から取れるかな。

119名無し物書き@推敲中?2012/03/19(月) 12:21:30.04

 軽く街を彷徨って、裏通りにある小さなライブハウスに辿り着いた。普通のビルに見えるけど、どうもこれがそうらしい。人はそれなりに集まってるみたいだった。開場待ちの連中が周辺にたむろッてる。普通ッぽい奴ばッかだ。参加が女のバンドばっかだからだろうな。
 受付に行ったら当日券が取れた。んだよ、チョロいじゃん。ライブ。
「あら、玄野君?」
 ……チョロくなかった。振り向くと見知った顔があッた。真鍋和だ。完全に想定してなかッた。そーだよな、普通友達呼ぶッて。
「あなたも観に来たのね。私は唯達に誘われたんだけど」
 ああ俺は誘われてねーのに観に来たよ。ざけんな、恥ずすぎだろこの状況……!
「ありがとう」
「……は?」
「わざわざ来てくれたのよね。唯達も喜ぶわ」
 ちッ、ちげ……いや、違くねーけど。
 あたふたしているうちに開場時間となった。
「入りましょう」と言われて、俺は彼女と一緒に中へ。「私も、ライブハウスは初めてなんだけど」それなのにこの落ち着き様。女子高生なのにおばさんの空気がある。
 抜けねーのはそのせいだ。きッとそうだ。
 断じて、気になる女で抜けない心理とかじゃねぇ……。

120名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 13:55:24.22

 ギャギャーーーン!
「ィイイイーーーアアアアーーー!!!」
 平沢の奇声。
「……あ、こんばんは。放課後ティターンズです。あと何曲かやりますので」
「唯先輩! もう色々とツッコミきれませんよ!」初日にいたツインテールの女が乗り出した。
 んだこれ……。一組目のバンドが終わって、素人でこれはすげーよなって微妙に感心してたら、こいつらは演奏力がダンチだッた。平沢の高速ピッキング、指がどうなッてんのか見えなかッた。
小柄なツインテールは複数のエフェクターを接続、よくわかんねーが恐ろしく素早く使いこなしていた。他の奴らも凄ぇが、この二人は飛び抜けてる。
「次、ふわふわタイム〜」
 ドドドドドドドギャギャギャギャーーー!!
 ペッポロパロペッポロパロポロ
「凄いわね、アレンジが」真鍋が隣で言った。「きっとライブハウスの客層に合わせたのね。こんなこと、プロでもなかなかできないと思うわ」
「そッ、そーなんすか」
 くッそ、まともに話せねー! なんで隣にいんだよこの人。
「特に唯は、まだ始めて一年と少しなの。この上達には目を見張るものがあるわ」真鍋は微笑する。
「使える」
「……?」微かにそう言った気がしたが、次に目をやると、彼女は小さくジャンプをしてはしゃいでいた。
 ジャッ! ジャッ! ダララララーーー!!
 演奏はクライマックス。キーボードを持ち上げての琴吹のプレイ。さッきから明らかに休止箇所がない田井中のドラム。ベースの女は大人しかったが、平沢に感化されて徐々に発狂しかかッてる……。
 凄え。レベルが違いすぎてこれじゃ、あとのバンドが見れねー……。
「ギョエエエェエ!!!」
 平沢がギターを振り回す乱闘紛いの曲が終わると、どうやら持ち時間が終わったらしい。軽音部は退場していく。
 その後のプログラムは、場末の寂れたソープランドを想起させた。出涸らしのような演奏。浮いたボーカル。自信のない表情……明らかにあのプレイの直後というのが影響していた。
 最後のバンドが「ありがとうございました」と泣きそうな声で締め、退場。場内に明かりが灯る。既に客はガラガラだッたが、残った数人の流れに乗って、俺は扉へ向かう。そういや、いつの間にか真鍋がいねー。平沢達に挨拶でもしに行ッたか。

121名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 14:03:31.03
 建物を出る。外の冷たい風に吹かれて、また、あの熱気を思い返す。ノれたもんじゃなかッた。ただ、圧倒された。俺のような雑魚の追従を許さない、突き抜けたサウンドだッた。
 手が、足が、気づかぬうちに震えていた。
 恥もプライドも掻き消えていた。裏口に行けば会えるだろうか。握手、してもらえるか? いや、ただ素晴らしかったの一言でいい。伝えよう。
 あいつらは気高すぎた。もうズリネタなんかにはできねぇ。
 路地をまわってライブハウス裏に出ると、丁度軽音部が楽器を持って出てくるところだッた。軽い人だかりができていた。全部放課後ティータイム目当てだ。あいつらすげえ。
「どうもありがとー」平沢が軽く手を振りながら歩いてくる。
 意を決して、その眼前に飛び出した。
 平沢は俺を認めると、「あっ、黒川くん?」もういい、何でもいい。
「あッの」求婚でもしそうな勢いだッた。「さッきの演奏」
 その時、何かが頬を掠める。
 聞き覚えのある音が耳に残ッた。
 瞬く間、目の前の平沢は、レーザーアンカーに絡め取られている。
「は……?」振り向くと同時、一瞬の影が駆け抜ける。視線を戻した先で、血飛沫を上げる平沢の姿を見た。
「の、どかちゃ……」
 刀を握り返す暗殺者――真鍋和がいた。
 たちまちに混乱が場を飲み込む。悲鳴を上げたツインテールの一年を、真鍋は一突きにする。「うわああ!」「和!?」他三人も、順々に惨殺されていく。
 人だかりは散っていた。血溜まりの上に立つ女の目が、俺に向けられる。手には大ぶりの黒い刀柄……ガンツソード……。
 一歩が踏み出される。高速の剣閃が、俺の首目掛け、
「あ――」

 空中からの視界を最期に、意識は途切れた。

122名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 14:10:39.99
「こ、」
 殺された。送られた……。
 目の前に、マンションの部屋。半年前と同じ光景が広がッていく。いや、微妙に同一とは言えない。間取りや壁紙が違う。だが、あれだけは変わらねー。部屋奥に置かれた黒い球――ガンツ!
「あ……あ」平沢を始め、軽音部五人は床にへたり込んで震えてやがる。無理もねぇ。クラスメイトに殺されたんだ。
 その時、ガンツから光線が走る。何もかもが向こうと一緒だ。平沢の隣に、しっかり眼鏡の頭部が描き出されていく。
「いやあっ!」乙女な悲鳴を上げて、部屋の隅へと逃げていく平沢。田井中達も後ずさり、軽音部は散り散りとなった。
「和!」
「和、どういうことだよ!」黒髪ロングのベースが叫んだ。「血っ、血がいっぱい……」ふらりと貧血を起こしたように倒れた。
 真鍋は納刀した柄を鞄に仕舞う。
「ごめんね、唯。みんな。悪いけど、協力してもらおうと思って」
 そう言ッて、彼女は淡々と語り出した。死者とコピー、星人とミッション。加藤の口から幾度となく聞いた、この部屋のルール説明だッた。
「大体、こんな感じ。今ので理解できたかしら」
 口述上手え……。加藤の三倍の早さで、十倍は分かりやすかッた。平沢達も揃って頷いていた。
 真鍋はガンツに手を置いて、少し笑って言う。「見てわかると思うけど、前回の戦闘で人員は私一人になったわ」
 冬休み直前のあれか……。ビルが倒壊したとかいう。一体どんな星人だッたんだよ。
 つか、……ッてことは、こいつも全滅経験者なのか。
「そこで、このくろ丸君≠ゥら早急に死者を集めるようにと指令が下ったの。カタストロフィに向けて、なるべく多くの人員を」
 カタストロフィ? んだそれ。俺も結構長いことガンツやッてるが、聞いたこともねー。ここ特有のイベントか? つーか、くろ丸君ッてなんだよ。可愛い名前つけてんじゃねーッつの。
 と、思うことは山程あッた俺だが、こッち来てから継続している完全にアウェーな空気の為何も言えずにいた。
「catastrophe……世界の破滅、ですか」
「そう。明確には何が起こるかわからないわ。だけど、今から備えておけるものはある。……強力な武器と」平沢達を見回した。「有能な戦士」

123名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 14:12:34.58
 って、無茶苦茶じゃねーか、おい。こいつらが凄ぇのは所詮楽器だろ。同列だッて言いたいんだろうが、俺は知ッてる。星人との戦闘がそんな安易な理屈で成り立つわけねえ。
 それに、そのカタストロフィがどんな規模かわかんねーけど、知り合いを手にかけてまで全力で対処しなきゃなんねーことなのかよ……。理解できねえ。
 だが、俺の思いに反して真鍋は沈着した声で言う。
「正直に言って、前にいたメンバーは能力がここの環境に見合ってなかったと思うの。私の指揮不足もあったかもしれないけど、あの程度の戦いで全滅していたらカタストロフィは生き抜けないわ」
 ちょ、超冷酷……。
「でも、あなた達なら大丈夫だと思う。手荒な事をしてごめんなさい。……一緒に、世界の為に戦ってくれないかしら」
 真鍋が言葉を終えた。
 それから少しの沈黙の後、
「うん。わかったよ!」平沢が声を上げた。
「和の頼みとあっちゃあな」と田井中。
「聡明な判断だと思います」一年も頷く。「世界が破滅するなら、どこにいたって同じです」
 琴吹とビビりのベースも同意していた。
 こいつら、やッぱ思考がおかしい。どこで何やッてたッて一緒なら、家でシコッてた方が断然有意義に決まッてんだろ。馬鹿か。

 そうこうしてるうちに、くろ丸君≠ェ内部の武器類を開放した。真鍋が一つ一つを手に取り説明をする中、俺はスーツと銃ワンセットを手に廊下へ。
 悪りーけど、経験者なんだよ。女子会ッぽい空気にも馴染めねーし、早々に解放させてもらうわ。
 慣れた手順でスーツを着装し、軽くどや顔で部屋に戻ッた。
「わかったかしら。多重ロックオンとスーツ破壊ポイント」
「んーなんとか」と田井中。
 んだそれ。どッちも知らねーッつの。そんなんなくたッて気合で勝てんだろ。
「……」
 と、そこで誰も俺の存在に目を向けていないことに気づく。
 あれ……ステルスとか使ッてねーはずなのにな。
 お、おかしいな……。
「次に、これの使い方を教えるわね」
「わあ、でっかい」
「クリア特典の武器よ。六人で回して使いましょう」
「ええっ、いいのか」
「さっすが、和! 太っ腹だなぁ」
 なんか、涙でてきた。

124名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 14:14:40.23
『エア星人』
 最初の標的には相応しい、見るからに戦闘向きじゃなさそうな少女型星人をくろ丸君は表示した。
 何処だかもわからない草原に、俺達七人は転送される。
 人型ッてのがやッぱネックだが、やるッきゃねー。俺はXショットガンだかXライフルだか公式名称も曖昧な銃を構え、気合いを高めた。まずはレーダーで、敵の位置確認だな。
「あ、いたよ」と、その時平沢が空を指指す。
 疎らな薄雲が散る中に、巨大な満月。夜とは言いがたい光量の空を、それは舞っていた。
 羽を生やした、全裸の少女だ。
「おッ……」俺は流石に動揺した。生の裸なんて岸本以来だ。幸運にも、手には望遠モニター搭載のライフルが握られている。しッかり見て、頭に焼き付けねーと。武器を空に構え、スコープを覗いた。
 瞬間、途轍もない轟音が鳴った。
 銃を離して夜空を見ると、星人は消えていた。
「おー」平沢の感嘆の声。巨大な銃を構えていた。
「リコイル(反動)ないんだな。どういう技術なんだろう」ベースの女が不思議そうに覗く。
「恐らく、今ので倒せてはいないわ」と真鍋。「とどめを刺しにいきましょう」
「おーっ!」と平沢の元気な声がしたかと思えば、連中は走り出している。
 直後、Xガンの発射音が数発聞こえた。裸の腕や羽が吹き飛ぶのが見えた。
「わ、グロいな!」
「ひぃぃ」ベースの女が卒倒した。
 呆然としてる間に、視界が変わる。俺は部屋に戻ッてきていた。
「あれー、もう終わり?」平沢の頭も転送されてくる。
「楽勝だったなぁ」と田井中。
「おえぇ」吐きながら、ベース女。
 もう終わり? ッて、俺の台詞だッつの……。んだよこのミッション。この世界に合わせてターゲットもユルいんだな。向こうで死線を掻い潜ってきた俺には物たんねーッつーか。
「採点を始めて」最後に転送されてきた真鍋が言ッた。顔から興奮が伺えた。んだよ、コイツも素人か? 3点とかの星人で舞い上がってんじゃねーよ。
【ゆい 100点。100点メニューから選んでね】
「はッ? はいィ!!?」
 思わず変な声を上げちまッた。俺に注目が集まる。

125名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 14:43:25.05
「玄野君は、どういうわけか知らないけど、この部屋の経験があるのよね。見ていてわかったわ」真鍋が言った。「なら、驚くのも無理はないと思う」
「えっ、黒子(ほくろ)くんってそうなの?」と平沢。
「説明するわ」真鍋は前に出る。「まず、今回の敵は耐久性が異常だった。大抵の星人は、最初の一撃で倒せるはずだから」
 更に、と言って続ける。
「エア星人とあったけど、あれは古来の書翼人伝≠ノ伝わる『翼人』よ」
 は? 星人じゃねーのかよ。
「星の観測者と呼ばれ、地球が発生してから今までの出来事を身体に記録する、伝説上の生物。今回は反撃なく倒せたけど、戦闘能力は高いわ。背中の羽で暴風を起こして街などを破滅させた記録がいくつも残っている。私は見た瞬間に、100点は間違いないと思っていたわ」
 おめでとう、唯。そう言って、平沢の肩を叩いた。
 くろ丸君には、100点の選択肢が表示された。ッて、三つもあんのかよ。解放に、強い武器? メモリー内の人間を再生!?……知らなかッた、そんなんあンのか。
 つか、俺、何も知らねー……。100点ターゲットがいることも知らなかった。結構長いことミッションやッてたのに、わかんねーことばッか。情けなくなッた……。
「強い武器が欲しいな〜」と平沢。
 ッて、解放じゃねーのかよ、おい。自由がそこにあんだぞ。
「そうだな。和も武器が必要って言ってたし」ベースの女までそッちのノリかよ。
 こいつら、カタストロフィとやらに向かう方向で既に一致してやがる。
「ありがとう」真鍋が言った。

126名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 14:45:40.95
 年末、年明けと、俺はやはり自慰によッて過ごした。
 年跨ぎオナニーのネタに、遂に真鍋和を使った。異常な程の快感だッた。妄想のシチュとしては、俺と真鍋が共に全滅経験者であるという心の傷を利用した。
 ――加藤ッて奴がいてさ。リーダー気質で、すげえいい奴だッたんだけど、死んじまッた……。
 俺のその言葉に、真鍋は涙する。
 ――すげえいい奴だッた。マジで、すげえいい奴だッた。
 加藤をフルに活用した。心を動かされた真鍋は、自身の心中も打ち明ける。決して表には出せない弱さを、俺だけに吐露する。
 悲しみが心を引き寄せ合った。二人は夜の砂浜で一つになッた。真鍋は落ち着いていたが、俺の指技によりタガを外される。最後には滅茶苦茶に喘ぐ彼女のすがたがあッた。月明かり、波の音、潮の匂い。裸で夜を感じ合う。
 真鍋は絶頂に達する。

『もしもし、玄野君。今日時間あるかしら』
 汚れた手で電話に出ていた。イッた瞬間に鳴ッたコール音。真鍋の声に、異様な背徳感と興奮を覚えた。
『少し、お話をしたいの』
 年明けて数日経った日、俺は駅前の喫茶店へと呼び出された。入口近くの席に、真鍋は既に来ていた。
 考えてみりゃ、女子とお茶するなんて初めてじゃねーか。クソ、緊張する。しかも数分前まで妄想でらぶえっちだった相手だ。色々とヤバい。
 俺が席に着くと、真鍋は慣れた調子でコーヒーをもう一杯頼んだ。
「ここ、私の馴染みの店なんだけど」
 本題前の適当な会話が始まッた。コーヒー豆の薀蓄が淀みない調子で語られる。相変わらず上手え。思わず聞き入ッてしまッた。
「でね……」恐ろしい程自然な調子で本題らしきものに入る。「少し気になって、玄野君について色々調べてみたんだけど」
 余りに流れが鮮やかすぎて、まだ豆の話が続いてると思っていた。彼女の言葉を何度か反芻して、ようやく意味を理解する。
 色々、調べた、ッて、ヤバくねーか。
 繋がッた世界の矛盾に触れちまうんじゃ……。
「結論から言うと、あなた、戸籍がないわね」平然と言った。「住民票も空欄ばかりで受理されているわ」
「……」
 てッきり言った瞬間にヘドバンが起こると思ッたが、あの部屋の関係者はタブーの例外になるのか? 彼女は何ともない様子で続ける。

127名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 14:46:21.91
「流石にこれはと思ったから、昨日部屋に行ってくろ丸君に訊いてみたら」
 は……?
「ちょッと待て。あの球と話せんのか?」
「うん。普通に話しかければ何でも答えてくれるけど」
 何だそれ。聞いてねーぞ。
 つーか、思わず会話しちまッた。は、恥ずッ……。
 真鍋は俺を見つめて、言う。
「そうしたら、あなたが異世界の人間だということがわかった。ちょっと信じがたいけど、ミッションのペナルティを受けて、ここに送られてきたって」
「そ、それは知ッてる。わかんねーのはその……」
「送られた目的?」
「そうだ」
「それは、くろ丸君にもわからないみたい。彼も結局、普通の人間と変わらないから。球のデータにアクセスして、調べてくれただけなの」
 真鍋は少し気落ちした様子だった。
「本人が色々知ってるかもと思って誘わせて貰ったけど、よく考えたらあなたが一番わけがわからないわよね。ごめんなさい」
 椅子を立ち上がる。
「時間をとらせちゃってごめんね。会計はしておくから」
 そう言ッて伝票を持って、レジに向かッた。唖然として俺は見送ッた。
 店を出る時に、「この後、唯達と約束があるの。それじゃあね」手を振られた。
「……」
 まだ湯気の立つカップに口を付けて、顔を伏せる。
 正直、異世界とか、喚ばれた理由とか、どーッでもいい。
 あんな女、向こうの世界にはいなかッた。普通なようで、普通じゃねー。何ンて言ッたらいいんだ。上手く言葉になんねーぐらい、絶妙な感覚だ。
「す、好きだ……。ああいう奴」
 俺は見事にハマっていた。

128名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 14:48:30.74

 異様にしッかりしてんだけど、それを感じさせない自然さ……。そんな感じか。真鍋和の魅力はそんな感じだ。
 本日八度目の真鍋とのエアセックスを終える。ちッとも飽きねえ。現実での距離感が余計にそうさせてる気がする。付かず離れずの眼前にバナナが吊るされれば、猿は何処までも走る。俺は確かに猿だ。
 もう一生分を抜いた気がする。平沢とかは芋に見えてきた。教室で真鍋の姿を目に焼き付ける。新鮮なネタで抜く。トイレから戻ッた教室で、真鍋に軽く話しかけられる。その状況を思い返して帰宅後また抜く。俺は一日に何度も夢を見れた。


【憂鬱星人】と表示された敵に、真鍋はまた100点ターゲットの試算をつけた。
 何処だかわかんねー学校の校庭で俺達を迎えたのは、半透明青色のだいだらぼっちだッた。
 巨大な腕の一振り。校舎が、豪快に吹き飛んだ。
「恐らく、『神人』ね」と真鍋。
 また星人じゃねーのかよ。
「ネットの都市伝説系のサイトにあったわ。閉鎖空間と呼ばれる異次元でのみ活動をする、謎の巨人。それだけじゃ意味がわからないでしょうけど」
 いや、それだけに限らず全部意味がわかんねえ。
「神人は、世界の発端であるとされる人物の負の精神体だと言われているわ。推定に過ぎないけれど、それが正しいのなら、あれは名前の通り神そのものということになる」
 よくわかんねーけど、ヤバそうなのは理解できた。
「神を殺していいのかしら」と琴吹。
「語弊があったわね。神人は、この空間を含めて心の現象に過ぎないわ。恐らく、あの校舎も現実世界では傷一つついていない」

129名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 14:49:09.43
「へぇ、どんな原理になってるんだろ」と秋山。
「相対的に影響し合うミッション空間と、完全にそれが断絶される閉鎖空間か。それが同時に展開されたということは、ミッションによる次元のズレより、更に上位の変異である閉鎖空間の発生が優先されたってことか」と田井中。
「でも現にミッションを実行できてるってことは、くろ丸君の次元調整の方に優位性があったとも考えられるよね」平沢。
「断言できるのは、両者の力も及ぼされる影響も全く異なるものということですね。見る限り、神人の動作は原始的です。対してくろ丸君の技術は完全に未来科学です」と中野。
「神の力と未来の力という言い方が適当ね。未来科学は巨大ではない、しかし神は未来には及ばない。ある意味矛盾を孕んだ二つの頂点のぶつかり合い。私達は凄い瞬間に居合わせているのかも」興奮気味に真鍋。
 何この会話……。完全に蚊帳の外の俺は、戦闘でも置いていかれた。校庭をかけ出す六人。「唯!」「うん!」真鍋と平沢が声を掛け合う。強力武器二丁によッて、神人の身体はみるみる間に削られていく。
 今回も何もできないままミッション終了。ざ、ざけんな……。

130名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 15:02:57.75
【ゆい 100点。100点メニューから選んでね】
 二回クリア。俺はここに来て未知を体験していた。ガンツミッションッて、もッと極限にヤバくて、人がバンバン死んで……そんなんじゃなかッたのかよ。
 平沢は今回も強力な武器を選択した。隣の真鍋の顔に、明らかな興奮の色が伺える。「二回クリア武器……私も初めて見るわ」
 くろ丸君表面から、極彩のレーザーが走る。平沢を貫くかと思いきや、眼前で散って物質を描き出す。それは彼女の周囲にまで及ぶ。
「唯……」
 数秒ののち、平沢は巨大な黒のバトルアーマー体となッていた。真鍋が感嘆の溜息を漏らす。
「唯ー」田井中がコンコンと表面を叩いた。
「いるよー」と返事。「私、どうなってるの?」
「キングゲイナーみたくなってる」
 うおお、強化型のスーツか。流石にこれ着たら、ちょッとやそッとで負ける気がしねえ。真鍋を見やると、頬を赤らめて、飛び跳ねて、明らかに嬉しがッてやがる。微妙に危ねーもんを感じるけど、かわいーなおい!
 二メートル級の置物となッた平沢を他所に、他のメンバーの採点が執り行われていく。
【わ 0点。トータル70点】
「これずっと直らないのよ」ご機嫌な顔で真鍋が言う。
【みお 0点】
【あずさ 0点】
 まァ、あとは全員0点だよな。見るまでもねー。100点ターゲットが一体だけッてのもどうかと思うが、お陰で楽できちゃいるし。
 残り二人の採点も終わッて、俺の画面が表示された。
【けい 0点】
 はい、終了。さッさ帰るか。スーツ着た真鍋のボディラインをしッかり目に焼き付けてと。
「けい、って誰って思ったけど」キングゲイナー平沢が言った。「栗野くんのことだったんだね」
「あ、ああ」どーでもいいけど、そん中すげえ篭った声だな。
「中性的な名前よね。特に平仮名で書かれると」と真鍋。
「ちょっとかわいいよな」と秋山。
 あれ……。
「そういえば、アドレス交換してなくなかった?」田井中が言う。
「そうよね」琴吹。
「私とは初日に交換したわよね」
「あッ、ああ」
 そこで平沢がわあっと反応する。「その、ちょッとリキんで言うの、かッこいいよね!」
「ッッッッッッッ!!!!」
「ムギやめろっ、腹が痛い」

131名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 15:11:50.55
 あれ……。なんか……、受け入れられてる。
 なんだこの、あッたかい空気。
「玄野君は、ライブ見にきてくれてたのよね」
「えっ、そうだったんですか!」
「じゃあ私達のファンなのかしら」
「ええ。そうよね、玄野君」
 クソの詰まった人間、誰にもあると思ッてた汚ねー感情。こいつらからは一切感じなかッた。確かに、緊張感は微塵にも無いかもしんねえ。でも、緩やかだから出せる温度がここにはあッた。
 ずッと、独りだッた。
 俺にも、居場所が見つけられたのか。
『…………け……い…………ー……』
 寒気がした。
「なに今の?」と平沢。
『…………け……い……ー…………もど……り……な』
 グチャグチャグチャと、くろ丸君に表示された画面が汚く切り替わる。
【くろの は、次のミッションで戻ってきてくだちい。1520724502】
 んだこれ……。勝ッ手に送られて、勝ッ手に帰されて。ガンツのクソ野郎。しかもこの数字は何だよ。何ンか減ッてるみてーだけど。
「……!」真鍋がハッとして前に出る。「くろ丸君、カウンターを出して!」
 指示を受けて、くろ丸君はチキチキと処理を始める。やがて、表示される。もう一方の数字の減少と逆に、増加していく数桁の数字列が。
 真鍋はそれを見て、床にぺたりと腰を付けた。
「和ちゃん!」
「どうしたの!」
「これは」真鍋は赤ら様に気落ちした声を出した。「この世界の寿命だったの」
 増加していくカウンター。今この瞬間も。
「寿命……? 増えてるんなら良くないか?」田井中が首を傾げた。
 真鍋はかぶりをふった。「カタストロフィが、来なくなっちゃうじゃない」
 泣き出しそうな調子だッた。いや、現に眼鏡の奥に光るものをみた。こいつ、そんなに戦闘狂だッつーのかよ。
「この部屋に喚ばれてからの一年間、それだけを目標に生きてきた」
 誰に言うとでもなく呟いた。
「最初の数回は、上手く戦えなかった。今まで目にしたことのない光景に、吐いてしまうこともあった」
 平沢達は聞き入っていた。
「でもだんだんコツを掴んできて、チームの指揮も始めて、楽しくなってきた。一度クリアをして、私は迷わず武器を選んだ」
 幸せそうに微笑んだ。

132名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 15:12:45.92
「そんな時、カタストロフィの存在を知って、私自身の生きる使命を見つけた気がした。なのに」
 笑みが止む。
「なのに、なんで……?」完全に涙声になっていた。「何故なの、くろ丸君」
 彼女に答えるように、球体表面に複雑な図形が表示された。涙を拭い、図を読み解く真鍋。
「……、負の、因果律……」
 やがてそれは、彼女の口から説明された。
 彼女達のいるこの世界は、正の因果律に守られていた。簡単に言うと、好事に好事が重なッていく。つまり不幸が起こらないッてことらしい。
 そして今回、異なる二つの世界による、因果律の均衡が行われた。つまりどういうことかッていうと、
「……この世界でカタストロフィが起ころうとしても、正の因果律に打ち負けて、結果大した事象にはならないの」
 ガンツのタブーに抗った平沢を思い出した。
「だから、それならこの世界では一切何も起こらない方がいい。負の因果律を持つ世界に、破滅の因果を収束させる。……それが、この数字の示す、強大な何者かの意思よ」
 真鍋は俺に向いた。
「玄野君は、向こうの世界から送られたディプロマット(外交官)だった。彼を媒体にして、二つの世界は繋がる。彼を通して、因果律は変容する」
 強く、睨んだ。
「何で来たの。玄野君」
 俺はたじろいだ。
「あなたなんて、来なければよかったのに!」

133名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 15:19:36.05

 ズリネタが増えた。
 真鍋の嗚咽。真鍋の涙顔。
 真鍋の罵倒。
 狂ったようにオナニーをした。
 彼女の悲しみを想い、悔しさを想い、今まで見せたことのなかったであろう身勝手な泣き顔を思い返し、何度も何度も射精した。
 ガンツ……。
 ガンツ!
 ありがとう。お前のお陰で、俺の手淫生活はひとつの頂点に達した。好きな女の子に嫌われ、泣かれ、罵られ……、相手に触れられる関係ならば決して得られることのない、まさにこれは距離こそが成し得る快感。
 いい趣味とは言えないだろう。彼女が崩れていく様を見て喜んでいるのだから。だが、これこそが妄想自慰の醍醐味と言える。
 もうすぐこの部屋ともおさらばということで、お構いなしにその辺に射精した。流石に足場がなくなッてくると、今度は少し行儀良く、コップを並べ、その中に真鍋への想いを放出した。
 まだかよ、ミッション。
 ちょッとはしゃぎ過ぎた。そろそろ臭ッてくるかもしんねー。明日、明後日とかならいいけど、一週間でも待たされたらやべえぞこれ。まァそう考えながらも右手は常に高速でモノをシコッてるわけだが。
 その時、ピンポーンと呼鈴が鳴ッた。
 んだよ、NHKか? 観てねーッつーの。新聞か? もうここの時事知ったッてしょうがねーッて。
 全裸で今にも射精しそうな俺は、頭の片隅で真鍋のスーツ姿を想像しつつ(最近はむしろ着衣の方が抜ける)更にもし女のセールスなら盛大にブッかけてやろう、という同時思考をやッてのけつつ、玄関を跨いでドアスコープを覗いた。
 真鍋がいた。
「ちょッ」
 流石に本人を目にして射精はできなかッた。いや、しようと思えばできたし、してしまえという衝動も湧いたが、俺はその一線を超えられなかッた。
「玄野君……話が」明らかに浮かない顔をしていた。
「ちょッ、待ッ!」足などをその辺にぶつけながら、部屋奥へ。まず手を洗い、服を着て、動物の巣のようになッた部屋壁を全力で拭いていく。床も同じく拭き取り、臭いがないのを確認したのち、真鍋を招き入れる。
「お邪魔します」テーブルの前に正座で座ッた。「あら」
 彼女の顔が少し綻んだ。
「これ、用意してくれてたの?」目の前にコップが二つあった。「気を遣わなくていいのに」
 やばい……。

134名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 15:20:21.01
 中身も見ずに飲もうとする。その手から俺は慌ててコップを奪い取る。
 何も考えずに飲み干した。
「え?」
 異常なテイストに目玉が飛び出しそうになッたが、素早くもう一杯も飲み干す。
「な、何……?」真鍋は半笑いで固まッた。
 俺は無言で冷蔵庫に向かい、緑茶のペットボトルを二本取ッてきた。
「いや、あれ、なンか腐ッてたから」
 口内が馬鹿になりそうだッた。
「ありがとう……」素直に受け取り、蓋を開け、飲料を口にした。
 しばらくして、伏し目がちな目が俺に向いた。
「この間は、本当にごめんなさい」
 脈絡も何もなかッた。
「取り乱してしまって、本当に。今は落ち着いてきたわ」
「いや……、いいッて」俺の方が酷いことやッてる。
「ありがとう」真鍋は微かに笑った。「この部屋、いい匂いがするのね」
 咽せた。緑茶が鼻に入った。
「大丈夫!?」身を乗り出す。俺が平気な旨を伝えると、彼女は笑い出した。
 普通に笑ッたとこ、初めて見た……。
「あっははは……」
 どんな想像の彼女よりも、輝く彼女がそこにいた。
「本当はこうして一瞬毎が楽しいはずなのに、見失ってしまうのね。人間って」涙を拭きながら言った。「せっかく平和な世界なんだもの。あの部屋は卒業して、日常を生きるわ」
「そッか」
「玄野君、あなたは頑張ってね」
 真鍋の強い視線を受けた。
 そうだ。向こうに帰ッたらカタストロフィが待ッてる。俺は彼女の途絶えた意思も受けた気がした。……任せろ、お前の分まで戦い抜いてやる。
 その時、悪寒があッた。真鍋も同じものを感じたらしい。ゆっくりと頷く。
 金縛りののち、転送が始まる。
「最後よ。生き抜きましょう」

135名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 15:21:02.59
 大変な事になッた。
 市街地は一瞬で焼け野原と化した。
 十数機の『フルメタル星人』の強襲に、俺や真鍋はなす術もなかッた。
「あァッ!」
 中野が吹き飛ぶ。ビルの壁に叩きつけられる。そのビルも、次の瞬間には吹き飛んでいる。
「退避して! 退避!」真鍋が叫んだ。
 ッて、どこに逃げりゃいいんだよ! 終わりだ、もう!
 敵の頭部バルカンが火を吹いた。
 秋山が被弾、倒れる。「う、嘘だろ!」液体が噴き出る。一撃でスーツが死んだ。
 ヤバい。次は無い。余りの事態に全員が足を止めた。
 そのとき、鋭い斬撃音。頭上の星人は大きく体勢を崩す。二メートルのパワードスーツが、敵を足元から切り崩していた。
 すかさず真鍋がクリア兵器を撃つ。鉄の頭部は一瞬で消失。敵は沈黙する。
「ちょッとヤッてくるっ」黒のアーマー体となッた平沢は駆け出し、暴風の如く暴れまわッた。
 切り裂かれる金属音。連なる銃声。街に現れた鉄の巨人の群れを、小型のキングゲイナーが次々打ち倒していく。
 やがてそれも限界を迎える。
 星人残り一体を背に、通常スーツとなッた平沢が舞い戻ッてきた。「てへっ」
「いいえ、よくやったわ唯!」真鍋が拳を握った。
「でもどうすんだ!」田井中が言う。「普通に倒せるのかよ!」
 真鍋は手に持った銃を見つめる。「コレが有効なことはわかったわ。ただし……」ビルの向こうの星人を仰ぐ。「ある程度の接近が必要になる」
 巨大なブースター音が鳴ッた。星人が俺達を見つけたらしい。ビルの間隙を抜け、高速で迫る。猶予はない。真鍋は迅速に指示を下す。攻撃を受けた秋山と中野は離脱、田井中と琴吹は後方支援。
「……私が、前に出るわ」銃を構える。「あともう一人、援護が欲しい」
 真鍋はそう言ッて、俺と平沢の顔を見比べた。一瞬黙考したのち、
「玄野君」俺に目を合わせた。「あなたのこれからの使命に賭けさせて」
「……」マジかよ。
「はいっ」平沢から銃が渡される。「頑張ってね、玄野くん」
 はは……。クソ……。こうまでされたら、やるしかねえ。絶ッてえ負けらんねー。
「来るわよ!」
 轟音が一帯を包んだ。鉄の歩兵が猛襲する。
 俺と真鍋は頷き合い、それを迎え討つ。

136名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 15:53:48.58
【おつかれちまでした】
 黒球の表示を見た瞬間、ここが元の世界なんだとわかッた。
 ふざけんな……。怒りが込み上げてきた。最後のフルメタル星人を倒して真鍋と目を合わせた途端、転送が開始された。せめてもうワンクッションあると思っていたのに、俺はそのままこッちの世界に帰還となッた。
 殺風景な部屋。俺以外誰もいなかった。心に穴が空いた感覚だッた。
 球の表面に映り込む顔は、微妙に面長でリアルなものとなッていた。本当に、戻ってきちまッたんだ。
 部屋を出て、夜道を歩いた。すれ違う人の顔に吐き気を覚える。皺、毛穴、グロテスクにも程がある。アパートに帰ッてテレビをつけると、余りに低俗なバラエティ番組にまた吐き気を催す。
 んだよ、この世界。居たくねー……ちくしょう。あいつらンとこに、帰りてえ。
 つーか、携帯の日付見たら二年が経ってやがる。どういうこッた、ガンツ。ざけんな。受験とかどーなッた。まァだいたい予想つくし、もうどうでもいいけど。
『計、かけちゃ駄目よ、こんな時間に』
 電話の母親の声にビクついた。
『今年は大学受かってよね』
 ほらな。俺の預かり知らぬ間に浪人の身だ。色々終わッた感じだけど、仮にどんな順風満帆だろうとこの空虚は埋められやしない。
 はは……、あンな世界、知らなきゃ良かッたんだよ。空しいだけじゃねーか。
 恋なんて、しなきゃ良かッたんだよ。

137名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 15:56:10.92
 アニメや漫画の中に、求めているものがある気がした。俺は適当なバイトをしつつ、ミッションも程々にこなしながら、二次元メディアを漁る日々を過ごした。
 二浪が確定した頃には、ちょッとした博識者になッていた。特に日常を基調とした作品は、俺が経験したあの世界に似ていた。心が癒されることもあッた。
「玄野さん、マジすげえッす」新人のヤンキーが声を上げる。
【くろの 105点。100点めにゅ〜から選んでくだちい】
 武器を選択した。出てきた大型の銃をヤンキーに渡す。
「えッ、いんすか?」
「いいよ」
 カタストロフィに向けて武器集めや戦力強化に尽力した時期もあッた。真鍋との約束だッたし。
 だがそれも無駄骨に終わッていた。
 ある日を境に、ガンツに表示されるカウンターの数列は増加を始めた。正の因果律だ。この世界も、破滅を回避してしまッた。カタストロフィは、ここでもない別の世界に、恐らく極大に膨れ上がッた負債の形でやッてくるのだろう。もう関係のない話だが。
 それでも俺は、何度も何度もクリアをした。もうそれが癖になッてたし、何より記憶を失うのが怖かッた。忘れたら楽になれるとわかッていても、消せなかッた。
 二十三になった頃、俺はペンを執った。紙に向かって、あの日々の消えないイメージをえがいてみた。
「……」なンか違ッた。

138名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 18:43:22.60
「えッ、玄野さん漫画描いてるんすか?」ガンツ部屋でヤンキーが覗き込む。
「ああ、悪りーかよ。ちょッとでも上達してーんだ」ミッションの待機時間すら無駄にしたくなかッた。
「い、いや、十分上手いと思いますけど」慌てて取り繕うヤンキー。「あ。ッてか漫画なら、あそこの臼井さんが経験あるはずッすよ」
 指差した先には中年がいた。手招きをされ、寄って来る。
「四コマの技術なら教えられるけど。描いてたし」
 なんでこんなとこに漫画家いんだよと思ッたが、正直ありがたかった。煮詰まってたんだ。
「教えて下さい。描きたいものがあるんです」
 それからは苦闘の日々だった。何か一つを形にすることがこうまで困難を極めるとは思っていなかッた。それでも、思い描いた構図が描けた時、現実にない空気感を演出できた時、堪らない幸福に満たされた。
 創作の楽しさを知ッた。コマの中に、あの頃感じた世界があッた。失われた世界を取り戻す為に、ただ描いた。
 また会う為に、描いた。

139名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 18:45:26.30

 金の装飾の入った赤絨毯を踏みしめ、扉を開けた。豪勢なシャンデリアの下で、ドレスやタキシードの男女が杯を交わし合う。
 出版各社合同の新年パーティー。顔を出すのは初めてだッたが、気を遣う気質でも立場でもない。上の人間に挨拶だけを済ませて帰ろう。仕事が待っている。
 ウェイターからグラスを受け取り、他社の役員が談笑する卓へ。激励の言葉を受ける。頭を下げて俺は去る。
 皿に置かれたウィスキーボンボンを口に放り、また次の卓へ、と思った時、声をかけられる。
「玄野」
 長髪、長身の男。和泉だッた。「久しぶりだな」
 彼は今、やり手の編集者だ。名前だけは耳にしていた。
「久しぶり。また仲良くしようぜ」グラスを当てる。「他社に知り合いがいると、ヤバい時に助かる」
「言いやがる」和泉は苦笑した。
 その時、会場入口の扉が開く。現れた小柄な人影に、参加客が一斉に群がッた。
「彼女とも、久しぶりだろう」和泉はそう言って手招きをした。
 豪華なドレスに身を包んだ美女がやってきた。記者達のフラッシュが瞬く。日常四コマとSFじゃ土俵が違う気もするが、二大ヒット漫画原作者の、これが初の邂逅となる。
「いつも楽しく拝見させて頂いています」
「僕もです」
 短いやりとりの後、俺と彼女は握手を交わした。周囲で激しくシャッターが切られる。
「負けませんよ」彼女は言ッた。
「漫画は勝ち負けではないと思いますが」
 強く笑んだ。
「俺の仲間達が、負けるわけがありませんよ」


おしまい。スレ汚し失礼しました。

140名無し物書き@推敲中?2012/03/20(火) 19:18:47.49
いろいろあって最後GANTZ世界に戻ってきて
玄野は加藤との友情に厚いし
和泉と多恵ちゃんも幸せそうでハッピーエンドな結末で
すごく良かったです
GJ!

141名無し物書き@推敲中?2012/04/03(火) 19:34:43.36
加藤に対して冷たいようでいて
実はそうでない玄野はイイ

142名無し物書き@推敲中?2012/04/24(火) 14:55:46.56
原作ってエロいんだ。
テレビで見た映画には欠片もなかったが、機会あったら読んでみよう。

143名無し物書き@推敲中?2012/04/24(火) 17:19:17.68
>>142
女の子の乳が奇乳の域に達してるほどデカくて
陰毛までばっちしのヌードシーン・セックルシーンもあるし
ホモまで出てくるお…

144名無し物書き@推敲中?2012/05/21(月) 15:15:33.24
まじかお

145名無し物書き@推敲中?2012/06/20(水) 19:50:45.13
エロくてもエロくなくても投下待ち

146名無し物書き@推敲中?2012/07/25(水) 20:44:34.37
保守

147名無し物書き@推敲中?2012/08/27(月) 06:18:38.29
147

148名無し物書き@推敲中?2012/08/31(金) 21:45:33.13
148

149名無し物書き@推敲中?2012/11/18(日) 06:27:29.30
149

150名無し物書き@推敲中?2013/02/27(水) 17:02:31.56
150

151名無し物書き@推敲中?2013/09/04(水) 16:08:24.72
151

152名無し物書き@推敲中?2015/01/22(木) 18:59:14.33
映画GANTZで一躍有名になった夏菜のセミヌードおっぱい画像!
http://erogazou.pw/matome4/img.php?id=20150122

153名無し物書き@推敲中?2018/02/08(木) 17:56:34.50
僕の知り合いの知り合いができたネットで稼げる情報とか
念のためにのせておきます
グーグル検索⇒『金持ちになりたい 鎌野介メソッド』

TLDFT

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