物語製造機「木下学」隔離室 [無断転載禁止]©2ch.net
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二回だけ女性とお付き合いしたことがありますが、僕が犬のように服従しようとするから一か月ももたずにフラれました。
今は友達も彼女もいません。ずっと一人なので一応モテない男性だからスレを立ててもいいと思って建てました。
恋愛をしたことがない人間の恋愛小説として読んでください こどもの名前
「野菜ジュースの国産無添加って言葉がいつも気になってね。
無添加にこだわるのは分かるよ。添加物は体に悪いそうだから。
でも日本の土だと美味しい野菜ができるなんて話は聞いたことないし。
別にインド産やフィリピン産でもいいじゃないかって。インド産無添加野菜ジュースなんてあったら迷いながらも
冒険心で買うと思う。でも。遠い国から野菜を輸入する時はやっぱり添加物が必要になるのかな?」
恵子は進の話をぼんやりと聞き流しながらタスポを吸っていた。
二人はビジネスホテルのツインルームにいた。
ベッドの上の二人はお互いのことを見ていない。
二人は天井を見つめている。
大抵は二人の家のどちらかで寝る。
長い付き合いなのでお互いの部屋のことはほとんど把握している。
忙しく働く日々の中の間にある、ほんのひとときの休息。互いの休息が重なれば、恵子と進は互いの体を重ねていた。
繰り返される毎日。
同じ一日など決してないはずなのに、同じこと毎日繰り返しているような気がする。
二人はいつもと違うなにかを求めていた。
二人のうちどちらかが、そういうなにかを求める時、ネットで調べたビジネスホテルに泊まるようにしている。
ラブホテルを選ばない理由は進が嫌がるからだ。彼は交わりを終えた後にラブホテル独特の空間に
居心地の悪さを感じてしまう。普通の会話をするには不似合いな場所じゃないかと恵子に言った。
ラブホテルというものもさまざまで、色々と工夫されている。そのさまざまな工夫の中から彼が好むラブホテルを
選択すればいいが、一つ探しあててそこに通い続ければ、やはりそこもいずれ、繰り返しの中の一つになってしまう。
好みのラブホテルを探し続けるのは面倒なので、適当に選んだビジネスホテルに宿泊しようと二人で話し合って決めた いま二人はツインルームにいる。この部屋は二つのベッドと一体型の風呂トイレしかない。
部屋の空間のほとんどがベッドで、どうにかそれらの中を移動できる程度の広さだった。
シングルだとベッドが小さすぎるのでツインを選んでいる。彼らは裕福でもなければ貧乏でもない。
たまの贅沢としてもう少し上等な部屋を選ぶこともできたが、その空間もやはり進は嫌がるかもしれない。
そうして都会のビジネスホテルの料金というものは彼らにとっては決して安いと言いきれる料金ではなかった。
彼女は電子タバコの味があまり好きではなかった。普通のタバコと味が違うのかと聞かれるたびに、
安タバコのほうがまだマシ。そう答えていた。会社や人との付き合いの中でタバコの煙や臭いを嫌う人がいる。
喫煙禁止のマークがいたるところにある。味に不満はあっても、タバコによって相手への不快感を与えたくないので
電子タバコを吸っている。そうしてなぜだか分からないが以前のように吸えずに焦ることがなくなった。
二人は男女の長い付き合いの中で当然陥る倦怠感の中にいた。進は結婚したがっているが
恵子はそれをやんわりと拒んでいた。それは彼女の家庭があまりうまくいってなかったこと。
それに彼女はこどもをあまり好きではなかった。 鏡を見ながら髪を束ねていると進が入ってきた。それから恵子をしげしげと見つめた
。彼女は彼に目を向けそれから股間の方に視線を移した。僅かにふくらんでいた。
彼は髪を束ねた女性が好きだった。うなじを見ていると女性特有のなにかを感じる。
そのことは彼女に言ったことがある。彼は彼女に髪を束ねてほしかった。
けれど彼女は常にそういう視線で見られるのは嫌だったので普段、束ねることはなかった。
進は恵子から視線を外し彼女の背中を通って浴槽の前に立った。それから蛇口をひねりお湯をためはじめた。
お湯がたまるのを見ながら進は言った。
「こんど旅行でも行かない?」
「旅行ねえ。行きたいけど、仕事が忙しいからあんまり遠くには行けないし。」
進はたまるお湯を見ながら色々考えた。
恵子も髪を束ねながら色々考えた。 浴槽にお湯がたまり進は湯船につかった。髪を束ねた恵子は彼に背を向ける格好でつかった。
進は恵子の体を包み込むように軽く抱きしめた。
「好きだよ。」
「私も。」
抱きしめているのにはなれているような、そんな気がした。
進は乳房のふちをゆっくりとなぞった。
彼は胸のことはそれほど気にしないタイプだった。
恵子の裸を見るまえは少し大きいくらいにしか思っていなかったが、
じっさいに裸になった姿を見ると想像していたより大きかった。
なぞりながら進は言った。
「こんなに大きかったら肩がこりやすそう。」
「どうかしら。自分ではこりやすいとは思わないけど」
進は指でなぞることをやめてお腹を両手で包んだ。 恵子はなにか疲れたような、そんな顔をして言った。
「十代のころはこの胸が嫌いだった。男の人と会うと顔を見たあと、
胸に目をうつす人が多かったから。今は気にならなくなったけど。」
恵子の言葉について進はしばらく考えた。考えた後に言った。
「でも僕は恵子の胸はいいと思う。赤ちゃんが生まれたらきっと大きくてよかったと思うようになるよ。
あかちゃんって視力が弱いらしいから、大きいとそれだけおっぱいを見つけやすいだろうし。」
それから胸に左手の人差し指と中指をあてた。
「あかちゃんが母乳を飲むとき、こんな風に手で押さえるでしょ?大きいぶんだけ手でおさえやすいと思う。
恵子はいいお母さんになると思う。背が高いから、高いぶんだけこどものことを見守ってあげられる。
でも背の低い人も、低いぶんだけこどもと同じ目線になるから、こどものことをよく見守ってあげられる。
胸がちいさい人もきっと僕の知らないお母さんとしてのよさがあると思う。」
背中をあてる硬い感触がなくなっていた。道子は彼の話について考えた。 「そういうこと言われても私はうれしくない。まるで女の人がこどもを作るためだけに人間じゃない。」
結婚したい気持ち。結婚したくない気持ち。結婚を夢見る気持ち。結婚を恐れる気持ち。
彼女は母親となった自分の姿が想像できなかった。となりに彼がいてこどもたちが家を走り回っている姿も想像できなかった。
そして、なぜだかその生活が悪い方向へ向かっていく煙のような不安はあった。
けれども自分は年をとっていく。年をとった後で後悔しても時間は巻きもどらない。
色々な思いが渦巻く中でため息を一つついた。
それから言葉のひとつひとつをしぼりだすようにして言った。
「もしも、もしもだけど、わたしたちのこどもが生まれたら、どんな名前をつける?」 彼岸花
闇。
私は青いスポットライトを照らす。
少女が立っていた。
青いスポットライトに照らされた真っ青な少女。
真っ青な顔した少女が悲痛な笑顔を浮かべて言葉を紡ぐ。
「私の気持ちはあなたには分からない。あなたなんかには分かってもらいたくない。
お願いだから私の気持ちがわかるなんて軽々しく言わないで。
わたしから笑顔をうばったあなたは彼岸花よ。枯れて踏まれて土にかえるまで、
ずっとあなたは彼岸花であり続けるのよ。さようなら彼岸花さん。」
真っ青な少女は去っていった。
青いスポットライトはなにも照らさない。
私はスイッチを消した。
闇。 良心という幻想を遮断したという仮定で描く恋愛小説
画家は日々、絵を描きそれを売っていた。そこで得た金で肉や植物を食べ空腹を満たした。
体をまとった布に穴があけば、新しい布をまとった。
画家の描く絵は絵ではなかった。画家は醜かった。そして画家は美しさと向き合うことができなかった。
美しさを描くと醜くなる。その醜さは画家の醜さ。醜い自分の自画像。自分の醜さと向き合うことができなかった。
画家は模倣を繰り返していた。模倣するのは目に映る真実を、ありのままに描いた絵ではない。
存在するものを真実のように描き、真実から遠く離れた虚構の産物。虚構を観察し、学び、そこから画家は別の虚構を描く。
画家は一つの場所にはとどまらず、歩き続ける。どこかで体を休め、
虚構を作り、それを売り、他人の虚構を学び、また歩き続ける。
画家は罪を犯した。その罪を裁かれることを恐れている。画家は逃げ続けていた。
醜さと罪と罪悪と裁かれる恐怖が混ざり合う。画家は形容のできない混ざり合った液体で満たされていた。 冬。葉が落ち枝を無数に伸ばす木。生命活動の停止。葉のない木だけが画家に美しさをあたえてくれた。
画家は冬をもとめて歩き続けた。けれども葉の無い木を描くことはなかった。そこにあるのは停止でもなく死でもない。
無数の枝。ツボミ。ツボミが葉となる。葉の変化。枝から落ちる。葉のない木は過程の中の断片。
画家は冬を求めて歩き続けた。そしてある場所にたどりついた。
サクラ。冬の中にサクラが花を咲かせ、花びらが散っていた。幹と枝には黒いクダが絡みついていた。
そして絡みつく無数のクダは一本のクダになりサクラの横にある黒い箱につながっていた。
黒い箱の横に幼い少女がいた。酒瓶を両手に抱えていた。美しくもなければ醜くもない。
画家は少女に近づいて話しかけた。少女は腹がへったというので画家は干し肉を与えた。
そして二人は互いに自分のことを語りはじめた。 黒い箱の上部に穴があいており、そこに酒瓶に入れた油をそそげばサクラは冬でも花を咲かす。
春が来るまでそれを続けることが彼らの仕事だった。
最初に祖父が去った。次に父が去った。最後に母が去った。少女は一人になった。
画家はここでサクラを描くことにした。
サクラから少し離れた場所に丸太小屋があった。小屋の中には動物を捕まえるための器具があった。
本棚にいくつかの本がならんでいた。器具の使い方が書かれた本。捉えた動物の調理方法。
食料となる植物について書かれた本。
画家はここで生活するために丸太小屋の中で学んだ。森の中で動物を捉えた。植物を採取した。
丸太小屋でそれらを調理した。
少女と画家の共同生活が始まった。
画家は日々の労働の合間にサクラの絵を描いていた。
その横で少女は座り、少女が感じる疑問を語った。
「いつも灰色の雲。灰色の雲の上に青い空。青い空の上はまっくらな闇の世界。闇の世界の中にいるのに、
どうして空は青いの?どうして灰色の雲は去らないの?」
画家はなにも答えなかった。
二人は笑わない。泣かない。
少女もなにかしてみようと思った。
画家が絵を描くように自分もなにかしたいと。
少女がおどけてみせた。けれども画家は笑わない。
画家は絵を描き続け、少女はおどけ続けた。 それからずいぶん長い時間が経った。
少女は女性になり道化となった。
ある日、道化のふるまいに画家は笑った。笑った画家を見て道化も笑った。
そして画家はサクラを眺めた。
花びらは無秩序な色彩をおび、枝は直線であったり曲線であったり円を描いたりしていた。
これを描くことは不可能だった。
画家は道化を描くことにした。
できあがった絵を道化に見せた。
道化は涙をながした。その涙を見て画家も涙をながした。
悲しみの涙ではなく喜びの涙。
涙をながす道化と絵が描けない画家。
ひとりでは生きていけない。ふたりでないと生きていけない。
どちらかが上というわけでもなく下というわけでもない。
従う、従わせるでもない。
ふたりの間あるものは依存でもない。
道化は涙を流しなら画家の前で踊り続け、画家は笑いながら少女を描く。
春をもとめて。
春の中で画家は葉が多い茂った絵を描き、道化はこどもたちを笑わせる。
春をもとめてふたりは歩いていく。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています