『螺族』

洞穴には螺人がざっと三十人はいた
みな岩に生えた苔を退化した顎を巧みに動かし刮いでいる
こちらから呼びかけても聴こえないのか見えていないのか
静か
にぞりぞりとしている
打ち寄せる波は彼らを優しく撫でる

帰りしな
橋の下に渦を見た