ゆうきゆうが精神疾患のある十代女性と肉体関係 13
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◆ 名前:ゆうきゆう
◆ 本名:安田雄一郎
◆ 生年月日:1976年2月(42歳)
◆ 出身地:神奈川県横浜市
◆ 学歴:東京大学医学部卒業
◆ 職業:精神科医、漫画原作者
◆ 高校生の息子がいる 二人
◆ 嫁とは3年前から別居中 (湯シャンして臭くなったから)
◆ 元予備校講師の安田亨から英才教育を受ける
◆ 祖父は物理学者らしい (東大理三1994 に登場)
◆ ”静心科医” を名乗り、射精バイトに勤しむ おかげで精神科医やカウンセラーの正体っていうのがよく分かった。 だれかimgurの画像貼れよ
誰も保存してないのか? メンタルクリニック紹介
@Mental1Stiphaja
こんにちは☆
ココロの悩みを相談できるメンタルクリニック(心療内科)を紹介していきます。こんなときはメンタルクリニック! 省エネルギーという言葉を聞いたことが
あるでしょう。
部屋の電気をこまめに消したり、冷房や暖房の温度設定
を控え目にしたり、エレベーターや自動車をやめて自分
の足で歩くように心がけたりすることです。今は、身近
な省エネルギーから広がって、社会全体で取り組んでい
こうという運動になっています。エネルギーを生みだす
ためには、もとになる資源が必要です。ちょうど私たち
人間や動物が、歩いたり手を動かしたり喋ったりするた
めに、食べ物をとるのと同じです。ところが、地球の資
源には限りがありますから、ひとりひとりが節約をして
いかなくてはなりません。また、資源をエネルギーに変
換するためには、要らないものを空気中に排出しなくて
はなりません。二酸化炭素などの排出物は、大気汚染を
引き起こし、やがては地球全体の気温を徐々にあげてし
まいます。これが地球温暖化と呼ばれるもので、異常気 象や農作物への影響、海水面の上昇、紫外線の問題など
、さまざまな問題の原因となっています。人間だけでな
く、すべての生き物の住みやすい環境を守るためにも、
エネルギーの節約は必要なのです。では、使ってもなく
なる心配のないエネルギーはないのでしょうか。それは
、身の回りに見つけることができます。冬の寒い日の猫
は日の当たる明るい窓際で、いちばん温かそうな床の上
に、幸せそうにまるくなってねむっています。猫は日向
ぼっこの名人です。このとき、猫の体の毛のあいだにさ
しこんだ太陽は、猫の毛の奥深くに入りこみ、熱に変化
してほとんどが猫の体に吸収されています。とても効率
のいい、太陽エネルギー活用の仕組みになっているので
す。忙しいときに、よく猫の手も借りたいと言いますが
、寒いときには、猫の毛も借りたいと言えるかもしれま
せん。この猫の日向ぼっこの原理を、私たちのくらしに 活用したもの∵が、太陽熱温水器やソーラーハウスとい
う住宅です。太陽のエネルギーを建物の中にとらえて、
それでお風呂の温水をつくったり、温水で建物全体を暖
房したりしています。更に、ソーラーハウスが猫の日向
ぼっこより一歩進んでいるところは、太陽のエネルギー
を電気エネルギーに変えられることです。天気のいいと
きに発電した電気で、家の中の電化製品が使えます。あ
まった電気は、電力会社が買い取ってほかの家で使われ
ます。科学の力を使っていくと、日向ぼっこのおすそ分
けができるのです。省エネルギーという節約の考え方か
ら、エネルギーの変換という新しい考え方に目を向ける
と、さまざまな可能性が見えてきます。太陽のような自
然のエネルギーから、より効率のよいエネルギーがもら
えるように科学の研究は続いています。日向ぼっこをし
ている猫も言っています。「ソーラーエネルギーか。 ソーラー、エエネエ。」カイコは、じょうぶな絹糸をとる
ために、昔から人間が飼育してきた昆虫です。中国では
、四千年以上も前からカイコを育て、美しい絹織物が作
られていました。やがて中国で作られた絹織物は、イン
ド、ペルシア、トルコ、ローマなどに運ばれるようにな
りました。そのころの商人が通った道は、シルクロード
とよばれています。ローマでは、絹はたいへん高価なも
のであり、同じ重さの金と交換されるほどでした。
カイコの飼育は、世界各国に広まっていきました。日本
でも大正時代の終わりから昭和の初めにかけて、養蚕が
さかんになりました。当時、カイコの品種改良が進み、
それまでの二倍から三倍もの長さの糸が取れるようにな
ったのです。また、自然の状態では、カイコが生まれて
くるのは春と夏の年二回ですが、季節を問わず何度でも
カイコを飼育することができるようになりました。 そのころ、生糸や絹織物の輸出は、日本の輸出総額の半分近
くを占めていました。生まれてきたカイコの成虫、
カイコガは、羽が小さいわりに腹が大きくて、筋肉も弱
いため飛ぶことができません。人間に飼われているカイ
コガは、野外を飛びまわって仲間を見つける必要もなく
、幼虫の食べ物であるクワの木をさがしてたまごを生む
必要もありません。メスは、クワの木でなくても、手近
なものに何でもたまごを産みつけます。まるで、人間が
ちゃんと幼虫の世話をしてくれることを知っているよう
です。飛ぶ必要がなくなったカイコガは、飛ぶ能力を失
ってしまったのです。生まれた幼虫は、クワの葉を
食べてどんどん大きくなります。カイコを育てているカ
イコ棚では、幼虫がバリバリとクワの葉を食べる音が、
一日中雨の音のように聞こえます。これほど食欲旺盛な
幼虫ですが、歩く力がたいへん弱く、三十センチでもク
ワの葉から離れたところに置くと、自分でそこまでた どりつくことができません。歩いて「どこカ、イコう」
とはしないのです。また、ものにつかまる力も弱い
ので、野外のクワの木にカイコを放しても、生きていく
ことができません。人間に頼ってクワをクワせてもらっ
ているカイコは、農家の人にとっては「カイコ」という
より「可愛い子」なのかもしれません。長い間、人
に飼われてきたカイコは、人間の世話なしでは生きられ
ないようになりました。人間にとって、ほとんど動かな
いカイコは、飼育するのにたいへん都合がよい昆虫です
。大きく育った幼虫は、さなぎになる準備を始めま
す。人間がボール紙などで作った枠の中に、二日ぐらい
かかって厚くてじょうぶな繭を作ります。カイコのほか
にも、繭を作る昆虫はたくさんいますが、糸の量と強さ
でカイコにかなうものはいません。一個の繭からは 、約千五百メートルの絹糸が取れます。着物を一着作る
には、約二千六百個の繭が必要で、それだけの繭を作る
ために必要なクワの葉は百キログラムです。「ところ
で、カイコさん。クワの葉以外は食べないんですか。」
「クワンヨ。」(※最近の品種改良では、クワの葉
以外のものを食べるカイコも作られています)梅雨の
季節をいろどってくれる花に、アジサイがあります。こ
の花は、いろいろな色に変化することで有名で、そのせ
いか、花言葉には「移り気な心」などというものもあり
ます。そのほかの花言葉、「強い愛情」や「家族の結び
つき」は、きっと、小さい花がたくさんあつまって咲い
ているところからきたのでしょう。アジサイの花の
色は、咲き始めの緑がかった白っぽい青色から、薄いピ
ンク、紫、そしてしだいに濃い紫や藍色に変わっていき
ます。 色がついているこれらの部分は、じつは花びらで
はありません。葉が変化したもので、「がく」と呼ばれ
ることもあります。本当の花は、このがくの真ん中に、
ちょこんと小さく丸くついています。このように花以外
の部分が発達して花のようになっている花を装飾花と言
います。南国の雰囲気を持つブーゲンビリアや、クリス
マスに飾られるポインセチアなども装飾花です。で
は、アジサイの花は、どうして色が変わるのでしょうか
。どんな色のアジサイも、その色の素になっている
のは、アントシアニンという色素です。この色素は、条
件によって、赤い色を出したり、青い色を出したりする
ことができます。ここで、色の鍵を握っているのが、ア
ジサイが土の中から吸い上げる、アルミニウムという金
属です。一円玉は、このアルミニウムで作られています
。土の中には、アルミニウムをはじめ、いろいろな金属
が目に見えない形で溶けています。これを植物の根が吸
い上げるのです。アルミニウムが多いと、アジサイ
は青くなります。 逆に、アルミニウムが少ないと赤くな
ります。その中間は紫です。このアルミニウムは、土の
性質が酸性だと、土の中にイオンとして溶け出すので、
アジサイが吸い上げやすくなります。逆に、土の性質が
アルカリ性だと、アルミニウムはアルカリと結びついて
塩になってしまうので、アジサイが吸い上げにくくなり
ます。こうして、土の∵性質によって、アジサイの色は
変わるのです。ですから、おとなりのアジサイの色が気
に入って分けてもらい、わが家に植えても、同じ色にな
るとは限りません。ところで、日本のアジサイを世
界に紹介したのは、江戸時代の終わりごろに日本にやっ
てきたドイツ人の医者、シーボルトでした。この時代の
日本は、鎖国の状態で、人も物も自由に外国と行き来す
ることはできませんでした。しばらくのあいだ日本に暮
らした彼は、植物にもたいへん興味を持ち、日本のいろ
いろな植物を持ち帰りました。シーボルトは、その中で
もひときわ大きくてきれいなアジサイに、「オタクサ」
という名前をつけました。これは、シーボルトが日本に
いるときに愛した女性、「お滝さん」の名前です。ドイ
ツに戻ったシーボルトは、庭にそのオタクサを植えて、
「オー、タクサんのオタクサが咲いた。」と見とれてい
たかもしれません。アジサイと同じように、人間も
、好きな人の前で赤くなったり、宿題を忘れて青くなっ たりしますが、これはアルミニウムとは関係ありません
。コーヒーは、世界で最も親しまれている飲み物のひと
つです。世界中で、毎日二十億杯分ものコーヒーが消費
されています。世界中で売り買いされるコーヒーの量は
膨大で、その売上額は年間八兆円にも上ります。こ
のように世界中で親しまれているコーヒーですが、その
歴史がアフリカに始まったことはあまり知られていませ
ん。コーヒーの木は、もともとエチオピアの高原に自生
していました。コーヒーは、十五世紀までもっぱらアラ
ビア半島でのみ栽培され、国外に持ち出すことはできま
せんでした。十七世紀に、オランダ人がコーヒーの
苗木をオランダ本国へ持ち込みました。そして十八世紀
に、コーヒーの木は、フランスの国王ルイ十四世への贈
り物として、フランスの植物園に送られました。 当時、
コーヒーの木は大変な貴重品でした。やがて、フラ
ンスはコーヒーの栽培と輸出に乗り出そうとしますが、
計画はことごとく失敗します。あるとき、一人の海
軍士官が、ひそかにコーヒーの苗木を持ち出し、カリブ
海にある自分の農園で栽培しようと考えました。当時の
船は帆船で、長い船旅の間に飲む水もなくなるほどでし
たが、彼は自分の飲み水を苗木に分け与えて、ようやく
農園にたどりつきました。海を渡ったこの苗木は、
その後、南北アメリカ諸国にコーヒーの栽培を広めるも
ととなりました。今では、八十もの国や地域で、推定百
五十億本のコーヒーの木が栽培されています。コー
ヒーの成分であるカフェインは、神経を興奮させる働き
があります。人間の体にはもともとドーパミンという物
質があり、これは快感を感じるとたくさん分泌されます
。このドーパミンの働きを抑制する物質がアデノシンで
、人間は普段興奮と安静のバランスを∵とって暮らして
います。ところが、カフェインはアデノシンと形が似て
いるので、アデノシンのかわりに先にドーパミンに結び ついてしまい、そのためにコーヒーを飲むとドーパミン
の興奮が続くようになります。子供のうち、コーヒーは
控えた方がよいと言われるのはこのためです。さて
、コーヒー豆には、いろいろな種類があります。有名な
ところでは、ブルーマウンテン、モカ、コナ、キリマン
ジャロなどです。みなさんも大きくなったら、いろいろ
なコーヒーの味を飲み比べてみてはどんなモンジャロ。
クマムシの体長は、最大でも一ミリメートルぐらいで
す。八本の脚でゆっくり歩く姿がクマに似ているので、
クマムシと名づけられました。熱帯地方から北極や南極
まで、深海の底から高山の上まで、地球上のほぼあらゆ
るところに生息しています。このクマムシは小さな
スーパーマンです。といっても、空を飛んだり列車を止 めたりするわけではありません。実は、この生き物はほ
とんど不死身なのです。クマムシの体の大部分は水
分ですが、周囲が乾燥してくると、水分を極度に減らし
、樽のような形になって眠りに入ります。この樽の
状態になったクマムシは、宇宙の真空の中でも生き続け
ます。また、マイナス二百七十二度という絶対零度の世
界でも、摂氏百五十度という熱湯より熱い温度の中でも
生きています。更に、七万五千気圧という高圧を受けて
も、人間の致死量の千倍のX線を浴びても、樽になった
まま生きているのです。百二十年間眠っていたクマムシ
に水を与えたら動き出したという報告もあります。 クマムシはどこにでも棲んでいますが、採集するには、
コケの中を探すのが簡単です。建物の陰などに生えてい
るコケを取ってきて、ストッキングなど細かい網の上に
乗せます。コケに水を注ぐと、網の下に落ちてくる水と
一緒にクマムシも落ちてきます。それを顕微鏡で丹念に
探すのです。樽状態になったクマムシを参考にして
、人間の臓器を長期間保存する研究も行われています。
将来、宇宙飛行で何年も先の星に行くときには、人間も
樽になって行くようになるかもしれません。「クマム
シさん、こんなに過酷な実験をされて、よク、マー、ム
シしていられましたね。もっと厳しい実験をされたらど
うしますか。」「タルになったる。」最近では、 ペットボトル入りのお茶や缶入りのお茶が、たくさん売
られるようになってきました。緑茶、ウーロン茶、紅茶
、その他さまざまな種類のお茶がブレンドされて、いろ
いろな名前で売られています。では、これらのお茶は、
みんな違う種類の木からとれるのでしょうか。じつ
は、緑茶もウーロン茶も紅茶も、同じお茶の木の葉が原
料です。それなのに、なぜ色も味も違うかというと、作
り方が違うからです。お茶を作るには、まず、お茶
の木から葉を摘み取ります。このあと、放っておくと、
お茶の葉はすぐに発酵を始めます。お茶の葉の中にある
酸化酵素が酸素を取り込んで、お茶の葉の成分を変化さ
せてしまうのです。特にお茶の葉の中にあるカテキンや
ビタミンCは、酸素と結びつきやすく、たくさんの酸素
と結びつくほど、お茶の色も緑色から茶色そして赤色へ
と変化していきます。ですから、緑茶とウーロン茶と紅 茶の色の違いは、酸化の色の違いなのです。緑茶は
、葉を摘み取るとすぐに熱い蒸気に当てたり釜で炒った
りして、発酵させないようにします。熱い温度にするこ
とで、お茶の葉の中の酵素がこわれて発酵できなくなる
のです。このお茶の葉をよくもんで形を整え、乾燥させ
たものが緑茶です。発酵しないので緑の色が残り、カテ
キンやビタミンCもたくさん残っています。これに
対して、ウーロン茶や紅茶は、逆に発酵を助けてやるた
めに摘み取りの後に別の処理をします。お茶の葉を日光
に当てたり、温風に当てたりして葉をしおれさせる作業
です。ウーロン茶は、半発酵の状態のときに釜で炒って
発酵を止めます。そして乾燥をさせ、再び加熱して香ば
しさを出します。紅茶は完全発酵になるまで発酵させ、
乾燥させて完成させます。∵ウーロン茶と紅茶は、
発酵させた分だけ緑茶に比べてカテキンやビタミンCが
少なくなりますが、その代わりに、大変よい香りを持っ
ています。緑茶に多く含まれているカテキンは、緑
茶の渋味と色を作る大切な成分ですが、最近、このカテ
キンの殺菌作用が注目されています。カテキンには、イ
ンフルエンザのウィルスや食中毒の菌の働きを抑える力 があります。ですから、カゼのはやる季節には、お茶で
うがいをするといいそうです。また、カテキンには
、癌を予防したり、高血圧を下げたり、虫歯になりにく
くしたり、といった健康にいい効果もあると言われてい
ます。私たち日本人は、昔から食事のときに緑茶を飲ん
できましたが、これは健康のためにはとてもいいことだ
ったのです。では、カテキンの多い緑茶と、香りの
よいウーロン茶や紅茶を混ぜて飲んだらどうなるでしょ
う。答えは、ゴチャゴ茶です。そりゃ、無茶苦茶や。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 省エネルギーという言葉を聞いたことが
あるでしょう。
部屋の電気をこまめに消したり、冷房や暖房の温度設定
を控え目にしたり、エレベーターや自動車をやめて自分
の足で歩くように心がけたりすることです。今は、身近
な省エネルギーから広がって、社会全体で取り組んでい
こうという運動になっています。エネルギーを生みだす
ためには、もとになる資源が必要です。ちょうど私たち
人間や動物が、歩いたり手を動かしたり喋ったりするた
めに、食べ物をとるのと同じです。ところが、地球の資
源には限りがありますから、ひとりひとりが節約をして
いかなくてはなりません。また、資源をエネルギーに変
換するためには、要らないものを空気中に排出しなくて
はなりません。二酸化炭素などの排出物は、大気汚染を
引き起こし、やがては地球全体の気温を徐々にあげてし
まいます。これが地球温暖化と呼ばれるもので、異常気 象や農作物への影響、海水面の上昇、紫外線の問題など
、さまざまな問題の原因となっています。人間だけでな
く、すべての生き物の住みやすい環境を守るためにも、
エネルギーの節約は必要なのです。では、使ってもなく
なる心配のないエネルギーはないのでしょうか。それは
、身の回りに見つけることができます。冬の寒い日の猫
は日の当たる明るい窓際で、いちばん温かそうな床の上
に、幸せそうにまるくなってねむっています。猫は日向
ぼっこの名人です。このとき、猫の体の毛のあいだにさ
しこんだ太陽は、猫の毛の奥深くに入りこみ、熱に変化
してほとんどが猫の体に吸収されています。とても効率
のいい、太陽エネルギー活用の仕組みになっているので
す。忙しいときに、よく猫の手も借りたいと言いますが
、寒いときには、猫の毛も借りたいと言えるかもしれま
せん。この猫の日向ぼっこの原理を、私たちのくらしに 活用したもの∵が、太陽熱温水器やソーラーハウスとい
う住宅です。太陽のエネルギーを建物の中にとらえて、
それでお風呂の温水をつくったり、温水で建物全体を暖
房したりしています。更に、ソーラーハウスが猫の日向
ぼっこより一歩進んでいるところは、太陽のエネルギー
を電気エネルギーに変えられることです。天気のいいと
きに発電した電気で、家の中の電化製品が使えます。あ
まった電気は、電力会社が買い取ってほかの家で使われ
ます。科学の力を使っていくと、日向ぼっこのおすそ分
けができるのです。省エネルギーという節約の考え方か
ら、エネルギーの変換という新しい考え方に目を向ける
と、さまざまな可能性が見えてきます。太陽のような自
然のエネルギーから、より効率のよいエネルギーがもら
えるように科学の研究は続いています。日向ぼっこをし
ている猫も言っています。「ソーラーエネルギーか。 ソーラー、エエネエ。」カイコは、じょうぶな絹糸をとる
ために、昔から人間が飼育してきた昆虫です。中国では
、四千年以上も前からカイコを育て、美しい絹織物が作
られていました。やがて中国で作られた絹織物は、イン
ド、ペルシア、トルコ、ローマなどに運ばれるようにな
りました。そのころの商人が通った道は、シルクロード
とよばれています。ローマでは、絹はたいへん高価なも
のであり、同じ重さの金と交換されるほどでした。
カイコの飼育は、世界各国に広まっていきました。日本
でも大正時代の終わりから昭和の初めにかけて、養蚕が
さかんになりました。当時、カイコの品種改良が進み、
それまでの二倍から三倍もの長さの糸が取れるようにな
ったのです。また、自然の状態では、カイコが生まれて
くるのは春と夏の年二回ですが、季節を問わず何度でも
カイコを飼育することができるようになりました。 そのころ、生糸や絹織物の輸出は、日本の輸出総額の半分近
くを占めていました。生まれてきたカイコの成虫、
カイコガは、羽が小さいわりに腹が大きくて、筋肉も弱
いため飛ぶことができません。人間に飼われているカイ
コガは、野外を飛びまわって仲間を見つける必要もなく
、幼虫の食べ物であるクワの木をさがしてたまごを生む
必要もありません。メスは、クワの木でなくても、手近
なものに何でもたまごを産みつけます。まるで、人間が
ちゃんと幼虫の世話をしてくれることを知っているよう
です。飛ぶ必要がなくなったカイコガは、飛ぶ能力を失
ってしまったのです。生まれた幼虫は、クワの葉を
食べてどんどん大きくなります。カイコを育てているカ
イコ棚では、幼虫がバリバリとクワの葉を食べる音が、
一日中雨の音のように聞こえます。これほど食欲旺盛な
幼虫ですが、歩く力がたいへん弱く、三十センチでもク
ワの葉から離れたところに置くと、自分でそこまでた どりつくことができません。歩いて「どこカ、イコう」
とはしないのです。また、ものにつかまる力も弱い
ので、野外のクワの木にカイコを放しても、生きていく
ことができません。人間に頼ってクワをクワせてもらっ
ているカイコは、農家の人にとっては「カイコ」という
より「可愛い子」なのかもしれません。長い間、人
に飼われてきたカイコは、人間の世話なしでは生きられ
ないようになりました。人間にとって、ほとんど動かな
いカイコは、飼育するのにたいへん都合がよい昆虫です
。大きく育った幼虫は、さなぎになる準備を始めま
す。人間がボール紙などで作った枠の中に、二日ぐらい
かかって厚くてじょうぶな繭を作ります。カイコのほか
にも、繭を作る昆虫はたくさんいますが、糸の量と強さ
でカイコにかなうものはいません。一個の繭からは 、約千五百メートルの絹糸が取れます。着物を一着作る
には、約二千六百個の繭が必要で、それだけの繭を作る
ために必要なクワの葉は百キログラムです。「ところ
で、カイコさん。クワの葉以外は食べないんですか。」
「クワンヨ。」(※最近の品種改良では、クワの葉
以外のものを食べるカイコも作られています)梅雨の
季節をいろどってくれる花に、アジサイがあります。こ
の花は、いろいろな色に変化することで有名で、そのせ
いか、花言葉には「移り気な心」などというものもあり
ます。そのほかの花言葉、「強い愛情」や「家族の結び
つき」は、きっと、小さい花がたくさんあつまって咲い
ているところからきたのでしょう。アジサイの花の
色は、咲き始めの緑がかった白っぽい青色から、薄いピ
ンク、紫、そしてしだいに濃い紫や藍色に変わっていき
ます。 色がついているこれらの部分は、じつは花びらで
はありません。葉が変化したもので、「がく」と呼ばれ
ることもあります。本当の花は、このがくの真ん中に、
ちょこんと小さく丸くついています。このように花以外
の部分が発達して花のようになっている花を装飾花と言
います。南国の雰囲気を持つブーゲンビリアや、クリス
マスに飾られるポインセチアなども装飾花です。で
は、アジサイの花は、どうして色が変わるのでしょうか
。どんな色のアジサイも、その色の素になっている
のは、アントシアニンという色素です。この色素は、条
件によって、赤い色を出したり、青い色を出したりする
ことができます。ここで、色の鍵を握っているのが、ア
ジサイが土の中から吸い上げる、アルミニウムという金
属です。一円玉は、このアルミニウムで作られています
。土の中には、アルミニウムをはじめ、いろいろな金属
が目に見えない形で溶けています。これを植物の根が吸
い上げるのです。アルミニウムが多いと、アジサイ
は青くなります。 逆に、アルミニウムが少ないと赤くな
ります。その中間は紫です。このアルミニウムは、土の
性質が酸性だと、土の中にイオンとして溶け出すので、
アジサイが吸い上げやすくなります。逆に、土の性質が
アルカリ性だと、アルミニウムはアルカリと結びついて
塩になってしまうので、アジサイが吸い上げにくくなり
ます。こうして、土の∵性質によって、アジサイの色は
変わるのです。ですから、おとなりのアジサイの色が気
に入って分けてもらい、わが家に植えても、同じ色にな
るとは限りません。ところで、日本のアジサイを世
界に紹介したのは、江戸時代の終わりごろに日本にやっ
てきたドイツ人の医者、シーボルトでした。この時代の
日本は、鎖国の状態で、人も物も自由に外国と行き来す
ることはできませんでした。しばらくのあいだ日本に暮
らした彼は、植物にもたいへん興味を持ち、日本のいろ
いろな植物を持ち帰りました。シーボルトは、その中で
もひときわ大きくてきれいなアジサイに、「オタクサ」
という名前をつけました。これは、シーボルトが日本に
いるときに愛した女性、「お滝さん」の名前です。ドイ
ツに戻ったシーボルトは、庭にそのオタクサを植えて、
「オー、タクサんのオタクサが咲いた。」と見とれてい
たかもしれません。アジサイと同じように、人間も
、好きな人の前で赤くなったり、宿題を忘れて青くなっ たりしますが、これはアルミニウムとは関係ありません
。コーヒーは、世界で最も親しまれている飲み物のひと
つです。世界中で、毎日二十億杯分ものコーヒーが消費
されています。世界中で売り買いされるコーヒーの量は
膨大で、その売上額は年間八兆円にも上ります。こ
のように世界中で親しまれているコーヒーですが、その
歴史がアフリカに始まったことはあまり知られていませ
ん。コーヒーの木は、もともとエチオピアの高原に自生
していました。コーヒーは、十五世紀までもっぱらアラ
ビア半島でのみ栽培され、国外に持ち出すことはできま
せんでした。十七世紀に、オランダ人がコーヒーの
苗木をオランダ本国へ持ち込みました。そして十八世紀
に、コーヒーの木は、フランスの国王ルイ十四世への贈
り物として、フランスの植物園に送られました。 当時、
コーヒーの木は大変な貴重品でした。やがて、フラ
ンスはコーヒーの栽培と輸出に乗り出そうとしますが、
計画はことごとく失敗します。あるとき、一人の海
軍士官が、ひそかにコーヒーの苗木を持ち出し、カリブ
海にある自分の農園で栽培しようと考えました。当時の
船は帆船で、長い船旅の間に飲む水もなくなるほどでし
たが、彼は自分の飲み水を苗木に分け与えて、ようやく
農園にたどりつきました。海を渡ったこの苗木は、
その後、南北アメリカ諸国にコーヒーの栽培を広めるも
ととなりました。今では、八十もの国や地域で、推定百
五十億本のコーヒーの木が栽培されています。コー
ヒーの成分であるカフェインは、神経を興奮させる働き
があります。人間の体にはもともとドーパミンという物
質があり、これは快感を感じるとたくさん分泌されます
。このドーパミンの働きを抑制する物質がアデノシンで
、人間は普段興奮と安静のバランスを∵とって暮らして
います。ところが、カフェインはアデノシンと形が似て
いるので、アデノシンのかわりに先にドーパミンに結び ついてしまい、そのためにコーヒーを飲むとドーパミン
の興奮が続くようになります。子供のうち、コーヒーは
控えた方がよいと言われるのはこのためです。さて
、コーヒー豆には、いろいろな種類があります。有名な
ところでは、ブルーマウンテン、モカ、コナ、キリマン
ジャロなどです。みなさんも大きくなったら、いろいろ
なコーヒーの味を飲み比べてみてはどんなモンジャロ。
クマムシの体長は、最大でも一ミリメートルぐらいで
す。八本の脚でゆっくり歩く姿がクマに似ているので、
クマムシと名づけられました。熱帯地方から北極や南極
まで、深海の底から高山の上まで、地球上のほぼあらゆ
るところに生息しています。このクマムシは小さな
スーパーマンです。といっても、空を飛んだり列車を止 めたりするわけではありません。実は、この生き物はほ
とんど不死身なのです。クマムシの体の大部分は水
分ですが、周囲が乾燥してくると、水分を極度に減らし
、樽のような形になって眠りに入ります。この樽の
状態になったクマムシは、宇宙の真空の中でも生き続け
ます。また、マイナス二百七十二度という絶対零度の世
界でも、摂氏百五十度という熱湯より熱い温度の中でも
生きています。更に、七万五千気圧という高圧を受けて
も、人間の致死量の千倍のX線を浴びても、樽になった
まま生きているのです。百二十年間眠っていたクマムシ
に水を与えたら動き出したという報告もあります。 クマムシはどこにでも棲んでいますが、採集するには、
コケの中を探すのが簡単です。建物の陰などに生えてい
るコケを取ってきて、ストッキングなど細かい網の上に
乗せます。コケに水を注ぐと、網の下に落ちてくる水と
一緒にクマムシも落ちてきます。それを顕微鏡で丹念に
探すのです。樽状態になったクマムシを参考にして
、人間の臓器を長期間保存する研究も行われています。
将来、宇宙飛行で何年も先の星に行くときには、人間も
樽になって行くようになるかもしれません。「クマム
シさん、こんなに過酷な実験をされて、よク、マー、ム
シしていられましたね。もっと厳しい実験をされたらど
うしますか。」「タルになったる。」最近では、 ペットボトル入りのお茶や缶入りのお茶が、たくさん売
られるようになってきました。緑茶、ウーロン茶、紅茶
、その他さまざまな種類のお茶がブレンドされて、いろ
いろな名前で売られています。では、これらのお茶は、
みんな違う種類の木からとれるのでしょうか。じつ
は、緑茶もウーロン茶も紅茶も、同じお茶の木の葉が原
料です。それなのに、なぜ色も味も違うかというと、作
り方が違うからです。お茶を作るには、まず、お茶
の木から葉を摘み取ります。このあと、放っておくと、
お茶の葉はすぐに発酵を始めます。お茶の葉の中にある
酸化酵素が酸素を取り込んで、お茶の葉の成分を変化さ
せてしまうのです。特にお茶の葉の中にあるカテキンや
ビタミンCは、酸素と結びつきやすく、たくさんの酸素
と結びつくほど、お茶の色も緑色から茶色そして赤色へ
と変化していきます。ですから、緑茶とウーロン茶と紅 茶の色の違いは、酸化の色の違いなのです。緑茶は
、葉を摘み取るとすぐに熱い蒸気に当てたり釜で炒った
りして、発酵させないようにします。熱い温度にするこ
とで、お茶の葉の中の酵素がこわれて発酵できなくなる
のです。このお茶の葉をよくもんで形を整え、乾燥させ
たものが緑茶です。発酵しないので緑の色が残り、カテ
キンやビタミンCもたくさん残っています。これに
対して、ウーロン茶や紅茶は、逆に発酵を助けてやるた
めに摘み取りの後に別の処理をします。お茶の葉を日光
に当てたり、温風に当てたりして葉をしおれさせる作業
です。ウーロン茶は、半発酵の状態のときに釜で炒って
発酵を止めます。そして乾燥をさせ、再び加熱して香ば
しさを出します。紅茶は完全発酵になるまで発酵させ、
乾燥させて完成させます。∵ウーロン茶と紅茶は、
発酵させた分だけ緑茶に比べてカテキンやビタミンCが
少なくなりますが、その代わりに、大変よい香りを持っ
ています。緑茶に多く含まれているカテキンは、緑
茶の渋味と色を作る大切な成分ですが、最近、このカテ
キンの殺菌作用が注目されています。カテキンには、イ
ンフルエンザのウィルスや食中毒の菌の働きを抑える力 があります。ですから、カゼのはやる季節には、お茶で
うがいをするといいそうです。また、カテキンには
、癌を予防したり、高血圧を下げたり、虫歯になりにく
くしたり、といった健康にいい効果もあると言われてい
ます。私たち日本人は、昔から食事のときに緑茶を飲ん
できましたが、これは健康のためにはとてもいいことだ
ったのです。では、カテキンの多い緑茶と、香りの
よいウーロン茶や紅茶を混ぜて飲んだらどうなるでしょ
う。答えは、ゴチャゴ茶です。そりゃ、無茶苦茶や。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 省エネルギーという言葉を聞いたことが
あるでしょう。
部屋の電気をこまめに消したり、冷房や暖房の温度設定
を控え目にしたり、エレベーターや自動車をやめて自分
の足で歩くように心がけたりすることです。今は、身近
な省エネルギーから広がって、社会全体で取り組んでい
こうという運動になっています。エネルギーを生みだす
ためには、もとになる資源が必要です。ちょうど私たち
人間や動物が、歩いたり手を動かしたり喋ったりするた
めに、食べ物をとるのと同じです。ところが、地球の資
源には限りがありますから、ひとりひとりが節約をして
いかなくてはなりません。また、資源をエネルギーに変
換するためには、要らないものを空気中に排出しなくて
はなりません。二酸化炭素などの排出物は、大気汚染を
引き起こし、やがては地球全体の気温を徐々にあげてし
まいます。これが地球温暖化と呼ばれるもので、異常気 象や農作物への影響、海水面の上昇、紫外線の問題など
、さまざまな問題の原因となっています。人間だけでな
く、すべての生き物の住みやすい環境を守るためにも、
エネルギーの節約は必要なのです。では、使ってもなく
なる心配のないエネルギーはないのでしょうか。それは
、身の回りに見つけることができます。冬の寒い日の猫
は日の当たる明るい窓際で、いちばん温かそうな床の上
に、幸せそうにまるくなってねむっています。猫は日向
ぼっこの名人です。このとき、猫の体の毛のあいだにさ
しこんだ太陽は、猫の毛の奥深くに入りこみ、熱に変化
してほとんどが猫の体に吸収されています。とても効率
のいい、太陽エネルギー活用の仕組みになっているので
す。忙しいときに、よく猫の手も借りたいと言いますが
、寒いときには、猫の毛も借りたいと言えるかもしれま
せん。この猫の日向ぼっこの原理を、私たちのくらしに 活用したもの∵が、太陽熱温水器やソーラーハウスとい
う住宅です。太陽のエネルギーを建物の中にとらえて、
それでお風呂の温水をつくったり、温水で建物全体を暖
房したりしています。更に、ソーラーハウスが猫の日向
ぼっこより一歩進んでいるところは、太陽のエネルギー
を電気エネルギーに変えられることです。天気のいいと
きに発電した電気で、家の中の電化製品が使えます。あ
まった電気は、電力会社が買い取ってほかの家で使われ
ます。科学の力を使っていくと、日向ぼっこのおすそ分
けができるのです。省エネルギーという節約の考え方か
ら、エネルギーの変換という新しい考え方に目を向ける
と、さまざまな可能性が見えてきます。太陽のような自
然のエネルギーから、より効率のよいエネルギーがもら
えるように科学の研究は続いています。日向ぼっこをし
ている猫も言っています。「ソーラーエネルギーか。 ソーラー、エエネエ。」カイコは、じょうぶな絹糸をとる
ために、昔から人間が飼育してきた昆虫です。中国では
、四千年以上も前からカイコを育て、美しい絹織物が作
られていました。やがて中国で作られた絹織物は、イン
ド、ペルシア、トルコ、ローマなどに運ばれるようにな
りました。そのころの商人が通った道は、シルクロード
とよばれています。ローマでは、絹はたいへん高価なも
のであり、同じ重さの金と交換されるほどでした。
カイコの飼育は、世界各国に広まっていきました。日本
でも大正時代の終わりから昭和の初めにかけて、養蚕が
さかんになりました。当時、カイコの品種改良が進み、
それまでの二倍から三倍もの長さの糸が取れるようにな
ったのです。また、自然の状態では、カイコが生まれて
くるのは春と夏の年二回ですが、季節を問わず何度でも
カイコを飼育することができるようになりました。 そのころ、生糸や絹織物の輸出は、日本の輸出総額の半分近
くを占めていました。生まれてきたカイコの成虫、
カイコガは、羽が小さいわりに腹が大きくて、筋肉も弱
いため飛ぶことができません。人間に飼われているカイ
コガは、野外を飛びまわって仲間を見つける必要もなく
、幼虫の食べ物であるクワの木をさがしてたまごを生む
必要もありません。メスは、クワの木でなくても、手近
なものに何でもたまごを産みつけます。まるで、人間が
ちゃんと幼虫の世話をしてくれることを知っているよう
です。飛ぶ必要がなくなったカイコガは、飛ぶ能力を失
ってしまったのです。生まれた幼虫は、クワの葉を
食べてどんどん大きくなります。カイコを育てているカ
イコ棚では、幼虫がバリバリとクワの葉を食べる音が、
一日中雨の音のように聞こえます。これほど食欲旺盛な
幼虫ですが、歩く力がたいへん弱く、三十センチでもク
ワの葉から離れたところに置くと、自分でそこまでた どりつくことができません。歩いて「どこカ、イコう」
とはしないのです。また、ものにつかまる力も弱い
ので、野外のクワの木にカイコを放しても、生きていく
ことができません。人間に頼ってクワをクワせてもらっ
ているカイコは、農家の人にとっては「カイコ」という
より「可愛い子」なのかもしれません。長い間、人
に飼われてきたカイコは、人間の世話なしでは生きられ
ないようになりました。人間にとって、ほとんど動かな
いカイコは、飼育するのにたいへん都合がよい昆虫です
。大きく育った幼虫は、さなぎになる準備を始めま
す。人間がボール紙などで作った枠の中に、二日ぐらい
かかって厚くてじょうぶな繭を作ります。カイコのほか
にも、繭を作る昆虫はたくさんいますが、糸の量と強さ
でカイコにかなうものはいません。一個の繭からは 、約千五百メートルの絹糸が取れます。着物を一着作る
には、約二千六百個の繭が必要で、それだけの繭を作る
ために必要なクワの葉は百キログラムです。「ところ
で、カイコさん。クワの葉以外は食べないんですか。」
「クワンヨ。」(※最近の品種改良では、クワの葉
以外のものを食べるカイコも作られています)梅雨の
季節をいろどってくれる花に、アジサイがあります。こ
の花は、いろいろな色に変化することで有名で、そのせ
いか、花言葉には「移り気な心」などというものもあり
ます。そのほかの花言葉、「強い愛情」や「家族の結び
つき」は、きっと、小さい花がたくさんあつまって咲い
ているところからきたのでしょう。アジサイの花の
色は、咲き始めの緑がかった白っぽい青色から、薄いピ
ンク、紫、そしてしだいに濃い紫や藍色に変わっていき
ます。 色がついているこれらの部分は、じつは花びらで
はありません。葉が変化したもので、「がく」と呼ばれ
ることもあります。本当の花は、このがくの真ん中に、
ちょこんと小さく丸くついています。このように花以外
の部分が発達して花のようになっている花を装飾花と言
います。南国の雰囲気を持つブーゲンビリアや、クリス
マスに飾られるポインセチアなども装飾花です。で
は、アジサイの花は、どうして色が変わるのでしょうか
。どんな色のアジサイも、その色の素になっている
のは、アントシアニンという色素です。この色素は、条
件によって、赤い色を出したり、青い色を出したりする
ことができます。ここで、色の鍵を握っているのが、ア
ジサイが土の中から吸い上げる、アルミニウムという金
属です。一円玉は、このアルミニウムで作られています
。土の中には、アルミニウムをはじめ、いろいろな金属
が目に見えない形で溶けています。これを植物の根が吸
い上げるのです。アルミニウムが多いと、アジサイ
は青くなります。 逆に、アルミニウムが少ないと赤くな
ります。その中間は紫です。このアルミニウムは、土の
性質が酸性だと、土の中にイオンとして溶け出すので、
アジサイが吸い上げやすくなります。逆に、土の性質が
アルカリ性だと、アルミニウムはアルカリと結びついて
塩になってしまうので、アジサイが吸い上げにくくなり
ます。こうして、土の∵性質によって、アジサイの色は
変わるのです。ですから、おとなりのアジサイの色が気
に入って分けてもらい、わが家に植えても、同じ色にな
るとは限りません。ところで、日本のアジサイを世
界に紹介したのは、江戸時代の終わりごろに日本にやっ
てきたドイツ人の医者、シーボルトでした。この時代の
日本は、鎖国の状態で、人も物も自由に外国と行き来す
ることはできませんでした。しばらくのあいだ日本に暮
らした彼は、植物にもたいへん興味を持ち、日本のいろ
いろな植物を持ち帰りました。シーボルトは、その中で
もひときわ大きくてきれいなアジサイに、「オタクサ」
という名前をつけました。これは、シーボルトが日本に
いるときに愛した女性、「お滝さん」の名前です。ドイ
ツに戻ったシーボルトは、庭にそのオタクサを植えて、
「オー、タクサんのオタクサが咲いた。」と見とれてい
たかもしれません。アジサイと同じように、人間も
、好きな人の前で赤くなったり、宿題を忘れて青くなっ たりしますが、これはアルミニウムとは関係ありません
。コーヒーは、世界で最も親しまれている飲み物のひと
つです。世界中で、毎日二十億杯分ものコーヒーが消費
されています。世界中で売り買いされるコーヒーの量は
膨大で、その売上額は年間八兆円にも上ります。こ
のように世界中で親しまれているコーヒーですが、その
歴史がアフリカに始まったことはあまり知られていませ
ん。コーヒーの木は、もともとエチオピアの高原に自生
していました。コーヒーは、十五世紀までもっぱらアラ
ビア半島でのみ栽培され、国外に持ち出すことはできま
せんでした。十七世紀に、オランダ人がコーヒーの
苗木をオランダ本国へ持ち込みました。そして十八世紀
に、コーヒーの木は、フランスの国王ルイ十四世への贈
り物として、フランスの植物園に送られました。 当時、
コーヒーの木は大変な貴重品でした。やがて、フラ
ンスはコーヒーの栽培と輸出に乗り出そうとしますが、
計画はことごとく失敗します。あるとき、一人の海
軍士官が、ひそかにコーヒーの苗木を持ち出し、カリブ
海にある自分の農園で栽培しようと考えました。当時の
船は帆船で、長い船旅の間に飲む水もなくなるほどでし
たが、彼は自分の飲み水を苗木に分け与えて、ようやく
農園にたどりつきました。海を渡ったこの苗木は、
その後、南北アメリカ諸国にコーヒーの栽培を広めるも
ととなりました。今では、八十もの国や地域で、推定百
五十億本のコーヒーの木が栽培されています。コー
ヒーの成分であるカフェインは、神経を興奮させる働き
があります。人間の体にはもともとドーパミンという物
質があり、これは快感を感じるとたくさん分泌されます
。このドーパミンの働きを抑制する物質がアデノシンで
、人間は普段興奮と安静のバランスを∵とって暮らして
います。ところが、カフェインはアデノシンと形が似て
いるので、アデノシンのかわりに先にドーパミンに結び ついてしまい、そのためにコーヒーを飲むとドーパミン
の興奮が続くようになります。子供のうち、コーヒーは
控えた方がよいと言われるのはこのためです。さて
、コーヒー豆には、いろいろな種類があります。有名な
ところでは、ブルーマウンテン、モカ、コナ、キリマン
ジャロなどです。みなさんも大きくなったら、いろいろ
なコーヒーの味を飲み比べてみてはどんなモンジャロ。
クマムシの体長は、最大でも一ミリメートルぐらいで
す。八本の脚でゆっくり歩く姿がクマに似ているので、
クマムシと名づけられました。熱帯地方から北極や南極
まで、深海の底から高山の上まで、地球上のほぼあらゆ
るところに生息しています。このクマムシは小さな
スーパーマンです。といっても、空を飛んだり列車を止 めたりするわけではありません。実は、この生き物はほ
とんど不死身なのです。クマムシの体の大部分は水
分ですが、周囲が乾燥してくると、水分を極度に減らし
、樽のような形になって眠りに入ります。この樽の
状態になったクマムシは、宇宙の真空の中でも生き続け
ます。また、マイナス二百七十二度という絶対零度の世
界でも、摂氏百五十度という熱湯より熱い温度の中でも
生きています。更に、七万五千気圧という高圧を受けて
も、人間の致死量の千倍のX線を浴びても、樽になった
まま生きているのです。百二十年間眠っていたクマムシ
に水を与えたら動き出したという報告もあります。 クマムシはどこにでも棲んでいますが、採集するには、
コケの中を探すのが簡単です。建物の陰などに生えてい
るコケを取ってきて、ストッキングなど細かい網の上に
乗せます。コケに水を注ぐと、網の下に落ちてくる水と
一緒にクマムシも落ちてきます。それを顕微鏡で丹念に
探すのです。樽状態になったクマムシを参考にして
、人間の臓器を長期間保存する研究も行われています。
将来、宇宙飛行で何年も先の星に行くときには、人間も
樽になって行くようになるかもしれません。「クマム
シさん、こんなに過酷な実験をされて、よク、マー、ム
シしていられましたね。もっと厳しい実験をされたらど
うしますか。」「タルになったる。」最近では、 ペットボトル入りのお茶や缶入りのお茶が、たくさん売
られるようになってきました。緑茶、ウーロン茶、紅茶
、その他さまざまな種類のお茶がブレンドされて、いろ
いろな名前で売られています。では、これらのお茶は、
みんな違う種類の木からとれるのでしょうか。じつ
は、緑茶もウーロン茶も紅茶も、同じお茶の木の葉が原
料です。それなのに、なぜ色も味も違うかというと、作
り方が違うからです。お茶を作るには、まず、お茶
の木から葉を摘み取ります。このあと、放っておくと、
お茶の葉はすぐに発酵を始めます。お茶の葉の中にある
酸化酵素が酸素を取り込んで、お茶の葉の成分を変化さ
せてしまうのです。特にお茶の葉の中にあるカテキンや
ビタミンCは、酸素と結びつきやすく、たくさんの酸素
と結びつくほど、お茶の色も緑色から茶色そして赤色へ
と変化していきます。ですから、緑茶とウーロン茶と紅 茶の色の違いは、酸化の色の違いなのです。緑茶は
、葉を摘み取るとすぐに熱い蒸気に当てたり釜で炒った
りして、発酵させないようにします。熱い温度にするこ
とで、お茶の葉の中の酵素がこわれて発酵できなくなる
のです。このお茶の葉をよくもんで形を整え、乾燥させ
たものが緑茶です。発酵しないので緑の色が残り、カテ
キンやビタミンCもたくさん残っています。これに
対して、ウーロン茶や紅茶は、逆に発酵を助けてやるた
めに摘み取りの後に別の処理をします。お茶の葉を日光
に当てたり、温風に当てたりして葉をしおれさせる作業
です。ウーロン茶は、半発酵の状態のときに釜で炒って
発酵を止めます。そして乾燥をさせ、再び加熱して香ば
しさを出します。紅茶は完全発酵になるまで発酵させ、
乾燥させて完成させます。∵ウーロン茶と紅茶は、
発酵させた分だけ緑茶に比べてカテキンやビタミンCが
少なくなりますが、その代わりに、大変よい香りを持っ
ています。緑茶に多く含まれているカテキンは、緑
茶の渋味と色を作る大切な成分ですが、最近、このカテ
キンの殺菌作用が注目されています。カテキンには、イ
ンフルエンザのウィルスや食中毒の菌の働きを抑える力 があります。ですから、カゼのはやる季節には、お茶で
うがいをするといいそうです。また、カテキンには
、癌を予防したり、高血圧を下げたり、虫歯になりにく
くしたり、といった健康にいい効果もあると言われてい
ます。私たち日本人は、昔から食事のときに緑茶を飲ん
できましたが、これは健康のためにはとてもいいことだ
ったのです。では、カテキンの多い緑茶と、香りの
よいウーロン茶や紅茶を混ぜて飲んだらどうなるでしょ
う。答えは、ゴチャゴ茶です。そりゃ、無茶苦茶や。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 省エネルギーという言葉を聞いたことが
あるでしょう。
部屋の電気をこまめに消したり、冷房や暖房の温度設定
を控え目にしたり、エレベーターや自動車をやめて自分
の足で歩くように心がけたりすることです。今は、身近
な省エネルギーから広がって、社会全体で取り組んでい
こうという運動になっています。エネルギーを生みだす
ためには、もとになる資源が必要です。ちょうど私たち
人間や動物が、歩いたり手を動かしたり喋ったりするた
めに、食べ物をとるのと同じです。ところが、地球の資
源には限りがありますから、ひとりひとりが節約をして
いかなくてはなりません。また、資源をエネルギーに変
換するためには、要らないものを空気中に排出しなくて
はなりません。二酸化炭素などの排出物は、大気汚染を
引き起こし、やがては地球全体の気温を徐々にあげてし
まいます。これが地球温暖化と呼ばれるもので、異常気 象や農作物への影響、海水面の上昇、紫外線の問題など
、さまざまな問題の原因となっています。人間だけでな
く、すべての生き物の住みやすい環境を守るためにも、
エネルギーの節約は必要なのです。では、使ってもなく
なる心配のないエネルギーはないのでしょうか。それは
、身の回りに見つけることができます。冬の寒い日の猫
は日の当たる明るい窓際で、いちばん温かそうな床の上
に、幸せそうにまるくなってねむっています。猫は日向
ぼっこの名人です。このとき、猫の体の毛のあいだにさ
しこんだ太陽は、猫の毛の奥深くに入りこみ、熱に変化
してほとんどが猫の体に吸収されています。とても効率
のいい、太陽エネルギー活用の仕組みになっているので
す。忙しいときに、よく猫の手も借りたいと言いますが
、寒いときには、猫の毛も借りたいと言えるかもしれま
せん。この猫の日向ぼっこの原理を、私たちのくらしに 活用したもの∵が、太陽熱温水器やソーラーハウスとい
う住宅です。太陽のエネルギーを建物の中にとらえて、
それでお風呂の温水をつくったり、温水で建物全体を暖
房したりしています。更に、ソーラーハウスが猫の日向
ぼっこより一歩進んでいるところは、太陽のエネルギー
を電気エネルギーに変えられることです。天気のいいと
きに発電した電気で、家の中の電化製品が使えます。あ
まった電気は、電力会社が買い取ってほかの家で使われ
ます。科学の力を使っていくと、日向ぼっこのおすそ分
けができるのです。省エネルギーという節約の考え方か
ら、エネルギーの変換という新しい考え方に目を向ける
と、さまざまな可能性が見えてきます。太陽のような自
然のエネルギーから、より効率のよいエネルギーがもら
えるように科学の研究は続いています。日向ぼっこをし
ている猫も言っています。「ソーラーエネルギーか。 ソーラー、エエネエ。」カイコは、じょうぶな絹糸をとる
ために、昔から人間が飼育してきた昆虫です。中国では
、四千年以上も前からカイコを育て、美しい絹織物が作
られていました。やがて中国で作られた絹織物は、イン
ド、ペルシア、トルコ、ローマなどに運ばれるようにな
りました。そのころの商人が通った道は、シルクロード
とよばれています。ローマでは、絹はたいへん高価なも
のであり、同じ重さの金と交換されるほどでした。
カイコの飼育は、世界各国に広まっていきました。日本
でも大正時代の終わりから昭和の初めにかけて、養蚕が
さかんになりました。当時、カイコの品種改良が進み、
それまでの二倍から三倍もの長さの糸が取れるようにな
ったのです。また、自然の状態では、カイコが生まれて
くるのは春と夏の年二回ですが、季節を問わず何度でも
カイコを飼育することができるようになりました。 そのころ、生糸や絹織物の輸出は、日本の輸出総額の半分近
くを占めていました。生まれてきたカイコの成虫、
カイコガは、羽が小さいわりに腹が大きくて、筋肉も弱
いため飛ぶことができません。人間に飼われているカイ
コガは、野外を飛びまわって仲間を見つける必要もなく
、幼虫の食べ物であるクワの木をさがしてたまごを生む
必要もありません。メスは、クワの木でなくても、手近
なものに何でもたまごを産みつけます。まるで、人間が
ちゃんと幼虫の世話をしてくれることを知っているよう
です。飛ぶ必要がなくなったカイコガは、飛ぶ能力を失
ってしまったのです。生まれた幼虫は、クワの葉を
食べてどんどん大きくなります。カイコを育てているカ
イコ棚では、幼虫がバリバリとクワの葉を食べる音が、
一日中雨の音のように聞こえます。これほど食欲旺盛な
幼虫ですが、歩く力がたいへん弱く、三十センチでもク
ワの葉から離れたところに置くと、自分でそこまでた どりつくことができません。歩いて「どこカ、イコう」
とはしないのです。また、ものにつかまる力も弱い
ので、野外のクワの木にカイコを放しても、生きていく
ことができません。人間に頼ってクワをクワせてもらっ
ているカイコは、農家の人にとっては「カイコ」という
より「可愛い子」なのかもしれません。長い間、人
に飼われてきたカイコは、人間の世話なしでは生きられ
ないようになりました。人間にとって、ほとんど動かな
いカイコは、飼育するのにたいへん都合がよい昆虫です
。大きく育った幼虫は、さなぎになる準備を始めま
す。人間がボール紙などで作った枠の中に、二日ぐらい
かかって厚くてじょうぶな繭を作ります。カイコのほか
にも、繭を作る昆虫はたくさんいますが、糸の量と強さ
でカイコにかなうものはいません。一個の繭からは 、約千五百メートルの絹糸が取れます。着物を一着作る
には、約二千六百個の繭が必要で、それだけの繭を作る
ために必要なクワの葉は百キログラムです。「ところ
で、カイコさん。クワの葉以外は食べないんですか。」
「クワンヨ。」(※最近の品種改良では、クワの葉
以外のものを食べるカイコも作られています)梅雨の
季節をいろどってくれる花に、アジサイがあります。こ
の花は、いろいろな色に変化することで有名で、そのせ
いか、花言葉には「移り気な心」などというものもあり
ます。そのほかの花言葉、「強い愛情」や「家族の結び
つき」は、きっと、小さい花がたくさんあつまって咲い
ているところからきたのでしょう。アジサイの花の
色は、咲き始めの緑がかった白っぽい青色から、薄いピ
ンク、紫、そしてしだいに濃い紫や藍色に変わっていき
ます。 色がついているこれらの部分は、じつは花びらで
はありません。葉が変化したもので、「がく」と呼ばれ
ることもあります。本当の花は、このがくの真ん中に、
ちょこんと小さく丸くついています。このように花以外
の部分が発達して花のようになっている花を装飾花と言
います。南国の雰囲気を持つブーゲンビリアや、クリス
マスに飾られるポインセチアなども装飾花です。で
は、アジサイの花は、どうして色が変わるのでしょうか
。どんな色のアジサイも、その色の素になっている
のは、アントシアニンという色素です。この色素は、条
件によって、赤い色を出したり、青い色を出したりする
ことができます。ここで、色の鍵を握っているのが、ア
ジサイが土の中から吸い上げる、アルミニウムという金
属です。一円玉は、このアルミニウムで作られています
。土の中には、アルミニウムをはじめ、いろいろな金属
が目に見えない形で溶けています。これを植物の根が吸
い上げるのです。アルミニウムが多いと、アジサイ
は青くなります。 逆に、アルミニウムが少ないと赤くな
ります。その中間は紫です。このアルミニウムは、土の
性質が酸性だと、土の中にイオンとして溶け出すので、
アジサイが吸い上げやすくなります。逆に、土の性質が
アルカリ性だと、アルミニウムはアルカリと結びついて
塩になってしまうので、アジサイが吸い上げにくくなり
ます。こうして、土の∵性質によって、アジサイの色は
変わるのです。ですから、おとなりのアジサイの色が気
に入って分けてもらい、わが家に植えても、同じ色にな
るとは限りません。ところで、日本のアジサイを世
界に紹介したのは、江戸時代の終わりごろに日本にやっ
てきたドイツ人の医者、シーボルトでした。この時代の
日本は、鎖国の状態で、人も物も自由に外国と行き来す
ることはできませんでした。しばらくのあいだ日本に暮
らした彼は、植物にもたいへん興味を持ち、日本のいろ
いろな植物を持ち帰りました。シーボルトは、その中で
もひときわ大きくてきれいなアジサイに、「オタクサ」
という名前をつけました。これは、シーボルトが日本に
いるときに愛した女性、「お滝さん」の名前です。ドイ
ツに戻ったシーボルトは、庭にそのオタクサを植えて、
「オー、タクサんのオタクサが咲いた。」と見とれてい
たかもしれません。アジサイと同じように、人間も
、好きな人の前で赤くなったり、宿題を忘れて青くなっ たりしますが、これはアルミニウムとは関係ありません
。コーヒーは、世界で最も親しまれている飲み物のひと
つです。世界中で、毎日二十億杯分ものコーヒーが消費
されています。世界中で売り買いされるコーヒーの量は
膨大で、その売上額は年間八兆円にも上ります。こ
のように世界中で親しまれているコーヒーですが、その
歴史がアフリカに始まったことはあまり知られていませ
ん。コーヒーの木は、もともとエチオピアの高原に自生
していました。コーヒーは、十五世紀までもっぱらアラ
ビア半島でのみ栽培され、国外に持ち出すことはできま
せんでした。十七世紀に、オランダ人がコーヒーの
苗木をオランダ本国へ持ち込みました。そして十八世紀
に、コーヒーの木は、フランスの国王ルイ十四世への贈
り物として、フランスの植物園に送られました。 当時、
コーヒーの木は大変な貴重品でした。やがて、フラ
ンスはコーヒーの栽培と輸出に乗り出そうとしますが、
計画はことごとく失敗します。あるとき、一人の海
軍士官が、ひそかにコーヒーの苗木を持ち出し、カリブ
海にある自分の農園で栽培しようと考えました。当時の
船は帆船で、長い船旅の間に飲む水もなくなるほどでし
たが、彼は自分の飲み水を苗木に分け与えて、ようやく
農園にたどりつきました。海を渡ったこの苗木は、
その後、南北アメリカ諸国にコーヒーの栽培を広めるも
ととなりました。今では、八十もの国や地域で、推定百
五十億本のコーヒーの木が栽培されています。コー
ヒーの成分であるカフェインは、神経を興奮させる働き
があります。人間の体にはもともとドーパミンという物
質があり、これは快感を感じるとたくさん分泌されます
。このドーパミンの働きを抑制する物質がアデノシンで
、人間は普段興奮と安静のバランスを∵とって暮らして
います。ところが、カフェインはアデノシンと形が似て
いるので、アデノシンのかわりに先にドーパミンに結び ついてしまい、そのためにコーヒーを飲むとドーパミン
の興奮が続くようになります。子供のうち、コーヒーは
控えた方がよいと言われるのはこのためです。さて
、コーヒー豆には、いろいろな種類があります。有名な
ところでは、ブルーマウンテン、モカ、コナ、キリマン
ジャロなどです。みなさんも大きくなったら、いろいろ
なコーヒーの味を飲み比べてみてはどんなモンジャロ。
クマムシの体長は、最大でも一ミリメートルぐらいで
す。八本の脚でゆっくり歩く姿がクマに似ているので、
クマムシと名づけられました。熱帯地方から北極や南極
まで、深海の底から高山の上まで、地球上のほぼあらゆ
るところに生息しています。このクマムシは小さな
スーパーマンです。といっても、空を飛んだり列車を止 めたりするわけではありません。実は、この生き物はほ
とんど不死身なのです。クマムシの体の大部分は水
分ですが、周囲が乾燥してくると、水分を極度に減らし
、樽のような形になって眠りに入ります。この樽の
状態になったクマムシは、宇宙の真空の中でも生き続け
ます。また、マイナス二百七十二度という絶対零度の世
界でも、摂氏百五十度という熱湯より熱い温度の中でも
生きています。更に、七万五千気圧という高圧を受けて
も、人間の致死量の千倍のX線を浴びても、樽になった
まま生きているのです。百二十年間眠っていたクマムシ
に水を与えたら動き出したという報告もあります。 クマムシはどこにでも棲んでいますが、採集するには、
コケの中を探すのが簡単です。建物の陰などに生えてい
るコケを取ってきて、ストッキングなど細かい網の上に
乗せます。コケに水を注ぐと、網の下に落ちてくる水と
一緒にクマムシも落ちてきます。それを顕微鏡で丹念に
探すのです。樽状態になったクマムシを参考にして
、人間の臓器を長期間保存する研究も行われています。
将来、宇宙飛行で何年も先の星に行くときには、人間も
樽になって行くようになるかもしれません。「クマム
シさん、こんなに過酷な実験をされて、よク、マー、ム
シしていられましたね。もっと厳しい実験をされたらど
うしますか。」「タルになったる。」最近では、 ペットボトル入りのお茶や缶入りのお茶が、たくさん売
られるようになってきました。緑茶、ウーロン茶、紅茶
、その他さまざまな種類のお茶がブレンドされて、いろ
いろな名前で売られています。では、これらのお茶は、
みんな違う種類の木からとれるのでしょうか。じつ
は、緑茶もウーロン茶も紅茶も、同じお茶の木の葉が原
料です。それなのに、なぜ色も味も違うかというと、作
り方が違うからです。お茶を作るには、まず、お茶
の木から葉を摘み取ります。このあと、放っておくと、
お茶の葉はすぐに発酵を始めます。お茶の葉の中にある
酸化酵素が酸素を取り込んで、お茶の葉の成分を変化さ
せてしまうのです。特にお茶の葉の中にあるカテキンや
ビタミンCは、酸素と結びつきやすく、たくさんの酸素
と結びつくほど、お茶の色も緑色から茶色そして赤色へ
と変化していきます。ですから、緑茶とウーロン茶と紅 茶の色の違いは、酸化の色の違いなのです。緑茶は
、葉を摘み取るとすぐに熱い蒸気に当てたり釜で炒った
りして、発酵させないようにします。熱い温度にするこ
とで、お茶の葉の中の酵素がこわれて発酵できなくなる
のです。このお茶の葉をよくもんで形を整え、乾燥させ
たものが緑茶です。発酵しないので緑の色が残り、カテ
キンやビタミンCもたくさん残っています。これに
対して、ウーロン茶や紅茶は、逆に発酵を助けてやるた
めに摘み取りの後に別の処理をします。お茶の葉を日光
に当てたり、温風に当てたりして葉をしおれさせる作業
です。ウーロン茶は、半発酵の状態のときに釜で炒って
発酵を止めます。そして乾燥をさせ、再び加熱して香ば
しさを出します。紅茶は完全発酵になるまで発酵させ、
乾燥させて完成させます。∵ウーロン茶と紅茶は、
発酵させた分だけ緑茶に比べてカテキンやビタミンCが
少なくなりますが、その代わりに、大変よい香りを持っ
ています。緑茶に多く含まれているカテキンは、緑
茶の渋味と色を作る大切な成分ですが、最近、このカテ
キンの殺菌作用が注目されています。カテキンには、イ
ンフルエンザのウィルスや食中毒の菌の働きを抑える力 があります。ですから、カゼのはやる季節には、お茶で
うがいをするといいそうです。また、カテキンには
、癌を予防したり、高血圧を下げたり、虫歯になりにく
くしたり、といった健康にいい効果もあると言われてい
ます。私たち日本人は、昔から食事のときに緑茶を飲ん
できましたが、これは健康のためにはとてもいいことだ
ったのです。では、カテキンの多い緑茶と、香りの
よいウーロン茶や紅茶を混ぜて飲んだらどうなるでしょ
う。答えは、ゴチャゴ茶です。そりゃ、無茶苦茶や。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 省エネルギーという言葉を聞いたことが
あるでしょう。
部屋の電気をこまめに消したり、冷房や暖房の温度設定
を控え目にしたり、エレベーターや自動車をやめて自分
の足で歩くように心がけたりすることです。今は、身近
な省エネルギーから広がって、社会全体で取り組んでい
こうという運動になっています。エネルギーを生みだす
ためには、もとになる資源が必要です。ちょうど私たち
人間や動物が、歩いたり手を動かしたり喋ったりするた
めに、食べ物をとるのと同じです。ところが、地球の資
源には限りがありますから、ひとりひとりが節約をして
いかなくてはなりません。また、資源をエネルギーに変
換するためには、要らないものを空気中に排出しなくて
はなりません。二酸化炭素などの排出物は、大気汚染を
引き起こし、やがては地球全体の気温を徐々にあげてし
まいます。これが地球温暖化と呼ばれるもので、異常気 象や農作物への影響、海水面の上昇、紫外線の問題など
、さまざまな問題の原因となっています。人間だけでな
く、すべての生き物の住みやすい環境を守るためにも、
エネルギーの節約は必要なのです。では、使ってもなく
なる心配のないエネルギーはないのでしょうか。それは
、身の回りに見つけることができます。冬の寒い日の猫
は日の当たる明るい窓際で、いちばん温かそうな床の上
に、幸せそうにまるくなってねむっています。猫は日向
ぼっこの名人です。このとき、猫の体の毛のあいだにさ
しこんだ太陽は、猫の毛の奥深くに入りこみ、熱に変化
してほとんどが猫の体に吸収されています。とても効率
のいい、太陽エネルギー活用の仕組みになっているので
す。忙しいときに、よく猫の手も借りたいと言いますが
、寒いときには、猫の毛も借りたいと言えるかもしれま
せん。この猫の日向ぼっこの原理を、私たちのくらしに 活用したもの∵が、太陽熱温水器やソーラーハウスとい
う住宅です。太陽のエネルギーを建物の中にとらえて、
それでお風呂の温水をつくったり、温水で建物全体を暖
房したりしています。更に、ソーラーハウスが猫の日向
ぼっこより一歩進んでいるところは、太陽のエネルギー
を電気エネルギーに変えられることです。天気のいいと
きに発電した電気で、家の中の電化製品が使えます。あ
まった電気は、電力会社が買い取ってほかの家で使われ
ます。科学の力を使っていくと、日向ぼっこのおすそ分
けができるのです。省エネルギーという節約の考え方か
ら、エネルギーの変換という新しい考え方に目を向ける
と、さまざまな可能性が見えてきます。太陽のような自
然のエネルギーから、より効率のよいエネルギーがもら
えるように科学の研究は続いています。日向ぼっこをし
ている猫も言っています。「ソーラーエネルギーか。 ソーラー、エエネエ。」カイコは、じょうぶな絹糸をとる
ために、昔から人間が飼育してきた昆虫です。中国では
、四千年以上も前からカイコを育て、美しい絹織物が作
られていました。やがて中国で作られた絹織物は、イン
ド、ペルシア、トルコ、ローマなどに運ばれるようにな
りました。そのころの商人が通った道は、シルクロード
とよばれています。ローマでは、絹はたいへん高価なも
のであり、同じ重さの金と交換されるほどでした。
カイコの飼育は、世界各国に広まっていきました。日本
でも大正時代の終わりから昭和の初めにかけて、養蚕が
さかんになりました。当時、カイコの品種改良が進み、
それまでの二倍から三倍もの長さの糸が取れるようにな
ったのです。また、自然の状態では、カイコが生まれて
くるのは春と夏の年二回ですが、季節を問わず何度でも
カイコを飼育することができるようになりました。 そのころ、生糸や絹織物の輸出は、日本の輸出総額の半分近
くを占めていました。生まれてきたカイコの成虫、
カイコガは、羽が小さいわりに腹が大きくて、筋肉も弱
いため飛ぶことができません。人間に飼われているカイ
コガは、野外を飛びまわって仲間を見つける必要もなく
、幼虫の食べ物であるクワの木をさがしてたまごを生む
必要もありません。メスは、クワの木でなくても、手近
なものに何でもたまごを産みつけます。まるで、人間が
ちゃんと幼虫の世話をしてくれることを知っているよう
です。飛ぶ必要がなくなったカイコガは、飛ぶ能力を失
ってしまったのです。生まれた幼虫は、クワの葉を
食べてどんどん大きくなります。カイコを育てているカ
イコ棚では、幼虫がバリバリとクワの葉を食べる音が、
一日中雨の音のように聞こえます。これほど食欲旺盛な
幼虫ですが、歩く力がたいへん弱く、三十センチでもク
ワの葉から離れたところに置くと、自分でそこまでた どりつくことができません。歩いて「どこカ、イコう」
とはしないのです。また、ものにつかまる力も弱い
ので、野外のクワの木にカイコを放しても、生きていく
ことができません。人間に頼ってクワをクワせてもらっ
ているカイコは、農家の人にとっては「カイコ」という
より「可愛い子」なのかもしれません。長い間、人
に飼われてきたカイコは、人間の世話なしでは生きられ
ないようになりました。人間にとって、ほとんど動かな
いカイコは、飼育するのにたいへん都合がよい昆虫です
。大きく育った幼虫は、さなぎになる準備を始めま
す。人間がボール紙などで作った枠の中に、二日ぐらい
かかって厚くてじょうぶな繭を作ります。カイコのほか
にも、繭を作る昆虫はたくさんいますが、糸の量と強さ
でカイコにかなうものはいません。一個の繭からは 、約千五百メートルの絹糸が取れます。着物を一着作る
には、約二千六百個の繭が必要で、それだけの繭を作る
ために必要なクワの葉は百キログラムです。「ところ
で、カイコさん。クワの葉以外は食べないんですか。」
「クワンヨ。」(※最近の品種改良では、クワの葉
以外のものを食べるカイコも作られています)梅雨の
季節をいろどってくれる花に、アジサイがあります。こ
の花は、いろいろな色に変化することで有名で、そのせ
いか、花言葉には「移り気な心」などというものもあり
ます。そのほかの花言葉、「強い愛情」や「家族の結び
つき」は、きっと、小さい花がたくさんあつまって咲い
ているところからきたのでしょう。アジサイの花の
色は、咲き始めの緑がかった白っぽい青色から、薄いピ
ンク、紫、そしてしだいに濃い紫や藍色に変わっていき
ます。 色がついているこれらの部分は、じつは花びらで
はありません。葉が変化したもので、「がく」と呼ばれ
ることもあります。本当の花は、このがくの真ん中に、
ちょこんと小さく丸くついています。このように花以外
の部分が発達して花のようになっている花を装飾花と言
います。南国の雰囲気を持つブーゲンビリアや、クリス
マスに飾られるポインセチアなども装飾花です。で
は、アジサイの花は、どうして色が変わるのでしょうか
。どんな色のアジサイも、その色の素になっている
のは、アントシアニンという色素です。この色素は、条
件によって、赤い色を出したり、青い色を出したりする
ことができます。ここで、色の鍵を握っているのが、ア
ジサイが土の中から吸い上げる、アルミニウムという金
属です。一円玉は、このアルミニウムで作られています
。土の中には、アルミニウムをはじめ、いろいろな金属
が目に見えない形で溶けています。これを植物の根が吸
い上げるのです。アルミニウムが多いと、アジサイ
は青くなります。 逆に、アルミニウムが少ないと赤くな
ります。その中間は紫です。このアルミニウムは、土の
性質が酸性だと、土の中にイオンとして溶け出すので、
アジサイが吸い上げやすくなります。逆に、土の性質が
アルカリ性だと、アルミニウムはアルカリと結びついて
塩になってしまうので、アジサイが吸い上げにくくなり
ます。こうして、土の∵性質によって、アジサイの色は
変わるのです。ですから、おとなりのアジサイの色が気
に入って分けてもらい、わが家に植えても、同じ色にな
るとは限りません。ところで、日本のアジサイを世
界に紹介したのは、江戸時代の終わりごろに日本にやっ
てきたドイツ人の医者、シーボルトでした。この時代の
日本は、鎖国の状態で、人も物も自由に外国と行き来す
ることはできませんでした。しばらくのあいだ日本に暮
らした彼は、植物にもたいへん興味を持ち、日本のいろ
いろな植物を持ち帰りました。シーボルトは、その中で
もひときわ大きくてきれいなアジサイに、「オタクサ」
という名前をつけました。これは、シーボルトが日本に
いるときに愛した女性、「お滝さん」の名前です。ドイ
ツに戻ったシーボルトは、庭にそのオタクサを植えて、
「オー、タクサんのオタクサが咲いた。」と見とれてい
たかもしれません。アジサイと同じように、人間も
、好きな人の前で赤くなったり、宿題を忘れて青くなっ たりしますが、これはアルミニウムとは関係ありません
。コーヒーは、世界で最も親しまれている飲み物のひと
つです。世界中で、毎日二十億杯分ものコーヒーが消費
されています。世界中で売り買いされるコーヒーの量は
膨大で、その売上額は年間八兆円にも上ります。こ
のように世界中で親しまれているコーヒーですが、その
歴史がアフリカに始まったことはあまり知られていませ
ん。コーヒーの木は、もともとエチオピアの高原に自生
していました。コーヒーは、十五世紀までもっぱらアラ
ビア半島でのみ栽培され、国外に持ち出すことはできま
せんでした。十七世紀に、オランダ人がコーヒーの
苗木をオランダ本国へ持ち込みました。そして十八世紀
に、コーヒーの木は、フランスの国王ルイ十四世への贈
り物として、フランスの植物園に送られました。 当時、
コーヒーの木は大変な貴重品でした。やがて、フラ
ンスはコーヒーの栽培と輸出に乗り出そうとしますが、
計画はことごとく失敗します。あるとき、一人の海
軍士官が、ひそかにコーヒーの苗木を持ち出し、カリブ
海にある自分の農園で栽培しようと考えました。当時の
船は帆船で、長い船旅の間に飲む水もなくなるほどでし
たが、彼は自分の飲み水を苗木に分け与えて、ようやく
農園にたどりつきました。海を渡ったこの苗木は、
その後、南北アメリカ諸国にコーヒーの栽培を広めるも
ととなりました。今では、八十もの国や地域で、推定百
五十億本のコーヒーの木が栽培されています。コー
ヒーの成分であるカフェインは、神経を興奮させる働き
があります。人間の体にはもともとドーパミンという物
質があり、これは快感を感じるとたくさん分泌されます
。このドーパミンの働きを抑制する物質がアデノシンで
、人間は普段興奮と安静のバランスを∵とって暮らして
います。ところが、カフェインはアデノシンと形が似て
いるので、アデノシンのかわりに先にドーパミンに結び ついてしまい、そのためにコーヒーを飲むとドーパミン
の興奮が続くようになります。子供のうち、コーヒーは
控えた方がよいと言われるのはこのためです。さて
、コーヒー豆には、いろいろな種類があります。有名な
ところでは、ブルーマウンテン、モカ、コナ、キリマン
ジャロなどです。みなさんも大きくなったら、いろいろ
なコーヒーの味を飲み比べてみてはどんなモンジャロ。
クマムシの体長は、最大でも一ミリメートルぐらいで
す。八本の脚でゆっくり歩く姿がクマに似ているので、
クマムシと名づけられました。熱帯地方から北極や南極
まで、深海の底から高山の上まで、地球上のほぼあらゆ
るところに生息しています。このクマムシは小さな
スーパーマンです。といっても、空を飛んだり列車を止 めたりするわけではありません。実は、この生き物はほ
とんど不死身なのです。クマムシの体の大部分は水
分ですが、周囲が乾燥してくると、水分を極度に減らし
、樽のような形になって眠りに入ります。この樽の
状態になったクマムシは、宇宙の真空の中でも生き続け
ます。また、マイナス二百七十二度という絶対零度の世
界でも、摂氏百五十度という熱湯より熱い温度の中でも
生きています。更に、七万五千気圧という高圧を受けて
も、人間の致死量の千倍のX線を浴びても、樽になった
まま生きているのです。百二十年間眠っていたクマムシ
に水を与えたら動き出したという報告もあります。 クマムシはどこにでも棲んでいますが、採集するには、
コケの中を探すのが簡単です。建物の陰などに生えてい
るコケを取ってきて、ストッキングなど細かい網の上に
乗せます。コケに水を注ぐと、網の下に落ちてくる水と
一緒にクマムシも落ちてきます。それを顕微鏡で丹念に
探すのです。樽状態になったクマムシを参考にして
、人間の臓器を長期間保存する研究も行われています。
将来、宇宙飛行で何年も先の星に行くときには、人間も
樽になって行くようになるかもしれません。「クマム
シさん、こんなに過酷な実験をされて、よク、マー、ム
シしていられましたね。もっと厳しい実験をされたらど
うしますか。」「タルになったる。」最近では、 ペットボトル入りのお茶や缶入りのお茶が、たくさん売
られるようになってきました。緑茶、ウーロン茶、紅茶
、その他さまざまな種類のお茶がブレンドされて、いろ
いろな名前で売られています。では、これらのお茶は、
みんな違う種類の木からとれるのでしょうか。じつ
は、緑茶もウーロン茶も紅茶も、同じお茶の木の葉が原
料です。それなのに、なぜ色も味も違うかというと、作
り方が違うからです。お茶を作るには、まず、お茶
の木から葉を摘み取ります。このあと、放っておくと、
お茶の葉はすぐに発酵を始めます。お茶の葉の中にある
酸化酵素が酸素を取り込んで、お茶の葉の成分を変化さ
せてしまうのです。特にお茶の葉の中にあるカテキンや
ビタミンCは、酸素と結びつきやすく、たくさんの酸素
と結びつくほど、お茶の色も緑色から茶色そして赤色へ
と変化していきます。ですから、緑茶とウーロン茶と紅 茶の色の違いは、酸化の色の違いなのです。緑茶は
、葉を摘み取るとすぐに熱い蒸気に当てたり釜で炒った
りして、発酵させないようにします。熱い温度にするこ
とで、お茶の葉の中の酵素がこわれて発酵できなくなる
のです。このお茶の葉をよくもんで形を整え、乾燥させ
たものが緑茶です。発酵しないので緑の色が残り、カテ
キンやビタミンCもたくさん残っています。これに
対して、ウーロン茶や紅茶は、逆に発酵を助けてやるた
めに摘み取りの後に別の処理をします。お茶の葉を日光
に当てたり、温風に当てたりして葉をしおれさせる作業
です。ウーロン茶は、半発酵の状態のときに釜で炒って
発酵を止めます。そして乾燥をさせ、再び加熱して香ば
しさを出します。紅茶は完全発酵になるまで発酵させ、
乾燥させて完成させます。∵ウーロン茶と紅茶は、
発酵させた分だけ緑茶に比べてカテキンやビタミンCが
少なくなりますが、その代わりに、大変よい香りを持っ
ています。緑茶に多く含まれているカテキンは、緑
茶の渋味と色を作る大切な成分ですが、最近、このカテ
キンの殺菌作用が注目されています。カテキンには、イ
ンフルエンザのウィルスや食中毒の菌の働きを抑える力 があります。ですから、カゼのはやる季節には、お茶で
うがいをするといいそうです。また、カテキンには
、癌を予防したり、高血圧を下げたり、虫歯になりにく
くしたり、といった健康にいい効果もあると言われてい
ます。私たち日本人は、昔から食事のときに緑茶を飲ん
できましたが、これは健康のためにはとてもいいことだ
ったのです。では、カテキンの多い緑茶と、香りの
よいウーロン茶や紅茶を混ぜて飲んだらどうなるでしょ
う。答えは、ゴチャゴ茶です。そりゃ、無茶苦茶や。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 省エネルギーという言葉を聞いたことが
あるでしょう。
部屋の電気をこまめに消したり、冷房や暖房の温度設定
を控え目にしたり、エレベーターや自動車をやめて自分
の足で歩くように心がけたりすることです。今は、身近
な省エネルギーから広がって、社会全体で取り組んでい
こうという運動になっています。エネルギーを生みだす
ためには、もとになる資源が必要です。ちょうど私たち
人間や動物が、歩いたり手を動かしたり喋ったりするた
めに、食べ物をとるのと同じです。ところが、地球の資
源には限りがありますから、ひとりひとりが節約をして
いかなくてはなりません。また、資源をエネルギーに変
換するためには、要らないものを空気中に排出しなくて
はなりません。二酸化炭素などの排出物は、大気汚染を
引き起こし、やがては地球全体の気温を徐々にあげてし
まいます。これが地球温暖化と呼ばれるもので、異常気 象や農作物への影響、海水面の上昇、紫外線の問題など
、さまざまな問題の原因となっています。人間だけでな
く、すべての生き物の住みやすい環境を守るためにも、
エネルギーの節約は必要なのです。では、使ってもなく
なる心配のないエネルギーはないのでしょうか。それは
、身の回りに見つけることができます。冬の寒い日の猫
は日の当たる明るい窓際で、いちばん温かそうな床の上
に、幸せそうにまるくなってねむっています。猫は日向
ぼっこの名人です。このとき、猫の体の毛のあいだにさ
しこんだ太陽は、猫の毛の奥深くに入りこみ、熱に変化
してほとんどが猫の体に吸収されています。とても効率
のいい、太陽エネルギー活用の仕組みになっているので
す。忙しいときに、よく猫の手も借りたいと言いますが
、寒いときには、猫の毛も借りたいと言えるかもしれま
せん。この猫の日向ぼっこの原理を、私たちのくらしに 活用したもの∵が、太陽熱温水器やソーラーハウスとい
う住宅です。太陽のエネルギーを建物の中にとらえて、
それでお風呂の温水をつくったり、温水で建物全体を暖
房したりしています。更に、ソーラーハウスが猫の日向
ぼっこより一歩進んでいるところは、太陽のエネルギー
を電気エネルギーに変えられることです。天気のいいと
きに発電した電気で、家の中の電化製品が使えます。あ
まった電気は、電力会社が買い取ってほかの家で使われ
ます。科学の力を使っていくと、日向ぼっこのおすそ分
けができるのです。省エネルギーという節約の考え方か
ら、エネルギーの変換という新しい考え方に目を向ける
と、さまざまな可能性が見えてきます。太陽のような自
然のエネルギーから、より効率のよいエネルギーがもら
えるように科学の研究は続いています。日向ぼっこをし
ている猫も言っています。「ソーラーエネルギーか。 ソーラー、エエネエ。」カイコは、じょうぶな絹糸をとる
ために、昔から人間が飼育してきた昆虫です。中国では
、四千年以上も前からカイコを育て、美しい絹織物が作
られていました。やがて中国で作られた絹織物は、イン
ド、ペルシア、トルコ、ローマなどに運ばれるようにな
りました。そのころの商人が通った道は、シルクロード
とよばれています。ローマでは、絹はたいへん高価なも
のであり、同じ重さの金と交換されるほどでした。
カイコの飼育は、世界各国に広まっていきました。日本
でも大正時代の終わりから昭和の初めにかけて、養蚕が
さかんになりました。当時、カイコの品種改良が進み、
それまでの二倍から三倍もの長さの糸が取れるようにな
ったのです。また、自然の状態では、カイコが生まれて
くるのは春と夏の年二回ですが、季節を問わず何度でも
カイコを飼育することができるようになりました。 そのころ、生糸や絹織物の輸出は、日本の輸出総額の半分近
くを占めていました。生まれてきたカイコの成虫、
カイコガは、羽が小さいわりに腹が大きくて、筋肉も弱
いため飛ぶことができません。人間に飼われているカイ
コガは、野外を飛びまわって仲間を見つける必要もなく
、幼虫の食べ物であるクワの木をさがしてたまごを生む
必要もありません。メスは、クワの木でなくても、手近
なものに何でもたまごを産みつけます。まるで、人間が
ちゃんと幼虫の世話をしてくれることを知っているよう
です。飛ぶ必要がなくなったカイコガは、飛ぶ能力を失
ってしまったのです。生まれた幼虫は、クワの葉を
食べてどんどん大きくなります。カイコを育てているカ
イコ棚では、幼虫がバリバリとクワの葉を食べる音が、
一日中雨の音のように聞こえます。これほど食欲旺盛な
幼虫ですが、歩く力がたいへん弱く、三十センチでもク
ワの葉から離れたところに置くと、自分でそこまでた どりつくことができません。歩いて「どこカ、イコう」
とはしないのです。また、ものにつかまる力も弱い
ので、野外のクワの木にカイコを放しても、生きていく
ことができません。人間に頼ってクワをクワせてもらっ
ているカイコは、農家の人にとっては「カイコ」という
より「可愛い子」なのかもしれません。長い間、人
に飼われてきたカイコは、人間の世話なしでは生きられ
ないようになりました。人間にとって、ほとんど動かな
いカイコは、飼育するのにたいへん都合がよい昆虫です
。大きく育った幼虫は、さなぎになる準備を始めま
す。人間がボール紙などで作った枠の中に、二日ぐらい
かかって厚くてじょうぶな繭を作ります。カイコのほか
にも、繭を作る昆虫はたくさんいますが、糸の量と強さ
でカイコにかなうものはいません。一個の繭からは 、約千五百メートルの絹糸が取れます。着物を一着作る
には、約二千六百個の繭が必要で、それだけの繭を作る
ために必要なクワの葉は百キログラムです。「ところ
で、カイコさん。クワの葉以外は食べないんですか。」
「クワンヨ。」(※最近の品種改良では、クワの葉
以外のものを食べるカイコも作られています)梅雨の
季節をいろどってくれる花に、アジサイがあります。こ
の花は、いろいろな色に変化することで有名で、そのせ
いか、花言葉には「移り気な心」などというものもあり
ます。そのほかの花言葉、「強い愛情」や「家族の結び
つき」は、きっと、小さい花がたくさんあつまって咲い
ているところからきたのでしょう。アジサイの花の
色は、咲き始めの緑がかった白っぽい青色から、薄いピ
ンク、紫、そしてしだいに濃い紫や藍色に変わっていき
ます。 色がついているこれらの部分は、じつは花びらで
はありません。葉が変化したもので、「がく」と呼ばれ
ることもあります。本当の花は、このがくの真ん中に、
ちょこんと小さく丸くついています。このように花以外
の部分が発達して花のようになっている花を装飾花と言
います。南国の雰囲気を持つブーゲンビリアや、クリス
マスに飾られるポインセチアなども装飾花です。で
は、アジサイの花は、どうして色が変わるのでしょうか
。どんな色のアジサイも、その色の素になっている
のは、アントシアニンという色素です。この色素は、条
件によって、赤い色を出したり、青い色を出したりする
ことができます。ここで、色の鍵を握っているのが、ア
ジサイが土の中から吸い上げる、アルミニウムという金
属です。一円玉は、このアルミニウムで作られています
。土の中には、アルミニウムをはじめ、いろいろな金属
が目に見えない形で溶けています。これを植物の根が吸
い上げるのです。アルミニウムが多いと、アジサイ
は青くなります。 逆に、アルミニウムが少ないと赤くな
ります。その中間は紫です。このアルミニウムは、土の
性質が酸性だと、土の中にイオンとして溶け出すので、
アジサイが吸い上げやすくなります。逆に、土の性質が
アルカリ性だと、アルミニウムはアルカリと結びついて
塩になってしまうので、アジサイが吸い上げにくくなり
ます。こうして、土の∵性質によって、アジサイの色は
変わるのです。ですから、おとなりのアジサイの色が気
に入って分けてもらい、わが家に植えても、同じ色にな
るとは限りません。ところで、日本のアジサイを世
界に紹介したのは、江戸時代の終わりごろに日本にやっ
てきたドイツ人の医者、シーボルトでした。この時代の
日本は、鎖国の状態で、人も物も自由に外国と行き来す
ることはできませんでした。しばらくのあいだ日本に暮
らした彼は、植物にもたいへん興味を持ち、日本のいろ
いろな植物を持ち帰りました。シーボルトは、その中で
もひときわ大きくてきれいなアジサイに、「オタクサ」
という名前をつけました。これは、シーボルトが日本に
いるときに愛した女性、「お滝さん」の名前です。ドイ
ツに戻ったシーボルトは、庭にそのオタクサを植えて、
「オー、タクサんのオタクサが咲いた。」と見とれてい
たかもしれません。アジサイと同じように、人間も
、好きな人の前で赤くなったり、宿題を忘れて青くなっ たりしますが、これはアルミニウムとは関係ありません
。コーヒーは、世界で最も親しまれている飲み物のひと
つです。世界中で、毎日二十億杯分ものコーヒーが消費
されています。世界中で売り買いされるコーヒーの量は
膨大で、その売上額は年間八兆円にも上ります。こ
のように世界中で親しまれているコーヒーですが、その
歴史がアフリカに始まったことはあまり知られていませ
ん。コーヒーの木は、もともとエチオピアの高原に自生
していました。コーヒーは、十五世紀までもっぱらアラ
ビア半島でのみ栽培され、国外に持ち出すことはできま
せんでした。十七世紀に、オランダ人がコーヒーの
苗木をオランダ本国へ持ち込みました。そして十八世紀
に、コーヒーの木は、フランスの国王ルイ十四世への贈
り物として、フランスの植物園に送られました。 省エネルギーという言葉を聞いたことが
あるでしょう。
部屋の電気をこまめに消したり、冷房や暖房の温度設定
を控え目にしたり、エレベーターや自動車をやめて自分
の足で歩くように心がけたりすることです。今は、身近
な省エネルギーから広がって、社会全体で取り組んでい
こうという運動になっています。エネルギーを生みだす
ためには、もとになる資源が必要です。ちょうど私たち
人間や動物が、歩いたり手を動かしたり喋ったりするた
めに、食べ物をとるのと同じです。ところが、地球の資
源には限りがありますから、ひとりひとりが節約をして
いかなくてはなりません。また、資源をエネルギーに変
換するためには、要らないものを空気中に排出しなくて
はなりません。二酸化炭素などの排出物は、大気汚染を
引き起こし、やがては地球全体の気温を徐々にあげてし
まいます。これが地球温暖化と呼ばれるもので、異常気 象や農作物への影響、海水面の上昇、紫外線の問題など
、さまざまな問題の原因となっています。人間だけでな
く、すべての生き物の住みやすい環境を守るためにも、
エネルギーの節約は必要なのです。では、使ってもなく
なる心配のないエネルギーはないのでしょうか。それは
、身の回りに見つけることができます。冬の寒い日の猫
は日の当たる明るい窓際で、いちばん温かそうな床の上
に、幸せそうにまるくなってねむっています。猫は日向
ぼっこの名人です。このとき、猫の体の毛のあいだにさ
しこんだ太陽は、猫の毛の奥深くに入りこみ、熱に変化
してほとんどが猫の体に吸収されています。とても効率
のいい、太陽エネルギー活用の仕組みになっているので
す。忙しいときに、よく猫の手も借りたいと言いますが
、寒いときには、猫の毛も借りたいと言えるかもしれま
せん。この猫の日向ぼっこの原理を、私たちのくらしに 活用したもの∵が、太陽熱温水器やソーラーハウスとい
う住宅です。太陽のエネルギーを建物の中にとらえて、
それでお風呂の温水をつくったり、温水で建物全体を暖
房したりしています。更に、ソーラーハウスが猫の日向
ぼっこより一歩進んでいるところは、太陽のエネルギー
を電気エネルギーに変えられることです。天気のいいと
きに発電した電気で、家の中の電化製品が使えます。あ
まった電気は、電力会社が買い取ってほかの家で使われ
ます。科学の力を使っていくと、日向ぼっこのおすそ分
けができるのです。省エネルギーという節約の考え方か
ら、エネルギーの変換という新しい考え方に目を向ける
と、さまざまな可能性が見えてきます。太陽のような自
然のエネルギーから、より効率のよいエネルギーがもら
えるように科学の研究は続いています。日向ぼっこをし
ている猫も言っています。「ソーラーエネルギーか。 ソーラー、エエネエ。」カイコは、じょうぶな絹糸をとる
ために、昔から人間が飼育してきた昆虫です。中国では
、四千年以上も前からカイコを育て、美しい絹織物が作
られていました。やがて中国で作られた絹織物は、イン
ド、ペルシア、トルコ、ローマなどに運ばれるようにな
りました。そのころの商人が通った道は、シルクロード
とよばれています。ローマでは、絹はたいへん高価なも
のであり、同じ重さの金と交換されるほどでした。
カイコの飼育は、世界各国に広まっていきました。日本
でも大正時代の終わりから昭和の初めにかけて、養蚕が
さかんになりました。当時、カイコの品種改良が進み、
それまでの二倍から三倍もの長さの糸が取れるようにな
ったのです。また、自然の状態では、カイコが生まれて
くるのは春と夏の年二回ですが、季節を問わず何度でも
カイコを飼育することができるようになりました。 そのころ、生糸や絹織物の輸出は、日本の輸出総額の半分近
くを占めていました。生まれてきたカイコの成虫、
カイコガは、羽が小さいわりに腹が大きくて、筋肉も弱
いため飛ぶことができません。人間に飼われているカイ
コガは、野外を飛びまわって仲間を見つける必要もなく
、幼虫の食べ物であるクワの木をさがしてたまごを生む
必要もありません。メスは、クワの木でなくても、手近
なものに何でもたまごを産みつけます。まるで、人間が
ちゃんと幼虫の世話をしてくれることを知っているよう
です。飛ぶ必要がなくなったカイコガは、飛ぶ能力を失
ってしまったのです。生まれた幼虫は、クワの葉を
食べてどんどん大きくなります。カイコを育てているカ
イコ棚では、幼虫がバリバリとクワの葉を食べる音が、
一日中雨の音のように聞こえます。これほど食欲旺盛な
幼虫ですが、歩く力がたいへん弱く、三十センチでもク
ワの葉から離れたところに置くと、自分でそこまでた どりつくことができません。歩いて「どこカ、イコう」
とはしないのです。また、ものにつかまる力も弱い
ので、野外のクワの木にカイコを放しても、生きていく
ことができません。人間に頼ってクワをクワせてもらっ
ているカイコは、農家の人にとっては「カイコ」という
より「可愛い子」なのかもしれません。長い間、人
に飼われてきたカイコは、人間の世話なしでは生きられ
ないようになりました。人間にとって、ほとんど動かな
いカイコは、飼育するのにたいへん都合がよい昆虫です
。大きく育った幼虫は、さなぎになる準備を始めま
す。人間がボール紙などで作った枠の中に、二日ぐらい
かかって厚くてじょうぶな繭を作ります。カイコのほか
にも、繭を作る昆虫はたくさんいますが、糸の量と強さ
でカイコにかなうものはいません。一個の繭からは 、約千五百メートルの絹糸が取れます。着物を一着作る
には、約二千六百個の繭が必要で、それだけの繭を作る
ために必要なクワの葉は百キログラムです。「ところ
で、カイコさん。クワの葉以外は食べないんですか。」
「クワンヨ。」(※最近の品種改良では、クワの葉
以外のものを食べるカイコも作られています)梅雨の
季節をいろどってくれる花に、アジサイがあります。こ
の花は、いろいろな色に変化することで有名で、そのせ
いか、花言葉には「移り気な心」などというものもあり
ます。そのほかの花言葉、「強い愛情」や「家族の結び
つき」は、きっと、小さい花がたくさんあつまって咲い
ているところからきたのでしょう。アジサイの花の
色は、咲き始めの緑がかった白っぽい青色から、薄いピ
ンク、紫、そしてしだいに濃い紫や藍色に変わっていき
ます。 色がついているこれらの部分は、じつは花びらで
はありません。葉が変化したもので、「がく」と呼ばれ
ることもあります。本当の花は、このがくの真ん中に、
ちょこんと小さく丸くついています。このように花以外
の部分が発達して花のようになっている花を装飾花と言
います。南国の雰囲気を持つブーゲンビリアや、クリス
マスに飾られるポインセチアなども装飾花です。で
は、アジサイの花は、どうして色が変わるのでしょうか
。どんな色のアジサイも、その色の素になっている
のは、アントシアニンという色素です。この色素は、条
件によって、赤い色を出したり、青い色を出したりする
ことができます。ここで、色の鍵を握っているのが、ア
ジサイが土の中から吸い上げる、アルミニウムという金
属です。一円玉は、このアルミニウムで作られています
。土の中には、アルミニウムをはじめ、いろいろな金属
が目に見えない形で溶けています。これを植物の根が吸
い上げるのです。アルミニウムが多いと、アジサイ
は青くなります。 逆に、アルミニウムが少ないと赤くな
ります。その中間は紫です。このアルミニウムは、土の
性質が酸性だと、土の中にイオンとして溶け出すので、
アジサイが吸い上げやすくなります。逆に、土の性質が
アルカリ性だと、アルミニウムはアルカリと結びついて
塩になってしまうので、アジサイが吸い上げにくくなり
ます。こうして、土の∵性質によって、アジサイの色は
変わるのです。ですから、おとなりのアジサイの色が気
に入って分けてもらい、わが家に植えても、同じ色にな
るとは限りません。ところで、日本のアジサイを世
界に紹介したのは、江戸時代の終わりごろに日本にやっ
てきたドイツ人の医者、シーボルトでした。この時代の
日本は、鎖国の状態で、人も物も自由に外国と行き来す
ることはできませんでした。しばらくのあいだ日本に暮
らした彼は、植物にもたいへん興味を持ち、日本のいろ
いろな植物を持ち帰りました。シーボルトは、その中で
もひときわ大きくてきれいなアジサイに、「オタクサ」
という名前をつけました。これは、シーボルトが日本に
いるときに愛した女性、「お滝さん」の名前です。ドイ
ツに戻ったシーボルトは、庭にそのオタクサを植えて、
「オー、タクサんのオタクサが咲いた。」と見とれてい
たかもしれません。アジサイと同じように、人間も
、好きな人の前で赤くなったり、宿題を忘れて青くなっ たりしますが、これはアルミニウムとは関係ありません
。コーヒーは、世界で最も親しまれている飲み物のひと
つです。世界中で、毎日二十億杯分ものコーヒーが消費
されています。世界中で売り買いされるコーヒーの量は
膨大で、その売上額は年間八兆円にも上ります。こ
のように世界中で親しまれているコーヒーですが、その
歴史がアフリカに始まったことはあまり知られていませ
ん。コーヒーの木は、もともとエチオピアの高原に自生
していました。コーヒーは、十五世紀までもっぱらアラ
ビア半島でのみ栽培され、国外に持ち出すことはできま
せんでした。十七世紀に、オランダ人がコーヒーの
苗木をオランダ本国へ持ち込みました。そして十八世紀
に、コーヒーの木は、フランスの国王ルイ十四世への贈
り物として、フランスの植物園に送られました。 当時、
コーヒーの木は大変な貴重品でした。やがて、フラ
ンスはコーヒーの栽培と輸出に乗り出そうとしますが、
計画はことごとく失敗します。あるとき、一人の海
軍士官が、ひそかにコーヒーの苗木を持ち出し、カリブ
海にある自分の農園で栽培しようと考えました。当時の
船は帆船で、長い船旅の間に飲む水もなくなるほどでし
たが、彼は自分の飲み水を苗木に分け与えて、ようやく
農園にたどりつきました。海を渡ったこの苗木は、
その後、南北アメリカ諸国にコーヒーの栽培を広めるも
ととなりました。今では、八十もの国や地域で、推定百
五十億本のコーヒーの木が栽培されています。コー
ヒーの成分であるカフェインは、神経を興奮させる働き
があります。人間の体にはもともとドーパミンという物
質があり、これは快感を感じるとたくさん分泌されます
。このドーパミンの働きを抑制する物質がアデノシンで
、人間は普段興奮と安静のバランスを∵とって暮らして
います。ところが、カフェインはアデノシンと形が似て
いるので、アデノシンのかわりに先にドーパミンに結び ついてしまい、そのためにコーヒーを飲むとドーパミン
の興奮が続くようになります。子供のうち、コーヒーは
控えた方がよいと言われるのはこのためです。さて
、コーヒー豆には、いろいろな種類があります。有名な
ところでは、ブルーマウンテン、モカ、コナ、キリマン
ジャロなどです。みなさんも大きくなったら、いろいろ
なコーヒーの味を飲み比べてみてはどんなモンジャロ。
クマムシの体長は、最大でも一ミリメートルぐらいで
す。八本の脚でゆっくり歩く姿がクマに似ているので、
クマムシと名づけられました。熱帯地方から北極や南極
まで、深海の底から高山の上まで、地球上のほぼあらゆ
るところに生息しています。このクマムシは小さな
スーパーマンです。といっても、空を飛んだり列車を止 めたりするわけではありません。実は、この生き物はほ
とんど不死身なのです。クマムシの体の大部分は水
分ですが、周囲が乾燥してくると、水分を極度に減らし
、樽のような形になって眠りに入ります。この樽の
状態になったクマムシは、宇宙の真空の中でも生き続け
ます。また、マイナス二百七十二度という絶対零度の世
界でも、摂氏百五十度という熱湯より熱い温度の中でも
生きています。更に、七万五千気圧という高圧を受けて
も、人間の致死量の千倍のX線を浴びても、樽になった
まま生きているのです。百二十年間眠っていたクマムシ
に水を与えたら動き出したという報告もあります。 クマムシはどこにでも棲んでいますが、採集するには、
コケの中を探すのが簡単です。建物の陰などに生えてい
るコケを取ってきて、ストッキングなど細かい網の上に
乗せます。コケに水を注ぐと、網の下に落ちてくる水と
一緒にクマムシも落ちてきます。それを顕微鏡で丹念に
探すのです。樽状態になったクマムシを参考にして
、人間の臓器を長期間保存する研究も行われています。
将来、宇宙飛行で何年も先の星に行くときには、人間も
樽になって行くようになるかもしれません。「クマム
シさん、こんなに過酷な実験をされて、よク、マー、ム
シしていられましたね。もっと厳しい実験をされたらど
うしますか。」「タルになったる。」最近では、 ペットボトル入りのお茶や缶入りのお茶が、たくさん売
られるようになってきました。緑茶、ウーロン茶、紅茶
、その他さまざまな種類のお茶がブレンドされて、いろ
いろな名前で売られています。では、これらのお茶は、
みんな違う種類の木からとれるのでしょうか。じつ
は、緑茶もウーロン茶も紅茶も、同じお茶の木の葉が原
料です。それなのに、なぜ色も味も違うかというと、作
り方が違うからです。お茶を作るには、まず、お茶
の木から葉を摘み取ります。このあと、放っておくと、
お茶の葉はすぐに発酵を始めます。お茶の葉の中にある
酸化酵素が酸素を取り込んで、お茶の葉の成分を変化さ
せてしまうのです。特にお茶の葉の中にあるカテキンや
ビタミンCは、酸素と結びつきやすく、たくさんの酸素
と結びつくほど、お茶の色も緑色から茶色そして赤色へ
と変化していきます。ですから、緑茶とウーロン茶と紅 茶の色の違いは、酸化の色の違いなのです。緑茶は
、葉を摘み取るとすぐに熱い蒸気に当てたり釜で炒った
りして、発酵させないようにします。熱い温度にするこ
とで、お茶の葉の中の酵素がこわれて発酵できなくなる
のです。このお茶の葉をよくもんで形を整え、乾燥させ
たものが緑茶です。発酵しないので緑の色が残り、カテ
キンやビタミンCもたくさん残っています。これに
対して、ウーロン茶や紅茶は、逆に発酵を助けてやるた
めに摘み取りの後に別の処理をします。お茶の葉を日光
に当てたり、温風に当てたりして葉をしおれさせる作業
です。ウーロン茶は、半発酵の状態のときに釜で炒って
発酵を止めます。そして乾燥をさせ、再び加熱して香ば
しさを出します。紅茶は完全発酵になるまで発酵させ、
乾燥させて完成させます。∵ウーロン茶と紅茶は、
発酵させた分だけ緑茶に比べてカテキンやビタミンCが
少なくなりますが、その代わりに、大変よい香りを持っ
ています。緑茶に多く含まれているカテキンは、緑
茶の渋味と色を作る大切な成分ですが、最近、このカテ
キンの殺菌作用が注目されています。カテキンには、イ
ンフルエンザのウィルスや食中毒の菌の働きを抑える力 があります。ですから、カゼのはやる季節には、お茶で
うがいをするといいそうです。また、カテキンには
、癌を予防したり、高血圧を下げたり、虫歯になりにく
くしたり、といった健康にいい効果もあると言われてい
ます。私たち日本人は、昔から食事のときに緑茶を飲ん
できましたが、これは健康のためにはとてもいいことだ
ったのです。では、カテキンの多い緑茶と、香りの
よいウーロン茶や紅茶を混ぜて飲んだらどうなるでしょ
う。答えは、ゴチャゴ茶です。そりゃ、無茶苦茶や。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 省エネルギーという言葉を聞いたことが
あるでしょう。
部屋の電気をこまめに消したり、冷房や暖房の温度設定
を控え目にしたり、エレベーターや自動車をやめて自分
の足で歩くように心がけたりすることです。今は、身近
な省エネルギーから広がって、社会全体で取り組んでい
こうという運動になっています。エネルギーを生みだす
ためには、もとになる資源が必要です。ちょうど私たち
人間や動物が、歩いたり手を動かしたり喋ったりするた
めに、食べ物をとるのと同じです。ところが、地球の資
源には限りがありますから、ひとりひとりが節約をして
いかなくてはなりません。また、資源をエネルギーに変
換するためには、要らないものを空気中に排出しなくて
はなりません。二酸化炭素などの排出物は、大気汚染を
引き起こし、やがては地球全体の気温を徐々にあげてし
まいます。これが地球温暖化と呼ばれるもので、異常気 象や農作物への影響、海水面の上昇、紫外線の問題など
、さまざまな問題の原因となっています。人間だけでな
く、すべての生き物の住みやすい環境を守るためにも、
エネルギーの節約は必要なのです。では、使ってもなく
なる心配のないエネルギーはないのでしょうか。それは
、身の回りに見つけることができます。冬の寒い日の猫
は日の当たる明るい窓際で、いちばん温かそうな床の上
に、幸せそうにまるくなってねむっています。猫は日向
ぼっこの名人です。このとき、猫の体の毛のあいだにさ
しこんだ太陽は、猫の毛の奥深くに入りこみ、熱に変化
してほとんどが猫の体に吸収されています。とても効率
のいい、太陽エネルギー活用の仕組みになっているので
す。忙しいときに、よく猫の手も借りたいと言いますが
、寒いときには、猫の毛も借りたいと言えるかもしれま
せん。この猫の日向ぼっこの原理を、私たちのくらしに 活用したもの∵が、太陽熱温水器やソーラーハウスとい
う住宅です。太陽のエネルギーを建物の中にとらえて、
それでお風呂の温水をつくったり、温水で建物全体を暖
房したりしています。更に、ソーラーハウスが猫の日向
ぼっこより一歩進んでいるところは、太陽のエネルギー
を電気エネルギーに変えられることです。天気のいいと
きに発電した電気で、家の中の電化製品が使えます。あ
まった電気は、電力会社が買い取ってほかの家で使われ
ます。科学の力を使っていくと、日向ぼっこのおすそ分
けができるのです。省エネルギーという節約の考え方か
ら、エネルギーの変換という新しい考え方に目を向ける
と、さまざまな可能性が見えてきます。太陽のような自
然のエネルギーから、より効率のよいエネルギーがもら
えるように科学の研究は続いています。日向ぼっこをし
ている猫も言っています。「ソーラーエネルギーか。 ソーラー、エエネエ。」カイコは、じょうぶな絹糸をとる
ために、昔から人間が飼育してきた昆虫です。中国では
、四千年以上も前からカイコを育て、美しい絹織物が作
られていました。やがて中国で作られた絹織物は、イン
ド、ペルシア、トルコ、ローマなどに運ばれるようにな
りました。そのころの商人が通った道は、シルクロード
とよばれています。ローマでは、絹はたいへん高価なも
のであり、同じ重さの金と交換されるほどでした。
カイコの飼育は、世界各国に広まっていきました。日本
でも大正時代の終わりから昭和の初めにかけて、養蚕が
さかんになりました。当時、カイコの品種改良が進み、
それまでの二倍から三倍もの長さの糸が取れるようにな
ったのです。また、自然の状態では、カイコが生まれて
くるのは春と夏の年二回ですが、季節を問わず何度でも
カイコを飼育することができるようになりました。 そのころ、生糸や絹織物の輸出は、日本の輸出総額の半分近
くを占めていました。生まれてきたカイコの成虫、
カイコガは、羽が小さいわりに腹が大きくて、筋肉も弱
いため飛ぶことができません。人間に飼われているカイ
コガは、野外を飛びまわって仲間を見つける必要もなく
、幼虫の食べ物であるクワの木をさがしてたまごを生む
必要もありません。メスは、クワの木でなくても、手近
なものに何でもたまごを産みつけます。まるで、人間が
ちゃんと幼虫の世話をしてくれることを知っているよう
です。飛ぶ必要がなくなったカイコガは、飛ぶ能力を失
ってしまったのです。生まれた幼虫は、クワの葉を
食べてどんどん大きくなります。カイコを育てているカ
イコ棚では、幼虫がバリバリとクワの葉を食べる音が、
一日中雨の音のように聞こえます。これほど食欲旺盛な
幼虫ですが、歩く力がたいへん弱く、三十センチでもク
ワの葉から離れたところに置くと、自分でそこまでた どりつくことができません。歩いて「どこカ、イコう」
とはしないのです。また、ものにつかまる力も弱い
ので、野外のクワの木にカイコを放しても、生きていく
ことができません。人間に頼ってクワをクワせてもらっ
ているカイコは、農家の人にとっては「カイコ」という
より「可愛い子」なのかもしれません。長い間、人
に飼われてきたカイコは、人間の世話なしでは生きられ
ないようになりました。人間にとって、ほとんど動かな
いカイコは、飼育するのにたいへん都合がよい昆虫です
。大きく育った幼虫は、さなぎになる準備を始めま
す。人間がボール紙などで作った枠の中に、二日ぐらい
かかって厚くてじょうぶな繭を作ります。カイコのほか
にも、繭を作る昆虫はたくさんいますが、糸の量と強さ
でカイコにかなうものはいません。一個の繭からは 、約千五百メートルの絹糸が取れます。着物を一着作る
には、約二千六百個の繭が必要で、それだけの繭を作る
ために必要なクワの葉は百キログラムです。「ところ
で、カイコさん。クワの葉以外は食べないんですか。」
「クワンヨ。」(※最近の品種改良では、クワの葉
以外のものを食べるカイコも作られています)梅雨の
季節をいろどってくれる花に、アジサイがあります。こ
の花は、いろいろな色に変化することで有名で、そのせ
いか、花言葉には「移り気な心」などというものもあり
ます。そのほかの花言葉、「強い愛情」や「家族の結び
つき」は、きっと、小さい花がたくさんあつまって咲い
ているところからきたのでしょう。アジサイの花の
色は、咲き始めの緑がかった白っぽい青色から、薄いピ
ンク、紫、そしてしだいに濃い紫や藍色に変わっていき
ます。 色がついているこれらの部分は、じつは花びらで
はありません。葉が変化したもので、「がく」と呼ばれ
ることもあります。本当の花は、このがくの真ん中に、
ちょこんと小さく丸くついています。このように花以外
の部分が発達して花のようになっている花を装飾花と言
います。南国の雰囲気を持つブーゲンビリアや、クリス
マスに飾られるポインセチアなども装飾花です。で
は、アジサイの花は、どうして色が変わるのでしょうか
。どんな色のアジサイも、その色の素になっている
のは、アントシアニンという色素です。この色素は、条
件によって、赤い色を出したり、青い色を出したりする
ことができます。ここで、色の鍵を握っているのが、ア
ジサイが土の中から吸い上げる、アルミニウムという金
属です。一円玉は、このアルミニウムで作られています
。土の中には、アルミニウムをはじめ、いろいろな金属
が目に見えない形で溶けています。これを植物の根が吸
い上げるのです。アルミニウムが多いと、アジサイ
は青くなります。 逆に、アルミニウムが少ないと赤くな
ります。その中間は紫です。このアルミニウムは、土の
性質が酸性だと、土の中にイオンとして溶け出すので、
アジサイが吸い上げやすくなります。逆に、土の性質が
アルカリ性だと、アルミニウムはアルカリと結びついて
塩になってしまうので、アジサイが吸い上げにくくなり
ます。こうして、土の∵性質によって、アジサイの色は
変わるのです。ですから、おとなりのアジサイの色が気
に入って分けてもらい、わが家に植えても、同じ色にな
るとは限りません。ところで、日本のアジサイを世
界に紹介したのは、江戸時代の終わりごろに日本にやっ
てきたドイツ人の医者、シーボルトでした。この時代の
日本は、鎖国の状態で、人も物も自由に外国と行き来す
ることはできませんでした。しばらくのあいだ日本に暮
らした彼は、植物にもたいへん興味を持ち、日本のいろ
いろな植物を持ち帰りました。シーボルトは、その中で
もひときわ大きくてきれいなアジサイに、「オタクサ」
という名前をつけました。これは、シーボルトが日本に
いるときに愛した女性、「お滝さん」の名前です。ドイ
ツに戻ったシーボルトは、庭にそのオタクサを植えて、
「オー、タクサんのオタクサが咲いた。」と見とれてい
たかもしれません。アジサイと同じように、人間も
、好きな人の前で赤くなったり、宿題を忘れて青くなっ たりしますが、これはアルミニウムとは関係ありません
。コーヒーは、世界で最も親しまれている飲み物のひと
つです。世界中で、毎日二十億杯分ものコーヒーが消費
されています。世界中で売り買いされるコーヒーの量は
膨大で、その売上額は年間八兆円にも上ります。こ
のように世界中で親しまれているコーヒーですが、その
歴史がアフリカに始まったことはあまり知られていませ
ん。コーヒーの木は、もともとエチオピアの高原に自生
していました。コーヒーは、十五世紀までもっぱらアラ
ビア半島でのみ栽培され、国外に持ち出すことはできま
せんでした。十七世紀に、オランダ人がコーヒーの
苗木をオランダ本国へ持ち込みました。そして十八世紀
に、コーヒーの木は、フランスの国王ルイ十四世への贈
り物として、フランスの植物園に送られました。 当時、
コーヒーの木は大変な貴重品でした。やがて、フラ
ンスはコーヒーの栽培と輸出に乗り出そうとしますが、
計画はことごとく失敗します。あるとき、一人の海
軍士官が、ひそかにコーヒーの苗木を持ち出し、カリブ
海にある自分の農園で栽培しようと考えました。当時の
船は帆船で、長い船旅の間に飲む水もなくなるほどでし
たが、彼は自分の飲み水を苗木に分け与えて、ようやく
農園にたどりつきました。海を渡ったこの苗木は、
その後、南北アメリカ諸国にコーヒーの栽培を広めるも
ととなりました。今では、八十もの国や地域で、推定百
五十億本のコーヒーの木が栽培されています。コー
ヒーの成分であるカフェインは、神経を興奮させる働き
があります。人間の体にはもともとドーパミンという物
質があり、これは快感を感じるとたくさん分泌されます
。このドーパミンの働きを抑制する物質がアデノシンで
、人間は普段興奮と安静のバランスを∵とって暮らして
います。ところが、カフェインはアデノシンと形が似て
いるので、アデノシンのかわりに先にドーパミンに結び ついてしまい、そのためにコーヒーを飲むとドーパミン
の興奮が続くようになります。子供のうち、コーヒーは
控えた方がよいと言われるのはこのためです。さて
、コーヒー豆には、いろいろな種類があります。有名な
ところでは、ブルーマウンテン、モカ、コナ、キリマン
ジャロなどです。みなさんも大きくなったら、いろいろ
なコーヒーの味を飲み比べてみてはどんなモンジャロ。
クマムシの体長は、最大でも一ミリメートルぐらいで
す。八本の脚でゆっくり歩く姿がクマに似ているので、
クマムシと名づけられました。熱帯地方から北極や南極
まで、深海の底から高山の上まで、地球上のほぼあらゆ
るところに生息しています。このクマムシは小さな
スーパーマンです。といっても、空を飛んだり列車を止 めたりするわけではありません。実は、この生き物はほ
とんど不死身なのです。クマムシの体の大部分は水
分ですが、周囲が乾燥してくると、水分を極度に減らし
、樽のような形になって眠りに入ります。この樽の
状態になったクマムシは、宇宙の真空の中でも生き続け
ます。また、マイナス二百七十二度という絶対零度の世
界でも、摂氏百五十度という熱湯より熱い温度の中でも
生きています。更に、七万五千気圧という高圧を受けて
も、人間の致死量の千倍のX線を浴びても、樽になった
まま生きているのです。百二十年間眠っていたクマムシ
に水を与えたら動き出したという報告もあります。 クマムシはどこにでも棲んでいますが、採集するには、
コケの中を探すのが簡単です。建物の陰などに生えてい
るコケを取ってきて、ストッキングなど細かい網の上に
乗せます。コケに水を注ぐと、網の下に落ちてくる水と
一緒にクマムシも落ちてきます。それを顕微鏡で丹念に
探すのです。樽状態になったクマムシを参考にして
、人間の臓器を長期間保存する研究も行われています。
将来、宇宙飛行で何年も先の星に行くときには、人間も
樽になって行くようになるかもしれません。「クマム
シさん、こんなに過酷な実験をされて、よク、マー、ム
シしていられましたね。もっと厳しい実験をされたらど
うしますか。」「タルになったる。」最近では、 ペットボトル入りのお茶や缶入りのお茶が、たくさん売
られるようになってきました。緑茶、ウーロン茶、紅茶
、その他さまざまな種類のお茶がブレンドされて、いろ
いろな名前で売られています。では、これらのお茶は、
みんな違う種類の木からとれるのでしょうか。じつ
は、緑茶もウーロン茶も紅茶も、同じお茶の木の葉が原
料です。それなのに、なぜ色も味も違うかというと、作
り方が違うからです。お茶を作るには、まず、お茶
の木から葉を摘み取ります。このあと、放っておくと、
お茶の葉はすぐに発酵を始めます。お茶の葉の中にある
酸化酵素が酸素を取り込んで、お茶の葉の成分を変化さ
せてしまうのです。特にお茶の葉の中にあるカテキンや
ビタミンCは、酸素と結びつきやすく、たくさんの酸素
と結びつくほど、お茶の色も緑色から茶色そして赤色へ
と変化していきます。ですから、緑茶とウーロン茶と紅 茶の色の違いは、酸化の色の違いなのです。緑茶は
、葉を摘み取るとすぐに熱い蒸気に当てたり釜で炒った
りして、発酵させないようにします。熱い温度にするこ
とで、お茶の葉の中の酵素がこわれて発酵できなくなる
のです。このお茶の葉をよくもんで形を整え、乾燥させ
たものが緑茶です。発酵しないので緑の色が残り、カテ
キンやビタミンCもたくさん残っています。これに
対して、ウーロン茶や紅茶は、逆に発酵を助けてやるた
めに摘み取りの後に別の処理をします。お茶の葉を日光
に当てたり、温風に当てたりして葉をしおれさせる作業
です。ウーロン茶は、半発酵の状態のときに釜で炒って
発酵を止めます。そして乾燥をさせ、再び加熱して香ば
しさを出します。紅茶は完全発酵になるまで発酵させ、
乾燥させて完成させます。∵ウーロン茶と紅茶は、
発酵させた分だけ緑茶に比べてカテキンやビタミンCが
少なくなりますが、その代わりに、大変よい香りを持っ
ています。緑茶に多く含まれているカテキンは、緑
茶の渋味と色を作る大切な成分ですが、最近、このカテ
キンの殺菌作用が注目されています。カテキンには、イ
ンフルエンザのウィルスや食中毒の菌の働きを抑える力 があります。ですから、カゼのはやる季節には、お茶で
うがいをするといいそうです。また、カテキンには
、癌を予防したり、高血圧を下げたり、虫歯になりにく
くしたり、といった健康にいい効果もあると言われてい
ます。私たち日本人は、昔から食事のときに緑茶を飲ん
できましたが、これは健康のためにはとてもいいことだ
ったのです。では、カテキンの多い緑茶と、香りの
よいウーロン茶や紅茶を混ぜて飲んだらどうなるでしょ
う。答えは、ゴチャゴ茶です。そりゃ、無茶苦茶や。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 省エネルギーという言葉を聞いたことが
あるでしょう。
部屋の電気をこまめに消したり、冷房や暖房の温度設定
を控え目にしたり、エレベーターや自動車をやめて自分
の足で歩くように心がけたりすることです。今は、身近
な省エネルギーから広がって、社会全体で取り組んでい
こうという運動になっています。エネルギーを生みだす
ためには、もとになる資源が必要です。ちょうど私たち
人間や動物が、歩いたり手を動かしたり喋ったりするた
めに、食べ物をとるのと同じです。ところが、地球の資
源には限りがありますから、ひとりひとりが節約をして
いかなくてはなりません。また、資源をエネルギーに変
換するためには、要らないものを空気中に排出しなくて
はなりません。二酸化炭素などの排出物は、大気汚染を
引き起こし、やがては地球全体の気温を徐々にあげてし
まいます。これが地球温暖化と呼ばれるもので、異常気 象や農作物への影響、海水面の上昇、紫外線の問題など
、さまざまな問題の原因となっています。人間だけでな
く、すべての生き物の住みやすい環境を守るためにも、
エネルギーの節約は必要なのです。では、使ってもなく
なる心配のないエネルギーはないのでしょうか。それは
、身の回りに見つけることができます。冬の寒い日の猫
は日の当たる明るい窓際で、いちばん温かそうな床の上
に、幸せそうにまるくなってねむっています。猫は日向
ぼっこの名人です。このとき、猫の体の毛のあいだにさ
しこんだ太陽は、猫の毛の奥深くに入りこみ、熱に変化
してほとんどが猫の体に吸収されています。とても効率
のいい、太陽エネルギー活用の仕組みになっているので
す。忙しいときに、よく猫の手も借りたいと言いますが
、寒いときには、猫の毛も借りたいと言えるかもしれま
せん。この猫の日向ぼっこの原理を、私たちのくらしに 活用したもの∵が、太陽熱温水器やソーラーハウスとい
う住宅です。太陽のエネルギーを建物の中にとらえて、
それでお風呂の温水をつくったり、温水で建物全体を暖
房したりしています。更に、ソーラーハウスが猫の日向
ぼっこより一歩進んでいるところは、太陽のエネルギー
を電気エネルギーに変えられることです。天気のいいと
きに発電した電気で、家の中の電化製品が使えます。あ
まった電気は、電力会社が買い取ってほかの家で使われ
ます。科学の力を使っていくと、日向ぼっこのおすそ分
けができるのです。省エネルギーという節約の考え方か
ら、エネルギーの変換という新しい考え方に目を向ける
と、さまざまな可能性が見えてきます。太陽のような自
然のエネルギーから、より効率のよいエネルギーがもら
えるように科学の研究は続いています。日向ぼっこをし
ている猫も言っています。「ソーラーエネルギーか。 ソーラー、エエネエ。」カイコは、じょうぶな絹糸をとる
ために、昔から人間が飼育してきた昆虫です。中国では
、四千年以上も前からカイコを育て、美しい絹織物が作
られていました。やがて中国で作られた絹織物は、イン
ド、ペルシア、トルコ、ローマなどに運ばれるようにな
りました。そのころの商人が通った道は、シルクロード
とよばれています。ローマでは、絹はたいへん高価なも
のであり、同じ重さの金と交換されるほどでした。
カイコの飼育は、世界各国に広まっていきました。日本
でも大正時代の終わりから昭和の初めにかけて、養蚕が
さかんになりました。当時、カイコの品種改良が進み、
それまでの二倍から三倍もの長さの糸が取れるようにな
ったのです。また、自然の状態では、カイコが生まれて
くるのは春と夏の年二回ですが、季節を問わず何度でも
カイコを飼育することができるようになりました。 そのころ、生糸や絹織物の輸出は、日本の輸出総額の半分近
くを占めていました。生まれてきたカイコの成虫、
カイコガは、羽が小さいわりに腹が大きくて、筋肉も弱
いため飛ぶことができません。人間に飼われているカイ
コガは、野外を飛びまわって仲間を見つける必要もなく
、幼虫の食べ物であるクワの木をさがしてたまごを生む
必要もありません。メスは、クワの木でなくても、手近
なものに何でもたまごを産みつけます。まるで、人間が
ちゃんと幼虫の世話をしてくれることを知っているよう
です。飛ぶ必要がなくなったカイコガは、飛ぶ能力を失
ってしまったのです。生まれた幼虫は、クワの葉を
食べてどんどん大きくなります。カイコを育てているカ
イコ棚では、幼虫がバリバリとクワの葉を食べる音が、
一日中雨の音のように聞こえます。これほど食欲旺盛な
幼虫ですが、歩く力がたいへん弱く、三十センチでもク
ワの葉から離れたところに置くと、自分でそこまでた どりつくことができません。歩いて「どこカ、イコう」
とはしないのです。また、ものにつかまる力も弱い
ので、野外のクワの木にカイコを放しても、生きていく
ことができません。人間に頼ってクワをクワせてもらっ
ているカイコは、農家の人にとっては「カイコ」という
より「可愛い子」なのかもしれません。長い間、人
に飼われてきたカイコは、人間の世話なしでは生きられ
ないようになりました。人間にとって、ほとんど動かな
いカイコは、飼育するのにたいへん都合がよい昆虫です
。大きく育った幼虫は、さなぎになる準備を始めま
す。人間がボール紙などで作った枠の中に、二日ぐらい
かかって厚くてじょうぶな繭を作ります。カイコのほか
にも、繭を作る昆虫はたくさんいますが、糸の量と強さ
でカイコにかなうものはいません。一個の繭からは 、約千五百メートルの絹糸が取れます。着物を一着作る
には、約二千六百個の繭が必要で、それだけの繭を作る
ために必要なクワの葉は百キログラムです。「ところ
で、カイコさん。クワの葉以外は食べないんですか。」
「クワンヨ。」(※最近の品種改良では、クワの葉
以外のものを食べるカイコも作られています)梅雨の
季節をいろどってくれる花に、アジサイがあります。こ
の花は、いろいろな色に変化することで有名で、そのせ
いか、花言葉には「移り気な心」などというものもあり
ます。そのほかの花言葉、「強い愛情」や「家族の結び
つき」は、きっと、小さい花がたくさんあつまって咲い
ているところからきたのでしょう。アジサイの花の
色は、咲き始めの緑がかった白っぽい青色から、薄いピ
ンク、紫、そしてしだいに濃い紫や藍色に変わっていき
ます。 色がついているこれらの部分は、じつは花びらで
はありません。葉が変化したもので、「がく」と呼ばれ
ることもあります。本当の花は、このがくの真ん中に、
ちょこんと小さく丸くついています。このように花以外
の部分が発達して花のようになっている花を装飾花と言
います。南国の雰囲気を持つブーゲンビリアや、クリス
マスに飾られるポインセチアなども装飾花です。で
は、アジサイの花は、どうして色が変わるのでしょうか
。どんな色のアジサイも、その色の素になっている
のは、アントシアニンという色素です。この色素は、条
件によって、赤い色を出したり、青い色を出したりする
ことができます。ここで、色の鍵を握っているのが、ア
ジサイが土の中から吸い上げる、アルミニウムという金
属です。一円玉は、このアルミニウムで作られています
。土の中には、アルミニウムをはじめ、いろいろな金属
が目に見えない形で溶けています。これを植物の根が吸
い上げるのです。アルミニウムが多いと、アジサイ
は青くなります。 逆に、アルミニウムが少ないと赤くな
ります。その中間は紫です。このアルミニウムは、土の
性質が酸性だと、土の中にイオンとして溶け出すので、
アジサイが吸い上げやすくなります。逆に、土の性質が
アルカリ性だと、アルミニウムはアルカリと結びついて
塩になってしまうので、アジサイが吸い上げにくくなり
ます。こうして、土の∵性質によって、アジサイの色は
変わるのです。ですから、おとなりのアジサイの色が気
に入って分けてもらい、わが家に植えても、同じ色にな
るとは限りません。ところで、日本のアジサイを世
界に紹介したのは、江戸時代の終わりごろに日本にやっ
てきたドイツ人の医者、シーボルトでした。この時代の
日本は、鎖国の状態で、人も物も自由に外国と行き来す
ることはできませんでした。しばらくのあいだ日本に暮
らした彼は、植物にもたいへん興味を持ち、日本のいろ
いろな植物を持ち帰りました。シーボルトは、その中で
もひときわ大きくてきれいなアジサイに、「オタクサ」
という名前をつけました。これは、シーボルトが日本に
いるときに愛した女性、「お滝さん」の名前です。ドイ
ツに戻ったシーボルトは、庭にそのオタクサを植えて、
「オー、タクサんのオタクサが咲いた。」と見とれてい
たかもしれません。アジサイと同じように、人間も
、好きな人の前で赤くなったり、宿題を忘れて青くなっ たりしますが、これはアルミニウムとは関係ありません
。コーヒーは、世界で最も親しまれている飲み物のひと
つです。世界中で、毎日二十億杯分ものコーヒーが消費
されています。世界中で売り買いされるコーヒーの量は
膨大で、その売上額は年間八兆円にも上ります。こ
のように世界中で親しまれているコーヒーですが、その
歴史がアフリカに始まったことはあまり知られていませ
ん。コーヒーの木は、もともとエチオピアの高原に自生
していました。コーヒーは、十五世紀までもっぱらアラ
ビア半島でのみ栽培され、国外に持ち出すことはできま
せんでした。十七世紀に、オランダ人がコーヒーの
苗木をオランダ本国へ持ち込みました。そして十八世紀
に、コーヒーの木は、フランスの国王ルイ十四世への贈
り物として、フランスの植物園に送られました。 当時、
コーヒーの木は大変な貴重品でした。やがて、フラ
ンスはコーヒーの栽培と輸出に乗り出そうとしますが、
計画はことごとく失敗します。あるとき、一人の海
軍士官が、ひそかにコーヒーの苗木を持ち出し、カリブ
海にある自分の農園で栽培しようと考えました。当時の
船は帆船で、長い船旅の間に飲む水もなくなるほどでし
たが、彼は自分の飲み水を苗木に分け与えて、ようやく
農園にたどりつきました。海を渡ったこの苗木は、
その後、南北アメリカ諸国にコーヒーの栽培を広めるも
ととなりました。今では、八十もの国や地域で、推定百
五十億本のコーヒーの木が栽培されています。コー
ヒーの成分であるカフェインは、神経を興奮させる働き
があります。人間の体にはもともとドーパミンという物
質があり、これは快感を感じるとたくさん分泌されます
。このドーパミンの働きを抑制する物質がアデノシンで
、人間は普段興奮と安静のバランスを∵とって暮らして
います。ところが、カフェインはアデノシンと形が似て
いるので、アデノシンのかわりに先にドーパミンに結び ついてしまい、そのためにコーヒーを飲むとドーパミン
の興奮が続くようになります。子供のうち、コーヒーは
控えた方がよいと言われるのはこのためです。さて
、コーヒー豆には、いろいろな種類があります。有名な
ところでは、ブルーマウンテン、モカ、コナ、キリマン
ジャロなどです。みなさんも大きくなったら、いろいろ
なコーヒーの味を飲み比べてみてはどんなモンジャロ。
クマムシの体長は、最大でも一ミリメートルぐらいで
す。八本の脚でゆっくり歩く姿がクマに似ているので、
クマムシと名づけられました。熱帯地方から北極や南極
まで、深海の底から高山の上まで、地球上のほぼあらゆ
るところに生息しています。このクマムシは小さな
スーパーマンです。といっても、空を飛んだり列車を止 めたりするわけではありません。実は、この生き物はほ
とんど不死身なのです。クマムシの体の大部分は水
分ですが、周囲が乾燥してくると、水分を極度に減らし
、樽のような形になって眠りに入ります。この樽の
状態になったクマムシは、宇宙の真空の中でも生き続け
ます。また、マイナス二百七十二度という絶対零度の世
界でも、摂氏百五十度という熱湯より熱い温度の中でも
生きています。更に、七万五千気圧という高圧を受けて
も、人間の致死量の千倍のX線を浴びても、樽になった
まま生きているのです。百二十年間眠っていたクマムシ
に水を与えたら動き出したという報告もあります。 クマムシはどこにでも棲んでいますが、採集するには、
コケの中を探すのが簡単です。建物の陰などに生えてい
るコケを取ってきて、ストッキングなど細かい網の上に
乗せます。コケに水を注ぐと、網の下に落ちてくる水と
一緒にクマムシも落ちてきます。それを顕微鏡で丹念に
探すのです。樽状態になったクマムシを参考にして
、人間の臓器を長期間保存する研究も行われています。
将来、宇宙飛行で何年も先の星に行くときには、人間も
樽になって行くようになるかもしれません。「クマム
シさん、こんなに過酷な実験をされて、よク、マー、ム
シしていられましたね。もっと厳しい実験をされたらど
うしますか。」「タルになったる。」最近では、 ペットボトル入りのお茶や缶入りのお茶が、たくさん売
られるようになってきました。緑茶、ウーロン茶、紅茶
、その他さまざまな種類のお茶がブレンドされて、いろ
いろな名前で売られています。では、これらのお茶は、
みんな違う種類の木からとれるのでしょうか。じつ
は、緑茶もウーロン茶も紅茶も、同じお茶の木の葉が原
料です。それなのに、なぜ色も味も違うかというと、作
り方が違うからです。お茶を作るには、まず、お茶
の木から葉を摘み取ります。このあと、放っておくと、
お茶の葉はすぐに発酵を始めます。お茶の葉の中にある
酸化酵素が酸素を取り込んで、お茶の葉の成分を変化さ
せてしまうのです。特にお茶の葉の中にあるカテキンや
ビタミンCは、酸素と結びつきやすく、たくさんの酸素
と結びつくほど、お茶の色も緑色から茶色そして赤色へ
と変化していきます。ですから、緑茶とウーロン茶と紅 茶の色の違いは、酸化の色の違いなのです。緑茶は
、葉を摘み取るとすぐに熱い蒸気に当てたり釜で炒った
りして、発酵させないようにします。熱い温度にするこ
とで、お茶の葉の中の酵素がこわれて発酵できなくなる
のです。このお茶の葉をよくもんで形を整え、乾燥させ
たものが緑茶です。発酵しないので緑の色が残り、カテ
キンやビタミンCもたくさん残っています。これに
対して、ウーロン茶や紅茶は、逆に発酵を助けてやるた
めに摘み取りの後に別の処理をします。お茶の葉を日光
に当てたり、温風に当てたりして葉をしおれさせる作業
です。ウーロン茶は、半発酵の状態のときに釜で炒って
発酵を止めます。そして乾燥をさせ、再び加熱して香ば
しさを出します。紅茶は完全発酵になるまで発酵させ、
乾燥させて完成させます。∵ウーロン茶と紅茶は、
発酵させた分だけ緑茶に比べてカテキンやビタミンCが
少なくなりますが、その代わりに、大変よい香りを持っ
ています。緑茶に多く含まれているカテキンは、緑
茶の渋味と色を作る大切な成分ですが、最近、このカテ
キンの殺菌作用が注目されています。カテキンには、イ
ンフルエンザのウィルスや食中毒の菌の働きを抑える力 があります。ですから、カゼのはやる季節には、お茶で
うがいをするといいそうです。また、カテキンには
、癌を予防したり、高血圧を下げたり、虫歯になりにく
くしたり、といった健康にいい効果もあると言われてい
ます。私たち日本人は、昔から食事のときに緑茶を飲ん
できましたが、これは健康のためにはとてもいいことだ
ったのです。では、カテキンの多い緑茶と、香りの
よいウーロン茶や紅茶を混ぜて飲んだらどうなるでしょ
う。答えは、ゴチャゴ茶です。そりゃ、無茶苦茶や。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 省エネルギーという言葉を聞いたことが
あるでしょう。
部屋の電気をこまめに消したり、冷房や暖房の温度設定
を控え目にしたり、エレベーターや自動車をやめて自分
の足で歩くように心がけたりすることです。今は、身近
な省エネルギーから広がって、社会全体で取り組んでい
こうという運動になっています。エネルギーを生みだす
ためには、もとになる資源が必要です。ちょうど私たち
人間や動物が、歩いたり手を動かしたり喋ったりするた
めに、食べ物をとるのと同じです。ところが、地球の資
源には限りがありますから、ひとりひとりが節約をして
いかなくてはなりません。また、資源をエネルギーに変
換するためには、要らないものを空気中に排出しなくて
はなりません。二酸化炭素などの排出物は、大気汚染を
引き起こし、やがては地球全体の気温を徐々にあげてし
まいます。これが地球温暖化と呼ばれるもので、異常気 象や農作物への影響、海水面の上昇、紫外線の問題など
、さまざまな問題の原因となっています。人間だけでな
く、すべての生き物の住みやすい環境を守るためにも、
エネルギーの節約は必要なのです。では、使ってもなく
なる心配のないエネルギーはないのでしょうか。それは
、身の回りに見つけることができます。冬の寒い日の猫
は日の当たる明るい窓際で、いちばん温かそうな床の上
に、幸せそうにまるくなってねむっています。猫は日向
ぼっこの名人です。このとき、猫の体の毛のあいだにさ
しこんだ太陽は、猫の毛の奥深くに入りこみ、熱に変化
してほとんどが猫の体に吸収されています。とても効率
のいい、太陽エネルギー活用の仕組みになっているので
す。忙しいときに、よく猫の手も借りたいと言いますが
、寒いときには、猫の毛も借りたいと言えるかもしれま
せん。この猫の日向ぼっこの原理を、私たちのくらしに 活用したもの∵が、太陽熱温水器やソーラーハウスとい
う住宅です。太陽のエネルギーを建物の中にとらえて、
それでお風呂の温水をつくったり、温水で建物全体を暖
房したりしています。更に、ソーラーハウスが猫の日向
ぼっこより一歩進んでいるところは、太陽のエネルギー
を電気エネルギーに変えられることです。天気のいいと
きに発電した電気で、家の中の電化製品が使えます。あ
まった電気は、電力会社が買い取ってほかの家で使われ
ます。科学の力を使っていくと、日向ぼっこのおすそ分
けができるのです。省エネルギーという節約の考え方か
ら、エネルギーの変換という新しい考え方に目を向ける
と、さまざまな可能性が見えてきます。太陽のような自
然のエネルギーから、より効率のよいエネルギーがもら
えるように科学の研究は続いています。日向ぼっこをし
ている猫も言っています。「ソーラーエネルギーか。 ソーラー、エエネエ。」カイコは、じょうぶな絹糸をとる
ために、昔から人間が飼育してきた昆虫です。中国では
、四千年以上も前からカイコを育て、美しい絹織物が作
られていました。やがて中国で作られた絹織物は、イン
ド、ペルシア、トルコ、ローマなどに運ばれるようにな
りました。そのころの商人が通った道は、シルクロード
とよばれています。ローマでは、絹はたいへん高価なも
のであり、同じ重さの金と交換されるほどでした。
カイコの飼育は、世界各国に広まっていきました。日本
でも大正時代の終わりから昭和の初めにかけて、養蚕が
さかんになりました。当時、カイコの品種改良が進み、
それまでの二倍から三倍もの長さの糸が取れるようにな
ったのです。また、自然の状態では、カイコが生まれて
くるのは春と夏の年二回ですが、季節を問わず何度でも
カイコを飼育することができるようになりました。 そのころ、生糸や絹織物の輸出は、日本の輸出総額の半分近
くを占めていました。生まれてきたカイコの成虫、
カイコガは、羽が小さいわりに腹が大きくて、筋肉も弱
いため飛ぶことができません。人間に飼われているカイ
コガは、野外を飛びまわって仲間を見つける必要もなく
、幼虫の食べ物であるクワの木をさがしてたまごを生む
必要もありません。メスは、クワの木でなくても、手近
なものに何でもたまごを産みつけます。まるで、人間が
ちゃんと幼虫の世話をしてくれることを知っているよう
です。飛ぶ必要がなくなったカイコガは、飛ぶ能力を失
ってしまったのです。生まれた幼虫は、クワの葉を
食べてどんどん大きくなります。カイコを育てているカ
イコ棚では、幼虫がバリバリとクワの葉を食べる音が、
一日中雨の音のように聞こえます。これほど食欲旺盛な
幼虫ですが、歩く力がたいへん弱く、三十センチでもク
ワの葉から離れたところに置くと、自分でそこまでた どりつくことができません。歩いて「どこカ、イコう」
とはしないのです。また、ものにつかまる力も弱い
ので、野外のクワの木にカイコを放しても、生きていく
ことができません。人間に頼ってクワをクワせてもらっ
ているカイコは、農家の人にとっては「カイコ」という
より「可愛い子」なのかもしれません。長い間、人
に飼われてきたカイコは、人間の世話なしでは生きられ
ないようになりました。人間にとって、ほとんど動かな
いカイコは、飼育するのにたいへん都合がよい昆虫です
。大きく育った幼虫は、さなぎになる準備を始めま
す。人間がボール紙などで作った枠の中に、二日ぐらい
かかって厚くてじょうぶな繭を作ります。カイコのほか
にも、繭を作る昆虫はたくさんいますが、糸の量と強さ
でカイコにかなうものはいません。一個の繭からは 、約千五百メートルの絹糸が取れます。着物を一着作る
には、約二千六百個の繭が必要で、それだけの繭を作る
ために必要なクワの葉は百キログラムです。「ところ
で、カイコさん。クワの葉以外は食べないんですか。」
「クワンヨ。」(※最近の品種改良では、クワの葉
以外のものを食べるカイコも作られています)梅雨の
季節をいろどってくれる花に、アジサイがあります。こ
の花は、いろいろな色に変化することで有名で、そのせ
いか、花言葉には「移り気な心」などというものもあり
ます。そのほかの花言葉、「強い愛情」や「家族の結び
つき」は、きっと、小さい花がたくさんあつまって咲い
ているところからきたのでしょう。アジサイの花の
色は、咲き始めの緑がかった白っぽい青色から、薄いピ
ンク、紫、そしてしだいに濃い紫や藍色に変わっていき
ます。 色がついているこれらの部分は、じつは花びらで
はありません。葉が変化したもので、「がく」と呼ばれ
ることもあります。本当の花は、このがくの真ん中に、
ちょこんと小さく丸くついています。このように花以外
の部分が発達して花のようになっている花を装飾花と言
います。南国の雰囲気を持つブーゲンビリアや、クリス
マスに飾られるポインセチアなども装飾花です。で
は、アジサイの花は、どうして色が変わるのでしょうか
。どんな色のアジサイも、その色の素になっている
のは、アントシアニンという色素です。この色素は、条
件によって、赤い色を出したり、青い色を出したりする
ことができます。ここで、色の鍵を握っているのが、ア
ジサイが土の中から吸い上げる、アルミニウムという金
属です。一円玉は、このアルミニウムで作られています
。土の中には、アルミニウムをはじめ、いろいろな金属
が目に見えない形で溶けています。これを植物の根が吸
い上げるのです。アルミニウムが多いと、アジサイ
は青くなります。 逆に、アルミニウムが少ないと赤くな
ります。その中間は紫です。このアルミニウムは、土の
性質が酸性だと、土の中にイオンとして溶け出すので、
アジサイが吸い上げやすくなります。逆に、土の性質が
アルカリ性だと、アルミニウムはアルカリと結びついて
塩になってしまうので、アジサイが吸い上げにくくなり
ます。こうして、土の∵性質によって、アジサイの色は
変わるのです。ですから、おとなりのアジサイの色が気
に入って分けてもらい、わが家に植えても、同じ色にな
るとは限りません。ところで、日本のアジサイを世
界に紹介したのは、江戸時代の終わりごろに日本にやっ
てきたドイツ人の医者、シーボルトでした。この時代の
日本は、鎖国の状態で、人も物も自由に外国と行き来す
ることはできませんでした。しばらくのあいだ日本に暮
らした彼は、植物にもたいへん興味を持ち、日本のいろ
いろな植物を持ち帰りました。シーボルトは、その中で
もひときわ大きくてきれいなアジサイに、「オタクサ」
という名前をつけました。これは、シーボルトが日本に
いるときに愛した女性、「お滝さん」の名前です。ドイ
ツに戻ったシーボルトは、庭にそのオタクサを植えて、
「オー、タクサんのオタクサが咲いた。」と見とれてい
たかもしれません。アジサイと同じように、人間も
、好きな人の前で赤くなったり、宿題を忘れて青くなっ たりしますが、これはアルミニウムとは関係ありません
。コーヒーは、世界で最も親しまれている飲み物のひと
つです。世界中で、毎日二十億杯分ものコーヒーが消費
されています。世界中で売り買いされるコーヒーの量は
膨大で、その売上額は年間八兆円にも上ります。こ
のように世界中で親しまれているコーヒーですが、その
歴史がアフリカに始まったことはあまり知られていませ
ん。コーヒーの木は、もともとエチオピアの高原に自生
していました。コーヒーは、十五世紀までもっぱらアラ
ビア半島でのみ栽培され、国外に持ち出すことはできま
せんでした。十七世紀に、オランダ人がコーヒーの
苗木をオランダ本国へ持ち込みました。そして十八世紀
に、コーヒーの木は、フランスの国王ルイ十四世への贈
り物として、フランスの植物園に送られました。 当時、
コーヒーの木は大変な貴重品でした。やがて、フラ
ンスはコーヒーの栽培と輸出に乗り出そうとしますが、
計画はことごとく失敗します。あるとき、一人の海
軍士官が、ひそかにコーヒーの苗木を持ち出し、カリブ
海にある自分の農園で栽培しようと考えました。当時の
船は帆船で、長い船旅の間に飲む水もなくなるほどでし
たが、彼は自分の飲み水を苗木に分け与えて、ようやく
農園にたどりつきました。海を渡ったこの苗木は、
その後、南北アメリカ諸国にコーヒーの栽培を広めるも
ととなりました。今では、八十もの国や地域で、推定百
五十億本のコーヒーの木が栽培されています。コー
ヒーの成分であるカフェインは、神経を興奮させる働き
があります。人間の体にはもともとドーパミンという物
質があり、これは快感を感じるとたくさん分泌されます
。このドーパミンの働きを抑制する物質がアデノシンで
、人間は普段興奮と安静のバランスを∵とって暮らして
います。ところが、カフェインはアデノシンと形が似て
いるので、アデノシンのかわりに先にドーパミンに結び ついてしまい、そのためにコーヒーを飲むとドーパミン
の興奮が続くようになります。子供のうち、コーヒーは
控えた方がよいと言われるのはこのためです。さて
、コーヒー豆には、いろいろな種類があります。有名な
ところでは、ブルーマウンテン、モカ、コナ、キリマン
ジャロなどです。みなさんも大きくなったら、いろいろ
なコーヒーの味を飲み比べてみてはどんなモンジャロ。
クマムシの体長は、最大でも一ミリメートルぐらいで
す。八本の脚でゆっくり歩く姿がクマに似ているので、
クマムシと名づけられました。熱帯地方から北極や南極
まで、深海の底から高山の上まで、地球上のほぼあらゆ
るところに生息しています。このクマムシは小さな
スーパーマンです。といっても、空を飛んだり列車を止 鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなた
の顔が正面から大きく写っている写真を用意します。そ
れから、目のまんなか、鼻、口を通る顔の中心線の上に
鏡を立てます。写真の半分と鏡に映ったその半分とを合
わせると、片方の側だけからできた左右対称の顔になり
ます。鏡の向きを変えると、もう片方の側でも同じこと
ができます。右側だけでできた顔と左側だけでできた顔
とでは、かなりちがった印象を受けます。目の大きさや
ほっぺたの形など、右と左では意外に大きく異なってい
るのです。顔だけではありません。人の体は、左右対称
に思えますが、実は少しちがっていて、手足の長さや筋
肉のつきかたなども同じではないのです。人がまっすぐ
に歩くのは当たり前のようですが、実は目で周りの景色
を確かめながら体の向きをコントロールしています。そ
のため、視界のきかない吹雪のときなど、ただやみくも
に進んでいくと、弱い足の方に少しずつ曲がっていって
しまいます。そして、長い時間歩いたあげく、結局最初
と同じ地点にもどってしまうこともあるのです。内臓で
は、右と左はもっとちがいます。たとえば心臓は体の少
し左側にあります。赤ちゃんを抱くときに、お母さんは
自然と赤ちゃんの頭が心臓の近くにくるように抱きます 。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるとき、お母さ
んの心臓の音をずっと聞いていたので、この音を聞くと
安心するのかもしれません。右と左の違いは、普段の生
活でも役に立ちます。例えば、野球をするとき、右利き
の人は、左手でボールをキャッチし右手でボールを投げ
ます。リンゴの皮をむくときは、左手でリンゴを支え右
手で包丁を動かします。人間の体は、右と左の違いをう
まく生かしているのです。∵ここで一句。「ウインクを
両目でしたらただのまばたき」言葉の森長文作成委員会
(α)日本は世界一の漫画王国とよばれています。大人
向けのものまでふくめると、一年間に七億冊以上の漫画
が出版されています。漫画をもとにして、アニメーショ
ンや映画やテレビ番組もたくさん作られ、いろいろな国
の言葉に翻訳されて、世界中の人気を集めています。 で
は、漫画は、いつの時代からあったのでしょうか。いち
ばん古い漫画は、今から八百年ほど前にかかれたと言わ
れています。それは、京都の高山寺というお寺にある、
「鳥獣人物戯画」という絵です。その中には、人真似を
して遊ぶ動物たちがかかれています。始まりは、動物た
ちの川遊び。川に飛びこむウサギや、泳ぐサル。ウサギ
に背中を流してもらって、気持ちよさそうなサルもいま
す。別の絵には弓矢の練習をしたり、相撲をとって遊ん
だりするカエルやウサギの様子がかかれています。カエ
ルに投げ飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで
、見物のカエルたちが大わらいしている絵もあります。
カエルの仏様にお経をあげているサルのお坊さんの絵も
あります。どの動物も生き生きと描かれ、今にも絵の中
から飛び出してきそうです。この昔の漫画には、セリフ
がかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。し
かし絵の中には、今の漫画に似たところもあります。た
とえば今の漫画では、すばやい動きをあらわすために線
を何本もひき、スピードの出ている様子をあらわします
。鳥獣人物戯画の中にも、同じようなかき方が見られる
のです。こんな昔から、漫画を楽しんでいた日本人。 こ
れからも、たくさんの名作が生まれ、多くの人に愛され
ていくことでしょう。∵漫画は、世界中に自マンガでき
る、日本の宝です。しかし、漫画は絵がわかりやすいの
で、字の多い本は読マンガ、漫画なら読むという生活を
続けていると、次第に読む力が低下してきます。字の多
い本を読む一方で、漫画も楽しく読み、漫画の読み方に
ついても自マンガできる国にしていきましょう。夜の道
を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると
、またどこまでもついてきます。もちろん、キツネやお
化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それ
はお月さまです。月がついてくるのは、電車に乗ってい
ても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、ど
んどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、
近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ
動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山
を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるよう
に見えます。家、電信柱、山、月。これらを比べて違う
のは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、
動かないように見えるのです。月は、わたしたちの地球
を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かん
でいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいで
は、月の位置は変わらないように見えるのです。 鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなた
の顔が正面から大きく写っている写真を用意します。そ
れから、目のまんなか、鼻、口を通る顔の中心線の上に
鏡を立てます。写真の半分と鏡に映ったその半分とを合
わせると、片方の側だけからできた左右対称の顔になり
ます。鏡の向きを変えると、もう片方の側でも同じこと
ができます。右側だけでできた顔と左側だけでできた顔
とでは、かなりちがった印象を受けます。目の大きさや
ほっぺたの形など、右と左では意外に大きく異なってい
るのです。顔だけではありません。人の体は、左右対称
に思えますが、実は少しちがっていて、手足の長さや筋
肉のつきかたなども同じではないのです。人がまっすぐ
に歩くのは当たり前のようですが、実は目で周りの景色
を確かめながら体の向きをコントロールしています。そ
のため、視界のきかない吹雪のときなど、ただやみくも
に進んでいくと、弱い足の方に少しずつ曲がっていって
しまいます。そして、長い時間歩いたあげく、結局最初
と同じ地点にもどってしまうこともあるのです。内臓で
は、右と左はもっとちがいます。たとえば心臓は体の少
し左側にあります。赤ちゃんを抱くときに、お母さんは
自然と赤ちゃんの頭が心臓の近くにくるように抱きます 。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるとき、お母さ
んの心臓の音をずっと聞いていたので、この音を聞くと
安心するのかもしれません。右と左の違いは、普段の生
活でも役に立ちます。例えば、野球をするとき、右利き
の人は、左手でボールをキャッチし右手でボールを投げ
ます。リンゴの皮をむくときは、左手でリンゴを支え右
手で包丁を動かします。人間の体は、右と左の違いをう
まく生かしているのです。∵ここで一句。「ウインクを
両目でしたらただのまばたき」言葉の森長文作成委員会
(α)日本は世界一の漫画王国とよばれています。大人
向けのものまでふくめると、一年間に七億冊以上の漫画
が出版されています。漫画をもとにして、アニメーショ
ンや映画やテレビ番組もたくさん作られ、いろいろな国
の言葉に翻訳されて、世界中の人気を集めています。 で
は、漫画は、いつの時代からあったのでしょうか。いち
ばん古い漫画は、今から八百年ほど前にかかれたと言わ
れています。それは、京都の高山寺というお寺にある、
「鳥獣人物戯画」という絵です。その中には、人真似を
して遊ぶ動物たちがかかれています。始まりは、動物た
ちの川遊び。川に飛びこむウサギや、泳ぐサル。ウサギ
に背中を流してもらって、気持ちよさそうなサルもいま
す。別の絵には弓矢の練習をしたり、相撲をとって遊ん
だりするカエルやウサギの様子がかかれています。カエ
ルに投げ飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで
、見物のカエルたちが大わらいしている絵もあります。
カエルの仏様にお経をあげているサルのお坊さんの絵も
あります。どの動物も生き生きと描かれ、今にも絵の中
から飛び出してきそうです。この昔の漫画には、セリフ
がかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。し
かし絵の中には、今の漫画に似たところもあります。た
とえば今の漫画では、すばやい動きをあらわすために線
を何本もひき、スピードの出ている様子をあらわします
。鳥獣人物戯画の中にも、同じようなかき方が見られる
のです。こんな昔から、漫画を楽しんでいた日本人。 こ
れからも、たくさんの名作が生まれ、多くの人に愛され
ていくことでしょう。∵漫画は、世界中に自マンガでき
る、日本の宝です。しかし、漫画は絵がわかりやすいの
で、字の多い本は読マンガ、漫画なら読むという生活を
続けていると、次第に読む力が低下してきます。字の多
い本を読む一方で、漫画も楽しく読み、漫画の読み方に
ついても自マンガできる国にしていきましょう。夜の道
を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると
、またどこまでもついてきます。もちろん、キツネやお
化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それ
はお月さまです。月がついてくるのは、電車に乗ってい
ても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、ど
んどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、
近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ
動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山
を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるよう
に見えます。家、電信柱、山、月。これらを比べて違う
のは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、
動かないように見えるのです。月は、わたしたちの地球
を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かん
でいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいで
は、月の位置は変わらないように見えるのです。 もちろ
ん、月よりもっと遠くの太陽でも、同じことが言えます
。あなたがどんなに動いても太陽はついてきます。しか
し、太陽はまぶしすぎて、あまり見上げることはありま
せん。やはり、夜、明るい月が一緒についてくるところ
にこそ、不思議さがあるのでしょう。地球は月の四倍の
大きさです。したがって、もし、月の上を歩きながら地
球を見ると、月よりも四倍大きい、青く美しい地球がつ
いてきます。月と地球のツキあいは、遠くても深いもの
なのです。∵「ねえ、どうしてついてくるの?」「だっ
て、ツキだから。」「では、もし太陽だったら?」「や
っぱり、ついて行きタイヨウ。」「甘えん坊なんだね。
」【1】買ってきた野菜の葉に、いも虫がたくさんつい
ていたらどうしますか。普通は「わあ、いやだ」と急い
で取り除き、野菜をすっかりきれいにしてから調理する
でしょう。【2】しかし世界には、いも虫を見て「わあ
、おいしそう」と感じる人たちもいるのです。 アフリカ
の一部では、ガの幼虫であるいも虫が食用にされていま
す。【3】それらの地域では、キャッサバやトウモロコ
シなどのでんぷん質が食事の中心なので、どうしてもた
んぱく質が不足しがちです。しかし、質のよいたんぱく
源は高価で手に入りにくいのが現状です。【4】ですか
ら、たんぱく質のかたまりであるいも虫は大変貴重な補
助食品なのです。実際、一皿のいも虫は、大人が一日に
必要とするたんぱく質・ビタミン・ミネラルの約四分の
三を含むと言われています。【5】秋の雨の季節が過ぎ
ると、いも虫の収穫が始まります。村の女性たちは、総
出でいも虫を集めます。いも虫は内臓を抜き、ゆでてか
ら天日干しにします。【6】この乾燥いも虫を、おやつ
がわりにそのままポリポリと食べるのです。このいも虫
は、ただおいしいだけではありません。ある意味で、と
ても効率のよい食品でもあるのです。【7】いも虫は、
人間には食べられない有毒の植物でもかまわず食べてく
れます。そしてどんどん肥え太り、わずか六週間で体重
を四千倍に増やします。 【8】その丸々としたおいしそ
うないも虫を、今度は人間が食べるわけです。「いも虫
君、いいねえ。あったかそうな蓑を着て。」「それはミ
ノムシ。」【9】「確か、茶碗に入っているんだよね。
」「それはチャワンムシ。」「ときどき足がかゆくなる
けどね。」「それは、ミズムシ。もう、いいもん。無視
。トライアスロンの競技の歴史はまだ新しく、二十世紀
の後半に最初の大会が開催されました。トライアスロン
とは、ギリシャ語で「三」を意味するトライと、「賞品
」を意味するアスロンを合わせてできた言葉です。その
名のとおり、水泳、ランニング、自転車の三種目を続け
て行ない、その総合タイムを競うレースです。どれか一
つだけでも体力のいるハードな競技ですが、それをひと
りで三つもこなすということで、鉄人レースともよばれ
ています。この競技が生まれたのは、ハワイのオアフ島
でした。海兵隊員たちが、一日の仕事を終えて、ビール
を飲みながらくつろいでいるとき、オアフ島で行なわれ
ている三つの競技のうち、どれがいちばん大変かという
議論になりました。三つの競技というのは、オアフ島一
周の自転車レース、ホノルルマラソン大会、ワイキキビ
ーチでの遠泳大会のことです。だれもが、自分の出場し
た競技こそが最も苦しかったと自慢げに話すので、いく
ら話し合っても答えは出ませんでした。そのとき、ビー
ルを飲んで酔っぱらっていた海軍司令官のジョン・コリ
ンズは、ある提案をしました。この三つの競技を合わせ
て一つの競技にしたらどうかというのです。 まさか本気
で挑戦する者はいないだろうと、コリンズはほんの冗談
のつもりで提案したのですが、実際に競技に参加する人
があらわれました。現在では、日本でも毎年多くの大会
が開かれています。また、二〇〇〇年に行なわれたシド
ニーオリンピックから、トライアスロンは正式種目にな
っています。∵「ぼくも、新しい競技を考えついた。」
「なあに。」「ドッジボールと槍投げと火の輪くぐりを
組み合わせるんだ。」「今度のオリンピックで採用され
るといいね。」だれも出ないと思うけど。チョコレート
、キャンディー、ケーキなど、甘いお菓子を思い浮かべ
るだけで幸せな気分になれる人は多いでしょう。それら
のお菓子を作るのに大切なのが砂糖です。しかし、砂糖
にはほかにもいろいろな働きがあります。 その働きのひ
とつに、カビや微生物が増殖するのを防ぐというものが
あります。カビや微生物は湿ったところ、つまり、水分
のあるところが好きです。砂糖は、食べ物の水分の周り
をおおって、微生物やカビの働きをにぶらせます。ジャ
ムや果物の缶詰などがその例です。果物はほうっておく
と傷んだり腐ったりしますが、砂糖とともに調理するこ
とで長期間保存することができます。水分を抱え込む砂
糖の性質は、生クリームや卵白の泡立てにも一役買って
います。クリームや卵のたんぱく質の水分を砂糖が抱え
込むことによって、泡がくずれるのを防ぎ、また泡同士
がくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリー
ムを作るのには、砂糖が欠かせないのです。肉を煮込む
ときにも、その働きが発揮されます。 調理する前の下準
備の肉に砂糖をすりこんでおくと、軟らかく煮ることが
できます。それは、砂糖が肉のたんぱく質の持つ水分を
肉の中にとどめておくからです。さを作り出す調味料
というイメージの強い砂糖ですが、実際には水分と結び
つきやすい性質が私たちの生活の中でいろいろな役割を
はたしているのです。働き者の砂糖は、縁の下の力持ち
なので、決して「えっへん!」といばっているわけでは
ありません。しかし、ダイエットをさけぶ人たちからは
、かたき扱いされています。「えっ?変?一生懸命働い
ているのに……。」砂糖からそんな声が聞こえてきそう
です。∵「カビ君は、どうして砂糖が苦手なの。」「だ
って、砂糖ってサ、トウっても甘いんだもん。」寝よう
としたら、ブーンという音がして、あわてて灯りをつけ
たことがありませんか。そして、小さな蚊がどこにいる
か見つけようとしたことがあるでしょう。日本では昔、
蚊を防ぐために蚊帳という道具を使っていました。 これ
は、一ミリメートルほどの細かい網でできている四角い
テントのようなもので、部屋の中で四方から吊り下げる
ようになっています。網目が細かいので、蚊は中に入れ
ませんが、涼しい風は通すことができます。昔の日本人
は、蚊の多い暑い夏の夜を、蚊帳の中で風鈴の音を聞き
ながら涼しく過ごしたのです。しかし、昭和の後期にな
ると、殺虫剤や下水道が普及した結果、蚊自体が少なく
なり、蚊帳は次第に使われなくなっていきました。とこ
ろが、今、この蚊帳が再び注目されています。蚊帳は、
電気も薬品も使わない点で、人間にも地球にももちろん
蚊にも優しい道具だと考えられるようになってきたので
す。日本は、マラリヤの被害に悩まされるアフリカ諸国
にたくさんの蚊帳を送っています。これによって多くの
子供たちの命が助かっているそうです。日本ではほとん
ど使われることのなくなった蚊帳も、世界では大活躍を
しているのです。日本人のこれからの役割は、より安く
より安全な蚊帳を世界中に広めることではないでしょう
カ。「ブーン。」「あ、蚊や。蚊帳に入ろう。」 「しま
った。蚊帳に入られたカ。ヤーン。」【1】脊椎動物の
ほとんどは、生まれたときから性別が決まっており、途
中で変化することはありません。ところが、同じ脊椎動
物でも、魚には、オスがメスへ、メスがオスへと変化し
たり、生まれながらにして雌雄同体のものがあります。
【2】オスからメスへ変化するものとして代表的なのは
、クマノミの仲間です。クマノミは、毒を持つイソギン
チャクと一緒に暮らすことで有名です。【3】ひとつの
イソギンチャクに、オスとメス一匹ずつの成魚と、体の
小さな幼魚の数匹で暮らしていることが多いのですが、
この成魚と幼魚の間に、親子関係はありません。 クマノ
ミの稚魚は、卵から孵化すると、すぐに生まれたイソギ
ンチャクを離れ、しばらく海の中で浮遊生活を続けます
。【4】そして、全く別のイソギンチャクにたどりつき
、そこで元から住んでいる縁もゆかりもないクマノミた
ちと共同生活を始めます。これは、親子で繁殖してしま
う危険をさけるための工夫です。【5】同じひとつのイ
ソギンチャクの中に暮らしているクマノミたちは、体の
大きさに違いがあります。群れの中でいちばん大きいの
がメス、次に大きいのがオスです。【6】三番め以降の
魚たちは、オスでもメスでもない未成熟な個体です。卵
を産むのはメスですが、その卵を守るのは、おもにオス
の役目です。【7】何らかの原因で、いちばん大きいメ
スが死んでしまうと、オスが性転換をしてメスになり、
オスの次に大きい未成熟な個体がオスになって繁殖に参
加します。クマノミの世界には、このようにきちんとし
た秩序があります。【8】なぜいちばん大きい個体がメ
スになるかというと、メスは体が大きいほどたくさんの
卵を産むことができるからです。∵【9】「わたし、昨
日までオスだったメスで、名前はクマオよ。」「ぼくは
、今日からオスになった、名前はクマコなんだ。」 「何
だか、呼び方にクマっちゃうね。」なんでもコンパクト
がもてはやされるこのごろですが、犬の世界も例外では
ありません。品種改良の結果、たくさんの犬が小型化さ
れ、今や世界中で飼われています。つまり、コンパクト
な犬はそのほとんどが人工的に作り出されたものなので
す。しかし、天然の小型犬もいます。チワワです。餌代
もかからず、場所もとらず、小さいのに勇敢なこの犬は
、ペットとして大変人気があります。チワワの出身地は
メキシコで、意外にも南国の生まれなのです。実はこの
犬は、もともとテチチという名前で知られていました。
チワワと呼ばれるようになったのは十九世紀の中ごろで
す。メキシコに旅行したアメリカ人が、メキシコのチワ
ワ州でこの小さい犬を見つけ、何匹か持ち帰りました。
そして、土地の名前からチワワと命名したのです。同じ
ころ、メキシコのお妃様がヨーロッパ旅行のお供にこの
犬を連れて行ったため、チワワは世界的に有名になりま
した。チワワは人間が大好きです。人間との接触が多い
ほど元気に育つと言われています。 しかし、注意も必要
です。この犬の大きさからすると、ベッドやソファは高
所ですから、高いところから無造作に飛び降りて骨折し
てしまうことがあります。また、消化器官が小さい上に
カロリーを早く消費するため、血糖値が下がりやすいの
もチワワの特徴です。ですから、少量のえさをたびたび
与えてやる必要があります。震えるのはこの犬の特徴で
す。寒いときだけでなく、興奮したときや心配なとき、
不満があるとき、怖がっているときなどに震えます。小
さいけれど大きな存在感を持つチワワ。もしメキシコへ
旅行することがあったなら、「こんにチワ、ワたしの国
へようこそ」と歓迎してくれるかもしれません。∵「チ
ワワって、おでんに入れるとおいしいんだよね。」「そ
れは、チクワ。」人間は昔から、香りに興味を持ち、香
りの原料つまり香料を探してきました。香料には動物性
のものと植物性のものとがあります。動物性のものとし
ては、ジャコウ鹿からとれるムスクが代表的です。植物
性の香料として一般的なものは、なんと言っても花々で
す。例えば、ブルガリアのダマスクローズは、古くから
貴重な香料とされてきました。この花のエッセンスは高
値で取引され、今でも世界中で愛されています。 しかし
、植物性の香料は花だけではありません。どちらかとい
えばなじみの薄い、しかし大変広く使われている香料、
それがフルーツの一種であるベルガモットです。この果
実のエッセンスは、女性用の香水の約三分の一に、また
男性用のコロンの約半分に入っています。このフルーツ
からとれるエッセンスには、いろいろな香りをまとめて
一つの香りにするという働きがあり、これがほかの香料
にはない特性なのです。ベルガモットはミカン科の植物
で、秋から冬にかけてオレンジほどの大きさの実をつけ
ます。香水になるエッセンスは、この果実の皮からとれ
ます。ベルガモットの主な産地は、イタリア半島のカラ
ブリア地方で、ほかの土地ではほとんど育ちません。と
いうのも、この植物は、暖かくしかも南向きの土地で、
強い風の吹かない、湿度の低いところでないと育たない
からです。 この植物の起源そのものは深いなぞに包まれ
ています。野生のベルガモットというものはなく、この
植物を種から育てることもできません。ベルガモットは
、ほかの柑橘系の木々に挿し木をして育てるしかないの
です。野生のベルガモットがあれば、香水も、もっとヤ
セイものになっていたでしょう。神秘に包まれた香りの
世界。だからこそ、より魅力的なのかもしれません。シ
ロツメクサは、日本人にとても愛されている草花のひと
つです。天気のいい休日になると、シロツメクサが生え
ている場所で、シートを広げてお弁当を食べる家族連れ
の姿を見ることができます。シロツメクサの上は、ふん
わりしていて座り心地がよいのです。お弁当のあとには
、子どもたちは花を編んでかわいい冠にしたり、茎をか
らませて両側から引っ張る草相撲をしたりして遊ぶこと
もできます。私たちになじみの深いシロツメクサですが
、実はもともとは日本ではなく、ヨーロッパが原産の植
物です。江戸時代、ヨーロッパのガラス製品は大変な貴
重品でした。遠くヨーロッパから船でガラス製品を運ん
でくるとき、船がゆれてガラスが割れてしまわないよう
に箱の中につめものとして入れられたものが、このシロ
ツメクサなのです。 つめものの草だからツメクサという
名前がつきました。シロツメクサは生命力の強い植物な
ので、つめものとして日本にやってきて役目を終えたあ
と、ゴミとして捨てられた場所で再び息を吹き返し、次
第に日本中に広がっていきました。今では北海道から沖
縄まで、日本全国で見られるようになっています。シロ
ツメクサのように外国が原産で、何らかの理由で日本に
定着した植物のことを帰化植物と言います。セイヨウタ
ンポポやヒメジョオンなども帰化植物として有名です。
ところで、このシロツメクサの英語名はクローバーです
が、クローバーといえば、四つ葉のクローバーが幸運の
シンボルであることはよく知られています。しかし、四
つ葉を見つけようと思っても、クローバかり多くてなか
なか見つからないことがほとんどです。ところが、世の
中には、五つ葉や六つ葉のクローバーもあるのです。今
までに見つかった最高記録はなんと十八枚葉。 これは日
本で発見され、ギネスブックにも載りました。十八枚葉
のクローバーなんて見つけたら、びっくりして白目をむ
いて倒れてしまいそうです。これぞまさにシロ(ツ)メ
スカートやズボンを買うときは、まずウエストのサイズ
を確かめます。では、地球のウエスト、つまり円周はど
うやって測るのでしょう。現代の科学者たちは、メジャ
ーの代わりに人工衛星を使います。北極と南極を通る二
つの衛星で、地球を外がわから測るのです。そのように
して算出された数値は、約四万八千キロメートル。大変
なウエストサイズです。 しかし、今からおよそ二千二百
年前、すでに地球を測った人がいたのです。エラトステ
ネスは、ギリシャの数学者で天文学者でもありました。
彼の時代には人工衛星などないので、地球が丸いことさ
え知らない人がたくさんいました。もちろん、地球を測
ることのできるほど長い巻尺もありません。エラトステ
ネスが使ったのは、一本の棒きれでした。エジプトのシ
エネという都市にいたときのことです。エラトステネス
は、一年でいちばん昼間の長い夏至の正午に、太陽が真
上に来ることに気づきました。太陽の光が影を作らずに
井戸の底まで届いていたからです。しかし、そこから北
に八百五十キロメートルほど行ったところにあるアレク
サンドリアでは、同じ夏至の日の正午に影が見えたので
す。 そこで、エラトステネスはあることを思いつきます
。彼はまず、アレクサンドリアにまっすぐな棒を立てま
した。正午にその棒が作る影を観察するためです。影の
角度を測ったところ、垂直方向に対して七・二度でした
。エラトステネスは地球が丸いことと円周の全体が三百
六十度であることを知っていました。三百六十を七・二
で割ると五十ですから、棒の角度七・二度は円周の五十
分の一になります。ということは、シエネとアレクサン
ドリアの間の距離も、地球の円周の五十分の一と等しい
はずです。そこで二つの町の距離を五十倍し、地球の円
周は、約四万キロメートルから∵四万六千キロメートル
だという結論に達したのです。それは、驚くほど正確な
数値でした。「エラトステネスさん、棒で測るなんて、
いつ思いついたんですか。」「ぼうっとしているときに
ね。」物を食べると、いろいろな味を感じます。たとえ
ば目かくしをしていても、それが知っている味なら、今
食べたものが何か、当てることができるでしょう。また
、初めて食べたものでも、「塩辛い」とか「甘酸っぱい
」などと、言葉で表すことができます。この味は、いっ
たいどこでどうやって感じているのでしょうか。味を感
じる体の部分は舌である、というのは、よく知られてい
ることです。その証拠に、味見をするときは、ちょっと
舌を出してなめてみます。 この舌をよく見てみると、表
面はなめらかではなく、ざらざらで、更によく見ると小
さなでこぼこやつぶつぶがあります。実は、このつぶつ
ぶが、味蕾と呼ばれるものです。「蕾」というのが「つ
ぼみ」という漢字であることからわかるように、味蕾は
花のつぼみのような形をしています。味蕾は舌の表面だ
けではなく、上あごの奥やのどにもあります。ですから
、舌だけで味を感じているのではないようです。ところ
で、動物の中でも肉食動物は、においをかぎ分ける能力
である嗅覚がとても発達している代わりに、味覚はそれ
ほど優れていません。犬やネコも、この肉食動物の仲間
です。おおざっぱに苦味、酸味、辛味、甘味などはわか
り、苦いものがきらいで甘いものが好きなのは人間と同
じです。肉食動物は、生肉をあっという間に食べてしま
うため、それほどおいしさを味わう必要がなかったので
す。それに対し、いつまでもゆっくりと草を食べている
草食動物は、肉食動物よりは味覚が発達していると言わ
れています。 みなさんの家にも、おいしいものしか食べ
ない、グルメな犬やネコがいるかもしれません。これは
、おいしいものをいろいろもらってしまったので、学習
して「違いがわかる」ようになってしまったのです。現
代の犬たちが、おしゃれなカフェで犬用のケーキを食べ
ているなんて、犬のご先祖のオオカミには、想像もでき
なかったにちがいありません「青菜に塩」ということわ
ざは、ほうれん草などの青い葉に塩をかけると急にしお
れてしまうことから、人が急に元気がなくなってしょん
ぼりする様子をたとえることわざになりました。フライ
パンで青菜を炒めているところを見ると、こぼれんばか
りに山盛りになった青菜がさっと小さくなってしまいま
す。さて、この「青菜に塩」の魔法はどうして起こるの
でしょうか。野菜は、人間と同じようにたくさんの細胞
が集まってできています。ひとつひとつの細胞を包んで
いる細胞膜は、水も塩も通すようになっています。生き
ている細胞膜であれば、細胞の中に入った塩をうまく細
胞の外に排出する機能を持っています。 しかし、死んだ
細胞の場合、塩は細胞内にしみ込んだままになります。
その一方で、細胞からは水が出ていくので、青菜のカサ
がへってしまうのです。この脱水作用をうまく利用した
ものが漬物で、漬物にされた野菜は、もとの大きさより
はるかにしおれて縮んでいます。私たち人間が健康に生
きていくためにも、塩分のバランスは大切です。体の細
胞とそれをつつむ液体の塩分濃度は、腎臓の働きで常に
一定に保たれています。細胞の内と外の圧力が均衡して
いるために、細胞は同じ形を保つことができます。塩辛
いものを食べたあと、のどが渇いてくるのもそのためで
す。また、夏の暑い日に、熱射病にならないために水分
と塩分をとるように注意するのも同じ理由からです。「
漬物さんには、塩が必要なんですね。」「シオうだよ。
」「ちょっと苦しいですね。」「エーン。」ブーン。(
飛んでいっちゃった。)お腹がすいたら花屋さんに入る
、という人はいません。「花より団子」のことわざに見
られるとおり、花は見るものであり食べるものではない
、というのが普通の考え方です。 しかし世の中には、目
や鼻だけでなく、舌まで楽しませてくれる花が数多くあ
るのです。例えば、バラは、美しいだけではなく食用に
もなります。花びらの根元は苦味があるので取り除きま
す。また、花の中心部は食べません。バラの花びらをチ
ーズやナッツ類と合わせてサラダにしたり、刻んだもの
をスパゲッティにふりかけたりするとおいしいのだそう
です。バラを使って、アイスクリームや飲み物に風味を
添えることもできます。また、野菜の花も食用になりま
す。カボチャの花は、すでに十六世紀ごろから南北アメ
リカで食卓に上っていました。しかし、いくらおいしい
からといっても、花を全部食べてしまうとカボチャの実
ができなくなってしまいます。ですから、雌花は残して
雄花だけを食べるのです。レモンやオレンジなど柑橘系
の花は、飲み物に入れたりデザートに添えたりすると、
風味が引き立ちます。春になると、菜の花が八百屋さん
の店頭に並びます。フキノトウやイチジクも、食べると
ころは花の部分です。「花さん。食べられたときの気持
ちはどうですか。」「はあ、なんというか。」「やはり
、見てもらった方がうれしいでしょう。」「はあ、なん
といっても。」「花さんは、きれいですからね。」 「は
あ、なにしろ。」「もっと驚くようなことを言ってくだ
さい。」「ハッ!、なあんてね。」竹は、中に節があっ
て、まるで空き部屋がひとつひとつ区切られているよう
に、空っぽになっています。これは、竹が木の仲間でな
くて、草の仲間だからです。竹は、身のまわりにたくさ
んあるので、大昔から、人間は、この竹を利用する工夫
をしてきました。まず、あいたところにお米をつめて、
蒸す道具にしました。水をつめて、水筒にもしました。
二つにわって、お皿にもしました。 まっすぐにきれいに
割れることから、細くして、ザルやカゴをあんだり、ス
ダレを編んだりもしました。また、更に細くして、竹ヒ
ゴというものにもしました。竹ヒゴは、しなやかにまが
っても折れることがないので、模型飛行機などの材料に
も使われています。更に、人間は、竹によって弓矢や、
槍も作りました。剣道の竹刀には、今も竹が使われてい
ます。竹は、遊ぶものにも使われました。穴をあけて、
尺八という楽器にもなりました。 長い竹を打ちあわせて
、その上をとんで踊るバンブーダンスにも使われました
。竹馬や竹トンボという子どものおもちゃにもなり、竹
から生まれた「かぐやひめ」というお話も作られました
。エジソンが電球を発明したとき、光を長くもたせるた
めのフィラメントの材料を長い間さがして、とうとう京
都の竹の炭がいちばんいいことを発見しました。こんな
に役に立つ竹は、値段も決してタケーわけではありませ
ん。身の回りに豊富にある材料です。日本人は、昔から
この役に立つ竹を尊敬してきました。だから、おめでた
いことに使われるものは、松竹梅と言いますし、お正月
には門松を立てるのです。また、七夕の日には笹に願い
事を書いた短冊をつるします。子どもの日には、笹の葉
でまいたチマキを食べて、元気に育つことを祈ります。
∵竹もまさか、こんなに人間に利用されるとは思わなか
ったでしょう。しかし、竹はきっと「竹をわったような
性格」ですから、「どんどん工夫していいよ!」と快く
言っているはずです。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなた
の顔が正面から大きく写っている写真を用意します。そ
れから、目のまんなか、鼻、口を通る顔の中心線の上に
鏡を立てます。写真の半分と鏡に映ったその半分とを合
わせると、片方の側だけからできた左右対称の顔になり
ます。鏡の向きを変えると、もう片方の側でも同じこと
ができます。右側だけでできた顔と左側だけでできた顔
とでは、かなりちがった印象を受けます。目の大きさや
ほっぺたの形など、右と左では意外に大きく異なってい
るのです。顔だけではありません。人の体は、左右対称
に思えますが、実は少しちがっていて、手足の長さや筋
肉のつきかたなども同じではないのです。人がまっすぐ
に歩くのは当たり前のようですが、実は目で周りの景色
を確かめながら体の向きをコントロールしています。そ
のため、視界のきかない吹雪のときなど、ただやみくも
に進んでいくと、弱い足の方に少しずつ曲がっていって
しまいます。そして、長い時間歩いたあげく、結局最初
と同じ地点にもどってしまうこともあるのです。内臓で
は、右と左はもっとちがいます。たとえば心臓は体の少
し左側にあります。赤ちゃんを抱くときに、お母さんは
自然と赤ちゃんの頭が心臓の近くにくるように抱きます 。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるとき、お母さ
んの心臓の音をずっと聞いていたので、この音を聞くと
安心するのかもしれません。右と左の違いは、普段の生
活でも役に立ちます。例えば、野球をするとき、右利き
の人は、左手でボールをキャッチし右手でボールを投げ
ます。リンゴの皮をむくときは、左手でリンゴを支え右
手で包丁を動かします。人間の体は、右と左の違いをう
まく生かしているのです。∵ここで一句。「ウインクを
両目でしたらただのまばたき」言葉の森長文作成委員会
(α)日本は世界一の漫画王国とよばれています。大人
向けのものまでふくめると、一年間に七億冊以上の漫画
が出版されています。漫画をもとにして、アニメーショ
ンや映画やテレビ番組もたくさん作られ、いろいろな国
の言葉に翻訳されて、世界中の人気を集めています。 で
は、漫画は、いつの時代からあったのでしょうか。いち
ばん古い漫画は、今から八百年ほど前にかかれたと言わ
れています。それは、京都の高山寺というお寺にある、
「鳥獣人物戯画」という絵です。その中には、人真似を
して遊ぶ動物たちがかかれています。始まりは、動物た
ちの川遊び。川に飛びこむウサギや、泳ぐサル。ウサギ
に背中を流してもらって、気持ちよさそうなサルもいま
す。別の絵には弓矢の練習をしたり、相撲をとって遊ん
だりするカエルやウサギの様子がかかれています。カエ
ルに投げ飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで
、見物のカエルたちが大わらいしている絵もあります。
カエルの仏様にお経をあげているサルのお坊さんの絵も
あります。どの動物も生き生きと描かれ、今にも絵の中
から飛び出してきそうです。この昔の漫画には、セリフ
がかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。し
かし絵の中には、今の漫画に似たところもあります。た
とえば今の漫画では、すばやい動きをあらわすために線
を何本もひき、スピードの出ている様子をあらわします
。鳥獣人物戯画の中にも、同じようなかき方が見られる
のです。こんな昔から、漫画を楽しんでいた日本人。 こ
れからも、たくさんの名作が生まれ、多くの人に愛され
ていくことでしょう。∵漫画は、世界中に自マンガでき
る、日本の宝です。しかし、漫画は絵がわかりやすいの
で、字の多い本は読マンガ、漫画なら読むという生活を
続けていると、次第に読む力が低下してきます。字の多
い本を読む一方で、漫画も楽しく読み、漫画の読み方に
ついても自マンガできる国にしていきましょう。夜の道
を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると
、またどこまでもついてきます。もちろん、キツネやお
化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それ
はお月さまです。月がついてくるのは、電車に乗ってい
ても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、ど
んどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、
近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ
動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山
を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるよう
に見えます。家、電信柱、山、月。これらを比べて違う
のは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、
動かないように見えるのです。月は、わたしたちの地球
を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かん
でいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいで
は、月の位置は変わらないように見えるのです。 もちろ
ん、月よりもっと遠くの太陽でも、同じことが言えます
。あなたがどんなに動いても太陽はついてきます。しか
し、太陽はまぶしすぎて、あまり見上げることはありま
せん。やはり、夜、明るい月が一緒についてくるところ
にこそ、不思議さがあるのでしょう。地球は月の四倍の
大きさです。したがって、もし、月の上を歩きながら地
球を見ると、月よりも四倍大きい、青く美しい地球がつ
いてきます。月と地球のツキあいは、遠くても深いもの
なのです。∵「ねえ、どうしてついてくるの?」「だっ
て、ツキだから。」「では、もし太陽だったら?」「や
っぱり、ついて行きタイヨウ。」「甘えん坊なんだね。
」【1】買ってきた野菜の葉に、いも虫がたくさんつい
ていたらどうしますか。普通は「わあ、いやだ」と急い
で取り除き、野菜をすっかりきれいにしてから調理する
でしょう。【2】しかし世界には、いも虫を見て「わあ
、おいしそう」と感じる人たちもいるのです。 アフリカ
の一部では、ガの幼虫であるいも虫が食用にされていま
す。【3】それらの地域では、キャッサバやトウモロコ
シなどのでんぷん質が食事の中心なので、どうしてもた
んぱく質が不足しがちです。しかし、質のよいたんぱく
源は高価で手に入りにくいのが現状です。【4】ですか
ら、たんぱく質のかたまりであるいも虫は大変貴重な補
助食品なのです。実際、一皿のいも虫は、大人が一日に
必要とするたんぱく質・ビタミン・ミネラルの約四分の
三を含むと言われています。【5】秋の雨の季節が過ぎ
ると、いも虫の収穫が始まります。村の女性たちは、総
出でいも虫を集めます。いも虫は内臓を抜き、ゆでてか
ら天日干しにします。【6】この乾燥いも虫を、おやつ
がわりにそのままポリポリと食べるのです。このいも虫
は、ただおいしいだけではありません。ある意味で、と
ても効率のよい食品でもあるのです。【7】いも虫は、
人間には食べられない有毒の植物でもかまわず食べてく
れます。そしてどんどん肥え太り、わずか六週間で体重
を四千倍に増やします。 【8】その丸々としたおいしそ
うないも虫を、今度は人間が食べるわけです。「いも虫
君、いいねえ。あったかそうな蓑を着て。」「それはミ
ノムシ。」【9】「確か、茶碗に入っているんだよね。
」「それはチャワンムシ。」「ときどき足がかゆくなる
けどね。」「それは、ミズムシ。もう、いいもん。無視
。トライアスロンの競技の歴史はまだ新しく、二十世紀
の後半に最初の大会が開催されました。トライアスロン
とは、ギリシャ語で「三」を意味するトライと、「賞品
」を意味するアスロンを合わせてできた言葉です。その
名のとおり、水泳、ランニング、自転車の三種目を続け
て行ない、その総合タイムを競うレースです。どれか一
つだけでも体力のいるハードな競技ですが、それをひと
りで三つもこなすということで、鉄人レースともよばれ
ています。この競技が生まれたのは、ハワイのオアフ島
でした。海兵隊員たちが、一日の仕事を終えて、ビール
を飲みながらくつろいでいるとき、オアフ島で行なわれ
ている三つの競技のうち、どれがいちばん大変かという
議論になりました。三つの競技というのは、オアフ島一
周の自転車レース、ホノルルマラソン大会、ワイキキビ
ーチでの遠泳大会のことです。だれもが、自分の出場し
た競技こそが最も苦しかったと自慢げに話すので、いく
ら話し合っても答えは出ませんでした。そのとき、ビー
ルを飲んで酔っぱらっていた海軍司令官のジョン・コリ
ンズは、ある提案をしました。この三つの競技を合わせ
て一つの競技にしたらどうかというのです。 まさか本気
で挑戦する者はいないだろうと、コリンズはほんの冗談
のつもりで提案したのですが、実際に競技に参加する人
があらわれました。現在では、日本でも毎年多くの大会
が開かれています。また、二〇〇〇年に行なわれたシド
ニーオリンピックから、トライアスロンは正式種目にな
っています。∵「ぼくも、新しい競技を考えついた。」
「なあに。」「ドッジボールと槍投げと火の輪くぐりを
組み合わせるんだ。」「今度のオリンピックで採用され
るといいね。」だれも出ないと思うけど。チョコレート
、キャンディー、ケーキなど、甘いお菓子を思い浮かべ
るだけで幸せな気分になれる人は多いでしょう。それら
のお菓子を作るのに大切なのが砂糖です。しかし、砂糖
にはほかにもいろいろな働きがあります。 その働きのひ
とつに、カビや微生物が増殖するのを防ぐというものが
あります。カビや微生物は湿ったところ、つまり、水分
のあるところが好きです。砂糖は、食べ物の水分の周り
をおおって、微生物やカビの働きをにぶらせます。ジャ
ムや果物の缶詰などがその例です。果物はほうっておく
と傷んだり腐ったりしますが、砂糖とともに調理するこ
とで長期間保存することができます。水分を抱え込む砂
糖の性質は、生クリームや卵白の泡立てにも一役買って
います。クリームや卵のたんぱく質の水分を砂糖が抱え
込むことによって、泡がくずれるのを防ぎ、また泡同士
がくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリー
ムを作るのには、砂糖が欠かせないのです。肉を煮込む
ときにも、その働きが発揮されます。 調理する前の下準
備の肉に砂糖をすりこんでおくと、軟らかく煮ることが
できます。それは、砂糖が肉のたんぱく質の持つ水分を
肉の中にとどめておくからです。さを作り出す調味料
というイメージの強い砂糖ですが、実際には水分と結び
つきやすい性質が私たちの生活の中でいろいろな役割を
はたしているのです。働き者の砂糖は、縁の下の力持ち
なので、決して「えっへん!」といばっているわけでは
ありません。しかし、ダイエットをさけぶ人たちからは
、かたき扱いされています。「えっ?変?一生懸命働い
ているのに……。」砂糖からそんな声が聞こえてきそう
です。∵「カビ君は、どうして砂糖が苦手なの。」「だ
って、砂糖ってサ、トウっても甘いんだもん。」寝よう
としたら、ブーンという音がして、あわてて灯りをつけ
たことがありませんか。そして、小さな蚊がどこにいる
か見つけようとしたことがあるでしょう。日本では昔、
蚊を防ぐために蚊帳という道具を使っていました。 これ
は、一ミリメートルほどの細かい網でできている四角い
テントのようなもので、部屋の中で四方から吊り下げる
ようになっています。網目が細かいので、蚊は中に入れ
ませんが、涼しい風は通すことができます。昔の日本人
は、蚊の多い暑い夏の夜を、蚊帳の中で風鈴の音を聞き
ながら涼しく過ごしたのです。しかし、昭和の後期にな
ると、殺虫剤や下水道が普及した結果、蚊自体が少なく
なり、蚊帳は次第に使われなくなっていきました。とこ
ろが、今、この蚊帳が再び注目されています。蚊帳は、
電気も薬品も使わない点で、人間にも地球にももちろん
蚊にも優しい道具だと考えられるようになってきたので
す。日本は、マラリヤの被害に悩まされるアフリカ諸国
にたくさんの蚊帳を送っています。これによって多くの
子供たちの命が助かっているそうです。日本ではほとん
ど使われることのなくなった蚊帳も、世界では大活躍を
しているのです。日本人のこれからの役割は、より安く
より安全な蚊帳を世界中に広めることではないでしょう
カ。「ブーン。」「あ、蚊や。蚊帳に入ろう。」 「しま
った。蚊帳に入られたカ。ヤーン。」【1】脊椎動物の
ほとんどは、生まれたときから性別が決まっており、途
中で変化することはありません。ところが、同じ脊椎動
物でも、魚には、オスがメスへ、メスがオスへと変化し
たり、生まれながらにして雌雄同体のものがあります。
【2】オスからメスへ変化するものとして代表的なのは
、クマノミの仲間です。クマノミは、毒を持つイソギン
チャクと一緒に暮らすことで有名です。【3】ひとつの
イソギンチャクに、オスとメス一匹ずつの成魚と、体の
小さな幼魚の数匹で暮らしていることが多いのですが、
この成魚と幼魚の間に、親子関係はありません。 クマノ
ミの稚魚は、卵から孵化すると、すぐに生まれたイソギ
ンチャクを離れ、しばらく海の中で浮遊生活を続けます
。【4】そして、全く別のイソギンチャクにたどりつき
、そこで元から住んでいる縁もゆかりもないクマノミた
ちと共同生活を始めます。これは、親子で繁殖してしま
う危険をさけるための工夫です。【5】同じひとつのイ
ソギンチャクの中に暮らしているクマノミたちは、体の
大きさに違いがあります。群れの中でいちばん大きいの
がメス、次に大きいのがオスです。【6】三番め以降の
魚たちは、オスでもメスでもない未成熟な個体です。卵
を産むのはメスですが、その卵を守るのは、おもにオス
の役目です。【7】何らかの原因で、いちばん大きいメ
スが死んでしまうと、オスが性転換をしてメスになり、
オスの次に大きい未成熟な個体がオスになって繁殖に参
加します。クマノミの世界には、このようにきちんとし
た秩序があります。【8】なぜいちばん大きい個体がメ
スになるかというと、メスは体が大きいほどたくさんの
卵を産むことができるからです。∵【9】「わたし、昨
日までオスだったメスで、名前はクマオよ。」「ぼくは
、今日からオスになった、名前はクマコなんだ。」 「何
だか、呼び方にクマっちゃうね。」なんでもコンパクト
がもてはやされるこのごろですが、犬の世界も例外では
ありません。品種改良の結果、たくさんの犬が小型化さ
れ、今や世界中で飼われています。つまり、コンパクト
な犬はそのほとんどが人工的に作り出されたものなので
す。しかし、天然の小型犬もいます。チワワです。餌代
もかからず、場所もとらず、小さいのに勇敢なこの犬は
、ペットとして大変人気があります。チワワの出身地は
メキシコで、意外にも南国の生まれなのです。実はこの
犬は、もともとテチチという名前で知られていました。
チワワと呼ばれるようになったのは十九世紀の中ごろで
す。メキシコに旅行したアメリカ人が、メキシコのチワ
ワ州でこの小さい犬を見つけ、何匹か持ち帰りました。
そして、土地の名前からチワワと命名したのです。同じ
ころ、メキシコのお妃様がヨーロッパ旅行のお供にこの
犬を連れて行ったため、チワワは世界的に有名になりま
した。チワワは人間が大好きです。人間との接触が多い
ほど元気に育つと言われています。 しかし、注意も必要
です。この犬の大きさからすると、ベッドやソファは高
所ですから、高いところから無造作に飛び降りて骨折し
てしまうことがあります。また、消化器官が小さい上に
カロリーを早く消費するため、血糖値が下がりやすいの
もチワワの特徴です。ですから、少量のえさをたびたび
与えてやる必要があります。震えるのはこの犬の特徴で
す。寒いときだけでなく、興奮したときや心配なとき、
不満があるとき、怖がっているときなどに震えます。小
さいけれど大きな存在感を持つチワワ。もしメキシコへ
旅行することがあったなら、「こんにチワ、ワたしの国
へようこそ」と歓迎してくれるかもしれません。∵「チ
ワワって、おでんに入れるとおいしいんだよね。」「そ
れは、チクワ。」人間は昔から、香りに興味を持ち、香
りの原料つまり香料を探してきました。香料には動物性
のものと植物性のものとがあります。動物性のものとし
ては、ジャコウ鹿からとれるムスクが代表的です。植物
性の香料として一般的なものは、なんと言っても花々で
す。例えば、ブルガリアのダマスクローズは、古くから
貴重な香料とされてきました。この花のエッセンスは高
値で取引され、今でも世界中で愛されています。 しかし
、植物性の香料は花だけではありません。どちらかとい
えばなじみの薄い、しかし大変広く使われている香料、
それがフルーツの一種であるベルガモットです。この果
実のエッセンスは、女性用の香水の約三分の一に、また
男性用のコロンの約半分に入っています。このフルーツ
からとれるエッセンスには、いろいろな香りをまとめて
一つの香りにするという働きがあり、これがほかの香料
にはない特性なのです。ベルガモットはミカン科の植物
で、秋から冬にかけてオレンジほどの大きさの実をつけ
ます。香水になるエッセンスは、この果実の皮からとれ
ます。ベルガモットの主な産地は、イタリア半島のカラ
ブリア地方で、ほかの土地ではほとんど育ちません。と
いうのも、この植物は、暖かくしかも南向きの土地で、
強い風の吹かない、湿度の低いところでないと育たない
からです。 この植物の起源そのものは深いなぞに包まれ
ています。野生のベルガモットというものはなく、この
植物を種から育てることもできません。ベルガモットは
、ほかの柑橘系の木々に挿し木をして育てるしかないの
です。野生のベルガモットがあれば、香水も、もっとヤ
セイものになっていたでしょう。神秘に包まれた香りの
世界。だからこそ、より魅力的なのかもしれません。シ
ロツメクサは、日本人にとても愛されている草花のひと
つです。天気のいい休日になると、シロツメクサが生え
ている場所で、シートを広げてお弁当を食べる家族連れ
の姿を見ることができます。シロツメクサの上は、ふん
わりしていて座り心地がよいのです。お弁当のあとには
、子どもたちは花を編んでかわいい冠にしたり、茎をか
らませて両側から引っ張る草相撲をしたりして遊ぶこと
もできます。私たちになじみの深いシロツメクサですが
、実はもともとは日本ではなく、ヨーロッパが原産の植
物です。江戸時代、ヨーロッパのガラス製品は大変な貴
重品でした。遠くヨーロッパから船でガラス製品を運ん
でくるとき、船がゆれてガラスが割れてしまわないよう
に箱の中につめものとして入れられたものが、このシロ
ツメクサなのです。 つめものの草だからツメクサという
名前がつきました。シロツメクサは生命力の強い植物な
ので、つめものとして日本にやってきて役目を終えたあ
と、ゴミとして捨てられた場所で再び息を吹き返し、次
第に日本中に広がっていきました。今では北海道から沖
縄まで、日本全国で見られるようになっています。シロ
ツメクサのように外国が原産で、何らかの理由で日本に
定着した植物のことを帰化植物と言います。セイヨウタ
ンポポやヒメジョオンなども帰化植物として有名です。
ところで、このシロツメクサの英語名はクローバーです
が、クローバーといえば、四つ葉のクローバーが幸運の
シンボルであることはよく知られています。しかし、四
つ葉を見つけようと思っても、クローバかり多くてなか
なか見つからないことがほとんどです。ところが、世の
中には、五つ葉や六つ葉のクローバーもあるのです。今
までに見つかった最高記録はなんと十八枚葉。 これは日
本で発見され、ギネスブックにも載りました。十八枚葉
のクローバーなんて見つけたら、びっくりして白目をむ
いて倒れてしまいそうです。これぞまさにシロ(ツ)メ
スカートやズボンを買うときは、まずウエストのサイズ
を確かめます。では、地球のウエスト、つまり円周はど
うやって測るのでしょう。現代の科学者たちは、メジャ
ーの代わりに人工衛星を使います。北極と南極を通る二
つの衛星で、地球を外がわから測るのです。そのように
して算出された数値は、約四万八千キロメートル。大変
なウエストサイズです。 しかし、今からおよそ二千二百
年前、すでに地球を測った人がいたのです。エラトステ
ネスは、ギリシャの数学者で天文学者でもありました。
彼の時代には人工衛星などないので、地球が丸いことさ
え知らない人がたくさんいました。もちろん、地球を測
ることのできるほど長い巻尺もありません。エラトステ
ネスが使ったのは、一本の棒きれでした。エジプトのシ
エネという都市にいたときのことです。エラトステネス
は、一年でいちばん昼間の長い夏至の正午に、太陽が真
上に来ることに気づきました。太陽の光が影を作らずに
井戸の底まで届いていたからです。しかし、そこから北
に八百五十キロメートルほど行ったところにあるアレク
サンドリアでは、同じ夏至の日の正午に影が見えたので
す。 そこで、エラトステネスはあることを思いつきます
。彼はまず、アレクサンドリアにまっすぐな棒を立てま
した。正午にその棒が作る影を観察するためです。影の
角度を測ったところ、垂直方向に対して七・二度でした
。エラトステネスは地球が丸いことと円周の全体が三百
六十度であることを知っていました。三百六十を七・二
で割ると五十ですから、棒の角度七・二度は円周の五十
分の一になります。ということは、シエネとアレクサン
ドリアの間の距離も、地球の円周の五十分の一と等しい
はずです。そこで二つの町の距離を五十倍し、地球の円
周は、約四万キロメートルから∵四万六千キロメートル
だという結論に達したのです。それは、驚くほど正確な
数値でした。「エラトステネスさん、棒で測るなんて、
いつ思いついたんですか。」「ぼうっとしているときに
ね。」物を食べると、いろいろな味を感じます。たとえ
ば目かくしをしていても、それが知っている味なら、今
食べたものが何か、当てることができるでしょう。また
、初めて食べたものでも、「塩辛い」とか「甘酸っぱい
」などと、言葉で表すことができます。この味は、いっ
たいどこでどうやって感じているのでしょうか。味を感
じる体の部分は舌である、というのは、よく知られてい
ることです。その証拠に、味見をするときは、ちょっと
舌を出してなめてみます。 この舌をよく見てみると、表
面はなめらかではなく、ざらざらで、更によく見ると小
さなでこぼこやつぶつぶがあります。実は、このつぶつ
ぶが、味蕾と呼ばれるものです。「蕾」というのが「つ
ぼみ」という漢字であることからわかるように、味蕾は
花のつぼみのような形をしています。味蕾は舌の表面だ
けではなく、上あごの奥やのどにもあります。ですから
、舌だけで味を感じているのではないようです。ところ
で、動物の中でも肉食動物は、においをかぎ分ける能力
である嗅覚がとても発達している代わりに、味覚はそれ
ほど優れていません。犬やネコも、この肉食動物の仲間
です。おおざっぱに苦味、酸味、辛味、甘味などはわか
り、苦いものがきらいで甘いものが好きなのは人間と同
じです。肉食動物は、生肉をあっという間に食べてしま
うため、それほどおいしさを味わう必要がなかったので
す。それに対し、いつまでもゆっくりと草を食べている
草食動物は、肉食動物よりは味覚が発達していると言わ
れています。 みなさんの家にも、おいしいものしか食べ
ない、グルメな犬やネコがいるかもしれません。これは
、おいしいものをいろいろもらってしまったので、学習
して「違いがわかる」ようになってしまったのです。現
代の犬たちが、おしゃれなカフェで犬用のケーキを食べ
ているなんて、犬のご先祖のオオカミには、想像もでき
なかったにちがいありません「青菜に塩」ということわ
ざは、ほうれん草などの青い葉に塩をかけると急にしお
れてしまうことから、人が急に元気がなくなってしょん
ぼりする様子をたとえることわざになりました。フライ
パンで青菜を炒めているところを見ると、こぼれんばか
りに山盛りになった青菜がさっと小さくなってしまいま
す。さて、この「青菜に塩」の魔法はどうして起こるの
でしょうか。野菜は、人間と同じようにたくさんの細胞
が集まってできています。ひとつひとつの細胞を包んで
いる細胞膜は、水も塩も通すようになっています。生き
ている細胞膜であれば、細胞の中に入った塩をうまく細
胞の外に排出する機能を持っています。 しかし、死んだ
細胞の場合、塩は細胞内にしみ込んだままになります。
その一方で、細胞からは水が出ていくので、青菜のカサ
がへってしまうのです。この脱水作用をうまく利用した
ものが漬物で、漬物にされた野菜は、もとの大きさより
はるかにしおれて縮んでいます。私たち人間が健康に生
きていくためにも、塩分のバランスは大切です。体の細
胞とそれをつつむ液体の塩分濃度は、腎臓の働きで常に
一定に保たれています。細胞の内と外の圧力が均衡して
いるために、細胞は同じ形を保つことができます。塩辛
いものを食べたあと、のどが渇いてくるのもそのためで
す。また、夏の暑い日に、熱射病にならないために水分
と塩分をとるように注意するのも同じ理由からです。「
漬物さんには、塩が必要なんですね。」「シオうだよ。
」「ちょっと苦しいですね。」「エーン。」ブーン。(
飛んでいっちゃった。)お腹がすいたら花屋さんに入る
、という人はいません。「花より団子」のことわざに見
られるとおり、花は見るものであり食べるものではない
、というのが普通の考え方です。 しかし世の中には、目
や鼻だけでなく、舌まで楽しませてくれる花が数多くあ
るのです。例えば、バラは、美しいだけではなく食用に
もなります。花びらの根元は苦味があるので取り除きま
す。また、花の中心部は食べません。バラの花びらをチ
ーズやナッツ類と合わせてサラダにしたり、刻んだもの
をスパゲッティにふりかけたりするとおいしいのだそう
です。バラを使って、アイスクリームや飲み物に風味を
添えることもできます。また、野菜の花も食用になりま
す。カボチャの花は、すでに十六世紀ごろから南北アメ
リカで食卓に上っていました。しかし、いくらおいしい
からといっても、花を全部食べてしまうとカボチャの実
ができなくなってしまいます。ですから、雌花は残して
雄花だけを食べるのです。レモンやオレンジなど柑橘系
の花は、飲み物に入れたりデザートに添えたりすると、
風味が引き立ちます。春になると、菜の花が八百屋さん
の店頭に並びます。フキノトウやイチジクも、食べると
ころは花の部分です。「花さん。食べられたときの気持
ちはどうですか。」「はあ、なんというか。」「やはり
、見てもらった方がうれしいでしょう。」「はあ、なん
といっても。」「花さんは、きれいですからね。」 「は
あ、なにしろ。」「もっと驚くようなことを言ってくだ
さい。」「ハッ!、なあんてね。」竹は、中に節があっ
て、まるで空き部屋がひとつひとつ区切られているよう
に、空っぽになっています。これは、竹が木の仲間でな
くて、草の仲間だからです。竹は、身のまわりにたくさ
んあるので、大昔から、人間は、この竹を利用する工夫
をしてきました。まず、あいたところにお米をつめて、
蒸す道具にしました。水をつめて、水筒にもしました。
二つにわって、お皿にもしました。 まっすぐにきれいに
割れることから、細くして、ザルやカゴをあんだり、ス
ダレを編んだりもしました。また、更に細くして、竹ヒ
ゴというものにもしました。竹ヒゴは、しなやかにまが
っても折れることがないので、模型飛行機などの材料に
も使われています。更に、人間は、竹によって弓矢や、
槍も作りました。剣道の竹刀には、今も竹が使われてい
ます。竹は、遊ぶものにも使われました。穴をあけて、
尺八という楽器にもなりました。 長い竹を打ちあわせて
、その上をとんで踊るバンブーダンスにも使われました
。竹馬や竹トンボという子どものおもちゃにもなり、竹
から生まれた「かぐやひめ」というお話も作られました
。エジソンが電球を発明したとき、光を長くもたせるた
めのフィラメントの材料を長い間さがして、とうとう京
都の竹の炭がいちばんいいことを発見しました。こんな
に役に立つ竹は、値段も決してタケーわけではありませ
ん。身の回りに豊富にある材料です。日本人は、昔から
この役に立つ竹を尊敬してきました。だから、おめでた
いことに使われるものは、松竹梅と言いますし、お正月
には門松を立てるのです。また、七夕の日には笹に願い
事を書いた短冊をつるします。子どもの日には、笹の葉
でまいたチマキを食べて、元気に育つことを祈ります。
∵竹もまさか、こんなに人間に利用されるとは思わなか
ったでしょう。しかし、竹はきっと「竹をわったような
性格」ですから、「どんどん工夫していいよ!」と快く
言っているはずです。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなた
の顔が正面から大きく写っている写真を用意します。そ
れから、目のまんなか、鼻、口を通る顔の中心線の上に
鏡を立てます。写真の半分と鏡に映ったその半分とを合
わせると、片方の側だけからできた左右対称の顔になり
ます。鏡の向きを変えると、もう片方の側でも同じこと
ができます。右側だけでできた顔と左側だけでできた顔
とでは、かなりちがった印象を受けます。目の大きさや
ほっぺたの形など、右と左では意外に大きく異なってい
るのです。顔だけではありません。人の体は、左右対称
に思えますが、実は少しちがっていて、手足の長さや筋
肉のつきかたなども同じではないのです。人がまっすぐ
に歩くのは当たり前のようですが、実は目で周りの景色
を確かめながら体の向きをコントロールしています。そ
のため、視界のきかない吹雪のときなど、ただやみくも
に進んでいくと、弱い足の方に少しずつ曲がっていって
しまいます。そして、長い時間歩いたあげく、結局最初
と同じ地点にもどってしまうこともあるのです。内臓で
は、右と左はもっとちがいます。たとえば心臓は体の少
し左側にあります。赤ちゃんを抱くときに、お母さんは
自然と赤ちゃんの頭が心臓の近くにくるように抱きます 。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるとき、お母さ
んの心臓の音をずっと聞いていたので、この音を聞くと
安心するのかもしれません。右と左の違いは、普段の生
活でも役に立ちます。例えば、野球をするとき、右利き
の人は、左手でボールをキャッチし右手でボールを投げ
ます。リンゴの皮をむくときは、左手でリンゴを支え右
手で包丁を動かします。人間の体は、右と左の違いをう
まく生かしているのです。∵ここで一句。「ウインクを
両目でしたらただのまばたき」言葉の森長文作成委員会
(α)日本は世界一の漫画王国とよばれています。大人
向けのものまでふくめると、一年間に七億冊以上の漫画
が出版されています。漫画をもとにして、アニメーショ
ンや映画やテレビ番組もたくさん作られ、いろいろな国
の言葉に翻訳されて、世界中の人気を集めています。 で
は、漫画は、いつの時代からあったのでしょうか。いち
ばん古い漫画は、今から八百年ほど前にかかれたと言わ
れています。それは、京都の高山寺というお寺にある、
「鳥獣人物戯画」という絵です。その中には、人真似を
して遊ぶ動物たちがかかれています。始まりは、動物た
ちの川遊び。川に飛びこむウサギや、泳ぐサル。ウサギ
に背中を流してもらって、気持ちよさそうなサルもいま
す。別の絵には弓矢の練習をしたり、相撲をとって遊ん
だりするカエルやウサギの様子がかかれています。カエ
ルに投げ飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで
、見物のカエルたちが大わらいしている絵もあります。
カエルの仏様にお経をあげているサルのお坊さんの絵も
あります。どの動物も生き生きと描かれ、今にも絵の中
から飛び出してきそうです。この昔の漫画には、セリフ
がかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。し
かし絵の中には、今の漫画に似たところもあります。た
とえば今の漫画では、すばやい動きをあらわすために線
を何本もひき、スピードの出ている様子をあらわします
。鳥獣人物戯画の中にも、同じようなかき方が見られる
のです。こんな昔から、漫画を楽しんでいた日本人。 こ
れからも、たくさんの名作が生まれ、多くの人に愛され
ていくことでしょう。∵漫画は、世界中に自マンガでき
る、日本の宝です。しかし、漫画は絵がわかりやすいの
で、字の多い本は読マンガ、漫画なら読むという生活を
続けていると、次第に読む力が低下してきます。字の多
い本を読む一方で、漫画も楽しく読み、漫画の読み方に
ついても自マンガできる国にしていきましょう。夜の道
を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると
、またどこまでもついてきます。もちろん、キツネやお
化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それ
はお月さまです。月がついてくるのは、電車に乗ってい
ても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、ど
んどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、
近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ
動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山
を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるよう
に見えます。家、電信柱、山、月。これらを比べて違う
のは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、
動かないように見えるのです。月は、わたしたちの地球
を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かん
でいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいで
は、月の位置は変わらないように見えるのです。 もちろ
ん、月よりもっと遠くの太陽でも、同じことが言えます
。あなたがどんなに動いても太陽はついてきます。しか
し、太陽はまぶしすぎて、あまり見上げることはありま
せん。やはり、夜、明るい月が一緒についてくるところ
にこそ、不思議さがあるのでしょう。地球は月の四倍の
大きさです。したがって、もし、月の上を歩きながら地
球を見ると、月よりも四倍大きい、青く美しい地球がつ
いてきます。月と地球のツキあいは、遠くても深いもの
なのです。∵「ねえ、どうしてついてくるの?」「だっ
て、ツキだから。」「では、もし太陽だったら?」「や
っぱり、ついて行きタイヨウ。」「甘えん坊なんだね。
」【1】買ってきた野菜の葉に、いも虫がたくさんつい
ていたらどうしますか。普通は「わあ、いやだ」と急い
で取り除き、野菜をすっかりきれいにしてから調理する
でしょう。【2】しかし世界には、いも虫を見て「わあ
、おいしそう」と感じる人たちもいるのです。 アフリカ
の一部では、ガの幼虫であるいも虫が食用にされていま
す。【3】それらの地域では、キャッサバやトウモロコ
シなどのでんぷん質が食事の中心なので、どうしてもた
んぱく質が不足しがちです。しかし、質のよいたんぱく
源は高価で手に入りにくいのが現状です。【4】ですか
ら、たんぱく質のかたまりであるいも虫は大変貴重な補
助食品なのです。実際、一皿のいも虫は、大人が一日に
必要とするたんぱく質・ビタミン・ミネラルの約四分の
三を含むと言われています。【5】秋の雨の季節が過ぎ
ると、いも虫の収穫が始まります。村の女性たちは、総
出でいも虫を集めます。いも虫は内臓を抜き、ゆでてか
ら天日干しにします。【6】この乾燥いも虫を、おやつ
がわりにそのままポリポリと食べるのです。このいも虫
は、ただおいしいだけではありません。ある意味で、と
ても効率のよい食品でもあるのです。【7】いも虫は、
人間には食べられない有毒の植物でもかまわず食べてく
れます。そしてどんどん肥え太り、わずか六週間で体重
を四千倍に増やします。 【8】その丸々としたおいしそ
うないも虫を、今度は人間が食べるわけです。「いも虫
君、いいねえ。あったかそうな蓑を着て。」「それはミ
ノムシ。」【9】「確か、茶碗に入っているんだよね。
」「それはチャワンムシ。」「ときどき足がかゆくなる
けどね。」「それは、ミズムシ。もう、いいもん。無視
。トライアスロンの競技の歴史はまだ新しく、二十世紀
の後半に最初の大会が開催されました。トライアスロン
とは、ギリシャ語で「三」を意味するトライと、「賞品
」を意味するアスロンを合わせてできた言葉です。その
名のとおり、水泳、ランニング、自転車の三種目を続け
て行ない、その総合タイムを競うレースです。どれか一
つだけでも体力のいるハードな競技ですが、それをひと
りで三つもこなすということで、鉄人レースともよばれ
ています。この競技が生まれたのは、ハワイのオアフ島
でした。海兵隊員たちが、一日の仕事を終えて、ビール
を飲みながらくつろいでいるとき、オアフ島で行なわれ
ている三つの競技のうち、どれがいちばん大変かという
議論になりました。三つの競技というのは、オアフ島一
周の自転車レース、ホノルルマラソン大会、ワイキキビ
ーチでの遠泳大会のことです。だれもが、自分の出場し
た競技こそが最も苦しかったと自慢げに話すので、いく
ら話し合っても答えは出ませんでした。そのとき、ビー
ルを飲んで酔っぱらっていた海軍司令官のジョン・コリ
ンズは、ある提案をしました。この三つの競技を合わせ
て一つの競技にしたらどうかというのです。 まさか本気
で挑戦する者はいないだろうと、コリンズはほんの冗談
のつもりで提案したのですが、実際に競技に参加する人
があらわれました。現在では、日本でも毎年多くの大会
が開かれています。また、二〇〇〇年に行なわれたシド
ニーオリンピックから、トライアスロンは正式種目にな
っています。∵「ぼくも、新しい競技を考えついた。」
「なあに。」「ドッジボールと槍投げと火の輪くぐりを
組み合わせるんだ。」「今度のオリンピックで採用され
るといいね。」だれも出ないと思うけど。チョコレート
、キャンディー、ケーキなど、甘いお菓子を思い浮かべ
るだけで幸せな気分になれる人は多いでしょう。それら
のお菓子を作るのに大切なのが砂糖です。しかし、砂糖
にはほかにもいろいろな働きがあります。 その働きのひ
とつに、カビや微生物が増殖するのを防ぐというものが
あります。カビや微生物は湿ったところ、つまり、水分
のあるところが好きです。砂糖は、食べ物の水分の周り
をおおって、微生物やカビの働きをにぶらせます。ジャ
ムや果物の缶詰などがその例です。果物はほうっておく
と傷んだり腐ったりしますが、砂糖とともに調理するこ
とで長期間保存することができます。水分を抱え込む砂
糖の性質は、生クリームや卵白の泡立てにも一役買って
います。クリームや卵のたんぱく質の水分を砂糖が抱え
込むことによって、泡がくずれるのを防ぎ、また泡同士
がくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリー
ムを作るのには、砂糖が欠かせないのです。肉を煮込む
ときにも、その働きが発揮されます。 調理する前の下準
備の肉に砂糖をすりこんでおくと、軟らかく煮ることが
できます。それは、砂糖が肉のたんぱく質の持つ水分を
肉の中にとどめておくからです。さを作り出す調味料
というイメージの強い砂糖ですが、実際には水分と結び
つきやすい性質が私たちの生活の中でいろいろな役割を
はたしているのです。働き者の砂糖は、縁の下の力持ち
なので、決して「えっへん!」といばっているわけでは
ありません。しかし、ダイエットをさけぶ人たちからは
、かたき扱いされています。「えっ?変?一生懸命働い
ているのに……。」砂糖からそんな声が聞こえてきそう
です。∵「カビ君は、どうして砂糖が苦手なの。」「だ
って、砂糖ってサ、トウっても甘いんだもん。」寝よう
としたら、ブーンという音がして、あわてて灯りをつけ
たことがありませんか。そして、小さな蚊がどこにいる
か見つけようとしたことがあるでしょう。日本では昔、
蚊を防ぐために蚊帳という道具を使っていました。 これ
は、一ミリメートルほどの細かい網でできている四角い
テントのようなもので、部屋の中で四方から吊り下げる
ようになっています。網目が細かいので、蚊は中に入れ
ませんが、涼しい風は通すことができます。昔の日本人
は、蚊の多い暑い夏の夜を、蚊帳の中で風鈴の音を聞き
ながら涼しく過ごしたのです。しかし、昭和の後期にな
ると、殺虫剤や下水道が普及した結果、蚊自体が少なく
なり、蚊帳は次第に使われなくなっていきました。とこ
ろが、今、この蚊帳が再び注目されています。蚊帳は、
電気も薬品も使わない点で、人間にも地球にももちろん
蚊にも優しい道具だと考えられるようになってきたので
す。日本は、マラリヤの被害に悩まされるアフリカ諸国
にたくさんの蚊帳を送っています。これによって多くの
子供たちの命が助かっているそうです。日本ではほとん
ど使われることのなくなった蚊帳も、世界では大活躍を
しているのです。日本人のこれからの役割は、より安く
より安全な蚊帳を世界中に広めることではないでしょう
カ。「ブーン。」「あ、蚊や。蚊帳に入ろう。」 「しま
った。蚊帳に入られたカ。ヤーン。」【1】脊椎動物の
ほとんどは、生まれたときから性別が決まっており、途
中で変化することはありません。ところが、同じ脊椎動
物でも、魚には、オスがメスへ、メスがオスへと変化し
たり、生まれながらにして雌雄同体のものがあります。
【2】オスからメスへ変化するものとして代表的なのは
、クマノミの仲間です。クマノミは、毒を持つイソギン
チャクと一緒に暮らすことで有名です。【3】ひとつの
イソギンチャクに、オスとメス一匹ずつの成魚と、体の
小さな幼魚の数匹で暮らしていることが多いのですが、
この成魚と幼魚の間に、親子関係はありません。 クマノ
ミの稚魚は、卵から孵化すると、すぐに生まれたイソギ
ンチャクを離れ、しばらく海の中で浮遊生活を続けます
。【4】そして、全く別のイソギンチャクにたどりつき
、そこで元から住んでいる縁もゆかりもないクマノミた
ちと共同生活を始めます。これは、親子で繁殖してしま
う危険をさけるための工夫です。【5】同じひとつのイ
ソギンチャクの中に暮らしているクマノミたちは、体の
大きさに違いがあります。群れの中でいちばん大きいの
がメス、次に大きいのがオスです。【6】三番め以降の
魚たちは、オスでもメスでもない未成熟な個体です。卵
を産むのはメスですが、その卵を守るのは、おもにオス
の役目です。【7】何らかの原因で、いちばん大きいメ
スが死んでしまうと、オスが性転換をしてメスになり、
オスの次に大きい未成熟な個体がオスになって繁殖に参
加します。クマノミの世界には、このようにきちんとし
た秩序があります。【8】なぜいちばん大きい個体がメ
スになるかというと、メスは体が大きいほどたくさんの
卵を産むことができるからです。∵【9】「わたし、昨
日までオスだったメスで、名前はクマオよ。」「ぼくは
、今日からオスになった、名前はクマコなんだ。」 「何
だか、呼び方にクマっちゃうね。」なんでもコンパクト
がもてはやされるこのごろですが、犬の世界も例外では
ありません。品種改良の結果、たくさんの犬が小型化さ
れ、今や世界中で飼われています。つまり、コンパクト
な犬はそのほとんどが人工的に作り出されたものなので
す。しかし、天然の小型犬もいます。チワワです。餌代
もかからず、場所もとらず、小さいのに勇敢なこの犬は
、ペットとして大変人気があります。チワワの出身地は
メキシコで、意外にも南国の生まれなのです。実はこの
犬は、もともとテチチという名前で知られていました。
チワワと呼ばれるようになったのは十九世紀の中ごろで
す。メキシコに旅行したアメリカ人が、メキシコのチワ
ワ州でこの小さい犬を見つけ、何匹か持ち帰りました。
そして、土地の名前からチワワと命名したのです。同じ
ころ、メキシコのお妃様がヨーロッパ旅行のお供にこの
犬を連れて行ったため、チワワは世界的に有名になりま
した。チワワは人間が大好きです。人間との接触が多い
ほど元気に育つと言われています。 しかし、注意も必要
です。この犬の大きさからすると、ベッドやソファは高
所ですから、高いところから無造作に飛び降りて骨折し
てしまうことがあります。また、消化器官が小さい上に
カロリーを早く消費するため、血糖値が下がりやすいの
もチワワの特徴です。ですから、少量のえさをたびたび
与えてやる必要があります。震えるのはこの犬の特徴で
す。寒いときだけでなく、興奮したときや心配なとき、
不満があるとき、怖がっているときなどに震えます。小
さいけれど大きな存在感を持つチワワ。もしメキシコへ
旅行することがあったなら、「こんにチワ、ワたしの国
へようこそ」と歓迎してくれるかもしれません。∵「チ
ワワって、おでんに入れるとおいしいんだよね。」「そ
れは、チクワ。」人間は昔から、香りに興味を持ち、香
りの原料つまり香料を探してきました。香料には動物性
のものと植物性のものとがあります。動物性のものとし
ては、ジャコウ鹿からとれるムスクが代表的です。植物
性の香料として一般的なものは、なんと言っても花々で
す。例えば、ブルガリアのダマスクローズは、古くから
貴重な香料とされてきました。この花のエッセンスは高
値で取引され、今でも世界中で愛されています。 しかし
、植物性の香料は花だけではありません。どちらかとい
えばなじみの薄い、しかし大変広く使われている香料、
それがフルーツの一種であるベルガモットです。この果
実のエッセンスは、女性用の香水の約三分の一に、また
男性用のコロンの約半分に入っています。このフルーツ
からとれるエッセンスには、いろいろな香りをまとめて
一つの香りにするという働きがあり、これがほかの香料
にはない特性なのです。ベルガモットはミカン科の植物
で、秋から冬にかけてオレンジほどの大きさの実をつけ
ます。香水になるエッセンスは、この果実の皮からとれ
ます。ベルガモットの主な産地は、イタリア半島のカラ
ブリア地方で、ほかの土地ではほとんど育ちません。と
いうのも、この植物は、暖かくしかも南向きの土地で、
強い風の吹かない、湿度の低いところでないと育たない
からです。 この植物の起源そのものは深いなぞに包まれ
ています。野生のベルガモットというものはなく、この
植物を種から育てることもできません。ベルガモットは
、ほかの柑橘系の木々に挿し木をして育てるしかないの
です。野生のベルガモットがあれば、香水も、もっとヤ
セイものになっていたでしょう。神秘に包まれた香りの
世界。だからこそ、より魅力的なのかもしれません。シ
ロツメクサは、日本人にとても愛されている草花のひと
つです。天気のいい休日になると、シロツメクサが生え
ている場所で、シートを広げてお弁当を食べる家族連れ
の姿を見ることができます。シロツメクサの上は、ふん
わりしていて座り心地がよいのです。お弁当のあとには
、子どもたちは花を編んでかわいい冠にしたり、茎をか
らませて両側から引っ張る草相撲をしたりして遊ぶこと
もできます。私たちになじみの深いシロツメクサですが
、実はもともとは日本ではなく、ヨーロッパが原産の植
物です。江戸時代、ヨーロッパのガラス製品は大変な貴
重品でした。遠くヨーロッパから船でガラス製品を運ん
でくるとき、船がゆれてガラスが割れてしまわないよう
に箱の中につめものとして入れられたものが、このシロ
ツメクサなのです。 つめものの草だからツメクサという
名前がつきました。シロツメクサは生命力の強い植物な
ので、つめものとして日本にやってきて役目を終えたあ
と、ゴミとして捨てられた場所で再び息を吹き返し、次
第に日本中に広がっていきました。今では北海道から沖
縄まで、日本全国で見られるようになっています。シロ
ツメクサのように外国が原産で、何らかの理由で日本に
定着した植物のことを帰化植物と言います。セイヨウタ
ンポポやヒメジョオンなども帰化植物として有名です。
ところで、このシロツメクサの英語名はクローバーです
が、クローバーといえば、四つ葉のクローバーが幸運の
シンボルであることはよく知られています。しかし、四
つ葉を見つけようと思っても、クローバかり多くてなか
なか見つからないことがほとんどです。ところが、世の
中には、五つ葉や六つ葉のクローバーもあるのです。今
までに見つかった最高記録はなんと十八枚葉。 これは日
本で発見され、ギネスブックにも載りました。十八枚葉
のクローバーなんて見つけたら、びっくりして白目をむ
いて倒れてしまいそうです。これぞまさにシロ(ツ)メ
スカートやズボンを買うときは、まずウエストのサイズ
を確かめます。では、地球のウエスト、つまり円周はど
うやって測るのでしょう。現代の科学者たちは、メジャ
ーの代わりに人工衛星を使います。北極と南極を通る二
つの衛星で、地球を外がわから測るのです。そのように
して算出された数値は、約四万八千キロメートル。大変
なウエストサイズです。 しかし、今からおよそ二千二百
年前、すでに地球を測った人がいたのです。エラトステ
ネスは、ギリシャの数学者で天文学者でもありました。
彼の時代には人工衛星などないので、地球が丸いことさ
え知らない人がたくさんいました。もちろん、地球を測
ることのできるほど長い巻尺もありません。エラトステ
ネスが使ったのは、一本の棒きれでした。エジプトのシ
エネという都市にいたときのことです。エラトステネス
は、一年でいちばん昼間の長い夏至の正午に、太陽が真
上に来ることに気づきました。太陽の光が影を作らずに
井戸の底まで届いていたからです。しかし、そこから北
に八百五十キロメートルほど行ったところにあるアレク
サンドリアでは、同じ夏至の日の正午に影が見えたので
す。 そこで、エラトステネスはあることを思いつきます
。彼はまず、アレクサンドリアにまっすぐな棒を立てま
した。正午にその棒が作る影を観察するためです。影の
角度を測ったところ、垂直方向に対して七・二度でした
。エラトステネスは地球が丸いことと円周の全体が三百
六十度であることを知っていました。三百六十を七・二
で割ると五十ですから、棒の角度七・二度は円周の五十
分の一になります。ということは、シエネとアレクサン
ドリアの間の距離も、地球の円周の五十分の一と等しい
はずです。そこで二つの町の距離を五十倍し、地球の円
周は、約四万キロメートルから∵四万六千キロメートル
だという結論に達したのです。それは、驚くほど正確な
数値でした。「エラトステネスさん、棒で測るなんて、
いつ思いついたんですか。」「ぼうっとしているときに
ね。」物を食べると、いろいろな味を感じます。たとえ
ば目かくしをしていても、それが知っている味なら、今
食べたものが何か、当てることができるでしょう。また
、初めて食べたものでも、「塩辛い」とか「甘酸っぱい
」などと、言葉で表すことができます。この味は、いっ
たいどこでどうやって感じているのでしょうか。味を感
じる体の部分は舌である、というのは、よく知られてい
ることです。その証拠に、味見をするときは、ちょっと
舌を出してなめてみます。 この舌をよく見てみると、表
面はなめらかではなく、ざらざらで、更によく見ると小
さなでこぼこやつぶつぶがあります。実は、このつぶつ
ぶが、味蕾と呼ばれるものです。「蕾」というのが「つ
ぼみ」という漢字であることからわかるように、味蕾は
花のつぼみのような形をしています。味蕾は舌の表面だ
けではなく、上あごの奥やのどにもあります。ですから
、舌だけで味を感じているのではないようです。ところ
で、動物の中でも肉食動物は、においをかぎ分ける能力
である嗅覚がとても発達している代わりに、味覚はそれ
ほど優れていません。犬やネコも、この肉食動物の仲間
です。おおざっぱに苦味、酸味、辛味、甘味などはわか
り、苦いものがきらいで甘いものが好きなのは人間と同
じです。肉食動物は、生肉をあっという間に食べてしま
うため、それほどおいしさを味わう必要がなかったので
す。それに対し、いつまでもゆっくりと草を食べている
草食動物は、肉食動物よりは味覚が発達していると言わ
れています。 みなさんの家にも、おいしいものしか食べ
ない、グルメな犬やネコがいるかもしれません。これは
、おいしいものをいろいろもらってしまったので、学習
して「違いがわかる」ようになってしまったのです。現
代の犬たちが、おしゃれなカフェで犬用のケーキを食べ
ているなんて、犬のご先祖のオオカミには、想像もでき
なかったにちがいありません「青菜に塩」ということわ
ざは、ほうれん草などの青い葉に塩をかけると急にしお
れてしまうことから、人が急に元気がなくなってしょん
ぼりする様子をたとえることわざになりました。フライ
パンで青菜を炒めているところを見ると、こぼれんばか
りに山盛りになった青菜がさっと小さくなってしまいま
す。さて、この「青菜に塩」の魔法はどうして起こるの
でしょうか。野菜は、人間と同じようにたくさんの細胞
が集まってできています。ひとつひとつの細胞を包んで
いる細胞膜は、水も塩も通すようになっています。生き
ている細胞膜であれば、細胞の中に入った塩をうまく細
胞の外に排出する機能を持っています。 しかし、死んだ
細胞の場合、塩は細胞内にしみ込んだままになります。
その一方で、細胞からは水が出ていくので、青菜のカサ
がへってしまうのです。この脱水作用をうまく利用した
ものが漬物で、漬物にされた野菜は、もとの大きさより
はるかにしおれて縮んでいます。私たち人間が健康に生
きていくためにも、塩分のバランスは大切です。体の細
胞とそれをつつむ液体の塩分濃度は、腎臓の働きで常に
一定に保たれています。細胞の内と外の圧力が均衡して
いるために、細胞は同じ形を保つことができます。塩辛
いものを食べたあと、のどが渇いてくるのもそのためで
す。また、夏の暑い日に、熱射病にならないために水分
と塩分をとるように注意するのも同じ理由からです。「
漬物さんには、塩が必要なんですね。」「シオうだよ。
」「ちょっと苦しいですね。」「エーン。」ブーン。(
飛んでいっちゃった。)お腹がすいたら花屋さんに入る
、という人はいません。「花より団子」のことわざに見
られるとおり、花は見るものであり食べるものではない
、というのが普通の考え方です。 しかし世の中には、目
や鼻だけでなく、舌まで楽しませてくれる花が数多くあ
るのです。例えば、バラは、美しいだけではなく食用に
もなります。花びらの根元は苦味があるので取り除きま
す。また、花の中心部は食べません。バラの花びらをチ
ーズやナッツ類と合わせてサラダにしたり、刻んだもの
をスパゲッティにふりかけたりするとおいしいのだそう
です。バラを使って、アイスクリームや飲み物に風味を
添えることもできます。また、野菜の花も食用になりま
す。カボチャの花は、すでに十六世紀ごろから南北アメ
リカで食卓に上っていました。しかし、いくらおいしい
からといっても、花を全部食べてしまうとカボチャの実
ができなくなってしまいます。ですから、雌花は残して
雄花だけを食べるのです。レモンやオレンジなど柑橘系
の花は、飲み物に入れたりデザートに添えたりすると、
風味が引き立ちます。春になると、菜の花が八百屋さん
の店頭に並びます。フキノトウやイチジクも、食べると
ころは花の部分です。「花さん。食べられたときの気持
ちはどうですか。」「はあ、なんというか。」「やはり
、見てもらった方がうれしいでしょう。」「はあ、なん
といっても。」「花さんは、きれいですからね。」 「は
あ、なにしろ。」「もっと驚くようなことを言ってくだ
さい。」「ハッ!、なあんてね。」竹は、中に節があっ
て、まるで空き部屋がひとつひとつ区切られているよう
に、空っぽになっています。これは、竹が木の仲間でな
くて、草の仲間だからです。竹は、身のまわりにたくさ
んあるので、大昔から、人間は、この竹を利用する工夫
をしてきました。まず、あいたところにお米をつめて、
蒸す道具にしました。水をつめて、水筒にもしました。
二つにわって、お皿にもしました。 まっすぐにきれいに
割れることから、細くして、ザルやカゴをあんだり、ス
ダレを編んだりもしました。また、更に細くして、竹ヒ
ゴというものにもしました。竹ヒゴは、しなやかにまが
っても折れることがないので、模型飛行機などの材料に
も使われています。更に、人間は、竹によって弓矢や、
槍も作りました。剣道の竹刀には、今も竹が使われてい
ます。竹は、遊ぶものにも使われました。穴をあけて、
尺八という楽器にもなりました。 長い竹を打ちあわせて
、その上をとんで踊るバンブーダンスにも使われました
。竹馬や竹トンボという子どものおもちゃにもなり、竹
から生まれた「かぐやひめ」というお話も作られました
。エジソンが電球を発明したとき、光を長くもたせるた
めのフィラメントの材料を長い間さがして、とうとう京
都の竹の炭がいちばんいいことを発見しました。こんな
に役に立つ竹は、値段も決してタケーわけではありませ
ん。身の回りに豊富にある材料です。日本人は、昔から
この役に立つ竹を尊敬してきました。だから、おめでた
いことに使われるものは、松竹梅と言いますし、お正月
には門松を立てるのです。また、七夕の日には笹に願い
事を書いた短冊をつるします。子どもの日には、笹の葉
でまいたチマキを食べて、元気に育つことを祈ります。
∵竹もまさか、こんなに人間に利用されるとは思わなか
ったでしょう。しかし、竹はきっと「竹をわったような
性格」ですから、「どんどん工夫していいよ!」と快く
言っているはずです。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなた
の顔が正面から大きく写っている写真を用意します。そ
れから、目のまんなか、鼻、口を通る顔の中心線の上に
鏡を立てます。写真の半分と鏡に映ったその半分とを合
わせると、片方の側だけからできた左右対称の顔になり
ます。鏡の向きを変えると、もう片方の側でも同じこと
ができます。右側だけでできた顔と左側だけでできた顔
とでは、かなりちがった印象を受けます。目の大きさや
ほっぺたの形など、右と左では意外に大きく異なってい
るのです。顔だけではありません。人の体は、左右対称
に思えますが、実は少しちがっていて、手足の長さや筋
肉のつきかたなども同じではないのです。人がまっすぐ
に歩くのは当たり前のようですが、実は目で周りの景色
を確かめながら体の向きをコントロールしています。そ
のため、視界のきかない吹雪のときなど、ただやみくも
に進んでいくと、弱い足の方に少しずつ曲がっていって
しまいます。そして、長い時間歩いたあげく、結局最初
と同じ地点にもどってしまうこともあるのです。内臓で
は、右と左はもっとちがいます。たとえば心臓は体の少
し左側にあります。赤ちゃんを抱くときに、お母さんは
自然と赤ちゃんの頭が心臓の近くにくるように抱きます 。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるとき、お母さ
んの心臓の音をずっと聞いていたので、この音を聞くと
安心するのかもしれません。右と左の違いは、普段の生
活でも役に立ちます。例えば、野球をするとき、右利き
の人は、左手でボールをキャッチし右手でボールを投げ
ます。リンゴの皮をむくときは、左手でリンゴを支え右
手で包丁を動かします。人間の体は、右と左の違いをう
まく生かしているのです。∵ここで一句。「ウインクを
両目でしたらただのまばたき」言葉の森長文作成委員会
(α)日本は世界一の漫画王国とよばれています。大人
向けのものまでふくめると、一年間に七億冊以上の漫画
が出版されています。漫画をもとにして、アニメーショ
ンや映画やテレビ番組もたくさん作られ、いろいろな国
の言葉に翻訳されて、世界中の人気を集めています。 で
は、漫画は、いつの時代からあったのでしょうか。いち
ばん古い漫画は、今から八百年ほど前にかかれたと言わ
れています。それは、京都の高山寺というお寺にある、
「鳥獣人物戯画」という絵です。その中には、人真似を
して遊ぶ動物たちがかかれています。始まりは、動物た
ちの川遊び。川に飛びこむウサギや、泳ぐサル。ウサギ
に背中を流してもらって、気持ちよさそうなサルもいま
す。別の絵には弓矢の練習をしたり、相撲をとって遊ん
だりするカエルやウサギの様子がかかれています。カエ
ルに投げ飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで
、見物のカエルたちが大わらいしている絵もあります。
カエルの仏様にお経をあげているサルのお坊さんの絵も
あります。どの動物も生き生きと描かれ、今にも絵の中
から飛び出してきそうです。この昔の漫画には、セリフ
がかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。し
かし絵の中には、今の漫画に似たところもあります。た
とえば今の漫画では、すばやい動きをあらわすために線
を何本もひき、スピードの出ている様子をあらわします
。鳥獣人物戯画の中にも、同じようなかき方が見られる
のです。こんな昔から、漫画を楽しんでいた日本人。 こ
れからも、たくさんの名作が生まれ、多くの人に愛され
ていくことでしょう。∵漫画は、世界中に自マンガでき
る、日本の宝です。しかし、漫画は絵がわかりやすいの
で、字の多い本は読マンガ、漫画なら読むという生活を
続けていると、次第に読む力が低下してきます。字の多
い本を読む一方で、漫画も楽しく読み、漫画の読み方に
ついても自マンガできる国にしていきましょう。夜の道
を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると
、またどこまでもついてきます。もちろん、キツネやお
化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それ
はお月さまです。月がついてくるのは、電車に乗ってい
ても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、ど
んどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、
近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ
動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山
を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるよう
に見えます。家、電信柱、山、月。これらを比べて違う
のは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、
動かないように見えるのです。月は、わたしたちの地球
を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かん
でいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいで
は、月の位置は変わらないように見えるのです。 もちろ
ん、月よりもっと遠くの太陽でも、同じことが言えます
。あなたがどんなに動いても太陽はついてきます。しか
し、太陽はまぶしすぎて、あまり見上げることはありま
せん。やはり、夜、明るい月が一緒についてくるところ
にこそ、不思議さがあるのでしょう。地球は月の四倍の
大きさです。したがって、もし、月の上を歩きながら地
球を見ると、月よりも四倍大きい、青く美しい地球がつ
いてきます。月と地球のツキあいは、遠くても深いもの
なのです。∵「ねえ、どうしてついてくるの?」「だっ
て、ツキだから。」「では、もし太陽だったら?」「や
っぱり、ついて行きタイヨウ。」「甘えん坊なんだね。
」【1】買ってきた野菜の葉に、いも虫がたくさんつい
ていたらどうしますか。普通は「わあ、いやだ」と急い
で取り除き、野菜をすっかりきれいにしてから調理する
でしょう。【2】しかし世界には、いも虫を見て「わあ
、おいしそう」と感じる人たちもいるのです。 アフリカ
の一部では、ガの幼虫であるいも虫が食用にされていま
す。【3】それらの地域では、キャッサバやトウモロコ
シなどのでんぷん質が食事の中心なので、どうしてもた
んぱく質が不足しがちです。しかし、質のよいたんぱく
源は高価で手に入りにくいのが現状です。【4】ですか
ら、たんぱく質のかたまりであるいも虫は大変貴重な補
助食品なのです。実際、一皿のいも虫は、大人が一日に
必要とするたんぱく質・ビタミン・ミネラルの約四分の
三を含むと言われています。【5】秋の雨の季節が過ぎ
ると、いも虫の収穫が始まります。村の女性たちは、総
出でいも虫を集めます。いも虫は内臓を抜き、ゆでてか
ら天日干しにします。【6】この乾燥いも虫を、おやつ
がわりにそのままポリポリと食べるのです。このいも虫
は、ただおいしいだけではありません。ある意味で、と
ても効率のよい食品でもあるのです。【7】いも虫は、
人間には食べられない有毒の植物でもかまわず食べてく
れます。そしてどんどん肥え太り、わずか六週間で体重
を四千倍に増やします。 【8】その丸々としたおいしそ
うないも虫を、今度は人間が食べるわけです。「いも虫
君、いいねえ。あったかそうな蓑を着て。」「それはミ
ノムシ。」【9】「確か、茶碗に入っているんだよね。
」「それはチャワンムシ。」「ときどき足がかゆくなる
けどね。」「それは、ミズムシ。もう、いいもん。無視
。トライアスロンの競技の歴史はまだ新しく、二十世紀
の後半に最初の大会が開催されました。トライアスロン
とは、ギリシャ語で「三」を意味するトライと、「賞品
」を意味するアスロンを合わせてできた言葉です。その
名のとおり、水泳、ランニング、自転車の三種目を続け
て行ない、その総合タイムを競うレースです。どれか一
つだけでも体力のいるハードな競技ですが、それをひと
りで三つもこなすということで、鉄人レースともよばれ
ています。この競技が生まれたのは、ハワイのオアフ島
でした。海兵隊員たちが、一日の仕事を終えて、ビール
を飲みながらくつろいでいるとき、オアフ島で行なわれ
ている三つの競技のうち、どれがいちばん大変かという
議論になりました。三つの競技というのは、オアフ島一
周の自転車レース、ホノルルマラソン大会、ワイキキビ
ーチでの遠泳大会のことです。だれもが、自分の出場し
た競技こそが最も苦しかったと自慢げに話すので、いく
ら話し合っても答えは出ませんでした。そのとき、ビー
ルを飲んで酔っぱらっていた海軍司令官のジョン・コリ
ンズは、ある提案をしました。この三つの競技を合わせ
て一つの競技にしたらどうかというのです。 まさか本気
で挑戦する者はいないだろうと、コリンズはほんの冗談
のつもりで提案したのですが、実際に競技に参加する人
があらわれました。現在では、日本でも毎年多くの大会
が開かれています。また、二〇〇〇年に行なわれたシド
ニーオリンピックから、トライアスロンは正式種目にな
っています。∵「ぼくも、新しい競技を考えついた。」
「なあに。」「ドッジボールと槍投げと火の輪くぐりを
組み合わせるんだ。」「今度のオリンピックで採用され
るといいね。」だれも出ないと思うけど。チョコレート
、キャンディー、ケーキなど、甘いお菓子を思い浮かべ
るだけで幸せな気分になれる人は多いでしょう。それら
のお菓子を作るのに大切なのが砂糖です。しかし、砂糖
にはほかにもいろいろな働きがあります。 その働きのひ
とつに、カビや微生物が増殖するのを防ぐというものが
あります。カビや微生物は湿ったところ、つまり、水分
のあるところが好きです。砂糖は、食べ物の水分の周り
をおおって、微生物やカビの働きをにぶらせます。ジャ
ムや果物の缶詰などがその例です。果物はほうっておく
と傷んだり腐ったりしますが、砂糖とともに調理するこ
とで長期間保存することができます。水分を抱え込む砂
糖の性質は、生クリームや卵白の泡立てにも一役買って
います。クリームや卵のたんぱく質の水分を砂糖が抱え
込むことによって、泡がくずれるのを防ぎ、また泡同士
がくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリー
ムを作るのには、砂糖が欠かせないのです。肉を煮込む
ときにも、その働きが発揮されます。 調理する前の下準
備の肉に砂糖をすりこんでおくと、軟らかく煮ることが
できます。それは、砂糖が肉のたんぱく質の持つ水分を
肉の中にとどめておくからです。さを作り出す調味料
というイメージの強い砂糖ですが、実際には水分と結び
つきやすい性質が私たちの生活の中でいろいろな役割を
はたしているのです。働き者の砂糖は、縁の下の力持ち
なので、決して「えっへん!」といばっているわけでは
ありません。しかし、ダイエットをさけぶ人たちからは
、かたき扱いされています。「えっ?変?一生懸命働い
ているのに……。」砂糖からそんな声が聞こえてきそう
です。∵「カビ君は、どうして砂糖が苦手なの。」「だ
って、砂糖ってサ、トウっても甘いんだもん。」寝よう
としたら、ブーンという音がして、あわてて灯りをつけ
たことがありませんか。そして、小さな蚊がどこにいる
か見つけようとしたことがあるでしょう。日本では昔、
蚊を防ぐために蚊帳という道具を使っていました。 これ
は、一ミリメートルほどの細かい網でできている四角い
テントのようなもので、部屋の中で四方から吊り下げる
ようになっています。網目が細かいので、蚊は中に入れ
ませんが、涼しい風は通すことができます。昔の日本人
は、蚊の多い暑い夏の夜を、蚊帳の中で風鈴の音を聞き
ながら涼しく過ごしたのです。しかし、昭和の後期にな
ると、殺虫剤や下水道が普及した結果、蚊自体が少なく
なり、蚊帳は次第に使われなくなっていきました。とこ
ろが、今、この蚊帳が再び注目されています。蚊帳は、
電気も薬品も使わない点で、人間にも地球にももちろん
蚊にも優しい道具だと考えられるようになってきたので
す。日本は、マラリヤの被害に悩まされるアフリカ諸国
にたくさんの蚊帳を送っています。これによって多くの
子供たちの命が助かっているそうです。日本ではほとん
ど使われることのなくなった蚊帳も、世界では大活躍を
しているのです。日本人のこれからの役割は、より安く
より安全な蚊帳を世界中に広めることではないでしょう
カ。「ブーン。」「あ、蚊や。蚊帳に入ろう。」 「しま
った。蚊帳に入られたカ。ヤーン。」【1】脊椎動物の
ほとんどは、生まれたときから性別が決まっており、途
中で変化することはありません。ところが、同じ脊椎動
物でも、魚には、オスがメスへ、メスがオスへと変化し
たり、生まれながらにして雌雄同体のものがあります。
【2】オスからメスへ変化するものとして代表的なのは
、クマノミの仲間です。クマノミは、毒を持つイソギン
チャクと一緒に暮らすことで有名です。【3】ひとつの
イソギンチャクに、オスとメス一匹ずつの成魚と、体の
小さな幼魚の数匹で暮らしていることが多いのですが、
この成魚と幼魚の間に、親子関係はありません。 クマノ
ミの稚魚は、卵から孵化すると、すぐに生まれたイソギ
ンチャクを離れ、しばらく海の中で浮遊生活を続けます
。【4】そして、全く別のイソギンチャクにたどりつき
、そこで元から住んでいる縁もゆかりもないクマノミた
ちと共同生活を始めます。これは、親子で繁殖してしま
う危険をさけるための工夫です。【5】同じひとつのイ
ソギンチャクの中に暮らしているクマノミたちは、体の
大きさに違いがあります。群れの中でいちばん大きいの
がメス、次に大きいのがオスです。【6】三番め以降の
魚たちは、オスでもメスでもない未成熟な個体です。卵
を産むのはメスですが、その卵を守るのは、おもにオス
の役目です。【7】何らかの原因で、いちばん大きいメ
スが死んでしまうと、オスが性転換をしてメスになり、
オスの次に大きい未成熟な個体がオスになって繁殖に参
加します。クマノミの世界には、このようにきちんとし
た秩序があります。【8】なぜいちばん大きい個体がメ
スになるかというと、メスは体が大きいほどたくさんの
卵を産むことができるからです。∵【9】「わたし、昨
日までオスだったメスで、名前はクマオよ。」「ぼくは
、今日からオスになった、名前はクマコなんだ。」 「何
だか、呼び方にクマっちゃうね。」なんでもコンパクト
がもてはやされるこのごろですが、犬の世界も例外では
ありません。品種改良の結果、たくさんの犬が小型化さ
れ、今や世界中で飼われています。つまり、コンパクト
な犬はそのほとんどが人工的に作り出されたものなので
す。しかし、天然の小型犬もいます。チワワです。餌代
もかからず、場所もとらず、小さいのに勇敢なこの犬は
、ペットとして大変人気があります。チワワの出身地は
メキシコで、意外にも南国の生まれなのです。実はこの
犬は、もともとテチチという名前で知られていました。
チワワと呼ばれるようになったのは十九世紀の中ごろで
す。メキシコに旅行したアメリカ人が、メキシコのチワ
ワ州でこの小さい犬を見つけ、何匹か持ち帰りました。
そして、土地の名前からチワワと命名したのです。同じ
ころ、メキシコのお妃様がヨーロッパ旅行のお供にこの
犬を連れて行ったため、チワワは世界的に有名になりま
した。チワワは人間が大好きです。人間との接触が多い
ほど元気に育つと言われています。 しかし、注意も必要
です。この犬の大きさからすると、ベッドやソファは高
所ですから、高いところから無造作に飛び降りて骨折し
てしまうことがあります。また、消化器官が小さい上に
カロリーを早く消費するため、血糖値が下がりやすいの
もチワワの特徴です。ですから、少量のえさをたびたび
与えてやる必要があります。震えるのはこの犬の特徴で
す。寒いときだけでなく、興奮したときや心配なとき、
不満があるとき、怖がっているときなどに震えます。小
さいけれど大きな存在感を持つチワワ。もしメキシコへ
旅行することがあったなら、「こんにチワ、ワたしの国
へようこそ」と歓迎してくれるかもしれません。∵「チ
ワワって、おでんに入れるとおいしいんだよね。」「そ
れは、チクワ。」人間は昔から、香りに興味を持ち、香
りの原料つまり香料を探してきました。香料には動物性
のものと植物性のものとがあります。動物性のものとし
ては、ジャコウ鹿からとれるムスクが代表的です。植物
性の香料として一般的なものは、なんと言っても花々で
す。例えば、ブルガリアのダマスクローズは、古くから
貴重な香料とされてきました。この花のエッセンスは高
値で取引され、今でも世界中で愛されています。 しかし
、植物性の香料は花だけではありません。どちらかとい
えばなじみの薄い、しかし大変広く使われている香料、
それがフルーツの一種であるベルガモットです。この果
実のエッセンスは、女性用の香水の約三分の一に、また
男性用のコロンの約半分に入っています。このフルーツ
からとれるエッセンスには、いろいろな香りをまとめて
一つの香りにするという働きがあり、これがほかの香料
にはない特性なのです。ベルガモットはミカン科の植物
で、秋から冬にかけてオレンジほどの大きさの実をつけ
ます。香水になるエッセンスは、この果実の皮からとれ
ます。ベルガモットの主な産地は、イタリア半島のカラ
ブリア地方で、ほかの土地ではほとんど育ちません。と
いうのも、この植物は、暖かくしかも南向きの土地で、
強い風の吹かない、湿度の低いところでないと育たない
からです。 この植物の起源そのものは深いなぞに包まれ
ています。野生のベルガモットというものはなく、この
植物を種から育てることもできません。ベルガモットは
、ほかの柑橘系の木々に挿し木をして育てるしかないの
です。野生のベルガモットがあれば、香水も、もっとヤ
セイものになっていたでしょう。神秘に包まれた香りの
世界。だからこそ、より魅力的なのかもしれません。シ
ロツメクサは、日本人にとても愛されている草花のひと
つです。天気のいい休日になると、シロツメクサが生え
ている場所で、シートを広げてお弁当を食べる家族連れ
の姿を見ることができます。シロツメクサの上は、ふん
わりしていて座り心地がよいのです。お弁当のあとには
、子どもたちは花を編んでかわいい冠にしたり、茎をか
らませて両側から引っ張る草相撲をしたりして遊ぶこと
もできます。私たちになじみの深いシロツメクサですが
、実はもともとは日本ではなく、ヨーロッパが原産の植
物です。江戸時代、ヨーロッパのガラス製品は大変な貴
重品でした。遠くヨーロッパから船でガラス製品を運ん
でくるとき、船がゆれてガラスが割れてしまわないよう
に箱の中につめものとして入れられたものが、このシロ
ツメクサなのです。 つめものの草だからツメクサという
名前がつきました。シロツメクサは生命力の強い植物な
ので、つめものとして日本にやってきて役目を終えたあ
と、ゴミとして捨てられた場所で再び息を吹き返し、次
第に日本中に広がっていきました。今では北海道から沖
縄まで、日本全国で見られるようになっています。シロ
ツメクサのように外国が原産で、何らかの理由で日本に
定着した植物のことを帰化植物と言います。セイヨウタ
ンポポやヒメジョオンなども帰化植物として有名です。
ところで、このシロツメクサの英語名はクローバーです
が、クローバーといえば、四つ葉のクローバーが幸運の
シンボルであることはよく知られています。しかし、四
つ葉を見つけようと思っても、クローバかり多くてなか
なか見つからないことがほとんどです。ところが、世の
中には、五つ葉や六つ葉のクローバーもあるのです。今
までに見つかった最高記録はなんと十八枚葉。 これは日
本で発見され、ギネスブックにも載りました。十八枚葉
のクローバーなんて見つけたら、びっくりして白目をむ
いて倒れてしまいそうです。これぞまさにシロ(ツ)メ
スカートやズボンを買うときは、まずウエストのサイズ
を確かめます。では、地球のウエスト、つまり円周はど
うやって測るのでしょう。現代の科学者たちは、メジャ
ーの代わりに人工衛星を使います。北極と南極を通る二
つの衛星で、地球を外がわから測るのです。そのように
して算出された数値は、約四万八千キロメートル。大変
なウエストサイズです。 しかし、今からおよそ二千二百
年前、すでに地球を測った人がいたのです。エラトステ
ネスは、ギリシャの数学者で天文学者でもありました。
彼の時代には人工衛星などないので、地球が丸いことさ
え知らない人がたくさんいました。もちろん、地球を測
ることのできるほど長い巻尺もありません。エラトステ
ネスが使ったのは、一本の棒きれでした。エジプトのシ
エネという都市にいたときのことです。エラトステネス
は、一年でいちばん昼間の長い夏至の正午に、太陽が真
上に来ることに気づきました。太陽の光が影を作らずに
井戸の底まで届いていたからです。しかし、そこから北
に八百五十キロメートルほど行ったところにあるアレク
サンドリアでは、同じ夏至の日の正午に影が見えたので
す。 そこで、エラトステネスはあることを思いつきます
。彼はまず、アレクサンドリアにまっすぐな棒を立てま
した。正午にその棒が作る影を観察するためです。影の
角度を測ったところ、垂直方向に対して七・二度でした
。エラトステネスは地球が丸いことと円周の全体が三百
六十度であることを知っていました。三百六十を七・二
で割ると五十ですから、棒の角度七・二度は円周の五十
分の一になります。ということは、シエネとアレクサン
ドリアの間の距離も、地球の円周の五十分の一と等しい
はずです。そこで二つの町の距離を五十倍し、地球の円
周は、約四万キロメートルから∵四万六千キロメートル
だという結論に達したのです。それは、驚くほど正確な
数値でした。「エラトステネスさん、棒で測るなんて、
いつ思いついたんですか。」「ぼうっとしているときに
ね。」物を食べると、いろいろな味を感じます。たとえ
ば目かくしをしていても、それが知っている味なら、今
食べたものが何か、当てることができるでしょう。また
、初めて食べたものでも、「塩辛い」とか「甘酸っぱい
」などと、言葉で表すことができます。この味は、いっ
たいどこでどうやって感じているのでしょうか。味を感
じる体の部分は舌である、というのは、よく知られてい
ることです。その証拠に、味見をするときは、ちょっと
舌を出してなめてみます。 この舌をよく見てみると、表
面はなめらかではなく、ざらざらで、更によく見ると小
さなでこぼこやつぶつぶがあります。実は、このつぶつ
ぶが、味蕾と呼ばれるものです。「蕾」というのが「つ
ぼみ」という漢字であることからわかるように、味蕾は
花のつぼみのような形をしています。味蕾は舌の表面だ
けではなく、上あごの奥やのどにもあります。ですから
、舌だけで味を感じているのではないようです。ところ
で、動物の中でも肉食動物は、においをかぎ分ける能力
である嗅覚がとても発達している代わりに、味覚はそれ
ほど優れていません。犬やネコも、この肉食動物の仲間
です。おおざっぱに苦味、酸味、辛味、甘味などはわか
り、苦いものがきらいで甘いものが好きなのは人間と同
じです。肉食動物は、生肉をあっという間に食べてしま
うため、それほどおいしさを味わう必要がなかったので
す。それに対し、いつまでもゆっくりと草を食べている
草食動物は、肉食動物よりは味覚が発達していると言わ
れています。 みなさんの家にも、おいしいものしか食べ
ない、グルメな犬やネコがいるかもしれません。これは
、おいしいものをいろいろもらってしまったので、学習
して「違いがわかる」ようになってしまったのです。現
代の犬たちが、おしゃれなカフェで犬用のケーキを食べ
ているなんて、犬のご先祖のオオカミには、想像もでき
なかったにちがいありません「青菜に塩」ということわ
ざは、ほうれん草などの青い葉に塩をかけると急にしお
れてしまうことから、人が急に元気がなくなってしょん
ぼりする様子をたとえることわざになりました。フライ
パンで青菜を炒めているところを見ると、こぼれんばか
りに山盛りになった青菜がさっと小さくなってしまいま
す。さて、この「青菜に塩」の魔法はどうして起こるの
でしょうか。野菜は、人間と同じようにたくさんの細胞
が集まってできています。ひとつひとつの細胞を包んで
いる細胞膜は、水も塩も通すようになっています。生き
ている細胞膜であれば、細胞の中に入った塩をうまく細
胞の外に排出する機能を持っています。 しかし、死んだ
細胞の場合、塩は細胞内にしみ込んだままになります。
その一方で、細胞からは水が出ていくので、青菜のカサ
がへってしまうのです。この脱水作用をうまく利用した
ものが漬物で、漬物にされた野菜は、もとの大きさより
はるかにしおれて縮んでいます。私たち人間が健康に生
きていくためにも、塩分のバランスは大切です。体の細
胞とそれをつつむ液体の塩分濃度は、腎臓の働きで常に
一定に保たれています。細胞の内と外の圧力が均衡して
いるために、細胞は同じ形を保つことができます。塩辛
いものを食べたあと、のどが渇いてくるのもそのためで
す。また、夏の暑い日に、熱射病にならないために水分
と塩分をとるように注意するのも同じ理由からです。「
漬物さんには、塩が必要なんですね。」「シオうだよ。
」「ちょっと苦しいですね。」「エーン。」ブーン。(
飛んでいっちゃった。)お腹がすいたら花屋さんに入る
、という人はいません。「花より団子」のことわざに見
られるとおり、花は見るものであり食べるものではない
、というのが普通の考え方です。 しかし世の中には、目
や鼻だけでなく、舌まで楽しませてくれる花が数多くあ
るのです。例えば、バラは、美しいだけではなく食用に
もなります。花びらの根元は苦味があるので取り除きま
す。また、花の中心部は食べません。バラの花びらをチ
ーズやナッツ類と合わせてサラダにしたり、刻んだもの
をスパゲッティにふりかけたりするとおいしいのだそう
です。バラを使って、アイスクリームや飲み物に風味を
添えることもできます。また、野菜の花も食用になりま
す。カボチャの花は、すでに十六世紀ごろから南北アメ
リカで食卓に上っていました。しかし、いくらおいしい
からといっても、花を全部食べてしまうとカボチャの実
ができなくなってしまいます。ですから、雌花は残して
雄花だけを食べるのです。レモンやオレンジなど柑橘系
の花は、飲み物に入れたりデザートに添えたりすると、
風味が引き立ちます。春になると、菜の花が八百屋さん
の店頭に並びます。フキノトウやイチジクも、食べると
ころは花の部分です。「花さん。食べられたときの気持
ちはどうですか。」「はあ、なんというか。」「やはり
、見てもらった方がうれしいでしょう。」「はあ、なん
といっても。」「花さんは、きれいですからね。」 「は
あ、なにしろ。」「もっと驚くようなことを言ってくだ
さい。」「ハッ!、なあんてね。」竹は、中に節があっ
て、まるで空き部屋がひとつひとつ区切られているよう
に、空っぽになっています。これは、竹が木の仲間でな
くて、草の仲間だからです。竹は、身のまわりにたくさ
んあるので、大昔から、人間は、この竹を利用する工夫
をしてきました。まず、あいたところにお米をつめて、
蒸す道具にしました。水をつめて、水筒にもしました。
二つにわって、お皿にもしました。 まっすぐにきれいに
割れることから、細くして、ザルやカゴをあんだり、ス
ダレを編んだりもしました。また、更に細くして、竹ヒ
ゴというものにもしました。竹ヒゴは、しなやかにまが
っても折れることがないので、模型飛行機などの材料に
も使われています。更に、人間は、竹によって弓矢や、
槍も作りました。剣道の竹刀には、今も竹が使われてい
ます。竹は、遊ぶものにも使われました。穴をあけて、
尺八という楽器にもなりました。 長い竹を打ちあわせて
、その上をとんで踊るバンブーダンスにも使われました
。竹馬や竹トンボという子どものおもちゃにもなり、竹
から生まれた「かぐやひめ」というお話も作られました
。エジソンが電球を発明したとき、光を長くもたせるた
めのフィラメントの材料を長い間さがして、とうとう京
都の竹の炭がいちばんいいことを発見しました。こんな
に役に立つ竹は、値段も決してタケーわけではありませ
ん。身の回りに豊富にある材料です。日本人は、昔から
この役に立つ竹を尊敬してきました。だから、おめでた
いことに使われるものは、松竹梅と言いますし、お正月
には門松を立てるのです。また、七夕の日には笹に願い
事を書いた短冊をつるします。子どもの日には、笹の葉
でまいたチマキを食べて、元気に育つことを祈ります。
∵竹もまさか、こんなに人間に利用されるとは思わなか
ったでしょう。しかし、竹はきっと「竹をわったような
性格」ですから、「どんどん工夫していいよ!」と快く
言っているはずです。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなた
の顔が正面から大きく写っている写真を用意します。そ
れから、目のまんなか、鼻、口を通る顔の中心線の上に
鏡を立てます。写真の半分と鏡に映ったその半分とを合
わせると、片方の側だけからできた左右対称の顔になり
ます。鏡の向きを変えると、もう片方の側でも同じこと
ができます。右側だけでできた顔と左側だけでできた顔
とでは、かなりちがった印象を受けます。目の大きさや
ほっぺたの形など、右と左では意外に大きく異なってい
るのです。顔だけではありません。人の体は、左右対称
に思えますが、実は少しちがっていて、手足の長さや筋
肉のつきかたなども同じではないのです。人がまっすぐ
に歩くのは当たり前のようですが、実は目で周りの景色
を確かめながら体の向きをコントロールしています。そ
のため、視界のきかない吹雪のときなど、ただやみくも
に進んでいくと、弱い足の方に少しずつ曲がっていって
しまいます。そして、長い時間歩いたあげく、結局最初
と同じ地点にもどってしまうこともあるのです。内臓で
は、右と左はもっとちがいます。たとえば心臓は体の少
し左側にあります。赤ちゃんを抱くときに、お母さんは
自然と赤ちゃんの頭が心臓の近くにくるように抱きます 。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるとき、お母さ
んの心臓の音をずっと聞いていたので、この音を聞くと
安心するのかもしれません。右と左の違いは、普段の生
活でも役に立ちます。例えば、野球をするとき、右利き
の人は、左手でボールをキャッチし右手でボールを投げ
ます。リンゴの皮をむくときは、左手でリンゴを支え右
手で包丁を動かします。人間の体は、右と左の違いをう
まく生かしているのです。∵ここで一句。「ウインクを
両目でしたらただのまばたき」言葉の森長文作成委員会
(α)日本は世界一の漫画王国とよばれています。大人
向けのものまでふくめると、一年間に七億冊以上の漫画
が出版されています。漫画をもとにして、アニメーショ
ンや映画やテレビ番組もたくさん作られ、いろいろな国
の言葉に翻訳されて、世界中の人気を集めています。 で
は、漫画は、いつの時代からあったのでしょうか。いち
ばん古い漫画は、今から八百年ほど前にかかれたと言わ
れています。それは、京都の高山寺というお寺にある、
「鳥獣人物戯画」という絵です。その中には、人真似を
して遊ぶ動物たちがかかれています。始まりは、動物た
ちの川遊び。川に飛びこむウサギや、泳ぐサル。ウサギ
に背中を流してもらって、気持ちよさそうなサルもいま
す。別の絵には弓矢の練習をしたり、相撲をとって遊ん
だりするカエルやウサギの様子がかかれています。カエ
ルに投げ飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで
、見物のカエルたちが大わらいしている絵もあります。
カエルの仏様にお経をあげているサルのお坊さんの絵も
あります。どの動物も生き生きと描かれ、今にも絵の中
から飛び出してきそうです。この昔の漫画には、セリフ
がかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。し
かし絵の中には、今の漫画に似たところもあります。た
とえば今の漫画では、すばやい動きをあらわすために線
を何本もひき、スピードの出ている様子をあらわします
。鳥獣人物戯画の中にも、同じようなかき方が見られる
のです。こんな昔から、漫画を楽しんでいた日本人。 こ
れからも、たくさんの名作が生まれ、多くの人に愛され
ていくことでしょう。∵漫画は、世界中に自マンガでき
る、日本の宝です。しかし、漫画は絵がわかりやすいの
で、字の多い本は読マンガ、漫画なら読むという生活を
続けていると、次第に読む力が低下してきます。字の多
い本を読む一方で、漫画も楽しく読み、漫画の読み方に
ついても自マンガできる国にしていきましょう。夜の道
を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると
、またどこまでもついてきます。もちろん、キツネやお
化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それ
はお月さまです。月がついてくるのは、電車に乗ってい
ても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、ど
んどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、
近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ
動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山
を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるよう
に見えます。家、電信柱、山、月。これらを比べて違う
のは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、
動かないように見えるのです。月は、わたしたちの地球
を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かん
でいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいで
は、月の位置は変わらないように見えるのです。 もちろ
ん、月よりもっと遠くの太陽でも、同じことが言えます
。あなたがどんなに動いても太陽はついてきます。しか
し、太陽はまぶしすぎて、あまり見上げることはありま
せん。やはり、夜、明るい月が一緒についてくるところ
にこそ、不思議さがあるのでしょう。地球は月の四倍の
大きさです。したがって、もし、月の上を歩きながら地
球を見ると、月よりも四倍大きい、青く美しい地球がつ
いてきます。月と地球のツキあいは、遠くても深いもの
なのです。∵「ねえ、どうしてついてくるの?」「だっ
て、ツキだから。」「では、もし太陽だったら?」「や
っぱり、ついて行きタイヨウ。」「甘えん坊なんだね。
」【1】買ってきた野菜の葉に、いも虫がたくさんつい
ていたらどうしますか。普通は「わあ、いやだ」と急い
で取り除き、野菜をすっかりきれいにしてから調理する
でしょう。【2】しかし世界には、いも虫を見て「わあ
、おいしそう」と感じる人たちもいるのです。 アフリカ
の一部では、ガの幼虫であるいも虫が食用にされていま
す。【3】それらの地域では、キャッサバやトウモロコ
シなどのでんぷん質が食事の中心なので、どうしてもた
んぱく質が不足しがちです。しかし、質のよいたんぱく
源は高価で手に入りにくいのが現状です。【4】ですか
ら、たんぱく質のかたまりであるいも虫は大変貴重な補
助食品なのです。実際、一皿のいも虫は、大人が一日に
必要とするたんぱく質・ビタミン・ミネラルの約四分の
三を含むと言われています。【5】秋の雨の季節が過ぎ
ると、いも虫の収穫が始まります。村の女性たちは、総
出でいも虫を集めます。いも虫は内臓を抜き、ゆでてか
ら天日干しにします。【6】この乾燥いも虫を、おやつ
がわりにそのままポリポリと食べるのです。このいも虫
は、ただおいしいだけではありません。ある意味で、と
ても効率のよい食品でもあるのです。【7】いも虫は、
人間には食べられない有毒の植物でもかまわず食べてく
れます。そしてどんどん肥え太り、わずか六週間で体重
を四千倍に増やします。 【8】その丸々としたおいしそ
うないも虫を、今度は人間が食べるわけです。「いも虫
君、いいねえ。あったかそうな蓑を着て。」「それはミ
ノムシ。」【9】「確か、茶碗に入っているんだよね。
」「それはチャワンムシ。」「ときどき足がかゆくなる
けどね。」「それは、ミズムシ。もう、いいもん。無視
。トライアスロンの競技の歴史はまだ新しく、二十世紀
の後半に最初の大会が開催されました。トライアスロン
とは、ギリシャ語で「三」を意味するトライと、「賞品
」を意味するアスロンを合わせてできた言葉です。その
名のとおり、水泳、ランニング、自転車の三種目を続け
て行ない、その総合タイムを競うレースです。どれか一
つだけでも体力のいるハードな競技ですが、それをひと
りで三つもこなすということで、鉄人レースともよばれ
ています。この競技が生まれたのは、ハワイのオアフ島
でした。海兵隊員たちが、一日の仕事を終えて、ビール
を飲みながらくつろいでいるとき、オアフ島で行なわれ
ている三つの競技のうち、どれがいちばん大変かという
議論になりました。三つの競技というのは、オアフ島一
周の自転車レース、ホノルルマラソン大会、ワイキキビ
ーチでの遠泳大会のことです。だれもが、自分の出場し
た競技こそが最も苦しかったと自慢げに話すので、いく
ら話し合っても答えは出ませんでした。そのとき、ビー
ルを飲んで酔っぱらっていた海軍司令官のジョン・コリ
ンズは、ある提案をしました。この三つの競技を合わせ
て一つの競技にしたらどうかというのです。 まさか本気
で挑戦する者はいないだろうと、コリンズはほんの冗談
のつもりで提案したのですが、実際に競技に参加する人
があらわれました。現在では、日本でも毎年多くの大会
が開かれています。また、二〇〇〇年に行なわれたシド
ニーオリンピックから、トライアスロンは正式種目にな
っています。∵「ぼくも、新しい競技を考えついた。」
「なあに。」「ドッジボールと槍投げと火の輪くぐりを
組み合わせるんだ。」「今度のオリンピックで採用され
るといいね。」だれも出ないと思うけど。チョコレート
、キャンディー、ケーキなど、甘いお菓子を思い浮かべ
るだけで幸せな気分になれる人は多いでしょう。それら
のお菓子を作るのに大切なのが砂糖です。しかし、砂糖
にはほかにもいろいろな働きがあります。 その働きのひ
とつに、カビや微生物が増殖するのを防ぐというものが
あります。カビや微生物は湿ったところ、つまり、水分
のあるところが好きです。砂糖は、食べ物の水分の周り
をおおって、微生物やカビの働きをにぶらせます。ジャ
ムや果物の缶詰などがその例です。果物はほうっておく
と傷んだり腐ったりしますが、砂糖とともに調理するこ
とで長期間保存することができます。水分を抱え込む砂
糖の性質は、生クリームや卵白の泡立てにも一役買って
います。クリームや卵のたんぱく質の水分を砂糖が抱え
込むことによって、泡がくずれるのを防ぎ、また泡同士
がくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリー
ムを作るのには、砂糖が欠かせないのです。肉を煮込む
ときにも、その働きが発揮されます。 調理する前の下準
備の肉に砂糖をすりこんでおくと、軟らかく煮ることが
できます。それは、砂糖が肉のたんぱく質の持つ水分を
肉の中にとどめておくからです。さを作り出す調味料
というイメージの強い砂糖ですが、実際には水分と結び
つきやすい性質が私たちの生活の中でいろいろな役割を
はたしているのです。働き者の砂糖は、縁の下の力持ち
なので、決して「えっへん!」といばっているわけでは
ありません。しかし、ダイエットをさけぶ人たちからは
、かたき扱いされています。「えっ?変?一生懸命働い
ているのに……。」砂糖からそんな声が聞こえてきそう
です。∵「カビ君は、どうして砂糖が苦手なの。」「だ
って、砂糖ってサ、トウっても甘いんだもん。」寝よう
としたら、ブーンという音がして、あわてて灯りをつけ
たことがありませんか。そして、小さな蚊がどこにいる
か見つけようとしたことがあるでしょう。日本では昔、
蚊を防ぐために蚊帳という道具を使っていました。 これ
は、一ミリメートルほどの細かい網でできている四角い
テントのようなもので、部屋の中で四方から吊り下げる
ようになっています。網目が細かいので、蚊は中に入れ
ませんが、涼しい風は通すことができます。昔の日本人
は、蚊の多い暑い夏の夜を、蚊帳の中で風鈴の音を聞き
ながら涼しく過ごしたのです。しかし、昭和の後期にな
ると、殺虫剤や下水道が普及した結果、蚊自体が少なく
なり、蚊帳は次第に使われなくなっていきました。とこ
ろが、今、この蚊帳が再び注目されています。蚊帳は、
電気も薬品も使わない点で、人間にも地球にももちろん
蚊にも優しい道具だと考えられるようになってきたので
す。日本は、マラリヤの被害に悩まされるアフリカ諸国
にたくさんの蚊帳を送っています。これによって多くの
子供たちの命が助かっているそうです。日本ではほとん
ど使われることのなくなった蚊帳も、世界では大活躍を
しているのです。日本人のこれからの役割は、より安く
より安全な蚊帳を世界中に広めることではないでしょう
カ。「ブーン。」「あ、蚊や。蚊帳に入ろう。」 「しま
った。蚊帳に入られたカ。ヤーン。」【1】脊椎動物の
ほとんどは、生まれたときから性別が決まっており、途
中で変化することはありません。ところが、同じ脊椎動
物でも、魚には、オスがメスへ、メスがオスへと変化し
たり、生まれながらにして雌雄同体のものがあります。
【2】オスからメスへ変化するものとして代表的なのは
、クマノミの仲間です。クマノミは、毒を持つイソギン
チャクと一緒に暮らすことで有名です。【3】ひとつの
イソギンチャクに、オスとメス一匹ずつの成魚と、体の
小さな幼魚の数匹で暮らしていることが多いのですが、
この成魚と幼魚の間に、親子関係はありません。 クマノ
ミの稚魚は、卵から孵化すると、すぐに生まれたイソギ
ンチャクを離れ、しばらく海の中で浮遊生活を続けます
。【4】そして、全く別のイソギンチャクにたどりつき
、そこで元から住んでいる縁もゆかりもないクマノミた
ちと共同生活を始めます。これは、親子で繁殖してしま
う危険をさけるための工夫です。【5】同じひとつのイ
ソギンチャクの中に暮らしているクマノミたちは、体の
大きさに違いがあります。群れの中でいちばん大きいの
がメス、次に大きいのがオスです。【6】三番め以降の
魚たちは、オスでもメスでもない未成熟な個体です。卵
を産むのはメスですが、その卵を守るのは、おもにオス
の役目です。【7】何らかの原因で、いちばん大きいメ
スが死んでしまうと、オスが性転換をしてメスになり、
オスの次に大きい未成熟な個体がオスになって繁殖に参
加します。クマノミの世界には、このようにきちんとし
た秩序があります。【8】なぜいちばん大きい個体がメ
スになるかというと、メスは体が大きいほどたくさんの
卵を産むことができるからです。∵【9】「わたし、昨
日までオスだったメスで、名前はクマオよ。」「ぼくは
、今日からオスになった、名前はクマコなんだ。」 「何
だか、呼び方にクマっちゃうね。」なんでもコンパクト
がもてはやされるこのごろですが、犬の世界も例外では
ありません。品種改良の結果、たくさんの犬が小型化さ
れ、今や世界中で飼われています。つまり、コンパクト
な犬はそのほとんどが人工的に作り出されたものなので
す。しかし、天然の小型犬もいます。チワワです。餌代
もかからず、場所もとらず、小さいのに勇敢なこの犬は
、ペットとして大変人気があります。チワワの出身地は
メキシコで、意外にも南国の生まれなのです。実はこの
犬は、もともとテチチという名前で知られていました。
チワワと呼ばれるようになったのは十九世紀の中ごろで
す。メキシコに旅行したアメリカ人が、メキシコのチワ
ワ州でこの小さい犬を見つけ、何匹か持ち帰りました。
そして、土地の名前からチワワと命名したのです。同じ
ころ、メキシコのお妃様がヨーロッパ旅行のお供にこの
犬を連れて行ったため、チワワは世界的に有名になりま
した。チワワは人間が大好きです。人間との接触が多い
ほど元気に育つと言われています。 しかし、注意も必要
です。この犬の大きさからすると、ベッドやソファは高
所ですから、高いところから無造作に飛び降りて骨折し
てしまうことがあります。また、消化器官が小さい上に
カロリーを早く消費するため、血糖値が下がりやすいの
もチワワの特徴です。ですから、少量のえさをたびたび
与えてやる必要があります。震えるのはこの犬の特徴で
す。寒いときだけでなく、興奮したときや心配なとき、
不満があるとき、怖がっているときなどに震えます。小
さいけれど大きな存在感を持つチワワ。もしメキシコへ
旅行することがあったなら、「こんにチワ、ワたしの国
へようこそ」と歓迎してくれるかもしれません。∵「チ
ワワって、おでんに入れるとおいしいんだよね。」「そ
れは、チクワ。」人間は昔から、香りに興味を持ち、香
りの原料つまり香料を探してきました。香料には動物性
のものと植物性のものとがあります。動物性のものとし
ては、ジャコウ鹿からとれるムスクが代表的です。植物
性の香料として一般的なものは、なんと言っても花々で
す。例えば、ブルガリアのダマスクローズは、古くから
貴重な香料とされてきました。この花のエッセンスは高
値で取引され、今でも世界中で愛されています。 しかし
、植物性の香料は花だけではありません。どちらかとい
えばなじみの薄い、しかし大変広く使われている香料、
それがフルーツの一種であるベルガモットです。この果
実のエッセンスは、女性用の香水の約三分の一に、また
男性用のコロンの約半分に入っています。このフルーツ
からとれるエッセンスには、いろいろな香りをまとめて
一つの香りにするという働きがあり、これがほかの香料
にはない特性なのです。ベルガモットはミカン科の植物
で、秋から冬にかけてオレンジほどの大きさの実をつけ
ます。香水になるエッセンスは、この果実の皮からとれ
ます。ベルガモットの主な産地は、イタリア半島のカラ
ブリア地方で、ほかの土地ではほとんど育ちません。と
いうのも、この植物は、暖かくしかも南向きの土地で、
強い風の吹かない、湿度の低いところでないと育たない
からです。 この植物の起源そのものは深いなぞに包まれ
ています。野生のベルガモットというものはなく、この
植物を種から育てることもできません。ベルガモットは
、ほかの柑橘系の木々に挿し木をして育てるしかないの
です。野生のベルガモットがあれば、香水も、もっとヤ
セイものになっていたでしょう。神秘に包まれた香りの
世界。だからこそ、より魅力的なのかもしれません。シ
ロツメクサは、日本人にとても愛されている草花のひと
つです。天気のいい休日になると、シロツメクサが生え
ている場所で、シートを広げてお弁当を食べる家族連れ
の姿を見ることができます。シロツメクサの上は、ふん
わりしていて座り心地がよいのです。お弁当のあとには
、子どもたちは花を編んでかわいい冠にしたり、茎をか
らませて両側から引っ張る草相撲をしたりして遊ぶこと
もできます。私たちになじみの深いシロツメクサですが
、実はもともとは日本ではなく、ヨーロッパが原産の植
物です。江戸時代、ヨーロッパのガラス製品は大変な貴
重品でした。遠くヨーロッパから船でガラス製品を運ん
でくるとき、船がゆれてガラスが割れてしまわないよう
に箱の中につめものとして入れられたものが、このシロ
ツメクサなのです。 つめものの草だからツメクサという
名前がつきました。シロツメクサは生命力の強い植物な
ので、つめものとして日本にやってきて役目を終えたあ
と、ゴミとして捨てられた場所で再び息を吹き返し、次
第に日本中に広がっていきました。今では北海道から沖
縄まで、日本全国で見られるようになっています。シロ
ツメクサのように外国が原産で、何らかの理由で日本に
定着した植物のことを帰化植物と言います。セイヨウタ
ンポポやヒメジョオンなども帰化植物として有名です。
ところで、このシロツメクサの英語名はクローバーです
が、クローバーといえば、四つ葉のクローバーが幸運の
シンボルであることはよく知られています。しかし、四
つ葉を見つけようと思っても、クローバかり多くてなか
なか見つからないことがほとんどです。ところが、世の
中には、五つ葉や六つ葉のクローバーもあるのです。今
までに見つかった最高記録はなんと十八枚葉。 これは日
本で発見され、ギネスブックにも載りました。十八枚葉
のクローバーなんて見つけたら、びっくりして白目をむ
いて倒れてしまいそうです。これぞまさにシロ(ツ)メ
スカートやズボンを買うときは、まずウエストのサイズ
を確かめます。では、地球のウエスト、つまり円周はど
うやって測るのでしょう。現代の科学者たちは、メジャ
ーの代わりに人工衛星を使います。北極と南極を通る二
つの衛星で、地球を外がわから測るのです。そのように
して算出された数値は、約四万八千キロメートル。大変
なウエストサイズです。 しかし、今からおよそ二千二百
年前、すでに地球を測った人がいたのです。エラトステ
ネスは、ギリシャの数学者で天文学者でもありました。
彼の時代には人工衛星などないので、地球が丸いことさ
え知らない人がたくさんいました。もちろん、地球を測
ることのできるほど長い巻尺もありません。エラトステ
ネスが使ったのは、一本の棒きれでした。エジプトのシ
エネという都市にいたときのことです。エラトステネス
は、一年でいちばん昼間の長い夏至の正午に、太陽が真
上に来ることに気づきました。太陽の光が影を作らずに
井戸の底まで届いていたからです。しかし、そこから北
に八百五十キロメートルほど行ったところにあるアレク
サンドリアでは、同じ夏至の日の正午に影が見えたので
す。 そこで、エラトステネスはあることを思いつきます
。彼はまず、アレクサンドリアにまっすぐな棒を立てま
した。正午にその棒が作る影を観察するためです。影の
角度を測ったところ、垂直方向に対して七・二度でした
。エラトステネスは地球が丸いことと円周の全体が三百
六十度であることを知っていました。三百六十を七・二
で割ると五十ですから、棒の角度七・二度は円周の五十
分の一になります。ということは、シエネとアレクサン
ドリアの間の距離も、地球の円周の五十分の一と等しい
はずです。そこで二つの町の距離を五十倍し、地球の円
周は、約四万キロメートルから∵四万六千キロメートル
だという結論に達したのです。それは、驚くほど正確な
数値でした。「エラトステネスさん、棒で測るなんて、
いつ思いついたんですか。」「ぼうっとしているときに
ね。」物を食べると、いろいろな味を感じます。たとえ
ば目かくしをしていても、それが知っている味なら、今
食べたものが何か、当てることができるでしょう。また
、初めて食べたものでも、「塩辛い」とか「甘酸っぱい
」などと、言葉で表すことができます。この味は、いっ
たいどこでどうやって感じているのでしょうか。味を感
じる体の部分は舌である、というのは、よく知られてい
ることです。その証拠に、味見をするときは、ちょっと
舌を出してなめてみます。 この舌をよく見てみると、表
面はなめらかではなく、ざらざらで、更によく見ると小
さなでこぼこやつぶつぶがあります。実は、このつぶつ
ぶが、味蕾と呼ばれるものです。「蕾」というのが「つ
ぼみ」という漢字であることからわかるように、味蕾は
花のつぼみのような形をしています。味蕾は舌の表面だ
けではなく、上あごの奥やのどにもあります。ですから
、舌だけで味を感じているのではないようです。ところ
で、動物の中でも肉食動物は、においをかぎ分ける能力
である嗅覚がとても発達している代わりに、味覚はそれ
ほど優れていません。犬やネコも、この肉食動物の仲間
です。おおざっぱに苦味、酸味、辛味、甘味などはわか
り、苦いものがきらいで甘いものが好きなのは人間と同
じです。肉食動物は、生肉をあっという間に食べてしま
うため、それほどおいしさを味わう必要がなかったので
す。それに対し、いつまでもゆっくりと草を食べている
草食動物は、肉食動物よりは味覚が発達していると言わ
れています。 みなさんの家にも、おいしいものしか食べ
ない、グルメな犬やネコがいるかもしれません。これは
、おいしいものをいろいろもらってしまったので、学習
して「違いがわかる」ようになってしまったのです。現
代の犬たちが、おしゃれなカフェで犬用のケーキを食べ
ているなんて、犬のご先祖のオオカミには、想像もでき
なかったにちがいありません「青菜に塩」ということわ
ざは、ほうれん草などの青い葉に塩をかけると急にしお
れてしまうことから、人が急に元気がなくなってしょん
ぼりする様子をたとえることわざになりました。フライ
パンで青菜を炒めているところを見ると、こぼれんばか
りに山盛りになった青菜がさっと小さくなってしまいま
す。さて、この「青菜に塩」の魔法はどうして起こるの
でしょうか。野菜は、人間と同じようにたくさんの細胞
が集まってできています。ひとつひとつの細胞を包んで
いる細胞膜は、水も塩も通すようになっています。生き
ている細胞膜であれば、細胞の中に入った塩をうまく細
胞の外に排出する機能を持っています。 しかし、死んだ
細胞の場合、塩は細胞内にしみ込んだままになります。
その一方で、細胞からは水が出ていくので、青菜のカサ
がへってしまうのです。この脱水作用をうまく利用した
ものが漬物で、漬物にされた野菜は、もとの大きさより
はるかにしおれて縮んでいます。私たち人間が健康に生
きていくためにも、塩分のバランスは大切です。体の細
胞とそれをつつむ液体の塩分濃度は、腎臓の働きで常に
一定に保たれています。細胞の内と外の圧力が均衡して
いるために、細胞は同じ形を保つことができます。塩辛
いものを食べたあと、のどが渇いてくるのもそのためで
す。また、夏の暑い日に、熱射病にならないために水分
と塩分をとるように注意するのも同じ理由からです。「
漬物さんには、塩が必要なんですね。」「シオうだよ。
」「ちょっと苦しいですね。」「エーン。」ブーン。(
飛んでいっちゃった。)お腹がすいたら花屋さんに入る
、という人はいません。「花より団子」のことわざに見
られるとおり、花は見るものであり食べるものではない
、というのが普通の考え方です。 しかし世の中には、目
や鼻だけでなく、舌まで楽しませてくれる花が数多くあ
るのです。例えば、バラは、美しいだけではなく食用に
もなります。花びらの根元は苦味があるので取り除きま
す。また、花の中心部は食べません。バラの花びらをチ
ーズやナッツ類と合わせてサラダにしたり、刻んだもの
をスパゲッティにふりかけたりするとおいしいのだそう
です。バラを使って、アイスクリームや飲み物に風味を
添えることもできます。また、野菜の花も食用になりま
す。カボチャの花は、すでに十六世紀ごろから南北アメ
リカで食卓に上っていました。しかし、いくらおいしい
からといっても、花を全部食べてしまうとカボチャの実
ができなくなってしまいます。ですから、雌花は残して
雄花だけを食べるのです。レモンやオレンジなど柑橘系
の花は、飲み物に入れたりデザートに添えたりすると、
風味が引き立ちます。春になると、菜の花が八百屋さん
の店頭に並びます。フキノトウやイチジクも、食べると
ころは花の部分です。「花さん。食べられたときの気持
ちはどうですか。」「はあ、なんというか。」「やはり
、見てもらった方がうれしいでしょう。」「はあ、なん
といっても。」「花さんは、きれいですからね。」 「は
あ、なにしろ。」「もっと驚くようなことを言ってくだ
さい。」「ハッ!、なあんてね。」竹は、中に節があっ
て、まるで空き部屋がひとつひとつ区切られているよう
に、空っぽになっています。これは、竹が木の仲間でな
くて、草の仲間だからです。竹は、身のまわりにたくさ
んあるので、大昔から、人間は、この竹を利用する工夫
をしてきました。まず、あいたところにお米をつめて、
蒸す道具にしました。水をつめて、水筒にもしました。
二つにわって、お皿にもしました。 まっすぐにきれいに
割れることから、細くして、ザルやカゴをあんだり、ス
ダレを編んだりもしました。また、更に細くして、竹ヒ
ゴというものにもしました。竹ヒゴは、しなやかにまが
っても折れることがないので、模型飛行機などの材料に
も使われています。更に、人間は、竹によって弓矢や、
槍も作りました。剣道の竹刀には、今も竹が使われてい
ます。竹は、遊ぶものにも使われました。穴をあけて、
尺八という楽器にもなりました。 長い竹を打ちあわせて
、その上をとんで踊るバンブーダンスにも使われました
。竹馬や竹トンボという子どものおもちゃにもなり、竹
から生まれた「かぐやひめ」というお話も作られました
。エジソンが電球を発明したとき、光を長くもたせるた
めのフィラメントの材料を長い間さがして、とうとう京
都の竹の炭がいちばんいいことを発見しました。こんな
に役に立つ竹は、値段も決してタケーわけではありませ
ん。身の回りに豊富にある材料です。日本人は、昔から
この役に立つ竹を尊敬してきました。だから、おめでた
いことに使われるものは、松竹梅と言いますし、お正月
には門松を立てるのです。また、七夕の日には笹に願い
事を書いた短冊をつるします。子どもの日には、笹の葉
でまいたチマキを食べて、元気に育つことを祈ります。
∵竹もまさか、こんなに人間に利用されるとは思わなか
ったでしょう。しかし、竹はきっと「竹をわったような
性格」ですから、「どんどん工夫していいよ!」と快く
言っているはずです。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなた
の顔が正面から大きく写っている写真を用意します。そ
れから、目のまんなか、鼻、口を通る顔の中心線の上に
鏡を立てます。写真の半分と鏡に映ったその半分とを合
わせると、片方の側だけからできた左右対称の顔になり
ます。鏡の向きを変えると、もう片方の側でも同じこと
ができます。右側だけでできた顔と左側だけでできた顔
とでは、かなりちがった印象を受けます。目の大きさや
ほっぺたの形など、右と左では意外に大きく異なってい
るのです。顔だけではありません。人の体は、左右対称
に思えますが、実は少しちがっていて、手足の長さや筋
肉のつきかたなども同じではないのです。人がまっすぐ
に歩くのは当たり前のようですが、実は目で周りの景色
を確かめながら体の向きをコントロールしています。そ
のため、視界のきかない吹雪のときなど、ただやみくも
に進んでいくと、弱い足の方に少しずつ曲がっていって
しまいます。そして、長い時間歩いたあげく、結局最初
と同じ地点にもどってしまうこともあるのです。内臓で
は、右と左はもっとちがいます。たとえば心臓は体の少
し左側にあります。赤ちゃんを抱くときに、お母さんは
自然と赤ちゃんの頭が心臓の近くにくるように抱きます 。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるとき、お母さ
んの心臓の音をずっと聞いていたので、この音を聞くと
安心するのかもしれません。右と左の違いは、普段の生
活でも役に立ちます。例えば、野球をするとき、右利き
の人は、左手でボールをキャッチし右手でボールを投げ
ます。リンゴの皮をむくときは、左手でリンゴを支え右
手で包丁を動かします。人間の体は、右と左の違いをう
まく生かしているのです。∵ここで一句。「ウインクを
両目でしたらただのまばたき」言葉の森長文作成委員会
(α)日本は世界一の漫画王国とよばれています。大人
向けのものまでふくめると、一年間に七億冊以上の漫画
が出版されています。漫画をもとにして、アニメーショ
ンや映画やテレビ番組もたくさん作られ、いろいろな国
の言葉に翻訳されて、世界中の人気を集めています。 で
は、漫画は、いつの時代からあったのでしょうか。いち
ばん古い漫画は、今から八百年ほど前にかかれたと言わ
れています。それは、京都の高山寺というお寺にある、
「鳥獣人物戯画」という絵です。その中には、人真似を
して遊ぶ動物たちがかかれています。始まりは、動物た
ちの川遊び。川に飛びこむウサギや、泳ぐサル。ウサギ
に背中を流してもらって、気持ちよさそうなサルもいま
す。別の絵には弓矢の練習をしたり、相撲をとって遊ん
だりするカエルやウサギの様子がかかれています。カエ
ルに投げ飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで
、見物のカエルたちが大わらいしている絵もあります。
カエルの仏様にお経をあげているサルのお坊さんの絵も
あります。どの動物も生き生きと描かれ、今にも絵の中
から飛び出してきそうです。この昔の漫画には、セリフ
がかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。し
かし絵の中には、今の漫画に似たところもあります。た
とえば今の漫画では、すばやい動きをあらわすために線
を何本もひき、スピードの出ている様子をあらわします
。鳥獣人物戯画の中にも、同じようなかき方が見られる
のです。こんな昔から、漫画を楽しんでいた日本人。 こ
れからも、たくさんの名作が生まれ、多くの人に愛され
ていくことでしょう。∵漫画は、世界中に自マンガでき
る、日本の宝です。しかし、漫画は絵がわかりやすいの
で、字の多い本は読マンガ、漫画なら読むという生活を
続けていると、次第に読む力が低下してきます。字の多
い本を読む一方で、漫画も楽しく読み、漫画の読み方に
ついても自マンガできる国にしていきましょう。夜の道
を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると
、またどこまでもついてきます。もちろん、キツネやお
化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それ
はお月さまです。月がついてくるのは、電車に乗ってい
ても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、ど
んどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、
近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ
動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山
を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるよう
に見えます。家、電信柱、山、月。これらを比べて違う
のは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、
動かないように見えるのです。月は、わたしたちの地球
を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かん
でいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいで
は、月の位置は変わらないように見えるのです。 もちろ
ん、月よりもっと遠くの太陽でも、同じことが言えます
。あなたがどんなに動いても太陽はついてきます。しか
し、太陽はまぶしすぎて、あまり見上げることはありま
せん。やはり、夜、明るい月が一緒についてくるところ
にこそ、不思議さがあるのでしょう。地球は月の四倍の
大きさです。したがって、もし、月の上を歩きながら地
球を見ると、月よりも四倍大きい、青く美しい地球がつ
いてきます。月と地球のツキあいは、遠くても深いもの
なのです。∵「ねえ、どうしてついてくるの?」「だっ
て、ツキだから。」「では、もし太陽だったら?」「や
っぱり、ついて行きタイヨウ。」「甘えん坊なんだね。
」【1】買ってきた野菜の葉に、いも虫がたくさんつい
ていたらどうしますか。普通は「わあ、いやだ」と急い
で取り除き、野菜をすっかりきれいにしてから調理する
でしょう。【2】しかし世界には、いも虫を見て「わあ
、おいしそう」と感じる人たちもいるのです。 アフリカ
の一部では、ガの幼虫であるいも虫が食用にされていま
す。【3】それらの地域では、キャッサバやトウモロコ
シなどのでんぷん質が食事の中心なので、どうしてもた
んぱく質が不足しがちです。しかし、質のよいたんぱく
源は高価で手に入りにくいのが現状です。【4】ですか
ら、たんぱく質のかたまりであるいも虫は大変貴重な補
助食品なのです。実際、一皿のいも虫は、大人が一日に
必要とするたんぱく質・ビタミン・ミネラルの約四分の
三を含むと言われています。【5】秋の雨の季節が過ぎ
ると、いも虫の収穫が始まります。村の女性たちは、総
出でいも虫を集めます。いも虫は内臓を抜き、ゆでてか
ら天日干しにします。【6】この乾燥いも虫を、おやつ
がわりにそのままポリポリと食べるのです。このいも虫
は、ただおいしいだけではありません。ある意味で、と
ても効率のよい食品でもあるのです。【7】いも虫は、
人間には食べられない有毒の植物でもかまわず食べてく
れます。そしてどんどん肥え太り、わずか六週間で体重
を四千倍に増やします。 【8】その丸々としたおいしそ
うないも虫を、今度は人間が食べるわけです。「いも虫
君、いいねえ。あったかそうな蓑を着て。」「それはミ
ノムシ。」【9】「確か、茶碗に入っているんだよね。
」「それはチャワンムシ。」「ときどき足がかゆくなる
けどね。」「それは、ミズムシ。もう、いいもん。無視
。トライアスロンの競技の歴史はまだ新しく、二十世紀
の後半に最初の大会が開催されました。トライアスロン
とは、ギリシャ語で「三」を意味するトライと、「賞品
」を意味するアスロンを合わせてできた言葉です。その
名のとおり、水泳、ランニング、自転車の三種目を続け
て行ない、その総合タイムを競うレースです。どれか一
つだけでも体力のいるハードな競技ですが、それをひと
りで三つもこなすということで、鉄人レースともよばれ
ています。この競技が生まれたのは、ハワイのオアフ島
でした。海兵隊員たちが、一日の仕事を終えて、ビール
を飲みながらくつろいでいるとき、オアフ島で行なわれ
ている三つの競技のうち、どれがいちばん大変かという
議論になりました。三つの競技というのは、オアフ島一
周の自転車レース、ホノルルマラソン大会、ワイキキビ
ーチでの遠泳大会のことです。だれもが、自分の出場し
た競技こそが最も苦しかったと自慢げに話すので、いく
ら話し合っても答えは出ませんでした。そのとき、ビー
ルを飲んで酔っぱらっていた海軍司令官のジョン・コリ
ンズは、ある提案をしました。この三つの競技を合わせ
て一つの競技にしたらどうかというのです。 まさか本気
で挑戦する者はいないだろうと、コリンズはほんの冗談
のつもりで提案したのですが、実際に競技に参加する人
があらわれました。現在では、日本でも毎年多くの大会
が開かれています。また、二〇〇〇年に行なわれたシド
ニーオリンピックから、トライアスロンは正式種目にな
っています。∵「ぼくも、新しい競技を考えついた。」
「なあに。」「ドッジボールと槍投げと火の輪くぐりを
組み合わせるんだ。」「今度のオリンピックで採用され
るといいね。」だれも出ないと思うけど。チョコレート
、キャンディー、ケーキなど、甘いお菓子を思い浮かべ
るだけで幸せな気分になれる人は多いでしょう。それら
のお菓子を作るのに大切なのが砂糖です。しかし、砂糖
にはほかにもいろいろな働きがあります。 その働きのひ
とつに、カビや微生物が増殖するのを防ぐというものが
あります。カビや微生物は湿ったところ、つまり、水分
のあるところが好きです。砂糖は、食べ物の水分の周り
をおおって、微生物やカビの働きをにぶらせます。ジャ
ムや果物の缶詰などがその例です。果物はほうっておく
と傷んだり腐ったりしますが、砂糖とともに調理するこ
とで長期間保存することができます。水分を抱え込む砂
糖の性質は、生クリームや卵白の泡立てにも一役買って
います。クリームや卵のたんぱく質の水分を砂糖が抱え
込むことによって、泡がくずれるのを防ぎ、また泡同士
がくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリー
ムを作るのには、砂糖が欠かせないのです。肉を煮込む
ときにも、その働きが発揮されます。 調理する前の下準
備の肉に砂糖をすりこんでおくと、軟らかく煮ることが
できます。それは、砂糖が肉のたんぱく質の持つ水分を
肉の中にとどめておくからです。さを作り出す調味料
というイメージの強い砂糖ですが、実際には水分と結び
つきやすい性質が私たちの生活の中でいろいろな役割を
はたしているのです。働き者の砂糖は、縁の下の力持ち
なので、決して「えっへん!」といばっているわけでは
ありません。しかし、ダイエットをさけぶ人たちからは
、かたき扱いされています。「えっ?変?一生懸命働い
ているのに……。」砂糖からそんな声が聞こえてきそう
です。∵「カビ君は、どうして砂糖が苦手なの。」「だ
って、砂糖ってサ、トウっても甘いんだもん。」寝よう
としたら、ブーンという音がして、あわてて灯りをつけ
たことがありませんか。そして、小さな蚊がどこにいる
か見つけようとしたことがあるでしょう。日本では昔、
蚊を防ぐために蚊帳という道具を使っていました。 これ
は、一ミリメートルほどの細かい網でできている四角い
テントのようなもので、部屋の中で四方から吊り下げる
ようになっています。網目が細かいので、蚊は中に入れ
ませんが、涼しい風は通すことができます。昔の日本人
は、蚊の多い暑い夏の夜を、蚊帳の中で風鈴の音を聞き
ながら涼しく過ごしたのです。しかし、昭和の後期にな
ると、殺虫剤や下水道が普及した結果、蚊自体が少なく
なり、蚊帳は次第に使われなくなっていきました。とこ
ろが、今、この蚊帳が再び注目されています。蚊帳は、
電気も薬品も使わない点で、人間にも地球にももちろん
蚊にも優しい道具だと考えられるようになってきたので
す。日本は、マラリヤの被害に悩まされるアフリカ諸国
にたくさんの蚊帳を送っています。これによって多くの
子供たちの命が助かっているそうです。日本ではほとん
ど使われることのなくなった蚊帳も、世界では大活躍を
しているのです。日本人のこれからの役割は、より安く
より安全な蚊帳を世界中に広めることではないでしょう
カ。「ブーン。」「あ、蚊や。蚊帳に入ろう。」 「しま
った。蚊帳に入られたカ。ヤーン。」【1】脊椎動物の
ほとんどは、生まれたときから性別が決まっており、途
中で変化することはありません。ところが、同じ脊椎動
物でも、魚には、オスがメスへ、メスがオスへと変化し
たり、生まれながらにして雌雄同体のものがあります。
【2】オスからメスへ変化するものとして代表的なのは
、クマノミの仲間です。クマノミは、毒を持つイソギン
チャクと一緒に暮らすことで有名です。【3】ひとつの
イソギンチャクに、オスとメス一匹ずつの成魚と、体の
小さな幼魚の数匹で暮らしていることが多いのですが、
この成魚と幼魚の間に、親子関係はありません。 クマノ
ミの稚魚は、卵から孵化すると、すぐに生まれたイソギ
ンチャクを離れ、しばらく海の中で浮遊生活を続けます
。【4】そして、全く別のイソギンチャクにたどりつき
、そこで元から住んでいる縁もゆかりもないクマノミた
ちと共同生活を始めます。これは、親子で繁殖してしま
う危険をさけるための工夫です。【5】同じひとつのイ
ソギンチャクの中に暮らしているクマノミたちは、体の
大きさに違いがあります。群れの中でいちばん大きいの
がメス、次に大きいのがオスです。【6】三番め以降の
魚たちは、オスでもメスでもない未成熟な個体です。卵
を産むのはメスですが、その卵を守るのは、おもにオス
の役目です。【7】何らかの原因で、いちばん大きいメ
スが死んでしまうと、オスが性転換をしてメスになり、
オスの次に大きい未成熟な個体がオスになって繁殖に参
加します。クマノミの世界には、このようにきちんとし
た秩序があります。【8】なぜいちばん大きい個体がメ
スになるかというと、メスは体が大きいほどたくさんの
卵を産むことができるからです。∵【9】「わたし、昨
日までオスだったメスで、名前はクマオよ。」「ぼくは
、今日からオスになった、名前はクマコなんだ。」 「何
だか、呼び方にクマっちゃうね。」なんでもコンパクト
がもてはやされるこのごろですが、犬の世界も例外では
ありません。品種改良の結果、たくさんの犬が小型化さ
れ、今や世界中で飼われています。つまり、コンパクト
な犬はそのほとんどが人工的に作り出されたものなので
す。しかし、天然の小型犬もいます。チワワです。餌代
もかからず、場所もとらず、小さいのに勇敢なこの犬は
、ペットとして大変人気があります。チワワの出身地は
メキシコで、意外にも南国の生まれなのです。実はこの
犬は、もともとテチチという名前で知られていました。
チワワと呼ばれるようになったのは十九世紀の中ごろで
す。メキシコに旅行したアメリカ人が、メキシコのチワ
ワ州でこの小さい犬を見つけ、何匹か持ち帰りました。
そして、土地の名前からチワワと命名したのです。同じ
ころ、メキシコのお妃様がヨーロッパ旅行のお供にこの
犬を連れて行ったため、チワワは世界的に有名になりま
した。チワワは人間が大好きです。人間との接触が多い
ほど元気に育つと言われています。 しかし、注意も必要
です。この犬の大きさからすると、ベッドやソファは高
所ですから、高いところから無造作に飛び降りて骨折し
てしまうことがあります。また、消化器官が小さい上に
カロリーを早く消費するため、血糖値が下がりやすいの
もチワワの特徴です。ですから、少量のえさをたびたび
与えてやる必要があります。震えるのはこの犬の特徴で
す。寒いときだけでなく、興奮したときや心配なとき、
不満があるとき、怖がっているときなどに震えます。小
さいけれど大きな存在感を持つチワワ。もしメキシコへ
旅行することがあったなら、「こんにチワ、ワたしの国
へようこそ」と歓迎してくれるかもしれません。∵「チ
ワワって、おでんに入れるとおいしいんだよね。」「そ
れは、チクワ。」人間は昔から、香りに興味を持ち、香
りの原料つまり香料を探してきました。香料には動物性
のものと植物性のものとがあります。動物性のものとし
ては、ジャコウ鹿からとれるムスクが代表的です。植物
性の香料として一般的なものは、なんと言っても花々で
す。例えば、ブルガリアのダマスクローズは、古くから
貴重な香料とされてきました。この花のエッセンスは高
値で取引され、今でも世界中で愛されています。 しかし
、植物性の香料は花だけではありません。どちらかとい
えばなじみの薄い、しかし大変広く使われている香料、
それがフルーツの一種であるベルガモットです。この果
実のエッセンスは、女性用の香水の約三分の一に、また
男性用のコロンの約半分に入っています。このフルーツ
からとれるエッセンスには、いろいろな香りをまとめて
一つの香りにするという働きがあり、これがほかの香料
にはない特性なのです。ベルガモットはミカン科の植物
で、秋から冬にかけてオレンジほどの大きさの実をつけ
ます。香水になるエッセンスは、この果実の皮からとれ
ます。ベルガモットの主な産地は、イタリア半島のカラ
ブリア地方で、ほかの土地ではほとんど育ちません。と
いうのも、この植物は、暖かくしかも南向きの土地で、
強い風の吹かない、湿度の低いところでないと育たない
からです。 この植物の起源そのものは深いなぞに包まれ
ています。野生のベルガモットというものはなく、この
植物を種から育てることもできません。ベルガモットは
、ほかの柑橘系の木々に挿し木をして育てるしかないの
です。野生のベルガモットがあれば、香水も、もっとヤ
セイものになっていたでしょう。神秘に包まれた香りの
世界。だからこそ、より魅力的なのかもしれません。シ
ロツメクサは、日本人にとても愛されている草花のひと
つです。天気のいい休日になると、シロツメクサが生え
ている場所で、シートを広げてお弁当を食べる家族連れ
の姿を見ることができます。シロツメクサの上は、ふん
わりしていて座り心地がよいのです。お弁当のあとには
、子どもたちは花を編んでかわいい冠にしたり、茎をか
らませて両側から引っ張る草相撲をしたりして遊ぶこと
もできます。私たちになじみの深いシロツメクサですが
、実はもともとは日本ではなく、ヨーロッパが原産の植
物です。江戸時代、ヨーロッパのガラス製品は大変な貴
重品でした。遠くヨーロッパから船でガラス製品を運ん
でくるとき、船がゆれてガラスが割れてしまわないよう
に箱の中につめものとして入れられたものが、このシロ
ツメクサなのです。 つめものの草だからツメクサという
名前がつきました。シロツメクサは生命力の強い植物な
ので、つめものとして日本にやってきて役目を終えたあ
と、ゴミとして捨てられた場所で再び息を吹き返し、次
第に日本中に広がっていきました。今では北海道から沖
縄まで、日本全国で見られるようになっています。シロ
ツメクサのように外国が原産で、何らかの理由で日本に
定着した植物のことを帰化植物と言います。セイヨウタ
ンポポやヒメジョオンなども帰化植物として有名です。
ところで、このシロツメクサの英語名はクローバーです
が、クローバーといえば、四つ葉のクローバーが幸運の
シンボルであることはよく知られています。しかし、四
つ葉を見つけようと思っても、クローバかり多くてなか
なか見つからないことがほとんどです。ところが、世の
中には、五つ葉や六つ葉のクローバーもあるのです。今
までに見つかった最高記録はなんと十八枚葉。 これは日
本で発見され、ギネスブックにも載りました。十八枚葉
のクローバーなんて見つけたら、びっくりして白目をむ
いて倒れてしまいそうです。これぞまさにシロ(ツ)メ
スカートやズボンを買うときは、まずウエストのサイズ
を確かめます。では、地球のウエスト、つまり円周はど
うやって測るのでしょう。現代の科学者たちは、メジャ
ーの代わりに人工衛星を使います。北極と南極を通る二
つの衛星で、地球を外がわから測るのです。そのように
して算出された数値は、約四万八千キロメートル。大変
なウエストサイズです。 しかし、今からおよそ二千二百
年前、すでに地球を測った人がいたのです。エラトステ
ネスは、ギリシャの数学者で天文学者でもありました。
彼の時代には人工衛星などないので、地球が丸いことさ
え知らない人がたくさんいました。もちろん、地球を測
ることのできるほど長い巻尺もありません。エラトステ
ネスが使ったのは、一本の棒きれでした。エジプトのシ
エネという都市にいたときのことです。エラトステネス
は、一年でいちばん昼間の長い夏至の正午に、太陽が真
上に来ることに気づきました。太陽の光が影を作らずに
井戸の底まで届いていたからです。しかし、そこから北
に八百五十キロメートルほど行ったところにあるアレク
サンドリアでは、同じ夏至の日の正午に影が見えたので
す。 そこで、エラトステネスはあることを思いつきます
。彼はまず、アレクサンドリアにまっすぐな棒を立てま
した。正午にその棒が作る影を観察するためです。影の
角度を測ったところ、垂直方向に対して七・二度でした
。エラトステネスは地球が丸いことと円周の全体が三百
六十度であることを知っていました。三百六十を七・二
で割ると五十ですから、棒の角度七・二度は円周の五十
分の一になります。ということは、シエネとアレクサン
ドリアの間の距離も、地球の円周の五十分の一と等しい
はずです。そこで二つの町の距離を五十倍し、地球の円
周は、約四万キロメートルから∵四万六千キロメートル
だという結論に達したのです。それは、驚くほど正確な
数値でした。「エラトステネスさん、棒で測るなんて、
いつ思いついたんですか。」「ぼうっとしているときに
ね。」物を食べると、いろいろな味を感じます。たとえ
ば目かくしをしていても、それが知っている味なら、今
食べたものが何か、当てることができるでしょう。また
、初めて食べたものでも、「塩辛い」とか「甘酸っぱい
」などと、言葉で表すことができます。この味は、いっ
たいどこでどうやって感じているのでしょうか。味を感
じる体の部分は舌である、というのは、よく知られてい
ることです。その証拠に、味見をするときは、ちょっと
舌を出してなめてみます。 この舌をよく見てみると、表
面はなめらかではなく、ざらざらで、更によく見ると小
さなでこぼこやつぶつぶがあります。実は、このつぶつ
ぶが、味蕾と呼ばれるものです。「蕾」というのが「つ
ぼみ」という漢字であることからわかるように、味蕾は
花のつぼみのような形をしています。味蕾は舌の表面だ
けではなく、上あごの奥やのどにもあります。ですから
、舌だけで味を感じているのではないようです。ところ
で、動物の中でも肉食動物は、においをかぎ分ける能力
である嗅覚がとても発達している代わりに、味覚はそれ
ほど優れていません。犬やネコも、この肉食動物の仲間
です。おおざっぱに苦味、酸味、辛味、甘味などはわか
り、苦いものがきらいで甘いものが好きなのは人間と同
じです。肉食動物は、生肉をあっという間に食べてしま
うため、それほどおいしさを味わう必要がなかったので
す。それに対し、いつまでもゆっくりと草を食べている
草食動物は、肉食動物よりは味覚が発達していると言わ
れています。 みなさんの家にも、おいしいものしか食べ
ない、グルメな犬やネコがいるかもしれません。これは
、おいしいものをいろいろもらってしまったので、学習
して「違いがわかる」ようになってしまったのです。現
代の犬たちが、おしゃれなカフェで犬用のケーキを食べ
ているなんて、犬のご先祖のオオカミには、想像もでき
なかったにちがいありません「青菜に塩」ということわ
ざは、ほうれん草などの青い葉に塩をかけると急にしお
れてしまうことから、人が急に元気がなくなってしょん
ぼりする様子をたとえることわざになりました。フライ
パンで青菜を炒めているところを見ると、こぼれんばか
りに山盛りになった青菜がさっと小さくなってしまいま
す。さて、この「青菜に塩」の魔法はどうして起こるの
でしょうか。野菜は、人間と同じようにたくさんの細胞
が集まってできています。ひとつひとつの細胞を包んで
いる細胞膜は、水も塩も通すようになっています。生き
ている細胞膜であれば、細胞の中に入った塩をうまく細
胞の外に排出する機能を持っています。 しかし、死んだ
細胞の場合、塩は細胞内にしみ込んだままになります。
その一方で、細胞からは水が出ていくので、青菜のカサ
がへってしまうのです。この脱水作用をうまく利用した
ものが漬物で、漬物にされた野菜は、もとの大きさより
はるかにしおれて縮んでいます。私たち人間が健康に生
きていくためにも、塩分のバランスは大切です。体の細
胞とそれをつつむ液体の塩分濃度は、腎臓の働きで常に
一定に保たれています。細胞の内と外の圧力が均衡して
いるために、細胞は同じ形を保つことができます。塩辛
いものを食べたあと、のどが渇いてくるのもそのためで
す。また、夏の暑い日に、熱射病にならないために水分
と塩分をとるように注意するのも同じ理由からです。「
漬物さんには、塩が必要なんですね。」「シオうだよ。
」「ちょっと苦しいですね。」「エーン。」ブーン。(
飛んでいっちゃった。)お腹がすいたら花屋さんに入る
、という人はいません。「花より団子」のことわざに見
られるとおり、花は見るものであり食べるものではない
、というのが普通の考え方です。 しかし世の中には、目
や鼻だけでなく、舌まで楽しませてくれる花が数多くあ
るのです。例えば、バラは、美しいだけではなく食用に
もなります。花びらの根元は苦味があるので取り除きま
す。また、花の中心部は食べません。バラの花びらをチ
ーズやナッツ類と合わせてサラダにしたり、刻んだもの
をスパゲッティにふりかけたりするとおいしいのだそう
です。バラを使って、アイスクリームや飲み物に風味を
添えることもできます。また、野菜の花も食用になりま
す。カボチャの花は、すでに十六世紀ごろから南北アメ
リカで食卓に上っていました。しかし、いくらおいしい
からといっても、花を全部食べてしまうとカボチャの実
ができなくなってしまいます。ですから、雌花は残して
雄花だけを食べるのです。レモンやオレンジなど柑橘系
の花は、飲み物に入れたりデザートに添えたりすると、
風味が引き立ちます。春になると、菜の花が八百屋さん
の店頭に並びます。フキノトウやイチジクも、食べると
ころは花の部分です。「花さん。食べられたときの気持
ちはどうですか。」「はあ、なんというか。」「やはり
、見てもらった方がうれしいでしょう。」「はあ、なん
といっても。」「花さんは、きれいですからね。」 「は
あ、なにしろ。」「もっと驚くようなことを言ってくだ
さい。」「ハッ!、なあんてね。」竹は、中に節があっ
て、まるで空き部屋がひとつひとつ区切られているよう
に、空っぽになっています。これは、竹が木の仲間でな
くて、草の仲間だからです。竹は、身のまわりにたくさ
んあるので、大昔から、人間は、この竹を利用する工夫
をしてきました。まず、あいたところにお米をつめて、
蒸す道具にしました。水をつめて、水筒にもしました。
二つにわって、お皿にもしました。 まっすぐにきれいに
割れることから、細くして、ザルやカゴをあんだり、ス
ダレを編んだりもしました。また、更に細くして、竹ヒ
ゴというものにもしました。竹ヒゴは、しなやかにまが
っても折れることがないので、模型飛行機などの材料に
も使われています。更に、人間は、竹によって弓矢や、
槍も作りました。剣道の竹刀には、今も竹が使われてい
ます。竹は、遊ぶものにも使われました。穴をあけて、
尺八という楽器にもなりました。 長い竹を打ちあわせて
、その上をとんで踊るバンブーダンスにも使われました
。竹馬や竹トンボという子どものおもちゃにもなり、竹
から生まれた「かぐやひめ」というお話も作られました
。エジソンが電球を発明したとき、光を長くもたせるた
めのフィラメントの材料を長い間さがして、とうとう京
都の竹の炭がいちばんいいことを発見しました。こんな
に役に立つ竹は、値段も決してタケーわけではありませ
ん。身の回りに豊富にある材料です。日本人は、昔から
この役に立つ竹を尊敬してきました。だから、おめでた
いことに使われるものは、松竹梅と言いますし、お正月
には門松を立てるのです。また、七夕の日には笹に願い
事を書いた短冊をつるします。子どもの日には、笹の葉
でまいたチマキを食べて、元気に育つことを祈ります。
∵竹もまさか、こんなに人間に利用されるとは思わなか
ったでしょう。しかし、竹はきっと「竹をわったような
性格」ですから、「どんどん工夫していいよ!」と快く
言っているはずです。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなた
の顔が正面から大きく写っている写真を用意します。そ
れから、目のまんなか、鼻、口を通る顔の中心線の上に
鏡を立てます。写真の半分と鏡に映ったその半分とを合
わせると、片方の側だけからできた左右対称の顔になり
ます。鏡の向きを変えると、もう片方の側でも同じこと
ができます。右側だけでできた顔と左側だけでできた顔
とでは、かなりちがった印象を受けます。目の大きさや
ほっぺたの形など、右と左では意外に大きく異なってい
るのです。顔だけではありません。人の体は、左右対称
に思えますが、実は少しちがっていて、手足の長さや筋
肉のつきかたなども同じではないのです。人がまっすぐ
に歩くのは当たり前のようですが、実は目で周りの景色
を確かめながら体の向きをコントロールしています。そ
のため、視界のきかない吹雪のときなど、ただやみくも
に進んでいくと、弱い足の方に少しずつ曲がっていって
しまいます。そして、長い時間歩いたあげく、結局最初
と同じ地点にもどってしまうこともあるのです。内臓で
は、右と左はもっとちがいます。たとえば心臓は体の少
し左側にあります。赤ちゃんを抱くときに、お母さんは
自然と赤ちゃんの頭が心臓の近くにくるように抱きます 。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるとき、お母さ
んの心臓の音をずっと聞いていたので、この音を聞くと
安心するのかもしれません。右と左の違いは、普段の生
活でも役に立ちます。例えば、野球をするとき、右利き
の人は、左手でボールをキャッチし右手でボールを投げ
ます。リンゴの皮をむくときは、左手でリンゴを支え右
手で包丁を動かします。人間の体は、右と左の違いをう
まく生かしているのです。∵ここで一句。「ウインクを
両目でしたらただのまばたき」言葉の森長文作成委員会
(α)日本は世界一の漫画王国とよばれています。大人
向けのものまでふくめると、一年間に七億冊以上の漫画
が出版されています。漫画をもとにして、アニメーショ
ンや映画やテレビ番組もたくさん作られ、いろいろな国
の言葉に翻訳されて、世界中の人気を集めています。 で
は、漫画は、いつの時代からあったのでしょうか。いち
ばん古い漫画は、今から八百年ほど前にかかれたと言わ
れています。それは、京都の高山寺というお寺にある、
「鳥獣人物戯画」という絵です。その中には、人真似を
して遊ぶ動物たちがかかれています。始まりは、動物た
ちの川遊び。川に飛びこむウサギや、泳ぐサル。ウサギ
に背中を流してもらって、気持ちよさそうなサルもいま
す。別の絵には弓矢の練習をしたり、相撲をとって遊ん
だりするカエルやウサギの様子がかかれています。カエ
ルに投げ飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで
、見物のカエルたちが大わらいしている絵もあります。
カエルの仏様にお経をあげているサルのお坊さんの絵も
あります。どの動物も生き生きと描かれ、今にも絵の中
から飛び出してきそうです。この昔の漫画には、セリフ
がかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。し
かし絵の中には、今の漫画に似たところもあります。た
とえば今の漫画では、すばやい動きをあらわすために線
を何本もひき、スピードの出ている様子をあらわします
。鳥獣人物戯画の中にも、同じようなかき方が見られる
のです。こんな昔から、漫画を楽しんでいた日本人。 こ
れからも、たくさんの名作が生まれ、多くの人に愛され
ていくことでしょう。∵漫画は、世界中に自マンガでき
る、日本の宝です。しかし、漫画は絵がわかりやすいの
で、字の多い本は読マンガ、漫画なら読むという生活を
続けていると、次第に読む力が低下してきます。字の多
い本を読む一方で、漫画も楽しく読み、漫画の読み方に
ついても自マンガできる国にしていきましょう。夜の道
を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると
、またどこまでもついてきます。もちろん、キツネやお
化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それ
はお月さまです。月がついてくるのは、電車に乗ってい
ても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、ど
んどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、
近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ
動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山
を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるよう
に見えます。家、電信柱、山、月。これらを比べて違う
のは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、
動かないように見えるのです。月は、わたしたちの地球
を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かん
でいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいで
は、月の位置は変わらないように見えるのです。 もちろ
ん、月よりもっと遠くの太陽でも、同じことが言えます
。あなたがどんなに動いても太陽はついてきます。しか
し、太陽はまぶしすぎて、あまり見上げることはありま
せん。やはり、夜、明るい月が一緒についてくるところ
にこそ、不思議さがあるのでしょう。地球は月の四倍の
大きさです。したがって、もし、月の上を歩きながら地
球を見ると、月よりも四倍大きい、青く美しい地球がつ
いてきます。月と地球のツキあいは、遠くても深いもの
なのです。∵「ねえ、どうしてついてくるの?」「だっ
て、ツキだから。」「では、もし太陽だったら?」「や
っぱり、ついて行きタイヨウ。」「甘えん坊なんだね。
」【1】買ってきた野菜の葉に、いも虫がたくさんつい
ていたらどうしますか。普通は「わあ、いやだ」と急い
で取り除き、野菜をすっかりきれいにしてから調理する
でしょう。【2】しかし世界には、いも虫を見て「わあ
、おいしそう」と感じる人たちもいるのです。 アフリカ
の一部では、ガの幼虫であるいも虫が食用にされていま
す。【3】それらの地域では、キャッサバやトウモロコ
シなどのでんぷん質が食事の中心なので、どうしてもた
んぱく質が不足しがちです。しかし、質のよいたんぱく
源は高価で手に入りにくいのが現状です。【4】ですか
ら、たんぱく質のかたまりであるいも虫は大変貴重な補
助食品なのです。実際、一皿のいも虫は、大人が一日に
必要とするたんぱく質・ビタミン・ミネラルの約四分の
三を含むと言われています。【5】秋の雨の季節が過ぎ
ると、いも虫の収穫が始まります。村の女性たちは、総
出でいも虫を集めます。いも虫は内臓を抜き、ゆでてか
ら天日干しにします。【6】この乾燥いも虫を、おやつ
がわりにそのままポリポリと食べるのです。このいも虫
は、ただおいしいだけではありません。ある意味で、と
ても効率のよい食品でもあるのです。【7】いも虫は、
人間には食べられない有毒の植物でもかまわず食べてく
れます。そしてどんどん肥え太り、わずか六週間で体重
を四千倍に増やします。 【8】その丸々としたおいしそ
うないも虫を、今度は人間が食べるわけです。「いも虫
君、いいねえ。あったかそうな蓑を着て。」「それはミ
ノムシ。」【9】「確か、茶碗に入っているんだよね。
」「それはチャワンムシ。」「ときどき足がかゆくなる
けどね。」「それは、ミズムシ。もう、いいもん。無視
。トライアスロンの競技の歴史はまだ新しく、二十世紀
の後半に最初の大会が開催されました。トライアスロン
とは、ギリシャ語で「三」を意味するトライと、「賞品
」を意味するアスロンを合わせてできた言葉です。その
名のとおり、水泳、ランニング、自転車の三種目を続け
て行ない、その総合タイムを競うレースです。どれか一
つだけでも体力のいるハードな競技ですが、それをひと
りで三つもこなすということで、鉄人レースともよばれ
ています。この競技が生まれたのは、ハワイのオアフ島
でした。海兵隊員たちが、一日の仕事を終えて、ビール
を飲みながらくつろいでいるとき、オアフ島で行なわれ
ている三つの競技のうち、どれがいちばん大変かという
議論になりました。三つの競技というのは、オアフ島一
周の自転車レース、ホノルルマラソン大会、ワイキキビ
ーチでの遠泳大会のことです。だれもが、自分の出場し
た競技こそが最も苦しかったと自慢げに話すので、いく
ら話し合っても答えは出ませんでした。そのとき、ビー
ルを飲んで酔っぱらっていた海軍司令官のジョン・コリ
ンズは、ある提案をしました。この三つの競技を合わせ
て一つの競技にしたらどうかというのです。 まさか本気
で挑戦する者はいないだろうと、コリンズはほんの冗談
のつもりで提案したのですが、実際に競技に参加する人
があらわれました。現在では、日本でも毎年多くの大会
が開かれています。また、二〇〇〇年に行なわれたシド
ニーオリンピックから、トライアスロンは正式種目にな
っています。∵「ぼくも、新しい競技を考えついた。」
「なあに。」「ドッジボールと槍投げと火の輪くぐりを
組み合わせるんだ。」「今度のオリンピックで採用され
るといいね。」だれも出ないと思うけど。チョコレート
、キャンディー、ケーキなど、甘いお菓子を思い浮かべ
るだけで幸せな気分になれる人は多いでしょう。それら
のお菓子を作るのに大切なのが砂糖です。しかし、砂糖
にはほかにもいろいろな働きがあります。 その働きのひ
とつに、カビや微生物が増殖するのを防ぐというものが
あります。カビや微生物は湿ったところ、つまり、水分
のあるところが好きです。砂糖は、食べ物の水分の周り
をおおって、微生物やカビの働きをにぶらせます。ジャ
ムや果物の缶詰などがその例です。果物はほうっておく
と傷んだり腐ったりしますが、砂糖とともに調理するこ
とで長期間保存することができます。水分を抱え込む砂
糖の性質は、生クリームや卵白の泡立てにも一役買って
います。クリームや卵のたんぱく質の水分を砂糖が抱え
込むことによって、泡がくずれるのを防ぎ、また泡同士
がくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリー
ムを作るのには、砂糖が欠かせないのです。肉を煮込む
ときにも、その働きが発揮されます。 調理する前の下準
備の肉に砂糖をすりこんでおくと、軟らかく煮ることが
できます。それは、砂糖が肉のたんぱく質の持つ水分を
肉の中にとどめておくからです。さを作り出す調味料
というイメージの強い砂糖ですが、実際には水分と結び
つきやすい性質が私たちの生活の中でいろいろな役割を
はたしているのです。働き者の砂糖は、縁の下の力持ち
なので、決して「えっへん!」といばっているわけでは
ありません。しかし、ダイエットをさけぶ人たちからは
、かたき扱いされています。「えっ?変?一生懸命働い
ているのに……。」砂糖からそんな声が聞こえてきそう
です。∵「カビ君は、どうして砂糖が苦手なの。」「だ
って、砂糖ってサ、トウっても甘いんだもん。」寝よう
としたら、ブーンという音がして、あわてて灯りをつけ
たことがありませんか。そして、小さな蚊がどこにいる
か見つけようとしたことがあるでしょう。日本では昔、
蚊を防ぐために蚊帳という道具を使っていました。 これ
は、一ミリメートルほどの細かい網でできている四角い
テントのようなもので、部屋の中で四方から吊り下げる
ようになっています。網目が細かいので、蚊は中に入れ
ませんが、涼しい風は通すことができます。昔の日本人
は、蚊の多い暑い夏の夜を、蚊帳の中で風鈴の音を聞き
ながら涼しく過ごしたのです。しかし、昭和の後期にな
ると、殺虫剤や下水道が普及した結果、蚊自体が少なく
なり、蚊帳は次第に使われなくなっていきました。とこ
ろが、今、この蚊帳が再び注目されています。蚊帳は、
電気も薬品も使わない点で、人間にも地球にももちろん
蚊にも優しい道具だと考えられるようになってきたので
す。日本は、マラリヤの被害に悩まされるアフリカ諸国
にたくさんの蚊帳を送っています。これによって多くの
子供たちの命が助かっているそうです。日本ではほとん
ど使われることのなくなった蚊帳も、世界では大活躍を
しているのです。日本人のこれからの役割は、より安く
より安全な蚊帳を世界中に広めることではないでしょう
カ。「ブーン。」「あ、蚊や。蚊帳に入ろう。」 「しま
った。蚊帳に入られたカ。ヤーン。」【1】脊椎動物の
ほとんどは、生まれたときから性別が決まっており、途
中で変化することはありません。ところが、同じ脊椎動
物でも、魚には、オスがメスへ、メスがオスへと変化し
たり、生まれながらにして雌雄同体のものがあります。
【2】オスからメスへ変化するものとして代表的なのは
、クマノミの仲間です。クマノミは、毒を持つイソギン
チャクと一緒に暮らすことで有名です。【3】ひとつの
イソギンチャクに、オスとメス一匹ずつの成魚と、体の
小さな幼魚の数匹で暮らしていることが多いのですが、
この成魚と幼魚の間に、親子関係はありません。 クマノ
ミの稚魚は、卵から孵化すると、すぐに生まれたイソギ
ンチャクを離れ、しばらく海の中で浮遊生活を続けます
。【4】そして、全く別のイソギンチャクにたどりつき
、そこで元から住んでいる縁もゆかりもないクマノミた
ちと共同生活を始めます。これは、親子で繁殖してしま
う危険をさけるための工夫です。【5】同じひとつのイ
ソギンチャクの中に暮らしているクマノミたちは、体の
大きさに違いがあります。群れの中でいちばん大きいの
がメス、次に大きいのがオスです。【6】三番め以降の
魚たちは、オスでもメスでもない未成熟な個体です。卵
を産むのはメスですが、その卵を守るのは、おもにオス
の役目です。【7】何らかの原因で、いちばん大きいメ
スが死んでしまうと、オスが性転換をしてメスになり、
オスの次に大きい未成熟な個体がオスになって繁殖に参
加します。クマノミの世界には、このようにきちんとし
た秩序があります。【8】なぜいちばん大きい個体がメ
スになるかというと、メスは体が大きいほどたくさんの
卵を産むことができるからです。∵【9】「わたし、昨
日までオスだったメスで、名前はクマオよ。」「ぼくは
、今日からオスになった、名前はクマコなんだ。」 「何
だか、呼び方にクマっちゃうね。」なんでもコンパクト
がもてはやされるこのごろですが、犬の世界も例外では
ありません。品種改良の結果、たくさんの犬が小型化さ
れ、今や世界中で飼われています。つまり、コンパクト
な犬はそのほとんどが人工的に作り出されたものなので
す。しかし、天然の小型犬もいます。チワワです。餌代
もかからず、場所もとらず、小さいのに勇敢なこの犬は
、ペットとして大変人気があります。チワワの出身地は
メキシコで、意外にも南国の生まれなのです。実はこの
犬は、もともとテチチという名前で知られていました。
チワワと呼ばれるようになったのは十九世紀の中ごろで
す。メキシコに旅行したアメリカ人が、メキシコのチワ
ワ州でこの小さい犬を見つけ、何匹か持ち帰りました。
そして、土地の名前からチワワと命名したのです。同じ
ころ、メキシコのお妃様がヨーロッパ旅行のお供にこの
犬を連れて行ったため、チワワは世界的に有名になりま
した。チワワは人間が大好きです。人間との接触が多い
ほど元気に育つと言われています。 しかし、注意も必要
です。この犬の大きさからすると、ベッドやソファは高
所ですから、高いところから無造作に飛び降りて骨折し
てしまうことがあります。また、消化器官が小さい上に
カロリーを早く消費するため、血糖値が下がりやすいの
もチワワの特徴です。ですから、少量のえさをたびたび
与えてやる必要があります。震えるのはこの犬の特徴で
す。寒いときだけでなく、興奮したときや心配なとき、
不満があるとき、怖がっているときなどに震えます。小
さいけれど大きな存在感を持つチワワ。もしメキシコへ
旅行することがあったなら、「こんにチワ、ワたしの国
へようこそ」と歓迎してくれるかもしれません。∵「チ
ワワって、おでんに入れるとおいしいんだよね。」「そ
れは、チクワ。」人間は昔から、香りに興味を持ち、香
りの原料つまり香料を探してきました。香料には動物性
のものと植物性のものとがあります。動物性のものとし
ては、ジャコウ鹿からとれるムスクが代表的です。植物
性の香料として一般的なものは、なんと言っても花々で
す。例えば、ブルガリアのダマスクローズは、古くから
貴重な香料とされてきました。この花のエッセンスは高
値で取引され、今でも世界中で愛されています。 しかし
、植物性の香料は花だけではありません。どちらかとい
えばなじみの薄い、しかし大変広く使われている香料、
それがフルーツの一種であるベルガモットです。この果
実のエッセンスは、女性用の香水の約三分の一に、また
男性用のコロンの約半分に入っています。このフルーツ
からとれるエッセンスには、いろいろな香りをまとめて
一つの香りにするという働きがあり、これがほかの香料
にはない特性なのです。ベルガモットはミカン科の植物
で、秋から冬にかけてオレンジほどの大きさの実をつけ
ます。香水になるエッセンスは、この果実の皮からとれ
ます。ベルガモットの主な産地は、イタリア半島のカラ
ブリア地方で、ほかの土地ではほとんど育ちません。と
いうのも、この植物は、暖かくしかも南向きの土地で、
強い風の吹かない、湿度の低いところでないと育たない
からです。 この植物の起源そのものは深いなぞに包まれ
ています。野生のベルガモットというものはなく、この
植物を種から育てることもできません。ベルガモットは
、ほかの柑橘系の木々に挿し木をして育てるしかないの
です。野生のベルガモットがあれば、香水も、もっとヤ
セイものになっていたでしょう。神秘に包まれた香りの
世界。だからこそ、より魅力的なのかもしれません。シ
ロツメクサは、日本人にとても愛されている草花のひと
つです。天気のいい休日になると、シロツメクサが生え
ている場所で、シートを広げてお弁当を食べる家族連れ
の姿を見ることができます。シロツメクサの上は、ふん
わりしていて座り心地がよいのです。お弁当のあとには
、子どもたちは花を編んでかわいい冠にしたり、茎をか
らませて両側から引っ張る草相撲をしたりして遊ぶこと
もできます。私たちになじみの深いシロツメクサですが
、実はもともとは日本ではなく、ヨーロッパが原産の植
物です。江戸時代、ヨーロッパのガラス製品は大変な貴
重品でした。遠くヨーロッパから船でガラス製品を運ん
でくるとき、船がゆれてガラスが割れてしまわないよう
に箱の中につめものとして入れられたものが、このシロ
ツメクサなのです。 つめものの草だからツメクサという
名前がつきました。シロツメクサは生命力の強い植物な
ので、つめものとして日本にやってきて役目を終えたあ
と、ゴミとして捨てられた場所で再び息を吹き返し、次
第に日本中に広がっていきました。今では北海道から沖
縄まで、日本全国で見られるようになっています。シロ
ツメクサのように外国が原産で、何らかの理由で日本に
定着した植物のことを帰化植物と言います。セイヨウタ
ンポポやヒメジョオンなども帰化植物として有名です。
ところで、このシロツメクサの英語名はクローバーです
が、クローバーといえば、四つ葉のクローバーが幸運の
シンボルであることはよく知られています。しかし、四
つ葉を見つけようと思っても、クローバかり多くてなか
なか見つからないことがほとんどです。ところが、世の
中には、五つ葉や六つ葉のクローバーもあるのです。今
までに見つかった最高記録はなんと十八枚葉。 これは日
本で発見され、ギネスブックにも載りました。十八枚葉
のクローバーなんて見つけたら、びっくりして白目をむ
いて倒れてしまいそうです。これぞまさにシロ(ツ)メ
スカートやズボンを買うときは、まずウエストのサイズ
を確かめます。では、地球のウエスト、つまり円周はど
うやって測るのでしょう。現代の科学者たちは、メジャ
ーの代わりに人工衛星を使います。北極と南極を通る二
つの衛星で、地球を外がわから測るのです。そのように
して算出された数値は、約四万八千キロメートル。大変
なウエストサイズです。 しかし、今からおよそ二千二百
年前、すでに地球を測った人がいたのです。エラトステ
ネスは、ギリシャの数学者で天文学者でもありました。
彼の時代には人工衛星などないので、地球が丸いことさ
え知らない人がたくさんいました。もちろん、地球を測
ることのできるほど長い巻尺もありません。エラトステ
ネスが使ったのは、一本の棒きれでした。エジプトのシ
エネという都市にいたときのことです。エラトステネス
は、一年でいちばん昼間の長い夏至の正午に、太陽が真
上に来ることに気づきました。太陽の光が影を作らずに
井戸の底まで届いていたからです。しかし、そこから北
に八百五十キロメートルほど行ったところにあるアレク
サンドリアでは、同じ夏至の日の正午に影が見えたので
す。 そこで、エラトステネスはあることを思いつきます
。彼はまず、アレクサンドリアにまっすぐな棒を立てま
した。正午にその棒が作る影を観察するためです。影の
角度を測ったところ、垂直方向に対して七・二度でした
。エラトステネスは地球が丸いことと円周の全体が三百
六十度であることを知っていました。三百六十を七・二
で割ると五十ですから、棒の角度七・二度は円周の五十
分の一になります。ということは、シエネとアレクサン
ドリアの間の距離も、地球の円周の五十分の一と等しい
はずです。そこで二つの町の距離を五十倍し、地球の円
周は、約四万キロメートルから∵四万六千キロメートル
だという結論に達したのです。それは、驚くほど正確な
数値でした。「エラトステネスさん、棒で測るなんて、
いつ思いついたんですか。」「ぼうっとしているときに
ね。」物を食べると、いろいろな味を感じます。たとえ
ば目かくしをしていても、それが知っている味なら、今
食べたものが何か、当てることができるでしょう。また
、初めて食べたものでも、「塩辛い」とか「甘酸っぱい
」などと、言葉で表すことができます。この味は、いっ
たいどこでどうやって感じているのでしょうか。味を感
じる体の部分は舌である、というのは、よく知られてい
ることです。その証拠に、味見をするときは、ちょっと
舌を出してなめてみます。 この舌をよく見てみると、表
面はなめらかではなく、ざらざらで、更によく見ると小
さなでこぼこやつぶつぶがあります。実は、このつぶつ
ぶが、味蕾と呼ばれるものです。「蕾」というのが「つ
ぼみ」という漢字であることからわかるように、味蕾は
花のつぼみのような形をしています。味蕾は舌の表面だ
けではなく、上あごの奥やのどにもあります。ですから
、舌だけで味を感じているのではないようです。ところ
で、動物の中でも肉食動物は、においをかぎ分ける能力
である嗅覚がとても発達している代わりに、味覚はそれ
ほど優れていません。犬やネコも、この肉食動物の仲間
です。おおざっぱに苦味、酸味、辛味、甘味などはわか
り、苦いものがきらいで甘いものが好きなのは人間と同
じです。肉食動物は、生肉をあっという間に食べてしま
うため、それほどおいしさを味わう必要がなかったので
す。それに対し、いつまでもゆっくりと草を食べている
草食動物は、肉食動物よりは味覚が発達していると言わ
れています。 みなさんの家にも、おいしいものしか食べ
ない、グルメな犬やネコがいるかもしれません。これは
、おいしいものをいろいろもらってしまったので、学習
して「違いがわかる」ようになってしまったのです。現
代の犬たちが、おしゃれなカフェで犬用のケーキを食べ
ているなんて、犬のご先祖のオオカミには、想像もでき
なかったにちがいありません「青菜に塩」ということわ
ざは、ほうれん草などの青い葉に塩をかけると急にしお
れてしまうことから、人が急に元気がなくなってしょん
ぼりする様子をたとえることわざになりました。フライ
パンで青菜を炒めているところを見ると、こぼれんばか
りに山盛りになった青菜がさっと小さくなってしまいま
す。さて、この「青菜に塩」の魔法はどうして起こるの
でしょうか。野菜は、人間と同じようにたくさんの細胞
が集まってできています。ひとつひとつの細胞を包んで
いる細胞膜は、水も塩も通すようになっています。生き
ている細胞膜であれば、細胞の中に入った塩をうまく細
胞の外に排出する機能を持っています。 しかし、死んだ
細胞の場合、塩は細胞内にしみ込んだままになります。
その一方で、細胞からは水が出ていくので、青菜のカサ
がへってしまうのです。この脱水作用をうまく利用した
ものが漬物で、漬物にされた野菜は、もとの大きさより
はるかにしおれて縮んでいます。私たち人間が健康に生
きていくためにも、塩分のバランスは大切です。体の細
胞とそれをつつむ液体の塩分濃度は、腎臓の働きで常に
一定に保たれています。細胞の内と外の圧力が均衡して
いるために、細胞は同じ形を保つことができます。塩辛
いものを食べたあと、のどが渇いてくるのもそのためで
す。また、夏の暑い日に、熱射病にならないために水分
と塩分をとるように注意するのも同じ理由からです。「
漬物さんには、塩が必要なんですね。」「シオうだよ。
」「ちょっと苦しいですね。」「エーン。」ブーン。(
飛んでいっちゃった。)お腹がすいたら花屋さんに入る
、という人はいません。「花より団子」のことわざに見
られるとおり、花は見るものであり食べるものではない
、というのが普通の考え方です。 しかし世の中には、目
や鼻だけでなく、舌まで楽しませてくれる花が数多くあ
るのです。例えば、バラは、美しいだけではなく食用に
もなります。花びらの根元は苦味があるので取り除きま
す。また、花の中心部は食べません。バラの花びらをチ
ーズやナッツ類と合わせてサラダにしたり、刻んだもの
をスパゲッティにふりかけたりするとおいしいのだそう
です。バラを使って、アイスクリームや飲み物に風味を
添えることもできます。また、野菜の花も食用になりま
す。カボチャの花は、すでに十六世紀ごろから南北アメ
リカで食卓に上っていました。しかし、いくらおいしい
からといっても、花を全部食べてしまうとカボチャの実
ができなくなってしまいます。ですから、雌花は残して
雄花だけを食べるのです。レモンやオレンジなど柑橘系
の花は、飲み物に入れたりデザートに添えたりすると、
風味が引き立ちます。春になると、菜の花が八百屋さん
の店頭に並びます。フキノトウやイチジクも、食べると
ころは花の部分です。「花さん。食べられたときの気持
ちはどうですか。」「はあ、なんというか。」「やはり
、見てもらった方がうれしいでしょう。」「はあ、なん
といっても。」「花さんは、きれいですからね。」 「は
あ、なにしろ。」「もっと驚くようなことを言ってくだ
さい。」「ハッ!、なあんてね。」竹は、中に節があっ
て、まるで空き部屋がひとつひとつ区切られているよう
に、空っぽになっています。これは、竹が木の仲間でな
くて、草の仲間だからです。竹は、身のまわりにたくさ
んあるので、大昔から、人間は、この竹を利用する工夫
をしてきました。まず、あいたところにお米をつめて、
蒸す道具にしました。水をつめて、水筒にもしました。
二つにわって、お皿にもしました。 まっすぐにきれいに
割れることから、細くして、ザルやカゴをあんだり、ス
ダレを編んだりもしました。また、更に細くして、竹ヒ
ゴというものにもしました。竹ヒゴは、しなやかにまが
っても折れることがないので、模型飛行機などの材料に
も使われています。更に、人間は、竹によって弓矢や、
槍も作りました。剣道の竹刀には、今も竹が使われてい
ます。竹は、遊ぶものにも使われました。穴をあけて、
尺八という楽器にもなりました。 長い竹を打ちあわせて
、その上をとんで踊るバンブーダンスにも使われました
。竹馬や竹トンボという子どものおもちゃにもなり、竹
から生まれた「かぐやひめ」というお話も作られました
。エジソンが電球を発明したとき、光を長くもたせるた
めのフィラメントの材料を長い間さがして、とうとう京
都の竹の炭がいちばんいいことを発見しました。こんな
に役に立つ竹は、値段も決してタケーわけではありませ
ん。身の回りに豊富にある材料です。日本人は、昔から
この役に立つ竹を尊敬してきました。だから、おめでた
いことに使われるものは、松竹梅と言いますし、お正月
には門松を立てるのです。また、七夕の日には笹に願い
事を書いた短冊をつるします。子どもの日には、笹の葉
でまいたチマキを食べて、元気に育つことを祈ります。
∵竹もまさか、こんなに人間に利用されるとは思わなか
ったでしょう。しかし、竹はきっと「竹をわったような
性格」ですから、「どんどん工夫していいよ!」と快く
言っているはずです。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなた
の顔が正面から大きく写っている写真を用意します。そ
れから、目のまんなか、鼻、口を通る顔の中心線の上に
鏡を立てます。写真の半分と鏡に映ったその半分とを合
わせると、片方の側だけからできた左右対称の顔になり
ます。鏡の向きを変えると、もう片方の側でも同じこと
ができます。右側だけでできた顔と左側だけでできた顔
とでは、かなりちがった印象を受けます。目の大きさや
ほっぺたの形など、右と左では意外に大きく異なってい
るのです。顔だけではありません。人の体は、左右対称
に思えますが、実は少しちがっていて、手足の長さや筋
肉のつきかたなども同じではないのです。人がまっすぐ
に歩くのは当たり前のようですが、実は目で周りの景色
を確かめながら体の向きをコントロールしています。そ
のため、視界のきかない吹雪のときなど、ただやみくも
に進んでいくと、弱い足の方に少しずつ曲がっていって
しまいます。そして、長い時間歩いたあげく、結局最初
と同じ地点にもどってしまうこともあるのです。内臓で
は、右と左はもっとちがいます。たとえば心臓は体の少
し左側にあります。赤ちゃんを抱くときに、お母さんは
自然と赤ちゃんの頭が心臓の近くにくるように抱きます 。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるとき、お母さ
んの心臓の音をずっと聞いていたので、この音を聞くと
安心するのかもしれません。右と左の違いは、普段の生
活でも役に立ちます。例えば、野球をするとき、右利き
の人は、左手でボールをキャッチし右手でボールを投げ
ます。リンゴの皮をむくときは、左手でリンゴを支え右
手で包丁を動かします。人間の体は、右と左の違いをう
まく生かしているのです。∵ここで一句。「ウインクを
両目でしたらただのまばたき」言葉の森長文作成委員会
(α)日本は世界一の漫画王国とよばれています。大人
向けのものまでふくめると、一年間に七億冊以上の漫画
が出版されています。漫画をもとにして、アニメーショ
ンや映画やテレビ番組もたくさん作られ、いろいろな国
の言葉に翻訳されて、世界中の人気を集めています。 で
は、漫画は、いつの時代からあったのでしょうか。いち
ばん古い漫画は、今から八百年ほど前にかかれたと言わ
れています。それは、京都の高山寺というお寺にある、
「鳥獣人物戯画」という絵です。その中には、人真似を
して遊ぶ動物たちがかかれています。始まりは、動物た
ちの川遊び。川に飛びこむウサギや、泳ぐサル。ウサギ
に背中を流してもらって、気持ちよさそうなサルもいま
す。別の絵には弓矢の練習をしたり、相撲をとって遊ん
だりするカエルやウサギの様子がかかれています。カエ
ルに投げ飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで
、見物のカエルたちが大わらいしている絵もあります。
カエルの仏様にお経をあげているサルのお坊さんの絵も
あります。どの動物も生き生きと描かれ、今にも絵の中
から飛び出してきそうです。この昔の漫画には、セリフ
がかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。し
かし絵の中には、今の漫画に似たところもあります。た
とえば今の漫画では、すばやい動きをあらわすために線
を何本もひき、スピードの出ている様子をあらわします
。鳥獣人物戯画の中にも、同じようなかき方が見られる
のです。こんな昔から、漫画を楽しんでいた日本人。 こ
れからも、たくさんの名作が生まれ、多くの人に愛され
ていくことでしょう。∵漫画は、世界中に自マンガでき
る、日本の宝です。しかし、漫画は絵がわかりやすいの
で、字の多い本は読マンガ、漫画なら読むという生活を
続けていると、次第に読む力が低下してきます。字の多
い本を読む一方で、漫画も楽しく読み、漫画の読み方に
ついても自マンガできる国にしていきましょう。夜の道
を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると
、またどこまでもついてきます。もちろん、キツネやお
化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それ
はお月さまです。月がついてくるのは、電車に乗ってい
ても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、ど
んどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、
近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ
動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山
を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるよう
に見えます。家、電信柱、山、月。これらを比べて違う
のは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、
動かないように見えるのです。月は、わたしたちの地球
を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かん
でいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいで
は、月の位置は変わらないように見えるのです。 もちろ
ん、月よりもっと遠くの太陽でも、同じことが言えます
。あなたがどんなに動いても太陽はついてきます。しか
し、太陽はまぶしすぎて、あまり見上げることはありま
せん。やはり、夜、明るい月が一緒についてくるところ
にこそ、不思議さがあるのでしょう。地球は月の四倍の
大きさです。したがって、もし、月の上を歩きながら地
球を見ると、月よりも四倍大きい、青く美しい地球がつ
いてきます。月と地球のツキあいは、遠くても深いもの
なのです。∵「ねえ、どうしてついてくるの?」「だっ
て、ツキだから。」「では、もし太陽だったら?」「や
っぱり、ついて行きタイヨウ。」「甘えん坊なんだね。
」【1】買ってきた野菜の葉に、いも虫がたくさんつい
ていたらどうしますか。普通は「わあ、いやだ」と急い
で取り除き、野菜をすっかりきれいにしてから調理する
でしょう。【2】しかし世界には、いも虫を見て「わあ
、おいしそう」と感じる人たちもいるのです。 アフリカ
の一部では、ガの幼虫であるいも虫が食用にされていま
す。【3】それらの地域では、キャッサバやトウモロコ
シなどのでんぷん質が食事の中心なので、どうしてもた
んぱく質が不足しがちです。しかし、質のよいたんぱく
源は高価で手に入りにくいのが現状です。【4】ですか
ら、たんぱく質のかたまりであるいも虫は大変貴重な補
助食品なのです。実際、一皿のいも虫は、大人が一日に
必要とするたんぱく質・ビタミン・ミネラルの約四分の
三を含むと言われています。【5】秋の雨の季節が過ぎ
ると、いも虫の収穫が始まります。村の女性たちは、総
出でいも虫を集めます。いも虫は内臓を抜き、ゆでてか
ら天日干しにします。【6】この乾燥いも虫を、おやつ
がわりにそのままポリポリと食べるのです。このいも虫
は、ただおいしいだけではありません。ある意味で、と
ても効率のよい食品でもあるのです。【7】いも虫は、
人間には食べられない有毒の植物でもかまわず食べてく
れます。そしてどんどん肥え太り、わずか六週間で体重
を四千倍に増やします。 【8】その丸々としたおいしそ
うないも虫を、今度は人間が食べるわけです。「いも虫
君、いいねえ。あったかそうな蓑を着て。」「それはミ
ノムシ。」【9】「確か、茶碗に入っているんだよね。
」「それはチャワンムシ。」「ときどき足がかゆくなる
けどね。」「それは、ミズムシ。もう、いいもん。無視
。トライアスロンの競技の歴史はまだ新しく、二十世紀
の後半に最初の大会が開催されました。トライアスロン
とは、ギリシャ語で「三」を意味するトライと、「賞品
」を意味するアスロンを合わせてできた言葉です。その
名のとおり、水泳、ランニング、自転車の三種目を続け
て行ない、その総合タイムを競うレースです。どれか一
つだけでも体力のいるハードな競技ですが、それをひと
りで三つもこなすということで、鉄人レースともよばれ
ています。この競技が生まれたのは、ハワイのオアフ島
でした。海兵隊員たちが、一日の仕事を終えて、ビール
を飲みながらくつろいでいるとき、オアフ島で行なわれ
ている三つの競技のうち、どれがいちばん大変かという
議論になりました。三つの競技というのは、オアフ島一
周の自転車レース、ホノルルマラソン大会、ワイキキビ
ーチでの遠泳大会のことです。だれもが、自分の出場し
た競技こそが最も苦しかったと自慢げに話すので、いく
ら話し合っても答えは出ませんでした。そのとき、ビー
ルを飲んで酔っぱらっていた海軍司令官のジョン・コリ
ンズは、ある提案をしました。この三つの競技を合わせ
て一つの競技にしたらどうかというのです。 まさか本気
で挑戦する者はいないだろうと、コリンズはほんの冗談
のつもりで提案したのですが、実際に競技に参加する人
があらわれました。現在では、日本でも毎年多くの大会
が開かれています。また、二〇〇〇年に行なわれたシド
ニーオリンピックから、トライアスロンは正式種目にな
っています。∵「ぼくも、新しい競技を考えついた。」
「なあに。」「ドッジボールと槍投げと火の輪くぐりを
組み合わせるんだ。」「今度のオリンピックで採用され
るといいね。」だれも出ないと思うけど。チョコレート
、キャンディー、ケーキなど、甘いお菓子を思い浮かべ
るだけで幸せな気分になれる人は多いでしょう。それら
のお菓子を作るのに大切なのが砂糖です。しかし、砂糖
にはほかにもいろいろな働きがあります。 その働きのひ
とつに、カビや微生物が増殖するのを防ぐというものが
あります。カビや微生物は湿ったところ、つまり、水分
のあるところが好きです。砂糖は、食べ物の水分の周り
をおおって、微生物やカビの働きをにぶらせます。ジャ
ムや果物の缶詰などがその例です。果物はほうっておく
と傷んだり腐ったりしますが、砂糖とともに調理するこ
とで長期間保存することができます。水分を抱え込む砂
糖の性質は、生クリームや卵白の泡立てにも一役買って
います。クリームや卵のたんぱく質の水分を砂糖が抱え
込むことによって、泡がくずれるのを防ぎ、また泡同士
がくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリー
ムを作るのには、砂糖が欠かせないのです。肉を煮込む
ときにも、その働きが発揮されます。 調理する前の下準
備の肉に砂糖をすりこんでおくと、軟らかく煮ることが
できます。それは、砂糖が肉のたんぱく質の持つ水分を
肉の中にとどめておくからです。さを作り出す調味料
というイメージの強い砂糖ですが、実際には水分と結び
つきやすい性質が私たちの生活の中でいろいろな役割を
はたしているのです。働き者の砂糖は、縁の下の力持ち
なので、決して「えっへん!」といばっているわけでは
ありません。しかし、ダイエットをさけぶ人たちからは
、かたき扱いされています。「えっ?変?一生懸命働い
ているのに……。」砂糖からそんな声が聞こえてきそう
です。∵「カビ君は、どうして砂糖が苦手なの。」「だ
って、砂糖ってサ、トウっても甘いんだもん。」寝よう
としたら、ブーンという音がして、あわてて灯りをつけ
たことがありませんか。そして、小さな蚊がどこにいる
か見つけようとしたことがあるでしょう。日本では昔、
蚊を防ぐために蚊帳という道具を使っていました。 これ
は、一ミリメートルほどの細かい網でできている四角い
テントのようなもので、部屋の中で四方から吊り下げる
ようになっています。網目が細かいので、蚊は中に入れ
ませんが、涼しい風は通すことができます。昔の日本人
は、蚊の多い暑い夏の夜を、蚊帳の中で風鈴の音を聞き
ながら涼しく過ごしたのです。しかし、昭和の後期にな
ると、殺虫剤や下水道が普及した結果、蚊自体が少なく
なり、蚊帳は次第に使われなくなっていきました。とこ
ろが、今、この蚊帳が再び注目されています。蚊帳は、
電気も薬品も使わない点で、人間にも地球にももちろん
蚊にも優しい道具だと考えられるようになってきたので
す。日本は、マラリヤの被害に悩まされるアフリカ諸国
にたくさんの蚊帳を送っています。これによって多くの
子供たちの命が助かっているそうです。日本ではほとん
ど使われることのなくなった蚊帳も、世界では大活躍を
しているのです。日本人のこれからの役割は、より安く
より安全な蚊帳を世界中に広めることではないでしょう
カ。「ブーン。」「あ、蚊や。蚊帳に入ろう。」 「しま
った。蚊帳に入られたカ。ヤーン。」【1】脊椎動物の
ほとんどは、生まれたときから性別が決まっており、途
中で変化することはありません。ところが、同じ脊椎動
物でも、魚には、オスがメスへ、メスがオスへと変化し
たり、生まれながらにして雌雄同体のものがあります。
【2】オスからメスへ変化するものとして代表的なのは
、クマノミの仲間です。クマノミは、毒を持つイソギン
チャクと一緒に暮らすことで有名です。【3】ひとつの
イソギンチャクに、オスとメス一匹ずつの成魚と、体の
小さな幼魚の数匹で暮らしていることが多いのですが、
この成魚と幼魚の間に、親子関係はありません。 クマノ
ミの稚魚は、卵から孵化すると、すぐに生まれたイソギ
ンチャクを離れ、しばらく海の中で浮遊生活を続けます
。【4】そして、全く別のイソギンチャクにたどりつき
、そこで元から住んでいる縁もゆかりもないクマノミた
ちと共同生活を始めます。これは、親子で繁殖してしま
う危険をさけるための工夫です。【5】同じひとつのイ
ソギンチャクの中に暮らしているクマノミたちは、体の
大きさに違いがあります。群れの中でいちばん大きいの
がメス、次に大きいのがオスです。【6】三番め以降の
魚たちは、オスでもメスでもない未成熟な個体です。卵
を産むのはメスですが、その卵を守るのは、おもにオス
の役目です。【7】何らかの原因で、いちばん大きいメ
スが死んでしまうと、オスが性転換をしてメスになり、
オスの次に大きい未成熟な個体がオスになって繁殖に参
加します。クマノミの世界には、このようにきちんとし
た秩序があります。【8】なぜいちばん大きい個体がメ
スになるかというと、メスは体が大きいほどたくさんの
卵を産むことができるからです。∵【9】「わたし、昨
日までオスだったメスで、名前はクマオよ。」「ぼくは
、今日からオスになった、名前はクマコなんだ。」 「何
だか、呼び方にクマっちゃうね。」なんでもコンパクト
がもてはやされるこのごろですが、犬の世界も例外では
ありません。品種改良の結果、たくさんの犬が小型化さ
れ、今や世界中で飼われています。つまり、コンパクト
な犬はそのほとんどが人工的に作り出されたものなので
す。しかし、天然の小型犬もいます。チワワです。餌代
もかからず、場所もとらず、小さいのに勇敢なこの犬は
、ペットとして大変人気があります。チワワの出身地は
メキシコで、意外にも南国の生まれなのです。実はこの
犬は、もともとテチチという名前で知られていました。
チワワと呼ばれるようになったのは十九世紀の中ごろで
す。メキシコに旅行したアメリカ人が、メキシコのチワ
ワ州でこの小さい犬を見つけ、何匹か持ち帰りました。
そして、土地の名前からチワワと命名したのです。同じ
ころ、メキシコのお妃様がヨーロッパ旅行のお供にこの
犬を連れて行ったため、チワワは世界的に有名になりま
した。チワワは人間が大好きです。人間との接触が多い
ほど元気に育つと言われています。 しかし、注意も必要
です。この犬の大きさからすると、ベッドやソファは高
所ですから、高いところから無造作に飛び降りて骨折し
てしまうことがあります。また、消化器官が小さい上に
カロリーを早く消費するため、血糖値が下がりやすいの
もチワワの特徴です。ですから、少量のえさをたびたび
与えてやる必要があります。震えるのはこの犬の特徴で
す。寒いときだけでなく、興奮したときや心配なとき、
不満があるとき、怖がっているときなどに震えます。小
さいけれど大きな存在感を持つチワワ。もしメキシコへ
旅行することがあったなら、「こんにチワ、ワたしの国
へようこそ」と歓迎してくれるかもしれません。∵「チ
ワワって、おでんに入れるとおいしいんだよね。」「そ
れは、チクワ。」人間は昔から、香りに興味を持ち、香
りの原料つまり香料を探してきました。香料には動物性
のものと植物性のものとがあります。動物性のものとし
ては、ジャコウ鹿からとれるムスクが代表的です。植物
性の香料として一般的なものは、なんと言っても花々で
す。例えば、ブルガリアのダマスクローズは、古くから
貴重な香料とされてきました。この花のエッセンスは高
値で取引され、今でも世界中で愛されています。 しかし
、植物性の香料は花だけではありません。どちらかとい
えばなじみの薄い、しかし大変広く使われている香料、
それがフルーツの一種であるベルガモットです。この果
実のエッセンスは、女性用の香水の約三分の一に、また
男性用のコロンの約半分に入っています。このフルーツ
からとれるエッセンスには、いろいろな香りをまとめて
一つの香りにするという働きがあり、これがほかの香料
にはない特性なのです。ベルガモットはミカン科の植物
で、秋から冬にかけてオレンジほどの大きさの実をつけ
ます。香水になるエッセンスは、この果実の皮からとれ
ます。ベルガモットの主な産地は、イタリア半島のカラ
ブリア地方で、ほかの土地ではほとんど育ちません。と
いうのも、この植物は、暖かくしかも南向きの土地で、
強い風の吹かない、湿度の低いところでないと育たない
からです。 この植物の起源そのものは深いなぞに包まれ
ています。野生のベルガモットというものはなく、この
植物を種から育てることもできません。ベルガモットは
、ほかの柑橘系の木々に挿し木をして育てるしかないの
です。野生のベルガモットがあれば、香水も、もっとヤ
セイものになっていたでしょう。神秘に包まれた香りの
世界。だからこそ、より魅力的なのかもしれません。シ
ロツメクサは、日本人にとても愛されている草花のひと
つです。天気のいい休日になると、シロツメクサが生え
ている場所で、シートを広げてお弁当を食べる家族連れ
の姿を見ることができます。シロツメクサの上は、ふん
わりしていて座り心地がよいのです。お弁当のあとには
、子どもたちは花を編んでかわいい冠にしたり、茎をか
らませて両側から引っ張る草相撲をしたりして遊ぶこと
もできます。私たちになじみの深いシロツメクサですが
、実はもともとは日本ではなく、ヨーロッパが原産の植
物です。江戸時代、ヨーロッパのガラス製品は大変な貴
重品でした。遠くヨーロッパから船でガラス製品を運ん
でくるとき、船がゆれてガラスが割れてしまわないよう
に箱の中につめものとして入れられたものが、このシロ
ツメクサなのです。 つめものの草だからツメクサという
名前がつきました。シロツメクサは生命力の強い植物な
ので、つめものとして日本にやってきて役目を終えたあ
と、ゴミとして捨てられた場所で再び息を吹き返し、次
第に日本中に広がっていきました。今では北海道から沖
縄まで、日本全国で見られるようになっています。シロ
ツメクサのように外国が原産で、何らかの理由で日本に
定着した植物のことを帰化植物と言います。セイヨウタ
ンポポやヒメジョオンなども帰化植物として有名です。
ところで、このシロツメクサの英語名はクローバーです
が、クローバーといえば、四つ葉のクローバーが幸運の
シンボルであることはよく知られています。しかし、四
つ葉を見つけようと思っても、クローバかり多くてなか
なか見つからないことがほとんどです。ところが、世の
中には、五つ葉や六つ葉のクローバーもあるのです。今
までに見つかった最高記録はなんと十八枚葉。 これは日
本で発見され、ギネスブックにも載りました。十八枚葉
のクローバーなんて見つけたら、びっくりして白目をむ
いて倒れてしまいそうです。これぞまさにシロ(ツ)メ
スカートやズボンを買うときは、まずウエストのサイズ
を確かめます。では、地球のウエスト、つまり円周はど
うやって測るのでしょう。現代の科学者たちは、メジャ
ーの代わりに人工衛星を使います。北極と南極を通る二
つの衛星で、地球を外がわから測るのです。そのように
して算出された数値は、約四万八千キロメートル。大変
なウエストサイズです。 しかし、今からおよそ二千二百
年前、すでに地球を測った人がいたのです。エラトステ
ネスは、ギリシャの数学者で天文学者でもありました。
彼の時代には人工衛星などないので、地球が丸いことさ
え知らない人がたくさんいました。もちろん、地球を測
ることのできるほど長い巻尺もありません。エラトステ
ネスが使ったのは、一本の棒きれでした。エジプトのシ
エネという都市にいたときのことです。エラトステネス
は、一年でいちばん昼間の長い夏至の正午に、太陽が真
上に来ることに気づきました。太陽の光が影を作らずに
井戸の底まで届いていたからです。しかし、そこから北
に八百五十キロメートルほど行ったところにあるアレク
サンドリアでは、同じ夏至の日の正午に影が見えたので
す。 そこで、エラトステネスはあることを思いつきます
。彼はまず、アレクサンドリアにまっすぐな棒を立てま
した。正午にその棒が作る影を観察するためです。影の
角度を測ったところ、垂直方向に対して七・二度でした
。エラトステネスは地球が丸いことと円周の全体が三百
六十度であることを知っていました。三百六十を七・二
で割ると五十ですから、棒の角度七・二度は円周の五十
分の一になります。ということは、シエネとアレクサン
ドリアの間の距離も、地球の円周の五十分の一と等しい
はずです。そこで二つの町の距離を五十倍し、地球の円
周は、約四万キロメートルから∵四万六千キロメートル
だという結論に達したのです。それは、驚くほど正確な
数値でした。「エラトステネスさん、棒で測るなんて、
いつ思いついたんですか。」「ぼうっとしているときに
ね。」物を食べると、いろいろな味を感じます。たとえ
ば目かくしをしていても、それが知っている味なら、今
食べたものが何か、当てることができるでしょう。また
、初めて食べたものでも、「塩辛い」とか「甘酸っぱい
」などと、言葉で表すことができます。この味は、いっ
たいどこでどうやって感じているのでしょうか。味を感
じる体の部分は舌である、というのは、よく知られてい
ることです。その証拠に、味見をするときは、ちょっと
舌を出してなめてみます。 この舌をよく見てみると、表
面はなめらかではなく、ざらざらで、更によく見ると小
さなでこぼこやつぶつぶがあります。実は、このつぶつ
ぶが、味蕾と呼ばれるものです。「蕾」というのが「つ
ぼみ」という漢字であることからわかるように、味蕾は
花のつぼみのような形をしています。味蕾は舌の表面だ
けではなく、上あごの奥やのどにもあります。ですから
、舌だけで味を感じているのではないようです。ところ
で、動物の中でも肉食動物は、においをかぎ分ける能力
である嗅覚がとても発達している代わりに、味覚はそれ
ほど優れていません。犬やネコも、この肉食動物の仲間
です。おおざっぱに苦味、酸味、辛味、甘味などはわか
り、苦いものがきらいで甘いものが好きなのは人間と同
じです。肉食動物は、生肉をあっという間に食べてしま
うため、それほどおいしさを味わう必要がなかったので
す。それに対し、いつまでもゆっくりと草を食べている
草食動物は、肉食動物よりは味覚が発達していると言わ
れています。 みなさんの家にも、おいしいものしか食べ
ない、グルメな犬やネコがいるかもしれません。これは
、おいしいものをいろいろもらってしまったので、学習
して「違いがわかる」ようになってしまったのです。現
代の犬たちが、おしゃれなカフェで犬用のケーキを食べ
ているなんて、犬のご先祖のオオカミには、想像もでき
なかったにちがいありません「青菜に塩」ということわ
ざは、ほうれん草などの青い葉に塩をかけると急にしお
れてしまうことから、人が急に元気がなくなってしょん
ぼりする様子をたとえることわざになりました。フライ
パンで青菜を炒めているところを見ると、こぼれんばか
りに山盛りになった青菜がさっと小さくなってしまいま
す。さて、この「青菜に塩」の魔法はどうして起こるの
でしょうか。野菜は、人間と同じようにたくさんの細胞
が集まってできています。ひとつひとつの細胞を包んで
いる細胞膜は、水も塩も通すようになっています。生き
ている細胞膜であれば、細胞の中に入った塩をうまく細
胞の外に排出する機能を持っています。 しかし、死んだ
細胞の場合、塩は細胞内にしみ込んだままになります。
その一方で、細胞からは水が出ていくので、青菜のカサ
がへってしまうのです。この脱水作用をうまく利用した
ものが漬物で、漬物にされた野菜は、もとの大きさより
はるかにしおれて縮んでいます。私たち人間が健康に生
きていくためにも、塩分のバランスは大切です。体の細
胞とそれをつつむ液体の塩分濃度は、腎臓の働きで常に
一定に保たれています。細胞の内と外の圧力が均衡して
いるために、細胞は同じ形を保つことができます。塩辛
いものを食べたあと、のどが渇いてくるのもそのためで
す。また、夏の暑い日に、熱射病にならないために水分
と塩分をとるように注意するのも同じ理由からです。「
漬物さんには、塩が必要なんですね。」「シオうだよ。
」「ちょっと苦しいですね。」「エーン。」ブーン。(
飛んでいっちゃった。)お腹がすいたら花屋さんに入る
、という人はいません。「花より団子」のことわざに見
られるとおり、花は見るものであり食べるものではない
、というのが普通の考え方です。 しかし世の中には、目
や鼻だけでなく、舌まで楽しませてくれる花が数多くあ
るのです。例えば、バラは、美しいだけではなく食用に
もなります。花びらの根元は苦味があるので取り除きま
す。また、花の中心部は食べません。バラの花びらをチ
ーズやナッツ類と合わせてサラダにしたり、刻んだもの
をスパゲッティにふりかけたりするとおいしいのだそう
です。バラを使って、アイスクリームや飲み物に風味を
添えることもできます。また、野菜の花も食用になりま
す。カボチャの花は、すでに十六世紀ごろから南北アメ
リカで食卓に上っていました。しかし、いくらおいしい
からといっても、花を全部食べてしまうとカボチャの実
ができなくなってしまいます。ですから、雌花は残して
雄花だけを食べるのです。レモンやオレンジなど柑橘系
の花は、飲み物に入れたりデザートに添えたりすると、
風味が引き立ちます。春になると、菜の花が八百屋さん
の店頭に並びます。フキノトウやイチジクも、食べると
ころは花の部分です。「花さん。食べられたときの気持
ちはどうですか。」「はあ、なんというか。」「やはり
、見てもらった方がうれしいでしょう。」「はあ、なん
といっても。」「花さんは、きれいですからね。」 「は
あ、なにしろ。」「もっと驚くようなことを言ってくだ
さい。」「ハッ!、なあんてね。」竹は、中に節があっ
て、まるで空き部屋がひとつひとつ区切られているよう
に、空っぽになっています。これは、竹が木の仲間でな
くて、草の仲間だからです。竹は、身のまわりにたくさ
んあるので、大昔から、人間は、この竹を利用する工夫
をしてきました。まず、あいたところにお米をつめて、
蒸す道具にしました。水をつめて、水筒にもしました。
二つにわって、お皿にもしました。 まっすぐにきれいに
割れることから、細くして、ザルやカゴをあんだり、ス
ダレを編んだりもしました。また、更に細くして、竹ヒ
ゴというものにもしました。竹ヒゴは、しなやかにまが
っても折れることがないので、模型飛行機などの材料に
も使われています。更に、人間は、竹によって弓矢や、
槍も作りました。剣道の竹刀には、今も竹が使われてい
ます。竹は、遊ぶものにも使われました。穴をあけて、
尺八という楽器にもなりました。 長い竹を打ちあわせて
、その上をとんで踊るバンブーダンスにも使われました
。竹馬や竹トンボという子どものおもちゃにもなり、竹
から生まれた「かぐやひめ」というお話も作られました
。エジソンが電球を発明したとき、光を長くもたせるた
めのフィラメントの材料を長い間さがして、とうとう京
都の竹の炭がいちばんいいことを発見しました。こんな
に役に立つ竹は、値段も決してタケーわけではありませ
ん。身の回りに豊富にある材料です。日本人は、昔から
この役に立つ竹を尊敬してきました。だから、おめでた
いことに使われるものは、松竹梅と言いますし、お正月
には門松を立てるのです。また、七夕の日には笹に願い
事を書いた短冊をつるします。子どもの日には、笹の葉
でまいたチマキを食べて、元気に育つことを祈ります。
∵竹もまさか、こんなに人間に利用されるとは思わなか
ったでしょう。しかし、竹はきっと「竹をわったような
性格」ですから、「どんどん工夫していいよ!」と快く
言っているはずです。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなた
の顔が正面から大きく写っている写真を用意します。そ
れから、目のまんなか、鼻、口を通る顔の中心線の上に
鏡を立てます。写真の半分と鏡に映ったその半分とを合
わせると、片方の側だけからできた左右対称の顔になり
ます。鏡の向きを変えると、もう片方の側でも同じこと
ができます。右側だけでできた顔と左側だけでできた顔
とでは、かなりちがった印象を受けます。目の大きさや
ほっぺたの形など、右と左では意外に大きく異なってい
るのです。顔だけではありません。人の体は、左右対称
に思えますが、実は少しちがっていて、手足の長さや筋
肉のつきかたなども同じではないのです。人がまっすぐ
に歩くのは当たり前のようですが、実は目で周りの景色
を確かめながら体の向きをコントロールしています。そ
のため、視界のきかない吹雪のときなど、ただやみくも
に進んでいくと、弱い足の方に少しずつ曲がっていって
しまいます。そして、長い時間歩いたあげく、結局最初
と同じ地点にもどってしまうこともあるのです。内臓で
は、右と左はもっとちがいます。たとえば心臓は体の少
し左側にあります。赤ちゃんを抱くときに、お母さんは
自然と赤ちゃんの頭が心臓の近くにくるように抱きます 。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるとき、お母さ
んの心臓の音をずっと聞いていたので、この音を聞くと
安心するのかもしれません。右と左の違いは、普段の生
活でも役に立ちます。例えば、野球をするとき、右利き
の人は、左手でボールをキャッチし右手でボールを投げ
ます。リンゴの皮をむくときは、左手でリンゴを支え右
手で包丁を動かします。人間の体は、右と左の違いをう
まく生かしているのです。∵ここで一句。「ウインクを
両目でしたらただのまばたき」言葉の森長文作成委員会
(α)日本は世界一の漫画王国とよばれています。大人
向けのものまでふくめると、一年間に七億冊以上の漫画
が出版されています。漫画をもとにして、アニメーショ
ンや映画やテレビ番組もたくさん作られ、いろいろな国
の言葉に翻訳されて、世界中の人気を集めています。 で
は、漫画は、いつの時代からあったのでしょうか。いち
ばん古い漫画は、今から八百年ほど前にかかれたと言わ
れています。それは、京都の高山寺というお寺にある、
「鳥獣人物戯画」という絵です。その中には、人真似を
して遊ぶ動物たちがかかれています。始まりは、動物た
ちの川遊び。川に飛びこむウサギや、泳ぐサル。ウサギ
に背中を流してもらって、気持ちよさそうなサルもいま
す。別の絵には弓矢の練習をしたり、相撲をとって遊ん
だりするカエルやウサギの様子がかかれています。カエ
ルに投げ飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで
、見物のカエルたちが大わらいしている絵もあります。
カエルの仏様にお経をあげているサルのお坊さんの絵も
あります。どの動物も生き生きと描かれ、今にも絵の中
から飛び出してきそうです。この昔の漫画には、セリフ
がかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。し
かし絵の中には、今の漫画に似たところもあります。た
とえば今の漫画では、すばやい動きをあらわすために線
を何本もひき、スピードの出ている様子をあらわします
。鳥獣人物戯画の中にも、同じようなかき方が見られる
のです。こんな昔から、漫画を楽しんでいた日本人。 こ
れからも、たくさんの名作が生まれ、多くの人に愛され
ていくことでしょう。∵漫画は、世界中に自マンガでき
る、日本の宝です。しかし、漫画は絵がわかりやすいの
で、字の多い本は読マンガ、漫画なら読むという生活を
続けていると、次第に読む力が低下してきます。字の多
い本を読む一方で、漫画も楽しく読み、漫画の読み方に
ついても自マンガできる国にしていきましょう。夜の道
を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると
、またどこまでもついてきます。もちろん、キツネやお
化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それ
はお月さまです。月がついてくるのは、電車に乗ってい
ても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、ど
んどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、
近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ
動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山
を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるよう
に見えます。家、電信柱、山、月。これらを比べて違う
のは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、
動かないように見えるのです。月は、わたしたちの地球
を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かん
でいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいで
は、月の位置は変わらないように見えるのです。 もちろ
ん、月よりもっと遠くの太陽でも、同じことが言えます
。あなたがどんなに動いても太陽はついてきます。しか
し、太陽はまぶしすぎて、あまり見上げることはありま
せん。やはり、夜、明るい月が一緒についてくるところ
にこそ、不思議さがあるのでしょう。地球は月の四倍の
大きさです。したがって、もし、月の上を歩きながら地
球を見ると、月よりも四倍大きい、青く美しい地球がつ
いてきます。月と地球のツキあいは、遠くても深いもの
なのです。∵「ねえ、どうしてついてくるの?」「だっ
て、ツキだから。」「では、もし太陽だったら?」「や
っぱり、ついて行きタイヨウ。」「甘えん坊なんだね。
」【1】買ってきた野菜の葉に、いも虫がたくさんつい
ていたらどうしますか。普通は「わあ、いやだ」と急い
で取り除き、野菜をすっかりきれいにしてから調理する
でしょう。【2】しかし世界には、いも虫を見て「わあ
、おいしそう」と感じる人たちもいるのです。 アフリカ
の一部では、ガの幼虫であるいも虫が食用にされていま
す。【3】それらの地域では、キャッサバやトウモロコ
シなどのでんぷん質が食事の中心なので、どうしてもた
んぱく質が不足しがちです。しかし、質のよいたんぱく
源は高価で手に入りにくいのが現状です。【4】ですか
ら、たんぱく質のかたまりであるいも虫は大変貴重な補
助食品なのです。実際、一皿のいも虫は、大人が一日に
必要とするたんぱく質・ビタミン・ミネラルの約四分の
三を含むと言われています。【5】秋の雨の季節が過ぎ
ると、いも虫の収穫が始まります。村の女性たちは、総
出でいも虫を集めます。いも虫は内臓を抜き、ゆでてか
ら天日干しにします。【6】この乾燥いも虫を、おやつ
がわりにそのままポリポリと食べるのです。このいも虫
は、ただおいしいだけではありません。ある意味で、と
ても効率のよい食品でもあるのです。【7】いも虫は、
人間には食べられない有毒の植物でもかまわず食べてく
れます。そしてどんどん肥え太り、わずか六週間で体重
を四千倍に増やします。 【8】その丸々としたおいしそ
うないも虫を、今度は人間が食べるわけです。「いも虫
君、いいねえ。あったかそうな蓑を着て。」「それはミ
ノムシ。」【9】「確か、茶碗に入っているんだよね。
」「それはチャワンムシ。」「ときどき足がかゆくなる
けどね。」「それは、ミズムシ。もう、いいもん。無視
。トライアスロンの競技の歴史はまだ新しく、二十世紀
の後半に最初の大会が開催されました。トライアスロン
とは、ギリシャ語で「三」を意味するトライと、「賞品
」を意味するアスロンを合わせてできた言葉です。その
名のとおり、水泳、ランニング、自転車の三種目を続け
て行ない、その総合タイムを競うレースです。どれか一
つだけでも体力のいるハードな競技ですが、それをひと
りで三つもこなすということで、鉄人レースともよばれ
ています。この競技が生まれたのは、ハワイのオアフ島
でした。海兵隊員たちが、一日の仕事を終えて、ビール
を飲みながらくつろいでいるとき、オアフ島で行なわれ
ている三つの競技のうち、どれがいちばん大変かという
議論になりました。三つの競技というのは、オアフ島一
周の自転車レース、ホノルルマラソン大会、ワイキキビ
ーチでの遠泳大会のことです。だれもが、自分の出場し
た競技こそが最も苦しかったと自慢げに話すので、いく
ら話し合っても答えは出ませんでした。そのとき、ビー
ルを飲んで酔っぱらっていた海軍司令官のジョン・コリ
ンズは、ある提案をしました。この三つの競技を合わせ
て一つの競技にしたらどうかというのです。 まさか本気
で挑戦する者はいないだろうと、コリンズはほんの冗談
のつもりで提案したのですが、実際に競技に参加する人
があらわれました。現在では、日本でも毎年多くの大会
が開かれています。また、二〇〇〇年に行なわれたシド
ニーオリンピックから、トライアスロンは正式種目にな
っています。∵「ぼくも、新しい競技を考えついた。」
「なあに。」「ドッジボールと槍投げと火の輪くぐりを
組み合わせるんだ。」「今度のオリンピックで採用され
るといいね。」だれも出ないと思うけど。チョコレート
、キャンディー、ケーキなど、甘いお菓子を思い浮かべ
るだけで幸せな気分になれる人は多いでしょう。それら
のお菓子を作るのに大切なのが砂糖です。しかし、砂糖
にはほかにもいろいろな働きがあります。 その働きのひ
とつに、カビや微生物が増殖するのを防ぐというものが
あります。カビや微生物は湿ったところ、つまり、水分
のあるところが好きです。砂糖は、食べ物の水分の周り
をおおって、微生物やカビの働きをにぶらせます。ジャ
ムや果物の缶詰などがその例です。果物はほうっておく
と傷んだり腐ったりしますが、砂糖とともに調理するこ
とで長期間保存することができます。水分を抱え込む砂
糖の性質は、生クリームや卵白の泡立てにも一役買って
います。クリームや卵のたんぱく質の水分を砂糖が抱え
込むことによって、泡がくずれるのを防ぎ、また泡同士
がくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリー
ムを作るのには、砂糖が欠かせないのです。肉を煮込む
ときにも、その働きが発揮されます。 調理する前の下準
備の肉に砂糖をすりこんでおくと、軟らかく煮ることが
できます。それは、砂糖が肉のたんぱく質の持つ水分を
肉の中にとどめておくからです。さを作り出す調味料
というイメージの強い砂糖ですが、実際には水分と結び
つきやすい性質が私たちの生活の中でいろいろな役割を
はたしているのです。働き者の砂糖は、縁の下の力持ち
なので、決して「えっへん!」といばっているわけでは
ありません。しかし、ダイエットをさけぶ人たちからは
、かたき扱いされています。「えっ?変?一生懸命働い
ているのに……。」砂糖からそんな声が聞こえてきそう
です。∵「カビ君は、どうして砂糖が苦手なの。」「だ
って、砂糖ってサ、トウっても甘いんだもん。」寝よう
としたら、ブーンという音がして、あわてて灯りをつけ
たことがありませんか。そして、小さな蚊がどこにいる
か見つけようとしたことがあるでしょう。日本では昔、
蚊を防ぐために蚊帳という道具を使っていました。 これ
は、一ミリメートルほどの細かい網でできている四角い
テントのようなもので、部屋の中で四方から吊り下げる
ようになっています。網目が細かいので、蚊は中に入れ
ませんが、涼しい風は通すことができます。昔の日本人
は、蚊の多い暑い夏の夜を、蚊帳の中で風鈴の音を聞き
ながら涼しく過ごしたのです。しかし、昭和の後期にな
ると、殺虫剤や下水道が普及した結果、蚊自体が少なく
なり、蚊帳は次第に使われなくなっていきました。とこ
ろが、今、この蚊帳が再び注目されています。蚊帳は、
電気も薬品も使わない点で、人間にも地球にももちろん
蚊にも優しい道具だと考えられるようになってきたので
す。日本は、マラリヤの被害に悩まされるアフリカ諸国
にたくさんの蚊帳を送っています。これによって多くの
子供たちの命が助かっているそうです。日本ではほとん
ど使われることのなくなった蚊帳も、世界では大活躍を
しているのです。日本人のこれからの役割は、より安く
より安全な蚊帳を世界中に広めることではないでしょう
カ。「ブーン。」「あ、蚊や。蚊帳に入ろう。」 「しま
った。蚊帳に入られたカ。ヤーン。」【1】脊椎動物の
ほとんどは、生まれたときから性別が決まっており、途
中で変化することはありません。ところが、同じ脊椎動
物でも、魚には、オスがメスへ、メスがオスへと変化し
たり、生まれながらにして雌雄同体のものがあります。
【2】オスからメスへ変化するものとして代表的なのは
、クマノミの仲間です。クマノミは、毒を持つイソギン
チャクと一緒に暮らすことで有名です。【3】ひとつの
イソギンチャクに、オスとメス一匹ずつの成魚と、体の
小さな幼魚の数匹で暮らしていることが多いのですが、
この成魚と幼魚の間に、親子関係はありません。 クマノ
ミの稚魚は、卵から孵化すると、すぐに生まれたイソギ
ンチャクを離れ、しばらく海の中で浮遊生活を続けます
。【4】そして、全く別のイソギンチャクにたどりつき
、そこで元から住んでいる縁もゆかりもないクマノミた
ちと共同生活を始めます。これは、親子で繁殖してしま
う危険をさけるための工夫です。【5】同じひとつのイ
ソギンチャクの中に暮らしているクマノミたちは、体の
大きさに違いがあります。群れの中でいちばん大きいの
がメス、次に大きいのがオスです。【6】三番め以降の
魚たちは、オスでもメスでもない未成熟な個体です。卵
を産むのはメスですが、その卵を守るのは、おもにオス
の役目です。【7】何らかの原因で、いちばん大きいメ
スが死んでしまうと、オスが性転換をしてメスになり、
オスの次に大きい未成熟な個体がオスになって繁殖に参
加します。クマノミの世界には、このようにきちんとし
た秩序があります。【8】なぜいちばん大きい個体がメ
スになるかというと、メスは体が大きいほどたくさんの
卵を産むことができるからです。∵【9】「わたし、昨
日までオスだったメスで、名前はクマオよ。」「ぼくは
、今日からオスになった、名前はクマコなんだ。」 「何
だか、呼び方にクマっちゃうね。」なんでもコンパクト
がもてはやされるこのごろですが、犬の世界も例外では
ありません。品種改良の結果、たくさんの犬が小型化さ
れ、今や世界中で飼われています。つまり、コンパクト
な犬はそのほとんどが人工的に作り出されたものなので
す。しかし、天然の小型犬もいます。チワワです。餌代
もかからず、場所もとらず、小さいのに勇敢なこの犬は
、ペットとして大変人気があります。チワワの出身地は
メキシコで、意外にも南国の生まれなのです。実はこの
犬は、もともとテチチという名前で知られていました。
チワワと呼ばれるようになったのは十九世紀の中ごろで
す。メキシコに旅行したアメリカ人が、メキシコのチワ
ワ州でこの小さい犬を見つけ、何匹か持ち帰りました。
そして、土地の名前からチワワと命名したのです。同じ
ころ、メキシコのお妃様がヨーロッパ旅行のお供にこの
犬を連れて行ったため、チワワは世界的に有名になりま
した。チワワは人間が大好きです。人間との接触が多い
ほど元気に育つと言われています。 しかし、注意も必要
です。この犬の大きさからすると、ベッドやソファは高
所ですから、高いところから無造作に飛び降りて骨折し
てしまうことがあります。また、消化器官が小さい上に
カロリーを早く消費するため、血糖値が下がりやすいの
もチワワの特徴です。ですから、少量のえさをたびたび
与えてやる必要があります。震えるのはこの犬の特徴で
す。寒いときだけでなく、興奮したときや心配なとき、
不満があるとき、怖がっているときなどに震えます。小
さいけれど大きな存在感を持つチワワ。もしメキシコへ
旅行することがあったなら、「こんにチワ、ワたしの国
へようこそ」と歓迎してくれるかもしれません。∵「チ
ワワって、おでんに入れるとおいしいんだよね。」「そ
れは、チクワ。」人間は昔から、香りに興味を持ち、香
りの原料つまり香料を探してきました。香料には動物性
のものと植物性のものとがあります。動物性のものとし
ては、ジャコウ鹿からとれるムスクが代表的です。植物
性の香料として一般的なものは、なんと言っても花々で
す。例えば、ブルガリアのダマスクローズは、古くから
貴重な香料とされてきました。この花のエッセンスは高
値で取引され、今でも世界中で愛されています。 しかし
、植物性の香料は花だけではありません。どちらかとい
えばなじみの薄い、しかし大変広く使われている香料、
それがフルーツの一種であるベルガモットです。この果
実のエッセンスは、女性用の香水の約三分の一に、また
男性用のコロンの約半分に入っています。このフルーツ
からとれるエッセンスには、いろいろな香りをまとめて
一つの香りにするという働きがあり、これがほかの香料
にはない特性なのです。ベルガモットはミカン科の植物
で、秋から冬にかけてオレンジほどの大きさの実をつけ
ます。香水になるエッセンスは、この果実の皮からとれ
ます。ベルガモットの主な産地は、イタリア半島のカラ
ブリア地方で、ほかの土地ではほとんど育ちません。と
いうのも、この植物は、暖かくしかも南向きの土地で、
強い風の吹かない、湿度の低いところでないと育たない
からです。 この植物の起源そのものは深いなぞに包まれ
ています。野生のベルガモットというものはなく、この
植物を種から育てることもできません。ベルガモットは
、ほかの柑橘系の木々に挿し木をして育てるしかないの
です。野生のベルガモットがあれば、香水も、もっとヤ
セイものになっていたでしょう。神秘に包まれた香りの
世界。だからこそ、より魅力的なのかもしれません。シ
ロツメクサは、日本人にとても愛されている草花のひと
つです。天気のいい休日になると、シロツメクサが生え
ている場所で、シートを広げてお弁当を食べる家族連れ
の姿を見ることができます。シロツメクサの上は、ふん
わりしていて座り心地がよいのです。お弁当のあとには
、子どもたちは花を編んでかわいい冠にしたり、茎をか
らませて両側から引っ張る草相撲をしたりして遊ぶこと
もできます。私たちになじみの深いシロツメクサですが
、実はもともとは日本ではなく、ヨーロッパが原産の植
物です。江戸時代、ヨーロッパのガラス製品は大変な貴
重品でした。遠くヨーロッパから船でガラス製品を運ん
でくるとき、船がゆれてガラスが割れてしまわないよう
に箱の中につめものとして入れられたものが、このシロ
ツメクサなのです。 つめものの草だからツメクサという
名前がつきました。シロツメクサは生命力の強い植物な
ので、つめものとして日本にやってきて役目を終えたあ
と、ゴミとして捨てられた場所で再び息を吹き返し、次
第に日本中に広がっていきました。今では北海道から沖
縄まで、日本全国で見られるようになっています。シロ
ツメクサのように外国が原産で、何らかの理由で日本に
定着した植物のことを帰化植物と言います。セイヨウタ
ンポポやヒメジョオンなども帰化植物として有名です。
ところで、このシロツメクサの英語名はクローバーです
が、クローバーといえば、四つ葉のクローバーが幸運の
シンボルであることはよく知られています。しかし、四
つ葉を見つけようと思っても、クローバかり多くてなか
なか見つからないことがほとんどです。ところが、世の
中には、五つ葉や六つ葉のクローバーもあるのです。今
までに見つかった最高記録はなんと十八枚葉。 これは日
本で発見され、ギネスブックにも載りました。十八枚葉
のクローバーなんて見つけたら、びっくりして白目をむ
いて倒れてしまいそうです。これぞまさにシロ(ツ)メ
スカートやズボンを買うときは、まずウエストのサイズ
を確かめます。では、地球のウエスト、つまり円周はど
うやって測るのでしょう。現代の科学者たちは、メジャ
ーの代わりに人工衛星を使います。北極と南極を通る二
つの衛星で、地球を外がわから測るのです。そのように
して算出された数値は、約四万八千キロメートル。大変
なウエストサイズです。 しかし、今からおよそ二千二百
年前、すでに地球を測った人がいたのです。エラトステ
ネスは、ギリシャの数学者で天文学者でもありました。
彼の時代には人工衛星などないので、地球が丸いことさ
え知らない人がたくさんいました。もちろん、地球を測
ることのできるほど長い巻尺もありません。エラトステ
ネスが使ったのは、一本の棒きれでした。エジプトのシ
エネという都市にいたときのことです。エラトステネス
は、一年でいちばん昼間の長い夏至の正午に、太陽が真
上に来ることに気づきました。太陽の光が影を作らずに
井戸の底まで届いていたからです。しかし、そこから北
に八百五十キロメートルほど行ったところにあるアレク
サンドリアでは、同じ夏至の日の正午に影が見えたので
す。 そこで、エラトステネスはあることを思いつきます
。彼はまず、アレクサンドリアにまっすぐな棒を立てま
した。正午にその棒が作る影を観察するためです。影の
角度を測ったところ、垂直方向に対して七・二度でした
。エラトステネスは地球が丸いことと円周の全体が三百
六十度であることを知っていました。三百六十を七・二
で割ると五十ですから、棒の角度七・二度は円周の五十
分の一になります。ということは、シエネとアレクサン
ドリアの間の距離も、地球の円周の五十分の一と等しい
はずです。そこで二つの町の距離を五十倍し、地球の円
周は、約四万キロメートルから∵四万六千キロメートル
だという結論に達したのです。それは、驚くほど正確な
数値でした。「エラトステネスさん、棒で測るなんて、
いつ思いついたんですか。」「ぼうっとしているときに
ね。」物を食べると、いろいろな味を感じます。たとえ
ば目かくしをしていても、それが知っている味なら、今
食べたものが何か、当てることができるでしょう。また
、初めて食べたものでも、「塩辛い」とか「甘酸っぱい
」などと、言葉で表すことができます。この味は、いっ
たいどこでどうやって感じているのでしょうか。味を感
じる体の部分は舌である、というのは、よく知られてい
ることです。その証拠に、味見をするときは、ちょっと
舌を出してなめてみます。 この舌をよく見てみると、表
面はなめらかではなく、ざらざらで、更によく見ると小
さなでこぼこやつぶつぶがあります。実は、このつぶつ
ぶが、味蕾と呼ばれるものです。「蕾」というのが「つ
ぼみ」という漢字であることからわかるように、味蕾は
花のつぼみのような形をしています。味蕾は舌の表面だ
けではなく、上あごの奥やのどにもあります。ですから
、舌だけで味を感じているのではないようです。ところ
で、動物の中でも肉食動物は、においをかぎ分ける能力
である嗅覚がとても発達している代わりに、味覚はそれ
ほど優れていません。犬やネコも、この肉食動物の仲間
です。おおざっぱに苦味、酸味、辛味、甘味などはわか
り、苦いものがきらいで甘いものが好きなのは人間と同
じです。肉食動物は、生肉をあっという間に食べてしま
うため、それほどおいしさを味わう必要がなかったので
す。それに対し、いつまでもゆっくりと草を食べている
草食動物は、肉食動物よりは味覚が発達していると言わ
れています。 みなさんの家にも、おいしいものしか食べ
ない、グルメな犬やネコがいるかもしれません。これは
、おいしいものをいろいろもらってしまったので、学習
して「違いがわかる」ようになってしまったのです。現
代の犬たちが、おしゃれなカフェで犬用のケーキを食べ
ているなんて、犬のご先祖のオオカミには、想像もでき
なかったにちがいありません「青菜に塩」ということわ
ざは、ほうれん草などの青い葉に塩をかけると急にしお
れてしまうことから、人が急に元気がなくなってしょん
ぼりする様子をたとえることわざになりました。フライ
パンで青菜を炒めているところを見ると、こぼれんばか
りに山盛りになった青菜がさっと小さくなってしまいま
す。さて、この「青菜に塩」の魔法はどうして起こるの
でしょうか。野菜は、人間と同じようにたくさんの細胞
が集まってできています。ひとつひとつの細胞を包んで
いる細胞膜は、水も塩も通すようになっています。生き
ている細胞膜であれば、細胞の中に入った塩をうまく細
胞の外に排出する機能を持っています。 しかし、死んだ
細胞の場合、塩は細胞内にしみ込んだままになります。
その一方で、細胞からは水が出ていくので、青菜のカサ
がへってしまうのです。この脱水作用をうまく利用した
ものが漬物で、漬物にされた野菜は、もとの大きさより
はるかにしおれて縮んでいます。私たち人間が健康に生
きていくためにも、塩分のバランスは大切です。体の細
胞とそれをつつむ液体の塩分濃度は、腎臓の働きで常に
一定に保たれています。細胞の内と外の圧力が均衡して
いるために、細胞は同じ形を保つことができます。塩辛
いものを食べたあと、のどが渇いてくるのもそのためで
す。また、夏の暑い日に、熱射病にならないために水分
と塩分をとるように注意するのも同じ理由からです。「
漬物さんには、塩が必要なんですね。」「シオうだよ。
」「ちょっと苦しいですね。」「エーン。」ブーン。(
飛んでいっちゃった。)お腹がすいたら花屋さんに入る
、という人はいません。「花より団子」のことわざに見
られるとおり、花は見るものであり食べるものではない
、というのが普通の考え方です。 しかし世の中には、目
や鼻だけでなく、舌まで楽しませてくれる花が数多くあ
るのです。例えば、バラは、美しいだけではなく食用に
もなります。花びらの根元は苦味があるので取り除きま
す。また、花の中心部は食べません。バラの花びらをチ
ーズやナッツ類と合わせてサラダにしたり、刻んだもの
をスパゲッティにふりかけたりするとおいしいのだそう
です。バラを使って、アイスクリームや飲み物に風味を
添えることもできます。また、野菜の花も食用になりま
す。カボチャの花は、すでに十六世紀ごろから南北アメ
リカで食卓に上っていました。しかし、いくらおいしい
からといっても、花を全部食べてしまうとカボチャの実
ができなくなってしまいます。ですから、雌花は残して
雄花だけを食べるのです。レモンやオレンジなど柑橘系
の花は、飲み物に入れたりデザートに添えたりすると、
風味が引き立ちます。春になると、菜の花が八百屋さん
の店頭に並びます。フキノトウやイチジクも、食べると
ころは花の部分です。「花さん。食べられたときの気持
ちはどうですか。」「はあ、なんというか。」「やはり
、見てもらった方がうれしいでしょう。」「はあ、なん
といっても。」「花さんは、きれいですからね。」 「は
あ、なにしろ。」「もっと驚くようなことを言ってくだ
さい。」「ハッ!、なあんてね。」竹は、中に節があっ
て、まるで空き部屋がひとつひとつ区切られているよう
に、空っぽになっています。これは、竹が木の仲間でな
くて、草の仲間だからです。竹は、身のまわりにたくさ
んあるので、大昔から、人間は、この竹を利用する工夫
をしてきました。まず、あいたところにお米をつめて、
蒸す道具にしました。水をつめて、水筒にもしました。
二つにわって、お皿にもしました。 まっすぐにきれいに
割れることから、細くして、ザルやカゴをあんだり、ス
ダレを編んだりもしました。また、更に細くして、竹ヒ
ゴというものにもしました。竹ヒゴは、しなやかにまが
っても折れることがないので、模型飛行機などの材料に
も使われています。更に、人間は、竹によって弓矢や、
槍も作りました。剣道の竹刀には、今も竹が使われてい
ます。竹は、遊ぶものにも使われました。穴をあけて、
尺八という楽器にもなりました。 長い竹を打ちあわせて
、その上をとんで踊るバンブーダンスにも使われました
。竹馬や竹トンボという子どものおもちゃにもなり、竹
から生まれた「かぐやひめ」というお話も作られました
。エジソンが電球を発明したとき、光を長くもたせるた
めのフィラメントの材料を長い間さがして、とうとう京
都の竹の炭がいちばんいいことを発見しました。こんな
に役に立つ竹は、値段も決してタケーわけではありませ
ん。身の回りに豊富にある材料です。日本人は、昔から
この役に立つ竹を尊敬してきました。だから、おめでた
いことに使われるものは、松竹梅と言いますし、お正月
には門松を立てるのです。また、七夕の日には笹に願い
事を書いた短冊をつるします。子どもの日には、笹の葉
でまいたチマキを食べて、元気に育つことを祈ります。
∵竹もまさか、こんなに人間に利用されるとは思わなか
ったでしょう。しかし、竹はきっと「竹をわったような
性格」ですから、「どんどん工夫していいよ!」と快く
言っているはずです。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなた
の顔が正面から大きく写っている写真を用意します。そ
れから、目のまんなか、鼻、口を通る顔の中心線の上に
鏡を立てます。写真の半分と鏡に映ったその半分とを合
わせると、片方の側だけからできた左右対称の顔になり
ます。鏡の向きを変えると、もう片方の側でも同じこと
ができます。右側だけでできた顔と左側だけでできた顔
とでは、かなりちがった印象を受けます。目の大きさや
ほっぺたの形など、右と左では意外に大きく異なってい
るのです。顔だけではありません。人の体は、左右対称
に思えますが、実は少しちがっていて、手足の長さや筋
肉のつきかたなども同じではないのです。人がまっすぐ
に歩くのは当たり前のようですが、実は目で周りの景色
を確かめながら体の向きをコントロールしています。そ
のため、視界のきかない吹雪のときなど、ただやみくも
に進んでいくと、弱い足の方に少しずつ曲がっていって
しまいます。そして、長い時間歩いたあげく、結局最初
と同じ地点にもどってしまうこともあるのです。内臓で
は、右と左はもっとちがいます。たとえば心臓は体の少
し左側にあります。赤ちゃんを抱くときに、お母さんは
自然と赤ちゃんの頭が心臓の近くにくるように抱きます 。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるとき、お母さ
んの心臓の音をずっと聞いていたので、この音を聞くと
安心するのかもしれません。右と左の違いは、普段の生
活でも役に立ちます。例えば、野球をするとき、右利き
の人は、左手でボールをキャッチし右手でボールを投げ
ます。リンゴの皮をむくときは、左手でリンゴを支え右
手で包丁を動かします。人間の体は、右と左の違いをう
まく生かしているのです。∵ここで一句。「ウインクを
両目でしたらただのまばたき」言葉の森長文作成委員会
(α)日本は世界一の漫画王国とよばれています。大人
向けのものまでふくめると、一年間に七億冊以上の漫画
が出版されています。漫画をもとにして、アニメーショ
ンや映画やテレビ番組もたくさん作られ、いろいろな国
の言葉に翻訳されて、世界中の人気を集めています。 で
は、漫画は、いつの時代からあったのでしょうか。いち
ばん古い漫画は、今から八百年ほど前にかかれたと言わ
れています。それは、京都の高山寺というお寺にある、
「鳥獣人物戯画」という絵です。その中には、人真似を
して遊ぶ動物たちがかかれています。始まりは、動物た
ちの川遊び。川に飛びこむウサギや、泳ぐサル。ウサギ
に背中を流してもらって、気持ちよさそうなサルもいま
す。別の絵には弓矢の練習をしたり、相撲をとって遊ん
だりするカエルやウサギの様子がかかれています。カエ
ルに投げ飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで
、見物のカエルたちが大わらいしている絵もあります。
カエルの仏様にお経をあげているサルのお坊さんの絵も
あります。どの動物も生き生きと描かれ、今にも絵の中
から飛び出してきそうです。この昔の漫画には、セリフ
がかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。し
かし絵の中には、今の漫画に似たところもあります。た
とえば今の漫画では、すばやい動きをあらわすために線
を何本もひき、スピードの出ている様子をあらわします
。鳥獣人物戯画の中にも、同じようなかき方が見られる
のです。こんな昔から、漫画を楽しんでいた日本人。 こ
れからも、たくさんの名作が生まれ、多くの人に愛され
ていくことでしょう。∵漫画は、世界中に自マンガでき
る、日本の宝です。しかし、漫画は絵がわかりやすいの
で、字の多い本は読マンガ、漫画なら読むという生活を
続けていると、次第に読む力が低下してきます。字の多
い本を読む一方で、漫画も楽しく読み、漫画の読み方に
ついても自マンガできる国にしていきましょう。夜の道
を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると
、またどこまでもついてきます。もちろん、キツネやお
化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それ
はお月さまです。月がついてくるのは、電車に乗ってい
ても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、ど
んどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、
近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ
動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山
を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるよう
に見えます。家、電信柱、山、月。これらを比べて違う
のは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、
動かないように見えるのです。月は、わたしたちの地球
を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かん
でいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいで
は、月の位置は変わらないように見えるのです。 もちろ
ん、月よりもっと遠くの太陽でも、同じことが言えます
。あなたがどんなに動いても太陽はついてきます。しか
し、太陽はまぶしすぎて、あまり見上げることはありま
せん。やはり、夜、明るい月が一緒についてくるところ
にこそ、不思議さがあるのでしょう。地球は月の四倍の
大きさです。したがって、もし、月の上を歩きながら地
球を見ると、月よりも四倍大きい、青く美しい地球がつ
いてきます。月と地球のツキあいは、遠くても深いもの
なのです。∵「ねえ、どうしてついてくるの?」「だっ
て、ツキだから。」「では、もし太陽だったら?」「や
っぱり、ついて行きタイヨウ。」「甘えん坊なんだね。
」【1】買ってきた野菜の葉に、いも虫がたくさんつい
ていたらどうしますか。普通は「わあ、いやだ」と急い
で取り除き、野菜をすっかりきれいにしてから調理する
でしょう。【2】しかし世界には、いも虫を見て「わあ
、おいしそう」と感じる人たちもいるのです。 アフリカ
の一部では、ガの幼虫であるいも虫が食用にされていま
す。【3】それらの地域では、キャッサバやトウモロコ
シなどのでんぷん質が食事の中心なので、どうしてもた
んぱく質が不足しがちです。しかし、質のよいたんぱく
源は高価で手に入りにくいのが現状です。【4】ですか
ら、たんぱく質のかたまりであるいも虫は大変貴重な補
助食品なのです。実際、一皿のいも虫は、大人が一日に
必要とするたんぱく質・ビタミン・ミネラルの約四分の
三を含むと言われています。【5】秋の雨の季節が過ぎ
ると、いも虫の収穫が始まります。村の女性たちは、総
出でいも虫を集めます。いも虫は内臓を抜き、ゆでてか
ら天日干しにします。【6】この乾燥いも虫を、おやつ
がわりにそのままポリポリと食べるのです。このいも虫
は、ただおいしいだけではありません。ある意味で、と
ても効率のよい食品でもあるのです。【7】いも虫は、
人間には食べられない有毒の植物でもかまわず食べてく
れます。そしてどんどん肥え太り、わずか六週間で体重
を四千倍に増やします。 【8】その丸々としたおいしそ
うないも虫を、今度は人間が食べるわけです。「いも虫
君、いいねえ。あったかそうな蓑を着て。」「それはミ
ノムシ。」【9】「確か、茶碗に入っているんだよね。
」「それはチャワンムシ。」「ときどき足がかゆくなる
けどね。」「それは、ミズムシ。もう、いいもん。無視
。トライアスロンの競技の歴史はまだ新しく、二十世紀
の後半に最初の大会が開催されました。トライアスロン
とは、ギリシャ語で「三」を意味するトライと、「賞品
」を意味するアスロンを合わせてできた言葉です。その
名のとおり、水泳、ランニング、自転車の三種目を続け
て行ない、その総合タイムを競うレースです。どれか一
つだけでも体力のいるハードな競技ですが、それをひと
りで三つもこなすということで、鉄人レースともよばれ
ています。この競技が生まれたのは、ハワイのオアフ島
でした。海兵隊員たちが、一日の仕事を終えて、ビール
を飲みながらくつろいでいるとき、オアフ島で行なわれ
ている三つの競技のうち、どれがいちばん大変かという
議論になりました。三つの競技というのは、オアフ島一
周の自転車レース、ホノルルマラソン大会、ワイキキビ
ーチでの遠泳大会のことです。だれもが、自分の出場し
た競技こそが最も苦しかったと自慢げに話すので、いく
ら話し合っても答えは出ませんでした。そのとき、ビー
ルを飲んで酔っぱらっていた海軍司令官のジョン・コリ
ンズは、ある提案をしました。この三つの競技を合わせ
て一つの競技にしたらどうかというのです。 まさか本気
で挑戦する者はいないだろうと、コリンズはほんの冗談
のつもりで提案したのですが、実際に競技に参加する人
があらわれました。現在では、日本でも毎年多くの大会
が開かれています。また、二〇〇〇年に行なわれたシド
ニーオリンピックから、トライアスロンは正式種目にな
っています。∵「ぼくも、新しい競技を考えついた。」
「なあに。」「ドッジボールと槍投げと火の輪くぐりを
組み合わせるんだ。」「今度のオリンピックで採用され
るといいね。」だれも出ないと思うけど。チョコレート
、キャンディー、ケーキなど、甘いお菓子を思い浮かべ
るだけで幸せな気分になれる人は多いでしょう。それら
のお菓子を作るのに大切なのが砂糖です。しかし、砂糖
にはほかにもいろいろな働きがあります。 その働きのひ
とつに、カビや微生物が増殖するのを防ぐというものが
あります。カビや微生物は湿ったところ、つまり、水分
のあるところが好きです。砂糖は、食べ物の水分の周り
をおおって、微生物やカビの働きをにぶらせます。ジャ
ムや果物の缶詰などがその例です。果物はほうっておく
と傷んだり腐ったりしますが、砂糖とともに調理するこ
とで長期間保存することができます。水分を抱え込む砂
糖の性質は、生クリームや卵白の泡立てにも一役買って
います。クリームや卵のたんぱく質の水分を砂糖が抱え
込むことによって、泡がくずれるのを防ぎ、また泡同士
がくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリー
ムを作るのには、砂糖が欠かせないのです。肉を煮込む
ときにも、その働きが発揮されます。 調理する前の下準
備の肉に砂糖をすりこんでおくと、軟らかく煮ることが
できます。それは、砂糖が肉のたんぱく質の持つ水分を
肉の中にとどめておくからです。さを作り出す調味料
というイメージの強い砂糖ですが、実際には水分と結び
つきやすい性質が私たちの生活の中でいろいろな役割を
はたしているのです。働き者の砂糖は、縁の下の力持ち
なので、決して「えっへん!」といばっているわけでは
ありません。しかし、ダイエットをさけぶ人たちからは
、かたき扱いされています。「えっ?変?一生懸命働い
ているのに……。」砂糖からそんな声が聞こえてきそう
です。∵「カビ君は、どうして砂糖が苦手なの。」「だ
って、砂糖ってサ、トウっても甘いんだもん。」寝よう
としたら、ブーンという音がして、あわてて灯りをつけ
たことがありませんか。そして、小さな蚊がどこにいる
か見つけようとしたことがあるでしょう。日本では昔、
蚊を防ぐために蚊帳という道具を使っていました。 これ
は、一ミリメートルほどの細かい網でできている四角い
テントのようなもので、部屋の中で四方から吊り下げる
ようになっています。網目が細かいので、蚊は中に入れ
ませんが、涼しい風は通すことができます。昔の日本人
は、蚊の多い暑い夏の夜を、蚊帳の中で風鈴の音を聞き
ながら涼しく過ごしたのです。しかし、昭和の後期にな
ると、殺虫剤や下水道が普及した結果、蚊自体が少なく
なり、蚊帳は次第に使われなくなっていきました。とこ
ろが、今、この蚊帳が再び注目されています。蚊帳は、
電気も薬品も使わない点で、人間にも地球にももちろん
蚊にも優しい道具だと考えられるようになってきたので
す。日本は、マラリヤの被害に悩まされるアフリカ諸国
にたくさんの蚊帳を送っています。これによって多くの
子供たちの命が助かっているそうです。日本ではほとん
ど使われることのなくなった蚊帳も、世界では大活躍を
しているのです。日本人のこれからの役割は、より安く
より安全な蚊帳を世界中に広めることではないでしょう
カ。「ブーン。」「あ、蚊や。蚊帳に入ろう。」 「しま
った。蚊帳に入られたカ。ヤーン。」【1】脊椎動物の
ほとんどは、生まれたときから性別が決まっており、途
中で変化することはありません。ところが、同じ脊椎動
物でも、魚には、オスがメスへ、メスがオスへと変化し
たり、生まれながらにして雌雄同体のものがあります。
【2】オスからメスへ変化するものとして代表的なのは
、クマノミの仲間です。クマノミは、毒を持つイソギン
チャクと一緒に暮らすことで有名です。【3】ひとつの
イソギンチャクに、オスとメス一匹ずつの成魚と、体の
小さな幼魚の数匹で暮らしていることが多いのですが、
この成魚と幼魚の間に、親子関係はありません。 クマノ
ミの稚魚は、卵から孵化すると、すぐに生まれたイソギ
ンチャクを離れ、しばらく海の中で浮遊生活を続けます
。【4】そして、全く別のイソギンチャクにたどりつき
、そこで元から住んでいる縁もゆかりもないクマノミた
ちと共同生活を始めます。これは、親子で繁殖してしま
う危険をさけるための工夫です。【5】同じひとつのイ
ソギンチャクの中に暮らしているクマノミたちは、体の
大きさに違いがあります。群れの中でいちばん大きいの
がメス、次に大きいのがオスです。【6】三番め以降の
魚たちは、オスでもメスでもない未成熟な個体です。卵
を産むのはメスですが、その卵を守るのは、おもにオス
の役目です。【7】何らかの原因で、いちばん大きいメ
スが死んでしまうと、オスが性転換をしてメスになり、
オスの次に大きい未成熟な個体がオスになって繁殖に参
加します。クマノミの世界には、このようにきちんとし
た秩序があります。【8】なぜいちばん大きい個体がメ
スになるかというと、メスは体が大きいほどたくさんの
卵を産むことができるからです。∵【9】「わたし、昨
日までオスだったメスで、名前はクマオよ。」「ぼくは
、今日からオスになった、名前はクマコなんだ。」 「何
だか、呼び方にクマっちゃうね。」なんでもコンパクト
がもてはやされるこのごろですが、犬の世界も例外では
ありません。品種改良の結果、たくさんの犬が小型化さ
れ、今や世界中で飼われています。つまり、コンパクト
な犬はそのほとんどが人工的に作り出されたものなので
す。しかし、天然の小型犬もいます。チワワです。餌代
もかからず、場所もとらず、小さいのに勇敢なこの犬は
、ペットとして大変人気があります。チワワの出身地は
メキシコで、意外にも南国の生まれなのです。実はこの
犬は、もともとテチチという名前で知られていました。
チワワと呼ばれるようになったのは十九世紀の中ごろで
す。メキシコに旅行したアメリカ人が、メキシコのチワ
ワ州でこの小さい犬を見つけ、何匹か持ち帰りました。
そして、土地の名前からチワワと命名したのです。同じ
ころ、メキシコのお妃様がヨーロッパ旅行のお供にこの
犬を連れて行ったため、チワワは世界的に有名になりま
した。チワワは人間が大好きです。人間との接触が多い
ほど元気に育つと言われています。 しかし、注意も必要
です。この犬の大きさからすると、ベッドやソファは高
所ですから、高いところから無造作に飛び降りて骨折し
てしまうことがあります。また、消化器官が小さい上に
カロリーを早く消費するため、血糖値が下がりやすいの
もチワワの特徴です。ですから、少量のえさをたびたび
与えてやる必要があります。震えるのはこの犬の特徴で
す。寒いときだけでなく、興奮したときや心配なとき、
不満があるとき、怖がっているときなどに震えます。小
さいけれど大きな存在感を持つチワワ。もしメキシコへ
旅行することがあったなら、「こんにチワ、ワたしの国
へようこそ」と歓迎してくれるかもしれません。∵「チ
ワワって、おでんに入れるとおいしいんだよね。」「そ
れは、チクワ。」人間は昔から、香りに興味を持ち、香
りの原料つまり香料を探してきました。香料には動物性
のものと植物性のものとがあります。動物性のものとし
ては、ジャコウ鹿からとれるムスクが代表的です。植物
性の香料として一般的なものは、なんと言っても花々で
す。例えば、ブルガリアのダマスクローズは、古くから
貴重な香料とされてきました。この花のエッセンスは高
値で取引され、今でも世界中で愛されています。 しかし
、植物性の香料は花だけではありません。どちらかとい
えばなじみの薄い、しかし大変広く使われている香料、
それがフルーツの一種であるベルガモットです。この果
実のエッセンスは、女性用の香水の約三分の一に、また
男性用のコロンの約半分に入っています。このフルーツ
からとれるエッセンスには、いろいろな香りをまとめて
一つの香りにするという働きがあり、これがほかの香料
にはない特性なのです。ベルガモットはミカン科の植物
で、秋から冬にかけてオレンジほどの大きさの実をつけ
ます。香水になるエッセンスは、この果実の皮からとれ
ます。ベルガモットの主な産地は、イタリア半島のカラ
ブリア地方で、ほかの土地ではほとんど育ちません。と
いうのも、この植物は、暖かくしかも南向きの土地で、
強い風の吹かない、湿度の低いところでないと育たない
からです。 この植物の起源そのものは深いなぞに包まれ
ています。野生のベルガモットというものはなく、この
植物を種から育てることもできません。ベルガモットは
、ほかの柑橘系の木々に挿し木をして育てるしかないの
です。野生のベルガモットがあれば、香水も、もっとヤ
セイものになっていたでしょう。神秘に包まれた香りの
世界。だからこそ、より魅力的なのかもしれません。シ
ロツメクサは、日本人にとても愛されている草花のひと
つです。天気のいい休日になると、シロツメクサが生え
ている場所で、シートを広げてお弁当を食べる家族連れ
の姿を見ることができます。シロツメクサの上は、ふん
わりしていて座り心地がよいのです。お弁当のあとには
、子どもたちは花を編んでかわいい冠にしたり、茎をか
らませて両側から引っ張る草相撲をしたりして遊ぶこと
もできます。私たちになじみの深いシロツメクサですが
、実はもともとは日本ではなく、ヨーロッパが原産の植
物です。江戸時代、ヨーロッパのガラス製品は大変な貴
重品でした。遠くヨーロッパから船でガラス製品を運ん
でくるとき、船がゆれてガラスが割れてしまわないよう
に箱の中につめものとして入れられたものが、このシロ
ツメクサなのです。 つめものの草だからツメクサという
名前がつきました。シロツメクサは生命力の強い植物な
ので、つめものとして日本にやってきて役目を終えたあ
と、ゴミとして捨てられた場所で再び息を吹き返し、次
第に日本中に広がっていきました。今では北海道から沖
縄まで、日本全国で見られるようになっています。シロ
ツメクサのように外国が原産で、何らかの理由で日本に
定着した植物のことを帰化植物と言います。セイヨウタ
ンポポやヒメジョオンなども帰化植物として有名です。
ところで、このシロツメクサの英語名はクローバーです
が、クローバーといえば、四つ葉のクローバーが幸運の
シンボルであることはよく知られています。しかし、四
つ葉を見つけようと思っても、クローバかり多くてなか
なか見つからないことがほとんどです。ところが、世の
中には、五つ葉や六つ葉のクローバーもあるのです。今
までに見つかった最高記録はなんと十八枚葉。 これは日
本で発見され、ギネスブックにも載りました。十八枚葉
のクローバーなんて見つけたら、びっくりして白目をむ
いて倒れてしまいそうです。これぞまさにシロ(ツ)メ
スカートやズボンを買うときは、まずウエストのサイズ
を確かめます。では、地球のウエスト、つまり円周はど
うやって測るのでしょう。現代の科学者たちは、メジャ
ーの代わりに人工衛星を使います。北極と南極を通る二
つの衛星で、地球を外がわから測るのです。そのように
して算出された数値は、約四万八千キロメートル。大変
なウエストサイズです。 しかし、今からおよそ二千二百
年前、すでに地球を測った人がいたのです。エラトステ
ネスは、ギリシャの数学者で天文学者でもありました。
彼の時代には人工衛星などないので、地球が丸いことさ
え知らない人がたくさんいました。もちろん、地球を測
ることのできるほど長い巻尺もありません。エラトステ
ネスが使ったのは、一本の棒きれでした。エジプトのシ
エネという都市にいたときのことです。エラトステネス
は、一年でいちばん昼間の長い夏至の正午に、太陽が真
上に来ることに気づきました。太陽の光が影を作らずに
井戸の底まで届いていたからです。しかし、そこから北
に八百五十キロメートルほど行ったところにあるアレク
サンドリアでは、同じ夏至の日の正午に影が見えたので
す。 そこで、エラトステネスはあることを思いつきます
。彼はまず、アレクサンドリアにまっすぐな棒を立てま
した。正午にその棒が作る影を観察するためです。影の
角度を測ったところ、垂直方向に対して七・二度でした
。エラトステネスは地球が丸いことと円周の全体が三百
六十度であることを知っていました。三百六十を七・二
で割ると五十ですから、棒の角度七・二度は円周の五十
分の一になります。ということは、シエネとアレクサン
ドリアの間の距離も、地球の円周の五十分の一と等しい
はずです。そこで二つの町の距離を五十倍し、地球の円
周は、約四万キロメートルから∵四万六千キロメートル
だという結論に達したのです。それは、驚くほど正確な
数値でした。「エラトステネスさん、棒で測るなんて、
いつ思いついたんですか。」「ぼうっとしているときに
ね。」物を食べると、いろいろな味を感じます。たとえ
ば目かくしをしていても、それが知っている味なら、今
食べたものが何か、当てることができるでしょう。また
、初めて食べたものでも、「塩辛い」とか「甘酸っぱい
」などと、言葉で表すことができます。この味は、いっ
たいどこでどうやって感じているのでしょうか。味を感
じる体の部分は舌である、というのは、よく知られてい
ることです。その証拠に、味見をするときは、ちょっと
舌を出してなめてみます。 この舌をよく見てみると、表
面はなめらかではなく、ざらざらで、更によく見ると小
さなでこぼこやつぶつぶがあります。実は、このつぶつ
ぶが、味蕾と呼ばれるものです。「蕾」というのが「つ
ぼみ」という漢字であることからわかるように、味蕾は
花のつぼみのような形をしています。味蕾は舌の表面だ
けではなく、上あごの奥やのどにもあります。ですから
、舌だけで味を感じているのではないようです。ところ
で、動物の中でも肉食動物は、においをかぎ分ける能力
である嗅覚がとても発達している代わりに、味覚はそれ
ほど優れていません。犬やネコも、この肉食動物の仲間
です。おおざっぱに苦味、酸味、辛味、甘味などはわか
り、苦いものがきらいで甘いものが好きなのは人間と同
じです。肉食動物は、生肉をあっという間に食べてしま
うため、それほどおいしさを味わう必要がなかったので
す。それに対し、いつまでもゆっくりと草を食べている
草食動物は、肉食動物よりは味覚が発達していると言わ
れています。 みなさんの家にも、おいしいものしか食べ
ない、グルメな犬やネコがいるかもしれません。これは
、おいしいものをいろいろもらってしまったので、学習
して「違いがわかる」ようになってしまったのです。現
代の犬たちが、おしゃれなカフェで犬用のケーキを食べ
ているなんて、犬のご先祖のオオカミには、想像もでき
なかったにちがいありません「青菜に塩」ということわ
ざは、ほうれん草などの青い葉に塩をかけると急にしお
れてしまうことから、人が急に元気がなくなってしょん
ぼりする様子をたとえることわざになりました。フライ
パンで青菜を炒めているところを見ると、こぼれんばか
りに山盛りになった青菜がさっと小さくなってしまいま
す。さて、この「青菜に塩」の魔法はどうして起こるの
でしょうか。野菜は、人間と同じようにたくさんの細胞
が集まってできています。ひとつひとつの細胞を包んで
いる細胞膜は、水も塩も通すようになっています。生き
ている細胞膜であれば、細胞の中に入った塩をうまく細
胞の外に排出する機能を持っています。 しかし、死んだ
細胞の場合、塩は細胞内にしみ込んだままになります。
その一方で、細胞からは水が出ていくので、青菜のカサ
がへってしまうのです。この脱水作用をうまく利用した
ものが漬物で、漬物にされた野菜は、もとの大きさより
はるかにしおれて縮んでいます。私たち人間が健康に生
きていくためにも、塩分のバランスは大切です。体の細
胞とそれをつつむ液体の塩分濃度は、腎臓の働きで常に
一定に保たれています。細胞の内と外の圧力が均衡して
いるために、細胞は同じ形を保つことができます。塩辛
いものを食べたあと、のどが渇いてくるのもそのためで
す。また、夏の暑い日に、熱射病にならないために水分
と塩分をとるように注意するのも同じ理由からです。「
漬物さんには、塩が必要なんですね。」「シオうだよ。
」「ちょっと苦しいですね。」「エーン。」ブーン。(
飛んでいっちゃった。)お腹がすいたら花屋さんに入る
、という人はいません。「花より団子」のことわざに見
られるとおり、花は見るものであり食べるものではない
、というのが普通の考え方です。 しかし世の中には、目
や鼻だけでなく、舌まで楽しませてくれる花が数多くあ
るのです。例えば、バラは、美しいだけではなく食用に
もなります。花びらの根元は苦味があるので取り除きま
す。また、花の中心部は食べません。バラの花びらをチ
ーズやナッツ類と合わせてサラダにしたり、刻んだもの
をスパゲッティにふりかけたりするとおいしいのだそう
です。バラを使って、アイスクリームや飲み物に風味を
添えることもできます。また、野菜の花も食用になりま
す。カボチャの花は、すでに十六世紀ごろから南北アメ
リカで食卓に上っていました。しかし、いくらおいしい
からといっても、花を全部食べてしまうとカボチャの実
ができなくなってしまいます。ですから、雌花は残して
雄花だけを食べるのです。レモンやオレンジなど柑橘系
の花は、飲み物に入れたりデザートに添えたりすると、
風味が引き立ちます。春になると、菜の花が八百屋さん
の店頭に並びます。フキノトウやイチジクも、食べると
ころは花の部分です。「花さん。食べられたときの気持
ちはどうですか。」「はあ、なんというか。」「やはり
、見てもらった方がうれしいでしょう。」「はあ、なん
といっても。」「花さんは、きれいですからね。」 「は
あ、なにしろ。」「もっと驚くようなことを言ってくだ
さい。」「ハッ!、なあんてね。」竹は、中に節があっ
て、まるで空き部屋がひとつひとつ区切られているよう
に、空っぽになっています。これは、竹が木の仲間でな
くて、草の仲間だからです。竹は、身のまわりにたくさ
んあるので、大昔から、人間は、この竹を利用する工夫
をしてきました。まず、あいたところにお米をつめて、
蒸す道具にしました。水をつめて、水筒にもしました。
二つにわって、お皿にもしました。 まっすぐにきれいに
割れることから、細くして、ザルやカゴをあんだり、ス
ダレを編んだりもしました。また、更に細くして、竹ヒ
ゴというものにもしました。竹ヒゴは、しなやかにまが
っても折れることがないので、模型飛行機などの材料に
も使われています。更に、人間は、竹によって弓矢や、
槍も作りました。剣道の竹刀には、今も竹が使われてい
ます。竹は、遊ぶものにも使われました。穴をあけて、
尺八という楽器にもなりました。 長い竹を打ちあわせて
、その上をとんで踊るバンブーダンスにも使われました
。竹馬や竹トンボという子どものおもちゃにもなり、竹
から生まれた「かぐやひめ」というお話も作られました
。エジソンが電球を発明したとき、光を長くもたせるた
めのフィラメントの材料を長い間さがして、とうとう京
都の竹の炭がいちばんいいことを発見しました。こんな
に役に立つ竹は、値段も決してタケーわけではありませ
ん。身の回りに豊富にある材料です。日本人は、昔から
この役に立つ竹を尊敬してきました。だから、おめでた
いことに使われるものは、松竹梅と言いますし、お正月
には門松を立てるのです。また、七夕の日には笹に願い
事を書いた短冊をつるします。子どもの日には、笹の葉
でまいたチマキを食べて、元気に育つことを祈ります。
∵竹もまさか、こんなに人間に利用されるとは思わなか
ったでしょう。しかし、竹はきっと「竹をわったような
性格」ですから、「どんどん工夫していいよ!」と快く
言っているはずです。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなた
の顔が正面から大きく写っている写真を用意します。そ
れから、目のまんなか、鼻、口を通る顔の中心線の上に
鏡を立てます。写真の半分と鏡に映ったその半分とを合
わせると、片方の側だけからできた左右対称の顔になり
ます。鏡の向きを変えると、もう片方の側でも同じこと
ができます。右側だけでできた顔と左側だけでできた顔
とでは、かなりちがった印象を受けます。目の大きさや
ほっぺたの形など、右と左では意外に大きく異なってい
るのです。顔だけではありません。人の体は、左右対称
に思えますが、実は少しちがっていて、手足の長さや筋
肉のつきかたなども同じではないのです。人がまっすぐ
に歩くのは当たり前のようですが、実は目で周りの景色
を確かめながら体の向きをコントロールしています。そ
のため、視界のきかない吹雪のときなど、ただやみくも
に進んでいくと、弱い足の方に少しずつ曲がっていって
しまいます。そして、長い時間歩いたあげく、結局最初
と同じ地点にもどってしまうこともあるのです。内臓で
は、右と左はもっとちがいます。たとえば心臓は体の少
し左側にあります。赤ちゃんを抱くときに、お母さんは
自然と赤ちゃんの頭が心臓の近くにくるように抱きます 。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるとき、お母さ
んの心臓の音をずっと聞いていたので、この音を聞くと
安心するのかもしれません。右と左の違いは、普段の生
活でも役に立ちます。例えば、野球をするとき、右利き
の人は、左手でボールをキャッチし右手でボールを投げ
ます。リンゴの皮をむくときは、左手でリンゴを支え右
手で包丁を動かします。人間の体は、右と左の違いをう
まく生かしているのです。∵ここで一句。「ウインクを
両目でしたらただのまばたき」言葉の森長文作成委員会
(α)日本は世界一の漫画王国とよばれています。大人
向けのものまでふくめると、一年間に七億冊以上の漫画
が出版されています。漫画をもとにして、アニメーショ
ンや映画やテレビ番組もたくさん作られ、いろいろな国
の言葉に翻訳されて、世界中の人気を集めています。 で
は、漫画は、いつの時代からあったのでしょうか。いち
ばん古い漫画は、今から八百年ほど前にかかれたと言わ
れています。それは、京都の高山寺というお寺にある、
「鳥獣人物戯画」という絵です。その中には、人真似を
して遊ぶ動物たちがかかれています。始まりは、動物た
ちの川遊び。川に飛びこむウサギや、泳ぐサル。ウサギ
に背中を流してもらって、気持ちよさそうなサルもいま
す。別の絵には弓矢の練習をしたり、相撲をとって遊ん
だりするカエルやウサギの様子がかかれています。カエ
ルに投げ飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで
、見物のカエルたちが大わらいしている絵もあります。
カエルの仏様にお経をあげているサルのお坊さんの絵も
あります。どの動物も生き生きと描かれ、今にも絵の中
から飛び出してきそうです。この昔の漫画には、セリフ
がかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。し
かし絵の中には、今の漫画に似たところもあります。た
とえば今の漫画では、すばやい動きをあらわすために線
を何本もひき、スピードの出ている様子をあらわします
。鳥獣人物戯画の中にも、同じようなかき方が見られる
のです。こんな昔から、漫画を楽しんでいた日本人。 こ
れからも、たくさんの名作が生まれ、多くの人に愛され
ていくことでしょう。∵漫画は、世界中に自マンガでき
る、日本の宝です。しかし、漫画は絵がわかりやすいの
で、字の多い本は読マンガ、漫画なら読むという生活を
続けていると、次第に読む力が低下してきます。字の多
い本を読む一方で、漫画も楽しく読み、漫画の読み方に
ついても自マンガできる国にしていきましょう。夜の道
を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると
、またどこまでもついてきます。もちろん、キツネやお
化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それ
はお月さまです。月がついてくるのは、電車に乗ってい
ても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、ど
んどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、
近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ
動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山
を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるよう
に見えます。家、電信柱、山、月。これらを比べて違う
のは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、
動かないように見えるのです。月は、わたしたちの地球
を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かん
でいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいで
は、月の位置は変わらないように見えるのです。 もちろ
ん、月よりもっと遠くの太陽でも、同じことが言えます
。あなたがどんなに動いても太陽はついてきます。しか
し、太陽はまぶしすぎて、あまり見上げることはありま
せん。やはり、夜、明るい月が一緒についてくるところ
にこそ、不思議さがあるのでしょう。地球は月の四倍の
大きさです。したがって、もし、月の上を歩きながら地
球を見ると、月よりも四倍大きい、青く美しい地球がつ
いてきます。月と地球のツキあいは、遠くても深いもの
なのです。∵「ねえ、どうしてついてくるの?」「だっ
て、ツキだから。」「では、もし太陽だったら?」「や
っぱり、ついて行きタイヨウ。」「甘えん坊なんだね。
」【1】買ってきた野菜の葉に、いも虫がたくさんつい
ていたらどうしますか。普通は「わあ、いやだ」と急い
で取り除き、野菜をすっかりきれいにしてから調理する
でしょう。【2】しかし世界には、いも虫を見て「わあ
、おいしそう」と感じる人たちもいるのです。 アフリカ
の一部では、ガの幼虫であるいも虫が食用にされていま
す。【3】それらの地域では、キャッサバやトウモロコ
シなどのでんぷん質が食事の中心なので、どうしてもた
んぱく質が不足しがちです。しかし、質のよいたんぱく
源は高価で手に入りにくいのが現状です。【4】ですか
ら、たんぱく質のかたまりであるいも虫は大変貴重な補
助食品なのです。実際、一皿のいも虫は、大人が一日に
必要とするたんぱく質・ビタミン・ミネラルの約四分の
三を含むと言われています。【5】秋の雨の季節が過ぎ
ると、いも虫の収穫が始まります。村の女性たちは、総
出でいも虫を集めます。いも虫は内臓を抜き、ゆでてか
ら天日干しにします。【6】この乾燥いも虫を、おやつ
がわりにそのままポリポリと食べるのです。このいも虫
は、ただおいしいだけではありません。ある意味で、と
ても効率のよい食品でもあるのです。【7】いも虫は、
人間には食べられない有毒の植物でもかまわず食べてく
れます。そしてどんどん肥え太り、わずか六週間で体重
を四千倍に増やします。 【8】その丸々としたおいしそ
うないも虫を、今度は人間が食べるわけです。「いも虫
君、いいねえ。あったかそうな蓑を着て。」「それはミ
ノムシ。」【9】「確か、茶碗に入っているんだよね。
」「それはチャワンムシ。」「ときどき足がかゆくなる
けどね。」「それは、ミズムシ。もう、いいもん。無視
。トライアスロンの競技の歴史はまだ新しく、二十世紀
の後半に最初の大会が開催されました。トライアスロン
とは、ギリシャ語で「三」を意味するトライと、「賞品
」を意味するアスロンを合わせてできた言葉です。その
名のとおり、水泳、ランニング、自転車の三種目を続け
て行ない、その総合タイムを競うレースです。どれか一
つだけでも体力のいるハードな競技ですが、それをひと
りで三つもこなすということで、鉄人レースともよばれ
ています。この競技が生まれたのは、ハワイのオアフ島
でした。海兵隊員たちが、一日の仕事を終えて、ビール
を飲みながらくつろいでいるとき、オアフ島で行なわれ
ている三つの競技のうち、どれがいちばん大変かという
議論になりました。三つの競技というのは、オアフ島一
周の自転車レース、ホノルルマラソン大会、ワイキキビ
ーチでの遠泳大会のことです。だれもが、自分の出場し
た競技こそが最も苦しかったと自慢げに話すので、いく
ら話し合っても答えは出ませんでした。そのとき、ビー
ルを飲んで酔っぱらっていた海軍司令官のジョン・コリ
ンズは、ある提案をしました。この三つの競技を合わせ
て一つの競技にしたらどうかというのです。 まさか本気
で挑戦する者はいないだろうと、コリンズはほんの冗談
のつもりで提案したのですが、実際に競技に参加する人
があらわれました。現在では、日本でも毎年多くの大会
が開かれています。また、二〇〇〇年に行なわれたシド
ニーオリンピックから、トライアスロンは正式種目にな
っています。∵「ぼくも、新しい競技を考えついた。」
「なあに。」「ドッジボールと槍投げと火の輪くぐりを
組み合わせるんだ。」「今度のオリンピックで採用され
るといいね。」だれも出ないと思うけど。チョコレート
、キャンディー、ケーキなど、甘いお菓子を思い浮かべ
るだけで幸せな気分になれる人は多いでしょう。それら
のお菓子を作るのに大切なのが砂糖です。しかし、砂糖
にはほかにもいろいろな働きがあります。 その働きのひ
とつに、カビや微生物が増殖するのを防ぐというものが
あります。カビや微生物は湿ったところ、つまり、水分
のあるところが好きです。砂糖は、食べ物の水分の周り
をおおって、微生物やカビの働きをにぶらせます。ジャ
ムや果物の缶詰などがその例です。果物はほうっておく
と傷んだり腐ったりしますが、砂糖とともに調理するこ
とで長期間保存することができます。水分を抱え込む砂
糖の性質は、生クリームや卵白の泡立てにも一役買って
います。クリームや卵のたんぱく質の水分を砂糖が抱え
込むことによって、泡がくずれるのを防ぎ、また泡同士
がくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリー
ムを作るのには、砂糖が欠かせないのです。肉を煮込む
ときにも、その働きが発揮されます。 調理する前の下準
備の肉に砂糖をすりこんでおくと、軟らかく煮ることが
できます。それは、砂糖が肉のたんぱく質の持つ水分を
肉の中にとどめておくからです。さを作り出す調味料
というイメージの強い砂糖ですが、実際には水分と結び
つきやすい性質が私たちの生活の中でいろいろな役割を
はたしているのです。働き者の砂糖は、縁の下の力持ち
なので、決して「えっへん!」といばっているわけでは
ありません。しかし、ダイエットをさけぶ人たちからは
、かたき扱いされています。「えっ?変?一生懸命働い
ているのに……。」砂糖からそんな声が聞こえてきそう
です。∵「カビ君は、どうして砂糖が苦手なの。」「だ
って、砂糖ってサ、トウっても甘いんだもん。」寝よう
としたら、ブーンという音がして、あわてて灯りをつけ
たことがありませんか。そして、小さな蚊がどこにいる
か見つけようとしたことがあるでしょう。日本では昔、
蚊を防ぐために蚊帳という道具を使っていました。 これ
は、一ミリメートルほどの細かい網でできている四角い
テントのようなもので、部屋の中で四方から吊り下げる
ようになっています。網目が細かいので、蚊は中に入れ
ませんが、涼しい風は通すことができます。昔の日本人
は、蚊の多い暑い夏の夜を、蚊帳の中で風鈴の音を聞き
ながら涼しく過ごしたのです。しかし、昭和の後期にな
ると、殺虫剤や下水道が普及した結果、蚊自体が少なく
なり、蚊帳は次第に使われなくなっていきました。とこ
ろが、今、この蚊帳が再び注目されています。蚊帳は、
電気も薬品も使わない点で、人間にも地球にももちろん
蚊にも優しい道具だと考えられるようになってきたので
す。日本は、マラリヤの被害に悩まされるアフリカ諸国
にたくさんの蚊帳を送っています。これによって多くの
子供たちの命が助かっているそうです。日本ではほとん
ど使われることのなくなった蚊帳も、世界では大活躍を
しているのです。日本人のこれからの役割は、より安く
より安全な蚊帳を世界中に広めることではないでしょう
カ。「ブーン。」「あ、蚊や。蚊帳に入ろう。」 「しま
った。蚊帳に入られたカ。ヤーン。」【1】脊椎動物の
ほとんどは、生まれたときから性別が決まっており、途
中で変化することはありません。ところが、同じ脊椎動
物でも、魚には、オスがメスへ、メスがオスへと変化し
たり、生まれながらにして雌雄同体のものがあります。
【2】オスからメスへ変化するものとして代表的なのは
、クマノミの仲間です。クマノミは、毒を持つイソギン
チャクと一緒に暮らすことで有名です。【3】ひとつの
イソギンチャクに、オスとメス一匹ずつの成魚と、体の
小さな幼魚の数匹で暮らしていることが多いのですが、
この成魚と幼魚の間に、親子関係はありません。 クマノ
ミの稚魚は、卵から孵化すると、すぐに生まれたイソギ
ンチャクを離れ、しばらく海の中で浮遊生活を続けます
。【4】そして、全く別のイソギンチャクにたどりつき
、そこで元から住んでいる縁もゆかりもないクマノミた
ちと共同生活を始めます。これは、親子で繁殖してしま
う危険をさけるための工夫です。【5】同じひとつのイ
ソギンチャクの中に暮らしているクマノミたちは、体の
大きさに違いがあります。群れの中でいちばん大きいの
がメス、次に大きいのがオスです。【6】三番め以降の
魚たちは、オスでもメスでもない未成熟な個体です。卵
を産むのはメスですが、その卵を守るのは、おもにオス
の役目です。【7】何らかの原因で、いちばん大きいメ
スが死んでしまうと、オスが性転換をしてメスになり、
オスの次に大きい未成熟な個体がオスになって繁殖に参
加します。クマノミの世界には、このようにきちんとし
た秩序があります。【8】なぜいちばん大きい個体がメ
スになるかというと、メスは体が大きいほどたくさんの
卵を産むことができるからです。∵【9】「わたし、昨
日までオスだったメスで、名前はクマオよ。」「ぼくは
、今日からオスになった、名前はクマコなんだ。」 「何
だか、呼び方にクマっちゃうね。」なんでもコンパクト
がもてはやされるこのごろですが、犬の世界も例外では
ありません。品種改良の結果、たくさんの犬が小型化さ
れ、今や世界中で飼われています。つまり、コンパクト
な犬はそのほとんどが人工的に作り出されたものなので
す。しかし、天然の小型犬もいます。チワワです。餌代
もかからず、場所もとらず、小さいのに勇敢なこの犬は
、ペットとして大変人気があります。チワワの出身地は
メキシコで、意外にも南国の生まれなのです。実はこの
犬は、もともとテチチという名前で知られていました。
チワワと呼ばれるようになったのは十九世紀の中ごろで
す。メキシコに旅行したアメリカ人が、メキシコのチワ
ワ州でこの小さい犬を見つけ、何匹か持ち帰りました。
そして、土地の名前からチワワと命名したのです。同じ
ころ、メキシコのお妃様がヨーロッパ旅行のお供にこの
犬を連れて行ったため、チワワは世界的に有名になりま
した。チワワは人間が大好きです。人間との接触が多い
ほど元気に育つと言われています。 しかし、注意も必要
です。この犬の大きさからすると、ベッドやソファは高
所ですから、高いところから無造作に飛び降りて骨折し
てしまうことがあります。また、消化器官が小さい上に
カロリーを早く消費するため、血糖値が下がりやすいの
もチワワの特徴です。ですから、少量のえさをたびたび
与えてやる必要があります。震えるのはこの犬の特徴で
す。寒いときだけでなく、興奮したときや心配なとき、
不満があるとき、怖がっているときなどに震えます。小
さいけれど大きな存在感を持つチワワ。もしメキシコへ
旅行することがあったなら、「こんにチワ、ワたしの国
へようこそ」と歓迎してくれるかもしれません。∵「チ
ワワって、おでんに入れるとおいしいんだよね。」「そ
れは、チクワ。」人間は昔から、香りに興味を持ち、香
りの原料つまり香料を探してきました。香料には動物性
のものと植物性のものとがあります。動物性のものとし
ては、ジャコウ鹿からとれるムスクが代表的です。植物
性の香料として一般的なものは、なんと言っても花々で
す。例えば、ブルガリアのダマスクローズは、古くから
貴重な香料とされてきました。この花のエッセンスは高
値で取引され、今でも世界中で愛されています。 しかし
、植物性の香料は花だけではありません。どちらかとい
えばなじみの薄い、しかし大変広く使われている香料、
それがフルーツの一種であるベルガモットです。この果
実のエッセンスは、女性用の香水の約三分の一に、また
男性用のコロンの約半分に入っています。このフルーツ
からとれるエッセンスには、いろいろな香りをまとめて
一つの香りにするという働きがあり、これがほかの香料
にはない特性なのです。ベルガモットはミカン科の植物
で、秋から冬にかけてオレンジほどの大きさの実をつけ
ます。香水になるエッセンスは、この果実の皮からとれ
ます。ベルガモットの主な産地は、イタリア半島のカラ
ブリア地方で、ほかの土地ではほとんど育ちません。と
いうのも、この植物は、暖かくしかも南向きの土地で、
強い風の吹かない、湿度の低いところでないと育たない
からです。 この植物の起源そのものは深いなぞに包まれ
ています。野生のベルガモットというものはなく、この
植物を種から育てることもできません。ベルガモットは
、ほかの柑橘系の木々に挿し木をして育てるしかないの
です。野生のベルガモットがあれば、香水も、もっとヤ
セイものになっていたでしょう。神秘に包まれた香りの
世界。だからこそ、より魅力的なのかもしれません。シ
ロツメクサは、日本人にとても愛されている草花のひと
つです。天気のいい休日になると、シロツメクサが生え
ている場所で、シートを広げてお弁当を食べる家族連れ
の姿を見ることができます。シロツメクサの上は、ふん
わりしていて座り心地がよいのです。お弁当のあとには
、子どもたちは花を編んでかわいい冠にしたり、茎をか
らませて両側から引っ張る草相撲をしたりして遊ぶこと
もできます。私たちになじみの深いシロツメクサですが
、実はもともとは日本ではなく、ヨーロッパが原産の植
物です。江戸時代、ヨーロッパのガラス製品は大変な貴
重品でした。遠くヨーロッパから船でガラス製品を運ん
でくるとき、船がゆれてガラスが割れてしまわないよう
に箱の中につめものとして入れられたものが、このシロ
ツメクサなのです。 つめものの草だからツメクサという
名前がつきました。シロツメクサは生命力の強い植物な
ので、つめものとして日本にやってきて役目を終えたあ
と、ゴミとして捨てられた場所で再び息を吹き返し、次
第に日本中に広がっていきました。今では北海道から沖
縄まで、日本全国で見られるようになっています。シロ
ツメクサのように外国が原産で、何らかの理由で日本に
定着した植物のことを帰化植物と言います。セイヨウタ
ンポポやヒメジョオンなども帰化植物として有名です。
ところで、このシロツメクサの英語名はクローバーです
が、クローバーといえば、四つ葉のクローバーが幸運の
シンボルであることはよく知られています。しかし、四
つ葉を見つけようと思っても、クローバかり多くてなか
なか見つからないことがほとんどです。ところが、世の
中には、五つ葉や六つ葉のクローバーもあるのです。今
までに見つかった最高記録はなんと十八枚葉。 これは日
本で発見され、ギネスブックにも載りました。十八枚葉
のクローバーなんて見つけたら、びっくりして白目をむ
いて倒れてしまいそうです。これぞまさにシロ(ツ)メ
スカートやズボンを買うときは、まずウエストのサイズ
を確かめます。では、地球のウエスト、つまり円周はど
うやって測るのでしょう。現代の科学者たちは、メジャ
ーの代わりに人工衛星を使います。北極と南極を通る二
つの衛星で、地球を外がわから測るのです。そのように
して算出された数値は、約四万八千キロメートル。大変
なウエストサイズです。 しかし、今からおよそ二千二百
年前、すでに地球を測った人がいたのです。エラトステ
ネスは、ギリシャの数学者で天文学者でもありました。
彼の時代には人工衛星などないので、地球が丸いことさ
え知らない人がたくさんいました。もちろん、地球を測
ることのできるほど長い巻尺もありません。エラトステ
ネスが使ったのは、一本の棒きれでした。エジプトのシ
エネという都市にいたときのことです。エラトステネス
は、一年でいちばん昼間の長い夏至の正午に、太陽が真
上に来ることに気づきました。太陽の光が影を作らずに
井戸の底まで届いていたからです。しかし、そこから北
に八百五十キロメートルほど行ったところにあるアレク
サンドリアでは、同じ夏至の日の正午に影が見えたので
す。 そこで、エラトステネスはあることを思いつきます
。彼はまず、アレクサンドリアにまっすぐな棒を立てま
した。正午にその棒が作る影を観察するためです。影の
角度を測ったところ、垂直方向に対して七・二度でした
。エラトステネスは地球が丸いことと円周の全体が三百
六十度であることを知っていました。三百六十を七・二
で割ると五十ですから、棒の角度七・二度は円周の五十
分の一になります。ということは、シエネとアレクサン
ドリアの間の距離も、地球の円周の五十分の一と等しい
はずです。そこで二つの町の距離を五十倍し、地球の円
周は、約四万キロメートルから∵四万六千キロメートル
だという結論に達したのです。それは、驚くほど正確な
数値でした。「エラトステネスさん、棒で測るなんて、
いつ思いついたんですか。」「ぼうっとしているときに
ね。」物を食べると、いろいろな味を感じます。たとえ
ば目かくしをしていても、それが知っている味なら、今
食べたものが何か、当てることができるでしょう。また
、初めて食べたものでも、「塩辛い」とか「甘酸っぱい
」などと、言葉で表すことができます。この味は、いっ
たいどこでどうやって感じているのでしょうか。味を感
じる体の部分は舌である、というのは、よく知られてい
ることです。その証拠に、味見をするときは、ちょっと
舌を出してなめてみます。 この舌をよく見てみると、表
面はなめらかではなく、ざらざらで、更によく見ると小
さなでこぼこやつぶつぶがあります。実は、このつぶつ
ぶが、味蕾と呼ばれるものです。「蕾」というのが「つ
ぼみ」という漢字であることからわかるように、味蕾は
花のつぼみのような形をしています。味蕾は舌の表面だ
けではなく、上あごの奥やのどにもあります。ですから
、舌だけで味を感じているのではないようです。ところ
で、動物の中でも肉食動物は、においをかぎ分ける能力
である嗅覚がとても発達している代わりに、味覚はそれ
ほど優れていません。犬やネコも、この肉食動物の仲間
です。おおざっぱに苦味、酸味、辛味、甘味などはわか
り、苦いものがきらいで甘いものが好きなのは人間と同
じです。肉食動物は、生肉をあっという間に食べてしま
うため、それほどおいしさを味わう必要がなかったので
す。それに対し、いつまでもゆっくりと草を食べている
草食動物は、肉食動物よりは味覚が発達していると言わ
れています。 みなさんの家にも、おいしいものしか食べ
ない、グルメな犬やネコがいるかもしれません。これは
、おいしいものをいろいろもらってしまったので、学習
して「違いがわかる」ようになってしまったのです。現
代の犬たちが、おしゃれなカフェで犬用のケーキを食べ
ているなんて、犬のご先祖のオオカミには、想像もでき
なかったにちがいありません「青菜に塩」ということわ
ざは、ほうれん草などの青い葉に塩をかけると急にしお
れてしまうことから、人が急に元気がなくなってしょん
ぼりする様子をたとえることわざになりました。フライ
パンで青菜を炒めているところを見ると、こぼれんばか
りに山盛りになった青菜がさっと小さくなってしまいま
す。さて、この「青菜に塩」の魔法はどうして起こるの
でしょうか。野菜は、人間と同じようにたくさんの細胞
が集まってできています。ひとつひとつの細胞を包んで
いる細胞膜は、水も塩も通すようになっています。生き
ている細胞膜であれば、細胞の中に入った塩をうまく細
胞の外に排出する機能を持っています。 しかし、死んだ
細胞の場合、塩は細胞内にしみ込んだままになります。
その一方で、細胞からは水が出ていくので、青菜のカサ
がへってしまうのです。この脱水作用をうまく利用した
ものが漬物で、漬物にされた野菜は、もとの大きさより
はるかにしおれて縮んでいます。私たち人間が健康に生
きていくためにも、塩分のバランスは大切です。体の細
胞とそれをつつむ液体の塩分濃度は、腎臓の働きで常に
一定に保たれています。細胞の内と外の圧力が均衡して
いるために、細胞は同じ形を保つことができます。塩辛
いものを食べたあと、のどが渇いてくるのもそのためで
す。また、夏の暑い日に、熱射病にならないために水分
と塩分をとるように注意するのも同じ理由からです。「
漬物さんには、塩が必要なんですね。」「シオうだよ。
」「ちょっと苦しいですね。」「エーン。」ブーン。(
飛んでいっちゃった。)お腹がすいたら花屋さんに入る
、という人はいません。「花より団子」のことわざに見
られるとおり、花は見るものであり食べるものではない
、というのが普通の考え方です。 しかし世の中には、目
や鼻だけでなく、舌まで楽しませてくれる花が数多くあ
るのです。例えば、バラは、美しいだけではなく食用に
もなります。花びらの根元は苦味があるので取り除きま
す。また、花の中心部は食べません。バラの花びらをチ
ーズやナッツ類と合わせてサラダにしたり、刻んだもの
をスパゲッティにふりかけたりするとおいしいのだそう
です。バラを使って、アイスクリームや飲み物に風味を
添えることもできます。また、野菜の花も食用になりま
す。カボチャの花は、すでに十六世紀ごろから南北アメ
リカで食卓に上っていました。しかし、いくらおいしい
からといっても、花を全部食べてしまうとカボチャの実
ができなくなってしまいます。ですから、雌花は残して
雄花だけを食べるのです。レモンやオレンジなど柑橘系
の花は、飲み物に入れたりデザートに添えたりすると、
風味が引き立ちます。春になると、菜の花が八百屋さん
の店頭に並びます。フキノトウやイチジクも、食べると
ころは花の部分です。「花さん。食べられたときの気持
ちはどうですか。」「はあ、なんというか。」「やはり
、見てもらった方がうれしいでしょう。」「はあ、なん
といっても。」「花さんは、きれいですからね。」 「は
あ、なにしろ。」「もっと驚くようなことを言ってくだ
さい。」「ハッ!、なあんてね。」竹は、中に節があっ
て、まるで空き部屋がひとつひとつ区切られているよう
に、空っぽになっています。これは、竹が木の仲間でな
くて、草の仲間だからです。竹は、身のまわりにたくさ
んあるので、大昔から、人間は、この竹を利用する工夫
をしてきました。まず、あいたところにお米をつめて、
蒸す道具にしました。水をつめて、水筒にもしました。
二つにわって、お皿にもしました。 まっすぐにきれいに
割れることから、細くして、ザルやカゴをあんだり、ス
ダレを編んだりもしました。また、更に細くして、竹ヒ
ゴというものにもしました。竹ヒゴは、しなやかにまが
っても折れることがないので、模型飛行機などの材料に
も使われています。更に、人間は、竹によって弓矢や、
槍も作りました。剣道の竹刀には、今も竹が使われてい
ます。竹は、遊ぶものにも使われました。穴をあけて、
尺八という楽器にもなりました。 長い竹を打ちあわせて
、その上をとんで踊るバンブーダンスにも使われました
。竹馬や竹トンボという子どものおもちゃにもなり、竹
から生まれた「かぐやひめ」というお話も作られました
。エジソンが電球を発明したとき、光を長くもたせるた
めのフィラメントの材料を長い間さがして、とうとう京
都の竹の炭がいちばんいいことを発見しました。こんな
に役に立つ竹は、値段も決してタケーわけではありませ
ん。身の回りに豊富にある材料です。日本人は、昔から
この役に立つ竹を尊敬してきました。だから、おめでた
いことに使われるものは、松竹梅と言いますし、お正月
には門松を立てるのです。また、七夕の日には笹に願い
事を書いた短冊をつるします。子どもの日には、笹の葉
でまいたチマキを食べて、元気に育つことを祈ります。
∵竹もまさか、こんなに人間に利用されるとは思わなか
ったでしょう。しかし、竹はきっと「竹をわったような
性格」ですから、「どんどん工夫していいよ!」と快く
言っているはずです。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなた
の顔が正面から大きく写っている写真を用意します。そ
れから、目のまんなか、鼻、口を通る顔の中心線の上に
鏡を立てます。写真の半分と鏡に映ったその半分とを合
わせると、片方の側だけからできた左右対称の顔になり
ます。鏡の向きを変えると、もう片方の側でも同じこと
ができます。右側だけでできた顔と左側だけでできた顔
とでは、かなりちがった印象を受けます。目の大きさや
ほっぺたの形など、右と左では意外に大きく異なってい
るのです。顔だけではありません。人の体は、左右対称
に思えますが、実は少しちがっていて、手足の長さや筋
肉のつきかたなども同じではないのです。人がまっすぐ
に歩くのは当たり前のようですが、実は目で周りの景色
を確かめながら体の向きをコントロールしています。そ
のため、視界のきかない吹雪のときなど、ただやみくも
に進んでいくと、弱い足の方に少しずつ曲がっていって
しまいます。そして、長い時間歩いたあげく、結局最初
と同じ地点にもどってしまうこともあるのです。内臓で
は、右と左はもっとちがいます。たとえば心臓は体の少
し左側にあります。赤ちゃんを抱くときに、お母さんは
自然と赤ちゃんの頭が心臓の近くにくるように抱きます 。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるとき、お母さ
んの心臓の音をずっと聞いていたので、この音を聞くと
安心するのかもしれません。右と左の違いは、普段の生
活でも役に立ちます。例えば、野球をするとき、右利き
の人は、左手でボールをキャッチし右手でボールを投げ
ます。リンゴの皮をむくときは、左手でリンゴを支え右
手で包丁を動かします。人間の体は、右と左の違いをう
まく生かしているのです。∵ここで一句。「ウインクを
両目でしたらただのまばたき」言葉の森長文作成委員会
(α)日本は世界一の漫画王国とよばれています。大人
向けのものまでふくめると、一年間に七億冊以上の漫画
が出版されています。漫画をもとにして、アニメーショ
ンや映画やテレビ番組もたくさん作られ、いろいろな国
の言葉に翻訳されて、世界中の人気を集めています。 で
は、漫画は、いつの時代からあったのでしょうか。いち
ばん古い漫画は、今から八百年ほど前にかかれたと言わ
れています。それは、京都の高山寺というお寺にある、
「鳥獣人物戯画」という絵です。その中には、人真似を
して遊ぶ動物たちがかかれています。始まりは、動物た
ちの川遊び。川に飛びこむウサギや、泳ぐサル。ウサギ
に背中を流してもらって、気持ちよさそうなサルもいま
す。別の絵には弓矢の練習をしたり、相撲をとって遊ん
だりするカエルやウサギの様子がかかれています。カエ
ルに投げ飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで
、見物のカエルたちが大わらいしている絵もあります。
カエルの仏様にお経をあげているサルのお坊さんの絵も
あります。どの動物も生き生きと描かれ、今にも絵の中
から飛び出してきそうです。この昔の漫画には、セリフ
がかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。し
かし絵の中には、今の漫画に似たところもあります。た
とえば今の漫画では、すばやい動きをあらわすために線
を何本もひき、スピードの出ている様子をあらわします
。鳥獣人物戯画の中にも、同じようなかき方が見られる
のです。こんな昔から、漫画を楽しんでいた日本人。 こ
れからも、たくさんの名作が生まれ、多くの人に愛され
ていくことでしょう。∵漫画は、世界中に自マンガでき
る、日本の宝です。しかし、漫画は絵がわかりやすいの
で、字の多い本は読マンガ、漫画なら読むという生活を
続けていると、次第に読む力が低下してきます。字の多
い本を読む一方で、漫画も楽しく読み、漫画の読み方に
ついても自マンガできる国にしていきましょう。夜の道
を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると
、またどこまでもついてきます。もちろん、キツネやお
化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それ
はお月さまです。月がついてくるのは、電車に乗ってい
ても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、ど
んどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、
近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ
動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山
を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるよう
に見えます。家、電信柱、山、月。これらを比べて違う
のは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、
動かないように見えるのです。月は、わたしたちの地球
を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かん
でいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいで
は、月の位置は変わらないように見えるのです。 もちろ
ん、月よりもっと遠くの太陽でも、同じことが言えます
。あなたがどんなに動いても太陽はついてきます。しか
し、太陽はまぶしすぎて、あまり見上げることはありま
せん。やはり、夜、明るい月が一緒についてくるところ
にこそ、不思議さがあるのでしょう。地球は月の四倍の
大きさです。したがって、もし、月の上を歩きながら地
球を見ると、月よりも四倍大きい、青く美しい地球がつ
いてきます。月と地球のツキあいは、遠くても深いもの
なのです。∵「ねえ、どうしてついてくるの?」「だっ
て、ツキだから。」「では、もし太陽だったら?」「や
っぱり、ついて行きタイヨウ。」「甘えん坊なんだね。
」【1】買ってきた野菜の葉に、いも虫がたくさんつい
ていたらどうしますか。普通は「わあ、いやだ」と急い
で取り除き、野菜をすっかりきれいにしてから調理する
でしょう。【2】しかし世界には、いも虫を見て「わあ
、おいしそう」と感じる人たちもいるのです。 アフリカ
の一部では、ガの幼虫であるいも虫が食用にされていま
す。【3】それらの地域では、キャッサバやトウモロコ
シなどのでんぷん質が食事の中心なので、どうしてもた
んぱく質が不足しがちです。しかし、質のよいたんぱく
源は高価で手に入りにくいのが現状です。【4】ですか
ら、たんぱく質のかたまりであるいも虫は大変貴重な補
助食品なのです。実際、一皿のいも虫は、大人が一日に
必要とするたんぱく質・ビタミン・ミネラルの約四分の
三を含むと言われています。【5】秋の雨の季節が過ぎ
ると、いも虫の収穫が始まります。村の女性たちは、総
出でいも虫を集めます。いも虫は内臓を抜き、ゆでてか
ら天日干しにします。【6】この乾燥いも虫を、おやつ
がわりにそのままポリポリと食べるのです。このいも虫
は、ただおいしいだけではありません。ある意味で、と
ても効率のよい食品でもあるのです。【7】いも虫は、
人間には食べられない有毒の植物でもかまわず食べてく
れます。そしてどんどん肥え太り、わずか六週間で体重
を四千倍に増やします。 【8】その丸々としたおいしそ
うないも虫を、今度は人間が食べるわけです。「いも虫
君、いいねえ。あったかそうな蓑を着て。」「それはミ
ノムシ。」【9】「確か、茶碗に入っているんだよね。
」「それはチャワンムシ。」「ときどき足がかゆくなる
けどね。」「それは、ミズムシ。もう、いいもん。無視
。トライアスロンの競技の歴史はまだ新しく、二十世紀
の後半に最初の大会が開催されました。トライアスロン
とは、ギリシャ語で「三」を意味するトライと、「賞品
」を意味するアスロンを合わせてできた言葉です。その
名のとおり、水泳、ランニング、自転車の三種目を続け
て行ない、その総合タイムを競うレースです。どれか一
つだけでも体力のいるハードな競技ですが、それをひと
りで三つもこなすということで、鉄人レースともよばれ
ています。この競技が生まれたのは、ハワイのオアフ島
でした。海兵隊員たちが、一日の仕事を終えて、ビール
を飲みながらくつろいでいるとき、オアフ島で行なわれ
ている三つの競技のうち、どれがいちばん大変かという
議論になりました。三つの競技というのは、オアフ島一
周の自転車レース、ホノルルマラソン大会、ワイキキビ
ーチでの遠泳大会のことです。だれもが、自分の出場し
た競技こそが最も苦しかったと自慢げに話すので、いく
ら話し合っても答えは出ませんでした。そのとき、ビー
ルを飲んで酔っぱらっていた海軍司令官のジョン・コリ
ンズは、ある提案をしました。この三つの競技を合わせ
て一つの競技にしたらどうかというのです。 まさか本気
で挑戦する者はいないだろうと、コリンズはほんの冗談
のつもりで提案したのですが、実際に競技に参加する人
があらわれました。現在では、日本でも毎年多くの大会
が開かれています。また、二〇〇〇年に行なわれたシド
ニーオリンピックから、トライアスロンは正式種目にな
っています。∵「ぼくも、新しい競技を考えついた。」
「なあに。」「ドッジボールと槍投げと火の輪くぐりを
組み合わせるんだ。」「今度のオリンピックで採用され
るといいね。」だれも出ないと思うけど。チョコレート
、キャンディー、ケーキなど、甘いお菓子を思い浮かべ
るだけで幸せな気分になれる人は多いでしょう。それら
のお菓子を作るのに大切なのが砂糖です。しかし、砂糖
にはほかにもいろいろな働きがあります。 その働きのひ
とつに、カビや微生物が増殖するのを防ぐというものが
あります。カビや微生物は湿ったところ、つまり、水分
のあるところが好きです。砂糖は、食べ物の水分の周り
をおおって、微生物やカビの働きをにぶらせます。ジャ
ムや果物の缶詰などがその例です。果物はほうっておく
と傷んだり腐ったりしますが、砂糖とともに調理するこ
とで長期間保存することができます。水分を抱え込む砂
糖の性質は、生クリームや卵白の泡立てにも一役買って
います。クリームや卵のたんぱく質の水分を砂糖が抱え
込むことによって、泡がくずれるのを防ぎ、また泡同士
がくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリー
ムを作るのには、砂糖が欠かせないのです。肉を煮込む
ときにも、その働きが発揮されます。 調理する前の下準
備の肉に砂糖をすりこんでおくと、軟らかく煮ることが
できます。それは、砂糖が肉のたんぱく質の持つ水分を
肉の中にとどめておくからです。さを作り出す調味料
というイメージの強い砂糖ですが、実際には水分と結び
つきやすい性質が私たちの生活の中でいろいろな役割を
はたしているのです。働き者の砂糖は、縁の下の力持ち
なので、決して「えっへん!」といばっているわけでは
ありません。しかし、ダイエットをさけぶ人たちからは
、かたき扱いされています。「えっ?変?一生懸命働い
ているのに……。」砂糖からそんな声が聞こえてきそう
です。∵「カビ君は、どうして砂糖が苦手なの。」「だ
って、砂糖ってサ、トウっても甘いんだもん。」寝よう
としたら、ブーンという音がして、あわてて灯りをつけ
たことがありませんか。そして、小さな蚊がどこにいる
か見つけようとしたことがあるでしょう。日本では昔、
蚊を防ぐために蚊帳という道具を使っていました。 これ
は、一ミリメートルほどの細かい網でできている四角い
テントのようなもので、部屋の中で四方から吊り下げる
ようになっています。網目が細かいので、蚊は中に入れ
ませんが、涼しい風は通すことができます。昔の日本人
は、蚊の多い暑い夏の夜を、蚊帳の中で風鈴の音を聞き
ながら涼しく過ごしたのです。しかし、昭和の後期にな
ると、殺虫剤や下水道が普及した結果、蚊自体が少なく
なり、蚊帳は次第に使われなくなっていきました。とこ
ろが、今、この蚊帳が再び注目されています。蚊帳は、
電気も薬品も使わない点で、人間にも地球にももちろん
蚊にも優しい道具だと考えられるようになってきたので
す。日本は、マラリヤの被害に悩まされるアフリカ諸国
にたくさんの蚊帳を送っています。これによって多くの
子供たちの命が助かっているそうです。日本ではほとん
ど使われることのなくなった蚊帳も、世界では大活躍を
しているのです。日本人のこれからの役割は、より安く
より安全な蚊帳を世界中に広めることではないでしょう
カ。「ブーン。」「あ、蚊や。蚊帳に入ろう。」 「しま
った。蚊帳に入られたカ。ヤーン。」【1】脊椎動物の
ほとんどは、生まれたときから性別が決まっており、途
中で変化することはありません。ところが、同じ脊椎動
物でも、魚には、オスがメスへ、メスがオスへと変化し
たり、生まれながらにして雌雄同体のものがあります。
【2】オスからメスへ変化するものとして代表的なのは
、クマノミの仲間です。クマノミは、毒を持つイソギン
チャクと一緒に暮らすことで有名です。【3】ひとつの
イソギンチャクに、オスとメス一匹ずつの成魚と、体の
小さな幼魚の数匹で暮らしていることが多いのですが、
この成魚と幼魚の間に、親子関係はありません。 クマノ
ミの稚魚は、卵から孵化すると、すぐに生まれたイソギ
ンチャクを離れ、しばらく海の中で浮遊生活を続けます
。【4】そして、全く別のイソギンチャクにたどりつき
、そこで元から住んでいる縁もゆかりもないクマノミた
ちと共同生活を始めます。これは、親子で繁殖してしま
う危険をさけるための工夫です。【5】同じひとつのイ
ソギンチャクの中に暮らしているクマノミたちは、体の
大きさに違いがあります。群れの中でいちばん大きいの
がメス、次に大きいのがオスです。【6】三番め以降の
魚たちは、オスでもメスでもない未成熟な個体です。卵
を産むのはメスですが、その卵を守るのは、おもにオス
の役目です。【7】何らかの原因で、いちばん大きいメ
スが死んでしまうと、オスが性転換をしてメスになり、
オスの次に大きい未成熟な個体がオスになって繁殖に参
加します。クマノミの世界には、このようにきちんとし
た秩序があります。【8】なぜいちばん大きい個体がメ
スになるかというと、メスは体が大きいほどたくさんの
卵を産むことができるからです。∵【9】「わたし、昨
日までオスだったメスで、名前はクマオよ。」「ぼくは
、今日からオスになった、名前はクマコなんだ。」 「何
だか、呼び方にクマっちゃうね。」なんでもコンパクト
がもてはやされるこのごろですが、犬の世界も例外では
ありません。品種改良の結果、たくさんの犬が小型化さ
れ、今や世界中で飼われています。つまり、コンパクト
な犬はそのほとんどが人工的に作り出されたものなので
す。しかし、天然の小型犬もいます。チワワです。餌代
もかからず、場所もとらず、小さいのに勇敢なこの犬は
、ペットとして大変人気があります。チワワの出身地は
メキシコで、意外にも南国の生まれなのです。実はこの
犬は、もともとテチチという名前で知られていました。
チワワと呼ばれるようになったのは十九世紀の中ごろで
す。メキシコに旅行したアメリカ人が、メキシコのチワ
ワ州でこの小さい犬を見つけ、何匹か持ち帰りました。
そして、土地の名前からチワワと命名したのです。同じ
ころ、メキシコのお妃様がヨーロッパ旅行のお供にこの
犬を連れて行ったため、チワワは世界的に有名になりま
した。チワワは人間が大好きです。人間との接触が多い
ほど元気に育つと言われています。 しかし、注意も必要
です。この犬の大きさからすると、ベッドやソファは高
所ですから、高いところから無造作に飛び降りて骨折し
てしまうことがあります。また、消化器官が小さい上に
カロリーを早く消費するため、血糖値が下がりやすいの
もチワワの特徴です。ですから、少量のえさをたびたび
与えてやる必要があります。震えるのはこの犬の特徴で
す。寒いときだけでなく、興奮したときや心配なとき、
不満があるとき、怖がっているときなどに震えます。小
さいけれど大きな存在感を持つチワワ。もしメキシコへ
旅行することがあったなら、「こんにチワ、ワたしの国
へようこそ」と歓迎してくれるかもしれません。∵「チ
ワワって、おでんに入れるとおいしいんだよね。」「そ
れは、チクワ。」人間は昔から、香りに興味を持ち、香
りの原料つまり香料を探してきました。香料には動物性
のものと植物性のものとがあります。動物性のものとし
ては、ジャコウ鹿からとれるムスクが代表的です。植物
性の香料として一般的なものは、なんと言っても花々で
す。例えば、ブルガリアのダマスクローズは、古くから
貴重な香料とされてきました。この花のエッセンスは高
値で取引され、今でも世界中で愛されています。 しかし
、植物性の香料は花だけではありません。どちらかとい
えばなじみの薄い、しかし大変広く使われている香料、
それがフルーツの一種であるベルガモットです。この果
実のエッセンスは、女性用の香水の約三分の一に、また
男性用のコロンの約半分に入っています。このフルーツ
からとれるエッセンスには、いろいろな香りをまとめて
一つの香りにするという働きがあり、これがほかの香料
にはない特性なのです。ベルガモットはミカン科の植物
で、秋から冬にかけてオレンジほどの大きさの実をつけ
ます。香水になるエッセンスは、この果実の皮からとれ
ます。ベルガモットの主な産地は、イタリア半島のカラ
ブリア地方で、ほかの土地ではほとんど育ちません。と
いうのも、この植物は、暖かくしかも南向きの土地で、
強い風の吹かない、湿度の低いところでないと育たない
からです。 この植物の起源そのものは深いなぞに包まれ
ています。野生のベルガモットというものはなく、この
植物を種から育てることもできません。ベルガモットは
、ほかの柑橘系の木々に挿し木をして育てるしかないの
です。野生のベルガモットがあれば、香水も、もっとヤ
セイものになっていたでしょう。神秘に包まれた香りの
世界。だからこそ、より魅力的なのかもしれません。シ
ロツメクサは、日本人にとても愛されている草花のひと
つです。天気のいい休日になると、シロツメクサが生え
ている場所で、シートを広げてお弁当を食べる家族連れ
の姿を見ることができます。シロツメクサの上は、ふん
わりしていて座り心地がよいのです。お弁当のあとには
、子どもたちは花を編んでかわいい冠にしたり、茎をか
らませて両側から引っ張る草相撲をしたりして遊ぶこと
もできます。私たちになじみの深いシロツメクサですが
、実はもともとは日本ではなく、ヨーロッパが原産の植
物です。江戸時代、ヨーロッパのガラス製品は大変な貴
重品でした。遠くヨーロッパから船でガラス製品を運ん
でくるとき、船がゆれてガラスが割れてしまわないよう
に箱の中につめものとして入れられたものが、このシロ
ツメクサなのです。 つめものの草だからツメクサという
名前がつきました。シロツメクサは生命力の強い植物な
ので、つめものとして日本にやってきて役目を終えたあ
と、ゴミとして捨てられた場所で再び息を吹き返し、次
第に日本中に広がっていきました。今では北海道から沖
縄まで、日本全国で見られるようになっています。シロ
ツメクサのように外国が原産で、何らかの理由で日本に
定着した植物のことを帰化植物と言います。セイヨウタ
ンポポやヒメジョオンなども帰化植物として有名です。
ところで、このシロツメクサの英語名はクローバーです
が、クローバーといえば、四つ葉のクローバーが幸運の
シンボルであることはよく知られています。しかし、四
つ葉を見つけようと思っても、クローバかり多くてなか
なか見つからないことがほとんどです。ところが、世の
中には、五つ葉や六つ葉のクローバーもあるのです。今
までに見つかった最高記録はなんと十八枚葉。 これは日
本で発見され、ギネスブックにも載りました。十八枚葉
のクローバーなんて見つけたら、びっくりして白目をむ
いて倒れてしまいそうです。これぞまさにシロ(ツ)メ
スカートやズボンを買うときは、まずウエストのサイズ
を確かめます。では、地球のウエスト、つまり円周はど
うやって測るのでしょう。現代の科学者たちは、メジャ
ーの代わりに人工衛星を使います。北極と南極を通る二
つの衛星で、地球を外がわから測るのです。そのように
して算出された数値は、約四万八千キロメートル。大変
なウエストサイズです。 しかし、今からおよそ二千二百
年前、すでに地球を測った人がいたのです。エラトステ
ネスは、ギリシャの数学者で天文学者でもありました。
彼の時代には人工衛星などないので、地球が丸いことさ
え知らない人がたくさんいました。もちろん、地球を測
ることのできるほど長い巻尺もありません。エラトステ
ネスが使ったのは、一本の棒きれでした。エジプトのシ
エネという都市にいたときのことです。エラトステネス
は、一年でいちばん昼間の長い夏至の正午に、太陽が真
上に来ることに気づきました。太陽の光が影を作らずに
井戸の底まで届いていたからです。しかし、そこから北
に八百五十キロメートルほど行ったところにあるアレク
サンドリアでは、同じ夏至の日の正午に影が見えたので
す。 そこで、エラトステネスはあることを思いつきます
。彼はまず、アレクサンドリアにまっすぐな棒を立てま
した。正午にその棒が作る影を観察するためです。影の
角度を測ったところ、垂直方向に対して七・二度でした
。エラトステネスは地球が丸いことと円周の全体が三百
六十度であることを知っていました。三百六十を七・二
で割ると五十ですから、棒の角度七・二度は円周の五十
分の一になります。ということは、シエネとアレクサン
ドリアの間の距離も、地球の円周の五十分の一と等しい
はずです。そこで二つの町の距離を五十倍し、地球の円
周は、約四万キロメートルから∵四万六千キロメートル
だという結論に達したのです。それは、驚くほど正確な
数値でした。「エラトステネスさん、棒で測るなんて、
いつ思いついたんですか。」「ぼうっとしているときに
ね。」物を食べると、いろいろな味を感じます。たとえ
ば目かくしをしていても、それが知っている味なら、今
食べたものが何か、当てることができるでしょう。また
、初めて食べたものでも、「塩辛い」とか「甘酸っぱい
」などと、言葉で表すことができます。この味は、いっ
たいどこでどうやって感じているのでしょうか。味を感
じる体の部分は舌である、というのは、よく知られてい
ることです。その証拠に、味見をするときは、ちょっと
舌を出してなめてみます。 この舌をよく見てみると、表
面はなめらかではなく、ざらざらで、更によく見ると小
さなでこぼこやつぶつぶがあります。実は、このつぶつ
ぶが、味蕾と呼ばれるものです。「蕾」というのが「つ
ぼみ」という漢字であることからわかるように、味蕾は
花のつぼみのような形をしています。味蕾は舌の表面だ
けではなく、上あごの奥やのどにもあります。ですから
、舌だけで味を感じているのではないようです。ところ
で、動物の中でも肉食動物は、においをかぎ分ける能力
である嗅覚がとても発達している代わりに、味覚はそれ
ほど優れていません。犬やネコも、この肉食動物の仲間
です。おおざっぱに苦味、酸味、辛味、甘味などはわか
り、苦いものがきらいで甘いものが好きなのは人間と同
じです。肉食動物は、生肉をあっという間に食べてしま
うため、それほどおいしさを味わう必要がなかったので
す。それに対し、いつまでもゆっくりと草を食べている
草食動物は、肉食動物よりは味覚が発達していると言わ
れています。 みなさんの家にも、おいしいものしか食べ
ない、グルメな犬やネコがいるかもしれません。これは
、おいしいものをいろいろもらってしまったので、学習
して「違いがわかる」ようになってしまったのです。現
代の犬たちが、おしゃれなカフェで犬用のケーキを食べ
ているなんて、犬のご先祖のオオカミには、想像もでき
なかったにちがいありません「青菜に塩」ということわ
ざは、ほうれん草などの青い葉に塩をかけると急にしお
れてしまうことから、人が急に元気がなくなってしょん
ぼりする様子をたとえることわざになりました。フライ
パンで青菜を炒めているところを見ると、こぼれんばか
りに山盛りになった青菜がさっと小さくなってしまいま
す。さて、この「青菜に塩」の魔法はどうして起こるの
でしょうか。野菜は、人間と同じようにたくさんの細胞
が集まってできています。ひとつひとつの細胞を包んで
いる細胞膜は、水も塩も通すようになっています。生き
ている細胞膜であれば、細胞の中に入った塩をうまく細
胞の外に排出する機能を持っています。 しかし、死んだ
細胞の場合、塩は細胞内にしみ込んだままになります。
その一方で、細胞からは水が出ていくので、青菜のカサ
がへってしまうのです。この脱水作用をうまく利用した
ものが漬物で、漬物にされた野菜は、もとの大きさより
はるかにしおれて縮んでいます。私たち人間が健康に生
きていくためにも、塩分のバランスは大切です。体の細
胞とそれをつつむ液体の塩分濃度は、腎臓の働きで常に
一定に保たれています。細胞の内と外の圧力が均衡して
いるために、細胞は同じ形を保つことができます。塩辛
いものを食べたあと、のどが渇いてくるのもそのためで
す。また、夏の暑い日に、熱射病にならないために水分
と塩分をとるように注意するのも同じ理由からです。「
漬物さんには、塩が必要なんですね。」「シオうだよ。
」「ちょっと苦しいですね。」「エーン。」ブーン。(
飛んでいっちゃった。)お腹がすいたら花屋さんに入る
、という人はいません。「花より団子」のことわざに見
られるとおり、花は見るものであり食べるものではない
、というのが普通の考え方です。 しかし世の中には、目
や鼻だけでなく、舌まで楽しませてくれる花が数多くあ
るのです。例えば、バラは、美しいだけではなく食用に
もなります。花びらの根元は苦味があるので取り除きま
す。また、花の中心部は食べません。バラの花びらをチ
ーズやナッツ類と合わせてサラダにしたり、刻んだもの
をスパゲッティにふりかけたりするとおいしいのだそう
です。バラを使って、アイスクリームや飲み物に風味を
添えることもできます。また、野菜の花も食用になりま
す。カボチャの花は、すでに十六世紀ごろから南北アメ
リカで食卓に上っていました。しかし、いくらおいしい
からといっても、花を全部食べてしまうとカボチャの実
ができなくなってしまいます。ですから、雌花は残して
雄花だけを食べるのです。レモンやオレンジなど柑橘系
の花は、飲み物に入れたりデザートに添えたりすると、
風味が引き立ちます。春になると、菜の花が八百屋さん
の店頭に並びます。フキノトウやイチジクも、食べると
ころは花の部分です。「花さん。食べられたときの気持
ちはどうですか。」「はあ、なんというか。」「やはり
、見てもらった方がうれしいでしょう。」「はあ、なん
といっても。」「花さんは、きれいですからね。」 「は
あ、なにしろ。」「もっと驚くようなことを言ってくだ
さい。」「ハッ!、なあんてね。」竹は、中に節があっ
て、まるで空き部屋がひとつひとつ区切られているよう
に、空っぽになっています。これは、竹が木の仲間でな
くて、草の仲間だからです。竹は、身のまわりにたくさ
んあるので、大昔から、人間は、この竹を利用する工夫
をしてきました。まず、あいたところにお米をつめて、
蒸す道具にしました。水をつめて、水筒にもしました。
二つにわって、お皿にもしました。 まっすぐにきれいに
割れることから、細くして、ザルやカゴをあんだり、ス
ダレを編んだりもしました。また、更に細くして、竹ヒ
ゴというものにもしました。竹ヒゴは、しなやかにまが
っても折れることがないので、模型飛行機などの材料に
も使われています。更に、人間は、竹によって弓矢や、
槍も作りました。剣道の竹刀には、今も竹が使われてい
ます。竹は、遊ぶものにも使われました。穴をあけて、
尺八という楽器にもなりました。 長い竹を打ちあわせて
、その上をとんで踊るバンブーダンスにも使われました
。竹馬や竹トンボという子どものおもちゃにもなり、竹
から生まれた「かぐやひめ」というお話も作られました
。エジソンが電球を発明したとき、光を長くもたせるた
めのフィラメントの材料を長い間さがして、とうとう京
都の竹の炭がいちばんいいことを発見しました。こんな
に役に立つ竹は、値段も決してタケーわけではありませ
ん。身の回りに豊富にある材料です。日本人は、昔から
この役に立つ竹を尊敬してきました。だから、おめでた
いことに使われるものは、松竹梅と言いますし、お正月
には門松を立てるのです。また、七夕の日には笹に願い
事を書いた短冊をつるします。子どもの日には、笹の葉
でまいたチマキを食べて、元気に育つことを祈ります。
∵竹もまさか、こんなに人間に利用されるとは思わなか
ったでしょう。しかし、竹はきっと「竹をわったような
性格」ですから、「どんどん工夫していいよ!」と快く
言っているはずです。 どちらかというと華奢な感じの私ですが、
マイクの前では大胸筋をグッと膨らませ、その生き様を演じたいと思います 鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなた
の顔が正面から大きく写っている写真を用意します。そ
れから、目のまんなか、鼻、口を通る顔の中心線の上に
鏡を立てます。写真の半分と鏡に映ったその半分とを合
わせると、片方の側だけからできた左右対称の顔になり
ます。鏡の向きを変えると、もう片方の側でも同じこと
ができます。右側だけでできた顔と左側だけでできた顔
とでは、かなりちがった印象を受けます。目の大きさや
ほっぺたの形など、右と左では意外に大きく異なってい
るのです。顔だけではありません。人の体は、左右対称
に思えますが、実は少しちがっていて、手足の長さや筋
肉のつきかたなども同じではないのです。人がまっすぐ
に歩くのは当たり前のようですが、実は目で周りの景色
を確かめながら体の向きをコントロールしています。そ
のため、視界のきかない吹雪のときなど、ただやみくも
に進んでいくと、弱い足の方に少しずつ曲がっていって
しまいます。そして、長い時間歩いたあげく、結局最初
と同じ地点にもどってしまうこともあるのです。内臓で
は、右と左はもっとちがいます。たとえば心臓は体の少
し左側にあります。赤ちゃんを抱くときに、お母さんは
自然と赤ちゃんの頭が心臓の近くにくるように抱きます 。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいるとき、お母さ
んの心臓の音をずっと聞いていたので、この音を聞くと
安心するのかもしれません。右と左の違いは、普段の生
活でも役に立ちます。例えば、野球をするとき、右利き
の人は、左手でボールをキャッチし右手でボールを投げ
ます。リンゴの皮をむくときは、左手でリンゴを支え右
手で包丁を動かします。人間の体は、右と左の違いをう
まく生かしているのです。∵ここで一句。「ウインクを
両目でしたらただのまばたき」言葉の森長文作成委員会
(α)日本は世界一の漫画王国とよばれています。大人
向けのものまでふくめると、一年間に七億冊以上の漫画
が出版されています。漫画をもとにして、アニメーショ
ンや映画やテレビ番組もたくさん作られ、いろいろな国
の言葉に翻訳されて、世界中の人気を集めています。 で
は、漫画は、いつの時代からあったのでしょうか。いち
ばん古い漫画は、今から八百年ほど前にかかれたと言わ
れています。それは、京都の高山寺というお寺にある、
「鳥獣人物戯画」という絵です。その中には、人真似を
して遊ぶ動物たちがかかれています。始まりは、動物た
ちの川遊び。川に飛びこむウサギや、泳ぐサル。ウサギ
に背中を流してもらって、気持ちよさそうなサルもいま
す。別の絵には弓矢の練習をしたり、相撲をとって遊ん
だりするカエルやウサギの様子がかかれています。カエ
ルに投げ飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで
、見物のカエルたちが大わらいしている絵もあります。
カエルの仏様にお経をあげているサルのお坊さんの絵も
あります。どの動物も生き生きと描かれ、今にも絵の中
から飛び出してきそうです。この昔の漫画には、セリフ
がかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。し
かし絵の中には、今の漫画に似たところもあります。た
とえば今の漫画では、すばやい動きをあらわすために線
を何本もひき、スピードの出ている様子をあらわします
。鳥獣人物戯画の中にも、同じようなかき方が見られる
のです。こんな昔から、漫画を楽しんでいた日本人。 こ
れからも、たくさんの名作が生まれ、多くの人に愛され
ていくことでしょう。∵漫画は、世界中に自マンガでき
る、日本の宝です。しかし、漫画は絵がわかりやすいの
で、字の多い本は読マンガ、漫画なら読むという生活を
続けていると、次第に読む力が低下してきます。字の多
い本を読む一方で、漫画も楽しく読み、漫画の読み方に
ついても自マンガできる国にしていきましょう。夜の道
を歩いていると、何かが黙ってついてきます。あなたが
止まると、それも止まります。あなたが歩きはじめると
、またどこまでもついてきます。もちろん、キツネやお
化けなどではありません。夜空に明るく輝くもの、それ
はお月さまです。月がついてくるのは、電車に乗ってい
ても同じです。電車の窓から見ると、家や電信柱は、ど
んどん後ろへ飛び去っていきます。遠くに見える山も、
近くの家々ほどではありませんが、少しずつ後ろの方へ
動いていくように見えます。しかし、空に浮かぶ月は山
を越え、町を越え、電車の中のあなたについてくるよう
に見えます。家、電信柱、山、月。これらを比べて違う
のは、電車からの距離です。つまり、遠くのものほど、
動かないように見えるのです。月は、わたしたちの地球
を三十個ぐらい並べたほど先にある空のかなたに浮かん
でいます。ですから、地球の上を少々移動したくらいで
は、月の位置は変わらないように見えるのです。 もちろ
ん、月よりもっと遠くの太陽でも、同じことが言えます
。あなたがどんなに動いても太陽はついてきます。しか
し、太陽はまぶしすぎて、あまり見上げることはありま
せん。やはり、夜、明るい月が一緒についてくるところ
にこそ、不思議さがあるのでしょう。地球は月の四倍の
大きさです。したがって、もし、月の上を歩きながら地
球を見ると、月よりも四倍大きい、青く美しい地球がつ
いてきます。月と地球のツキあいは、遠くても深いもの
なのです。∵「ねえ、どうしてついてくるの?」「だっ
て、ツキだから。」「では、もし太陽だったら?」「や
っぱり、ついて行きタイヨウ。」「甘えん坊なんだね。
」【1】買ってきた野菜の葉に、いも虫がたくさんつい
ていたらどうしますか。普通は「わあ、いやだ」と急い
で取り除き、野菜をすっかりきれいにしてから調理する
でしょう。【2】しかし世界には、いも虫を見て「わあ
、おいしそう」と感じる人たちもいるのです。 アフリカ
の一部では、ガの幼虫であるいも虫が食用にされていま
す。【3】それらの地域では、キャッサバやトウモロコ
シなどのでんぷん質が食事の中心なので、どうしてもた
んぱく質が不足しがちです。しかし、質のよいたんぱく
源は高価で手に入りにくいのが現状です。【4】ですか
ら、たんぱく質のかたまりであるいも虫は大変貴重な補
助食品なのです。実際、一皿のいも虫は、大人が一日に
必要とするたんぱく質・ビタミン・ミネラルの約四分の
三を含むと言われています。【5】秋の雨の季節が過ぎ
ると、いも虫の収穫が始まります。村の女性たちは、総
出でいも虫を集めます。いも虫は内臓を抜き、ゆでてか
ら天日干しにします。【6】この乾燥いも虫を、おやつ
がわりにそのままポリポリと食べるのです。このいも虫
は、ただおいしいだけではありません。ある意味で、と
ても効率のよい食品でもあるのです。【7】いも虫は、
人間には食べられない有毒の植物でもかまわず食べてく
れます。そしてどんどん肥え太り、わずか六週間で体重
を四千倍に増やします。 【8】その丸々としたおいしそ
うないも虫を、今度は人間が食べるわけです。「いも虫
君、いいねえ。あったかそうな蓑を着て。」「それはミ
ノムシ。」【9】「確か、茶碗に入っているんだよね。
」「それはチャワンムシ。」「ときどき足がかゆくなる
けどね。」「それは、ミズムシ。もう、いいもん。無視
。トライアスロンの競技の歴史はまだ新しく、二十世紀
の後半に最初の大会が開催されました。トライアスロン
とは、ギリシャ語で「三」を意味するトライと、「賞品
」を意味するアスロンを合わせてできた言葉です。その
名のとおり、水泳、ランニング、自転車の三種目を続け
て行ない、その総合タイムを競うレースです。どれか一
つだけでも体力のいるハードな競技ですが、それをひと
りで三つもこなすということで、鉄人レースともよばれ
ています。この競技が生まれたのは、ハワイのオアフ島
でした。海兵隊員たちが、一日の仕事を終えて、ビール
を飲みながらくつろいでいるとき、オアフ島で行なわれ
ている三つの競技のうち、どれがいちばん大変かという
議論になりました。三つの競技というのは、オアフ島一
周の自転車レース、ホノルルマラソン大会、ワイキキビ
ーチでの遠泳大会のことです。だれもが、自分の出場し
た競技こそが最も苦しかったと自慢げに話すので、いく
ら話し合っても答えは出ませんでした。そのとき、ビー
ルを飲んで酔っぱらっていた海軍司令官のジョン・コリ
ンズは、ある提案をしました。この三つの競技を合わせ
て一つの競技にしたらどうかというのです。 まさか本気
で挑戦する者はいないだろうと、コリンズはほんの冗談
のつもりで提案したのですが、実際に競技に参加する人
があらわれました。現在では、日本でも毎年多くの大会
が開かれています。また、二〇〇〇年に行なわれたシド
ニーオリンピックから、トライアスロンは正式種目にな
っています。∵「ぼくも、新しい競技を考えついた。」
「なあに。」「ドッジボールと槍投げと火の輪くぐりを
組み合わせるんだ。」「今度のオリンピックで採用され
るといいね。」だれも出ないと思うけど。チョコレート
、キャンディー、ケーキなど、甘いお菓子を思い浮かべ
るだけで幸せな気分になれる人は多いでしょう。それら
のお菓子を作るのに大切なのが砂糖です。しかし、砂糖
にはほかにもいろいろな働きがあります。 その働きのひ
とつに、カビや微生物が増殖するのを防ぐというものが
あります。カビや微生物は湿ったところ、つまり、水分
のあるところが好きです。砂糖は、食べ物の水分の周り
をおおって、微生物やカビの働きをにぶらせます。ジャ
ムや果物の缶詰などがその例です。果物はほうっておく
と傷んだり腐ったりしますが、砂糖とともに調理するこ
とで長期間保存することができます。水分を抱え込む砂
糖の性質は、生クリームや卵白の泡立てにも一役買って
います。クリームや卵のたんぱく質の水分を砂糖が抱え
込むことによって、泡がくずれるのを防ぎ、また泡同士
がくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリー
ムを作るのには、砂糖が欠かせないのです。肉を煮込む
ときにも、その働きが発揮されます。 調理する前の下準
備の肉に砂糖をすりこんでおくと、軟らかく煮ることが
できます。それは、砂糖が肉のたんぱく質の持つ水分を
肉の中にとどめておくからです。さを作り出す調味料
というイメージの強い砂糖ですが、実際には水分と結び
つきやすい性質が私たちの生活の中でいろいろな役割を
はたしているのです。働き者の砂糖は、縁の下の力持ち
なので、決して「えっへん!」といばっているわけでは
ありません。しかし、ダイエットをさけぶ人たちからは
、かたき扱いされています。「えっ?変?一生懸命働い
ているのに……。」砂糖からそんな声が聞こえてきそう
です。∵「カビ君は、どうして砂糖が苦手なの。」「だ
って、砂糖ってサ、トウっても甘いんだもん。」寝よう
としたら、ブーンという音がして、あわてて灯りをつけ
たことがありませんか。そして、小さな蚊がどこにいる
か見つけようとしたことがあるでしょう。日本では昔、
蚊を防ぐために蚊帳という道具を使っていました。 これ
は、一ミリメートルほどの細かい網でできている四角い
テントのようなもので、部屋の中で四方から吊り下げる
ようになっています。網目が細かいので、蚊は中に入れ
ませんが、涼しい風は通すことができます。昔の日本人
は、蚊の多い暑い夏の夜を、蚊帳の中で風鈴の音を聞き
ながら涼しく過ごしたのです。しかし、昭和の後期にな
ると、殺虫剤や下水道が普及した結果、蚊自体が少なく
なり、蚊帳は次第に使われなくなっていきました。とこ
ろが、今、この蚊帳が再び注目されています。蚊帳は、
電気も薬品も使わない点で、人間にも地球にももちろん
蚊にも優しい道具だと考えられるようになってきたので
す。日本は、マラリヤの被害に悩まされるアフリカ諸国
にたくさんの蚊帳を送っています。これによって多くの
子供たちの命が助かっているそうです。日本ではほとん
ど使われることのなくなった蚊帳も、世界では大活躍を
しているのです。日本人のこれからの役割は、より安く
より安全な蚊帳を世界中に広めることではないでしょう
カ。「ブーン。」「あ、蚊や。蚊帳に入ろう。」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています