877 名前:なまら ◆/NaMaRAd8lCn [sage] :2018/04/17(火) 11:59:04.14 ID:DiBp1vNd
統合失調症 幻聴の不安、切迫して訴える女性(後編)

入院して数日が過ぎ、「処方薬を徐々に減らしていきましょう」と提案した時だった。
「やめて!薬を減らさないで」と、不安を募らせ泣き叫び、過呼吸で倒れ込んだ。

後日、1日分の処方薬をボール紙にセロハンテープで貼って並べて示し、それぞれ副作用を記した。薬を減らす利点を繰り返し説明した。
「確かに薬を飲めば落ちつきます。けれども副作用もあるしいつまでも薬に頼っているわけにはいかない」

「いつかは減らさないといけないと頭ではわかるけど、でも不安」と訴えかけてくれば、「理解できたなら、不安を抱えながらでも実行しましょう」などと応じた。

薬を減らしたおかげで流涎は軽快し、滑舌を取り戻した。曇った表情に、生気が差し始めた。とはいえ、不安はしぶとく動揺し続けた。

院内の売店で、思い通りのお菓子が買えなかったと後悔が極まり不安を募らせる、などということもあった。そのたびに医療者にすがりつき、不安を訴えた。「声が聞こえたから不安なのに、わかってくれない」と、不満の矛先をこちらに向けることもしばしばだった。
長時間手を洗わずにはいられないという、不合理とわかっているのにやめられない「強迫行為」も顕あらわになった。
一方で、減薬しても、“幻聴”が悪化することはなかった。

大量の精神科薬による副作用を解いてみれば、流涎も発話の“こもり”もなく、柔らかい声色で、やはり、笑顔が似つかわしい女性だった

過ちは人の常である。殊に臨床現場では、自身の非力さ加減を思い知らされるばかりだ

とりあえず薬を出せばいいという
過ちをいち早く知り、正すためにも、
精神的不調を抱えた方一人一人の訴え、症状、来し方に、そして、ご家族や地域の方々、チーム医療の同僚たちなど周囲の多くの助言者の声に、ただ耳をすます日々である
薬は時に毒となる