コンビニの学生アルバイトが、店から販売のノルマを課されることがあるという。来店客ではなく、自分の知り合いを頼って注文を取らなければならない。できなければ罰として自腹を切り、バイト代が消えていく。どうしたらいいのか。

 こんな相談が労働組合「ブラックバイトユニオン」(東京)にたびたび寄せられる。決して放置してはならない状況だ。

 組合によると、昨年秋以降、アルバイトに関する相談が増え、最近は月に100件以上ある。飲食業、小売り、個別指導塾が多いという。

 居酒屋やファストフード店の場合、「シフト」と呼ばれる勤務形態の相談が多い。事前の約束とは違い、深夜に及ぶ長時間労働を強いられたり、授業のある日でも急に仕事を入れられたりする。

 断ろうとすると店長から「自己中心的だ」「ほかの人に迷惑をかける」と責められ、あきらめる。学業がおろそかになり、単位を落とし、留年するケースさえあるという。

 若い正社員の店長も少人数のアルバイトで業務をこなし、人件費を抑えて利益を上げなければならない。できなければ自分が無理をしてシフトの穴埋めをすることになる。正規、アルバイトを問わず若者の労働現場がむしばまれている。

 弁護士やNPO法人でつくる「ブラック企業対策プロジェクト」が27大学の学生約4700人にアンケート調査をしたところ、「職場で不当な扱いを受けた」と答えた学生が7割近くに上った。さらに、こうした学生の半数は何もせずに泣き寝入りしていたという。

 一部の大学は注意喚起の文書を学生に配るなどの対策を始めた。こうした中、塾講師の学生が労働組合を結成し、塾側に団体交渉を申し入れる動きも出てきた。

 最近は、大学生だけでなく、高校生のアルバイトでも「休めない」「辞められない」という問題が起きている。成績は落ち、受験にも影響する。部活動や学校行事に支障が出ることもあるという。

 背景には家計が苦しい学生が増える一方で学費が上がり、奨学金制度も不十分で、アルバイトに頼らざるを得ない実態がある。

 まずはアルバイト先の不当な要求に応じないように、アルバイトに関して自らの権利を守る基本的な知識を学校でも教えるべきではないか。日本ではあまり力を入れてこなかった分野だ。

 厚生労働省は労働条件の事前確認などを促す冊子を全国の大学に配布した。業界への指導も求めたい。