国会では民自党総裁・本田壮一内閣総理大臣が演説していた。
 「これまでの三度に及ぶテロリズムの死傷者は、すでに三百人にも及んでおります。犯行声明を出している、尊王革新党の組織は巨大であり、もはや警察の治安力の限界を超えております。
私は、ここに、憲法を改正し、自衛隊を治安部隊として法制化できるよう、国民に信を問うものであります。
今国会において、衆議院を解散し、国民の審判を仰ぎ、過半数を獲得し得るのであるならば、それは国民の同意を得られたものであると判断し、直ちに憲法を改正して、自国の軍隊を保有する権利を有し、
その正規軍によって、反乱分子を壊滅させ、速やかに、治安の回復に努めるものとします。ここに私は、衆議院の解散を、提案いたします」
 そして、採決が行なわれた。民自党と野党の一部の賛成によって、解散は可決された。
 全国に、号外が配られ、テレビの臨時ニュースで、「衆議院解散・総選挙」の報道が成された。
 亮も、仕事先で、新聞を読んでいた。いみじくも、今日は、ドラマの撮影で、自衛隊基地に来ていた。どうしても、あの、塩谷の言葉が、あれ以来、頭から離れなかった。そのときだった。
 「神谷さん! 神谷亮さん!」
 スタッフの向こうから、大声で手を振っている、若い自衛隊員が居た。