そういや俺もアニバショップ一度行ったんだよね。なんせ20万以上のカードが当たるかもしれないんだから
着いたらものすっごいキモータ達の行列ができてたよ。そのエリアを素通りする人たちは皆オシャレして恋人と手繋いでたりするのにさぁ...
俺は迷ったね。けど並ぶのはやめて帰ることにしたよ。あの断絶された地獄のような空間でひしめくモンスター達と同類に見られるのは悪りぃけどゴメンだ!
「フン...気味の悪い奴らだぜ」そう小声でぽつりと呟きながら踵を返したのであった。
そう、この時俺は"俺様はこいつらとは違う"などといった一般オタクの妄想的観念にとどまらず、まるで己の周りを道ゆくリア充達とも肩を並べられる存在としてその肩で風を切って歩こうとしていたのであった。
そしてエレベーターに乗りながら不意に映る己の姿に愕然とする羽目になる

限界まで後退したなけなしの前髪、細くつり上がった一重瞼の上には手入れが全く施されていない落ち葉のような太眉、異様に低く上向きにあらわになった穴が特徴的な鼻(もはや人間の鼻ではない)、カサついた青紫の唇からこぼれ出る不気味な笑み、母親が購入した服装一式は長きにわたり洗濯を怠ったせいか毛玉やらホコリやらでみすぼらしいことこの上なかった。そして何よりまごうことなきデブであり、まさに醜さの権化のような男がそこには確かに存在していたのだった。

ようやく目が覚めたらしい。俺はショックで気を失いそうになりながら、猛ダッシュで、誰彼構わずただひたすらにモール内を、赤信号を、駅構内を、愛着深い地元の商店街を走り抜けた。
目に溜まっていた涙はその時結晶となり、ほとばしる汗と共に俺の実家とアニバショップを繋ぐ道に降り注いだのだった。
"ある男"の生き様を描いたその道は後に世界財産として登録されることとなる