『選択』 2015年9月号
中国に幻想を抱く米国の危うさ
Book Reviewing Globe 本から見る地球 (連載376)
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 たしかに、ルーズベルトは母方の祖父(ウォレン・デラノ)が対中国アヘン貿易で巨万の富を築き、
その後も一族が対中貿易と縁が深かったこともあり、中国には並々ならぬ思い入れがあった。ハルも
あまりにも硬直的かつ法律家的アプローチで外交に臨んだきらいがある。
 しかし、ルーズベルトもハルも対日石油禁輸には慎重論だった。彼らは、それが日本の蘭印進出を
招き、米国がそれに巻き込まれ、日米軍事紛争をもたらす恐れがあることを懸念した。
 これに対して、ヘンリー・モーゲンソー財務長官、ヘンリー・スティムソン陸軍長官、ハロルド・
イッキーズ内務長官らが禁輸を主張した。スティムソンは、日本のシベリア出兵の際に、米国が絹の
対米輸入禁止で脅したところ、日本が撤兵したとの論文を示して、ルーズベルトに対日禁輸を進言した。
 だが、ルーズベルトとハルはその都度、禁輸派を押し戻した。
《続く》