フィンランド軍は主要交差点を確保すると道路を避け、工兵が深い森と沼地の中に切り開いた
仮設道路を通り、再び森の中から次の交差点を目指した。「交差点を確保したら対戦車砲を
配置せよ。敵は必ず戦車で攻めて来るぞ。」師団長パヤリ大佐は各連隊長に命じた。

果たしてソ連軍戦車はやって来た。フィンランド軍の20mm対戦車砲はまるで役に立たず、
猛攻撃を受けた第27連隊第3大隊は混乱に陥った。折り重なる戦死者の間で負傷兵が呻き、
将校を失った小隊は伍長が指揮を執った。対戦車砲中隊のヴィルホ・ラットー二等兵は、
放棄されたソ連軍の45mm対戦車砲に駆け寄った。炸裂する砲弾により半ば埋もれていた
砲を掘り起こし、照準器に付いた泥を拭う。ラットーは燃料タンクを狙って発砲した。
至近距離からの砲撃は敵戦車を捉えた。「やったぞ。もっと砲弾を持ってこい。」炎上する
戦車を見たラットーは戦友に向かって叫んだ。ソ連軍が後退した後には、4台の戦車の残骸が
残されていた。

間もなくパヤリが到着した。「ラットー二等兵、来い。」連隊長のラウリ・ハーンテラ中佐が
声をかけると、ラットーは直立した。「あれをやったのは君か?」ラットーは敬礼をして答えた。
「私です。大佐殿。」彼は二等兵としては初のマンネルへイム勲章受章者となった。