ごく一部に好評だったっぽい、送電系統のお話。
今回は理想と現実の間にもがく関西電力編でございます。

関西電力は、もともと全発電所を一つの系統にループ状につなぐ送電網を作っていました。
送電に複数ルートを確保できるループ系統は、一つが故障などで止まっても、もう一つのルートで電力を送れるため、
トラブルに強い形式のはずだったのですが、一方で、トラブルが発生したときに送電線にどのように電力が流れるかを
事前に綿密に検討しておかないと、送電線や変電所に過負荷が発生することで、
送電系統に連鎖的にトラブルが広がる可能性があります。これはいわゆる大停電につながります。

果たして、1965年。豪雨によって発生した電源開発御母衣発電所内でのトラブルから、
一気に関西地方が大停電に陥ってしまい、この懸念は現実のものとなります。
このため、関西電力は停電発生よりは系統維持を優先する形で、500kV送電の導入と合わせ、
ループ系構成を捨て、完全な枝状構成に切り替えることになりました。

さて、ここで関西電力の発電所の所在を確認しておきましょう。
関西エリアは、基本的に瀬戸内海沿岸に需要が偏在しています。瀬戸内海は内海で港湾施設の設置も容易ですから、
ここには火力発電所を置くことになります。
一方、関西電力は黒部発電所をはじめ、北陸山岳部に多数の水力発電所を保有しています。

さて、関西地区は重工業の中心として栄え、大気汚染は深刻な問題になってきました。
このため、関西の瀬戸内海沿岸に火力発電所を維持することは困難になってきました。とりわけベース電力を得意とする
石炭火力発電所の設置は困難で、これを代替するために、原子力発電の導入に踏み切ることになります。
候補地となる、日本海側には、石炭火力を置ける良好な港湾は少なく、大港湾を必ずしも必要としない原子力発電は
地勢的にも好適なものになります。