夜半過ぎ。しっとりとした肌触りのドーナツとむつくけき男が一人。
今やっと始まったばかりのドーナツとしての目覚めに戸惑うような、柔らかなドーナツ。
そのなめらかな素地を執拗にこねられ、円熟な丸みを帯びさせられたその素肌、
わずかにひだを寄せ、ほのかなぬくもりを秘めた洞は、
さざめくような明かりの下、不安の陰りを帯びて男を誘っているかに見えた。

男は息をのんだ。
まだドーナツとしての完成を見ない、白く、水分を含んだしっとりとした生地。
それを思うがさま汚したいという欲望が沸き上がってきた。
まだ甘やかな砂糖をまぶされる前の姿。
華美に彩る欲望すら知らぬふりでありながら、
その身のうちには蜜の甘さすらたたえているのだ。
男は強引に自らの欲望を突き立てようとした。

ドーナツは抵抗しようとしなかった。

諦めたように、あるいはいつくしむ様に。無抵抗なその様に、男の興奮はますばかりであった。
情欲のまま求める。
役目を果たせないまま熱せられた油が熱気を放っていた。
それはまるでパートナーを奪われた嫉妬の熱にも似て、男を一層興奮させた。

いよいよ体を振り回すようにした男のあごから、汗が、ひとしずく。
煮えた油に落ち、爆ぜた。
それは天啓となった。
そうだ、俺がこのドーナツを大人にするのだ。
俺の手で、このままドーナツは未熟な蛹からの羽化を果たすのだ。

――男の絶叫が、響き渡った。