兵A「あまりにひもじいので、明け方にまだ朝露滴る野芹をむしって食したところ、数時間経ての三角兵舎建設時に気分が悪くなり、発熱、頭痛、手足の軽い痺れを経験しました」
軍医「ふむ、自然毒系の食中毒かな。して嘔吐、下痢、また腹痛は?」
兵A「はい、吐き気はありましたが、吐きもしませんし、腹痛も下痢もありません」
軍医「なるほど、ではその頭髪は? 何かの急性症状で脱毛したように見えるが」
兵A「は、これは元々であります」
軍医「......そうか。とにかく、軽い食中毒だ、養生していればそのうち治る。行ってよし」

キスカ養生処診療譚「赤はげ」より