>>281
国家統計局の魔法

私の最大の疑問は、「体感温度とのギャップ」である。
私はだいたい四半期に一度、訪中しているが、6%も経済が成長している社会には思えないのだ。

日本がバブル絶頂の1989年の経済成長率が、4.9%だった。
あの頃の東京は活気と笑顔に満ちていたが、あの活気と笑顔は、いまの北京・上海・深を見る限りない。むしろ「沈滞ムード」である。
中国を牽引する大都市でさえ、そのような状況なのだから、ましてや農村地帯は推して知るべしである。
中国の経済成長が鈍化している理由を、読売新聞は「米中摩擦激化で」と書いているが、
北京や上海で経済の専門家に聞くと、「雪上加霜」(シュエシャンジアシュアン)という成語をよく使う。
すなわち、もともと「雪が降っていた」(中国経済が悪化していた)上に、「霜が加わった」(米中貿易摩擦が加わった)という見方だ。
私もそちらの方が、的を射ていると思う。
胡錦涛政権から習近平政権にバトンタッチして以降、それまで長く続いていたバブル経済は終焉し、景気の悪化に歯止めがかからなくなってきた。
そのため、2016年から「供給側構造改革」と呼ぶ「5大改革」(生産過剰の除去、在庫過剰の除去、金融不安の除去、生産コストの削減、弱者の救済)を断行した。

この徹底した改革によって、ようやく中国経済が一息ついたと思ったら、そこへ「トランプ台風」が襲ってきた。
そこで昨秋から今年にかけて、過去に前例を見ない2兆元(1元≒15.3円)規模の大型減税を実施している。
だがそれでも、景気の悪化に歯止めがかからないというのが現状なのだ。