CIAに中国スパイ、消された協力者 米国諜報網に異変

〜中略〜

米国では昨年、5月にCIA、9月には国防情報局の元職員が中国に協力したとして実刑判決を受けた。
 中でも禁錮19年の実刑判決を受けたリーの事件の衝撃は大きかった。諜報(ちょうほう)分野における米中の対立は、米ソ冷戦の再来そのものといえる状態にあることを浮き彫りにしたからだ。
 判決などによると、香港出身で米国籍を持つリーは、1994年からCIA特殊要員として東京や北京などで勤務した。
2007年にCIAを去った後、香港に戻ったが、10年4月に中国の情報機関員と接触。米国の機密を渡して数十万ドルを受け取った。
 捜査を担った連邦捜査局(FBI)防諜(ぼうちょう)局長補佐のジョン・ブラウンはこの事件で「国家の安全とCIAの職員らが深刻な危険にさらされた」と語る。
 深刻だったのは、リーが渡した情報にCIA工作員や協力者の名や電話番号、特殊な暗号を使った通信方法が含まれていたことだ。
 17年5月、米紙ニューヨーク・タイムズは、米国が中国内に張った諜報網に起きた異変を報道。
10年から12年の間に十数人のCIA協力者が殺され、ある者は見せしめで政府庁舎の中庭で射殺されたと伝えた。
 同紙は当時、CIA協力者たちが次々に拘束された理由は絞り切れていないとしたが、事件の経緯を知る米中双方の政府関係者は、粛清は「リーが中国側に提供した情報がきっかけだ」と口をそろえる。
 今回の事件は「米国史上最悪のスパイ犯」と呼ばれたオルドリッチ・エイムズの事件に比される。
冷戦時代、CIAの対ソ連防諜(ぼうちょう)部長だったエイムズは、CIA協力者の名をソ連に密告。それによりソ連軍幹部ら10人以上が処刑された。