病的な虚言癖の人たちがなぜか政治家として成功するという事例をこの10年ほどずいぶん見てきました。別に嘘つきが増えたわけではなく、嘘をつくことのペナルティがずいぶん軽微なものになったからでしょう。
嘘が「間尺に合わないもの」であるためには、条件があります。

それは多くの人が「ある人の言明の真偽についての判断をしばらく保留し、真偽が判定したあとに遡及的にその人物の評価を決する」という時間の中の「行き来」ができなくなったからだと思います。
時間意識の「ため」と言ってもいいし、「中腰」と言ってもいいけれど。それができなくなった。

今ここで大声で断定的に言ってしまえば、それで勝ち。あとでそれが嘘だとわかっても、その人物の評価はすでに決しており、それに基づいてすでに現実は大きく変成してしまっている。
「今さら言ってもしょうがないですよ。現実は現実なんだから」で話は終わる。だから、嘘は間尺に合うんです。