>>357
残念ながら嫁はタヌキ系なので


先輩は慣れた様子でジャズバーの重い扉を開いた
ネルシャツにジーンズの格好が、いかにも不似合いな空間だった
先輩は迷わずカウンターに座って、メニューをめくる

「こういうところは初めて?」
「ええ、なんせ貧乏なもんで」
ウッドベースの旋律がピアノと絡み合って、ギリギリのところで不協和音にならない階段を探っている

「先輩はよく来るんですか?」
「自分で来るのは初めて」
「え?」
先輩がグラスを持ち上げて微笑んだ