昭和20年2月16日 千葉県横芝 第三十九教育飛行隊
主力機種は二式高等練習機(満飛製)

「なにい、森脇がグラマンを墜としたと?」
「7.7ミリじゃ、しょせん無理だよなあ」

グラマンの編隊にいち早く接敵した森脇伍長は、そのまま対進攻撃にうつった。
そして97戦の素晴らしい旋回性能を利用して、追撃につぐ追撃をかけた。
長機の大石中尉が被弾して戦場を離脱すると、森脇伍長は単機で雲底にへばりつき、下方を突き抜ける敵編隊の
最後尾機に、ならい覚えた“穴吹突進”をかけた。
これは急反転し、背面のまま突進する戦法である。
そして、敵の上方から垂直降下をおこない、射程距離100メートルで一撃をあびせかけた。
7.7ミリの小口径弾であっても、至近距離からの集中攻撃に、さしものグラマンもたまらず、みごとに一機撃墜をなしとげたのである。
彼が撃墜したグラマンの残骸を見ると、エンジン上部から操縦席にかけて、7.7ミリ機銃弾の弾痕が十数発も確認され、同期たちの疑惑も一掃された。

光人社NF文庫 九九式襲撃機ラバウル空戦録 内の一章
されどわが愛機恥ずることなかれ 海法秀一 P148-9