「突然、バリバリとラバウル市街に火花が散った。なんと超低空で外輪山からラバウル湾に殺到するB25、B26の爆撃機がくるわくるわ、ツルベ落としに飛来してきた。」
「市街地を銃撃するやつ、物資部や水上基地、湾内の船舶など、あるいは丘陵地区の兵舎を銃撃するヤカラあり、落下傘爆弾を数限りなく落としていく。」
「この間、10分間くらいか、攻撃がようやく下火になってくる。」
「ココポの方へ海面すれすれに、対岸を銃撃しながら湾口へ避退しようとしたB25の頭上へ、このとき上空から零戦がさか落としに襲い、あっという間もなく撃墜してしまった。」
「やつらは次から次へと出口である湾口へ避退していくが、上空からは零戦が順番を待って、これらを確実に撃墜していく。いつの間にきたのか、今はもうラバウル上空は零戦、零戦の群れである。」
「超低空で進入してきた敵は、周囲が外輪山のため、湾口に脱出するよりほかに道はない。これを待っていた零戦は、一機ずつ確実に撃墜していく。上昇しようとするものは上空制圧の零戦にやられ、上空へ脱出することもできない。」
「この痛快な空戦ぶりに
私たちは手をとり合って喝采をおくった。すでに湾外には敵機はいなくなり、上空ではP38と零戦の空中戦が残るのみだ。優位をたもち、敵にまさる零戦が次々とP公を撃墜していく。」
「この日、撃墜された零戦は一機も見なかった。それにしても、この状況を花吹山から高見の見物よろしくながめていたのは私たちだけではなかったろうか。だが、これ以後、もうこのような痛快な空戦は二度と見ることはできなかった。」

陸軍 第六飛行師団 司令部飛行班 迫田治夫氏
空戦の日付は不明だが、この人がラバウルに着いたのは昭和18年3月12日