ロシア軍の行動の変化

 ロシア軍の行動は、抽象的には「徹底的に準備する」「ゆっくり、ていねいに行動する」「慎重にリスクを最小限に抑える」であり、以下の諸点を重視している。

 (1) 要所要所でウクライナ軍に圧力をかける。

 (2)現地における戦闘力の優越を確保する。

 (3)側面から小さな迂回行動を行う。

 (4)ウクライナ軍の防御態勢が半円形になるように導き、その後に大規模な突撃を行う。

 (5)土地を占領したら、そこを要塞化する。

 (6)負け過ぎないこと、情けない負け方をしないこと。

 図4 小さな包囲の実例

 図4は番号順に、6 ポパスナからの攻撃、7 リマンへの攻撃、8 セベロドネツク攻撃、9 スヴャトヒルスク攻撃、10 スヴィトロダールスク攻撃、11 ゾロテの周辺の攻撃を示している。

 これらの作戦はすべて半径10~20キロの地域で行われ、多くの場合、複数の方向から集落を襲撃している。

 ロシア軍の火砲数の優勢はウクライナ軍砲兵に対して10~20倍であり、この事実がロシア軍の攻撃がある程度の戦果を示している理由だ。

 ロシア軍は圧倒的な数の火砲を1カ所に集中してウクライナ軍の戦力を徹底的に削減した後に、戦闘経験豊かな歩兵部隊(傭兵であるワグネル部隊、チェチェン人のカディロフ部隊など)を投入して攻撃する。

 歩兵部隊の攻撃は3~5日続き、最終的にウクライナ軍を撤退させてしまった。

 人工10万人のセベロドネツク市は数カ月の戦闘の後、建物の90%以上が砲爆撃され、すべてのインフラが完全に破壊されたという。