■向かうところ敵なし

麻生氏は慎重に事を運んだ。
参院選前に安倍氏との党内抗争が勃発して自民党が議席を減らせば元も子もない。
そこで参院選までは安倍氏の顔を立て、その持論である憲法改正や防衛費増額を前面に掲げて党内融和に腐心した。
しかし参院選が終わった後の党役員・内閣改造人事では清和会の福田氏を財務相に抜擢するなどして安倍氏の影響力をさらにそぎ、二大巨頭の最終決戦にケリをつける――そう腹を固めていた。

その矢先、安倍氏が予期せぬ凶弾に倒れた。
二大巨頭の一方が突然消え失せ、麻生氏は党内闘争を仕掛けることなく唯一のキングメーカーとして君臨することになったのだ。
自民党は参院選に圧勝。安倍氏亡き今、向かうところ敵なしである。

「麻生氏は安倍氏を手厚く国葬して安倍支持層へ礼節を尽くすでしょうが、その後は安倍色の強い政治家や官僚を一掃して麻生体制を盤石にしていくでしょう。
国葬はそのためにも必要な通過儀礼です。
安倍氏を失った清和会が分裂の危機を迎え、大宏池会の再興に待ったをかける力はありません。
政界、財界、官界、マスコミ界の麻生詣では激しくなるでしょう」(宏池会関係者)