まず訂正?です。八八式海岸射撃具を簡素化した中口径砲用の射撃具として私は九八式と書いていましたが、九六式海岸射撃具とする資料が多いようです。
 「兵器を中心とした日本の光学工業史」では九八式としているのですが、これが間違いなのか、別に存在するのか?
 
 さて前回対馬、壱岐要塞間の火網と40糎砲塔砲台の最大射程付近での精度の見積にふれました。
 今回は他氏が提案されていたコロネット作戦と東京湾要塞について少し考えてみます。

 肝心の要塞砲の検証に入ります。
 砲撃の精度について東京湾要塞千代ケ崎砲塔砲台の数字が知られています。
 30糎砲塔砲台で八八式海岸射撃具を装備。但し観測所1つの垂直基線方式。この砲台は砲塔砲台第一号としてその後の同種砲台の基礎となった他、演習砲台として砲塔砲台の訓練や研究にも使用されていたようです。
 この八八式海岸射撃具の基線長はわかりませんが、距離1万mで測距誤差遠近20m、左右20cm、この精度で砲塔砲台は第二斉射で命中弾を得られると見積もられていました。
 海軍の改装戦艦が装備した10m測距儀の精度が同距離で遠近72mを標準とみられていたことを考えると、千代ケ崎砲塔砲台の八八式海岸射撃具は垂直基線利用にもかかわらず極めて高い精度を誇っていたことがわかります。