(コラム)ハンナ・ルシンダ・スミス「ウクライナはEU加盟を当てにすべきではない」- THE TIMES

喜劇俳優ヴォロディミル・ゼレンスキーは、欧州連合がウクライナを歓迎する瞬間を予見した。大統領になる教師を描いたホームコメディ『Servant of the People』で演じたワシーリー・ペトロヴィッチ・ゴロボロドコがアンゲラ・メルケル首相に電話に出ると、メルケル首相はウクライナがクラブに加盟することが認められたことを告げた。ゴロボロドコは祝賀のひとときを過ごしたが、その後、取り違えがあったことに気づく。加盟を認められたのはウクライナではなくモンテネグロだったのだ。

EUは防衛拡大の時代に入った。ウクライナの立候補は、モルドバやグルジアと同様、ロシアの侵略に対抗して急がれている。いずれかの加盟がどのようにスムーズに進むかは難しい。モルドバの沿ドニエストル共和国、グルジアの南オセチアとアブハジアの3カ国すべてに、ロシアが関与した未解決の領土紛争がある。彼らの経済は貧しく、ウクライナの場合は戦争で荒廃している。オルバン首相は、ハンガリーがウクライナ交渉開始の投票に参加しないように説得する必要があったが、彼のたった一度の抗議で交渉が阻止できた可能性もあった。
2024年のEUは、クラブの外よりも内からの脅威にさらされることになる。バルカン半島では勢力を拡大し、トルコではごまかし、厄介なメンバーに対処する方法を見つけるのに苦労している。ウクライナにとって加盟国数がニンジンのようにぶら下がっている状況は、EU内の亀裂を悪化させ、この状況が何年も続けばウクライナ国民の間に憤りを生む可能性がある。その一方で、性急な歓迎はヨーロッパの国境を活発な最前線に引き上げ、多くの新たな領土問題を域内にもたらすことになるだろう。EUは時間をかけて内向きに目を向け、守れない約束をやめることを決意すべきだ。

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