五十口径八八式十糎高角砲・八九式十糎半高射砲

山梨・宇垣軍縮下での軍備近代化に際し、陸軍は絶対量こそ求められないものの多数の重砲/野戦重砲の開発及び生産を求められたが、既存の設備体制では儘ならなかった。これに対して軍縮条約の影響で多数の艦砲がキャンセルとなり手空きとなっていた日本製鋼所が手を挙げる形となり、従来提携してこなかった中口径砲まで含めた陸海軍共用の砲整備が俎上に上がることとなった。
とはいうものの、海軍では120mm口径以下の艦砲に見切りを付け始めており、陸軍は陸軍で127mm以上の艦砲は重量的に野戦重砲としては使用しがたい。結局当面の陸海共同開発は重砲及び陣地高射砲(高角砲)に限られてしまった。
このうち、既存の十四年式十糎半高射砲及び十年式十二糎高角砲に代わるものとして開発されたのが本砲である。もっとも海軍側は本砲に熱心でなく潜水艦備砲としての採用予定がされていたのみであり、自然本砲に対する要求は緩く大雑把なものだった。
本砲の弾頭は陸軍の十糎口径(105mm)の各種砲と共用となり、各種弾頭の重量はほぼ16kg前後にまとめられた。これは海軍側としても従来の十二糎高角砲の弾頭重量の8割程度と、危害半径で大差ない数値となる割に弾薬全体を軽量に纏められる点を評価している。なお、海軍側は完全弾薬筒とすることで射撃速度上昇を企図していたという説があるが、完成した砲は分離弾薬筒式であった。

口径:105mm、砲身長:5250mm
放列砲車重量:8.2t、砲身重量:2.95t(閉鎖器共)
俯仰角度:0〜90度
初速:890m/s(高射尖鋭弾)、最大射高:12000m/90d、最大射程:17000m/45d
射撃速度:5〜6発/分
生産数:500〜1000基(陸)/2000門弱(海)

本砲は陸軍では主力陣地高射砲として、海軍でも改装後の水雷艇主砲として採用後は小型艦艇の主砲として共に終戦まで広く使用された。
性能的には早期に陳腐化しており、海軍は採用後早々に有名な九八式高角砲の開発を単独で開始し、更にその後陸軍側の要地防空砲の計画と統合された二式十二糎七高射砲/五十五口径一式十二糎七高角砲へと進んでいくことになる。