遠いウクライナ和平、トランプが察知できなかった「ウクライナに勝てなくてもいい、負けなければ」のプーチンの本音
2025.5.26(月)
木村 正人

フリードマン氏は「プーチンは戦争に勝つ方法を知らないが、当面戦い続けるだろう。彼の最優先事項は
負けないことだからだ。ウクライナの非ナチ化、非軍事化を宣言できないまま戦争を終結すればエリート層
は安堵しても国内で激しい反発を呼ぶことを理解している」という。

ワトリング氏によると、ロシア軍の進撃速度は昨年秋から加速し始めた。しかしウクライナ軍がロシア軍の
攻撃戦術に適応し、接触線から後方15キロメートルの深さを持つ消耗戦線を構築した。ロシア軍は
接触線に到達し突破するのに十分な兵力をそろえられず、進軍は停滞した。

「もしウクライナが今からクリスマスまでの間、ロシアのドンバス制覇を阻止し、西側がロシア経済の
弱体化に注力するなら、モスクワは戦争継続に伴うコストについて厳しい選択を迫られるだろう」
とワトリング氏は今こそ結束してロシアへの圧力を強めるべきだと強調する。
 ロシアの犯罪と安全保障の専門家で『プーチンの戦争』の著者マーク・ガレオッティ氏は5月18日付
のポッドキャストで「プーチンの脆い自尊心はゼレンスキー氏にマッチョぶりを見せたり、彼に操られるよ
うな印象を与えたりすることを許さない」と解説している。
「すべてがマッチョなポーズの祭典と化し、どちらも屈服する様子はない」。ゼレンスキー氏とプーチンの
間で何らかの意思疎通が見られるとは到底思えないとガレオッティ氏はいう。交渉は形だけかもしれ
ないが「話すこと」自体が重要だという。
 来年にはロシアは経済の疲弊、旧ソ連時代の装備の枯渇など深刻な問題に直面する可能性がある。
しかしウクライナも米国の離反、欧州の疲弊などの問題を抱える。ウクライナ戦争は膠着状態に陥っており、
交渉以外に現状打開の道はない。