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王将リーグへの意気込みを語るインタビューが終わったので、会長に挨拶して帰ろうと思った。会長は不在で、会長室では羽〇さんが一人で賞状に署名をしていた。
やっとタイトル戦の嵐が去ったのに、この人には休む時がない。邪魔をしては悪いので、軽く挨拶をしてドアを閉めようとすると、「あ、僕、これから昼食休憩に入ります。ご一緒にどうですか?」と仰るので、二人で近所の定食屋に行った。
真剣にメニューを見る羽〇さん。深〇さんが言っていたように、本当に睫毛が長い。長考の末、彼が選んだのはホッケ定食だった。妙手を期待したので、ちょっと肩透かし。僕は銀鱈定食。
運ばれてきたほうじ茶を飲んで、羽〇さんがため息をつく。
「今日は朝から缶詰だったんです。佐藤さん、ああ、えーっと、会長が今日は部屋から出ないで賞状に署名しろって。郷〇さんが来てくれてよかった。郷〇さんに是非にって誘われたからお昼食べに出た、って言えば、会長も許してくれるでしょ?」
「ひどいな〜、僕は利用されたんですね」
にっこり笑う羽〇さん。こういう時に深〇さんならドキドキするのかな。