田中誠初段は「ほら面白くなった。オヤジの将棋を一番見てるのは僕だからわかるんです」。
 本局から3週間後、北海道苫小牧市で行われた名人戦第4局の打ち上げでの話。日付も変わり誰もが酩酊しているころ、名人挑戦者の郷田真隆九段は言った。君のお父さんの将棋は強いと。
「父は典型的な努力の人なんです。負けて帰ってくる度に何度でもクソッ、クソッと盤に向かう姿を見てきましたから」
 そう誇らしげに話す記録係の田中初段。郷田は何度かうなずいてから、呻くように「なぜ君にはそれが出来ないんだ」

 年齢制限を間近に控えた奨励会員には酷かもしれない。しかし、郷田真隆が田中寅彦の将棋を認めていること。年の離れた後輩を気にかけていることは伝わってきた。
 田中初段は他人がやりたがらない仕事を率先してやり、そしてよく気が回る。田中初段は郷田の言葉が聞こえなかったのか聞こえないフリなのか、日本ハムファイターズの話を始めた。一同もそれに乗って、しばし野球談義に花を咲かせた。
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郷田とこんなエピソードあったんだね