プロ公式戦20勝も「プロになれなかった」将棋の先生・甲斐日向さん
「全てを伝えていきたい」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190128-00000161-sph-ent

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プロの公式戦で通算20勝9敗(対棋士戦で13勝7敗)という驚異の戦績を誇った将棋教室の先生がいる。
棋士養成機関「奨励会」に在籍した元三段の甲斐日向さん(26)は
昨年9月、四段(棋士)昇段の年齢制限を迎えて退会した。
夢をかなえることは出来なかったが、同11月、東京・御徒町に「甲斐日向将棋教室」を開設。
新しい夢は、生徒たちに将棋の楽しさや強くなる喜びを知ってもらうこと。人生の第2局を指し始めている。

 「プロになれなかった人」。甲斐さんのツイッターアカウントには、あまりに切ない自己紹介文が刻まれている。
「でも、どんな人の教室なのか一目で分かりますよね。
『元奨励会三段』では一般の方には伝わらないってことを退会してから知ったんです。
何でも発見があるのは楽しいですね」。将棋を教えるプロという新しい夢を歩み始めた人は笑顔で言った。

棋士になれなかったが、棋士と互角以上に戦った。
公式戦には奨励会三段や女流棋士、アマチュアにも参加資格が開かれた棋戦があり、
甲斐さんが残したのは通算20勝9敗、勝率・690という驚異の戦歴。勝率7割は一流棋士が行き来するラインだ。
「同じくらい力があったとは言えるかもしれないですけど、棋士になれなかったわけですから。
僕は技術以外の力がなかった。三段リーグでは公式戦のようには指せなかった」

 奨励会三段にとって、人生を懸ける三段リーグは公式戦以上に過酷な舞台となる。
30人以上の三段が参加して半年にわたって各18局を戦い、1期に四段(棋士)昇段を果たすのは原則上位2人のみ。
甲斐さんは13年度から10期在籍し、昇段争いの指標となる10勝以上を7度も挙げた。
藤井聡太新四段が誕生した16年度前期は、最終日に2連勝していれば天才少年との同時昇段だった。
「なぜ自分は棋士になれないんだろう、とずっともがいていました。
半年間築き上げたものが崩れていくのはヤバイくらい苦しいです。対局の日は勝っても負けても眠れなかった。
お酒に逃げたこともありますけど、意味ないってすぐ気付きました」

昨年9月、年齢制限の26歳を迎えながら負け越しが確定。退会が決まった。
「ただただ泣き続けました。2時間くらい街を歩き続けて、座り込んで、ずっと涙が止まらなかった」。
かれるまで泣いても、将棋を恨んだりはしなかった。
「自分が負けただけで、将棋は誰かのせいで負けることはあり得ないので。
一般社会とは違って評価は要らないし、運もないです。
自分が頑張ればいいという世界で生きることができたのは素晴らしいことでした」