東前頭九段目ハァブゥ〜


腕を真横に伸ばすと、そこにすっぽり収まるように橘が頭を乗せる。橘は大変これがお気に入りらしく、一緒に寝る時はいつもこうするのだ。
伸ばしている腕を少し曲げて、頭を撫でてやると、気持ち良さそうに身を捩る。まるで愛玩動物のようである。

(襲っちまいそうだな……ん?)

ふと視線を下げると、何だか橘の様子がおかしかった。体を丸くして、肩で息をしているように見える。

「おい、具合悪いのか?」
「……な、何でも、ない……」
「何でも無いわけ無いだろうが……熱は……あれ、無い……って、お前」

額に手を当てると、ごくごく普通の温度だったのだけれど、少し上を向かせた顔は真っ赤で、目は潤んでいた。
まるで、こちらを誘っているような――

「……なぁ、橘」

自分でも驚くくらい意地の悪い声が出た。

「お前の方が我慢出来なくなってるんじゃないのか?」
「そ、そんな、こと」