「だっ、誰か」
亜希子は声を振り絞った。そうだ、今ここで恐怖に怯えている場合じゃない。
「誰かぁー! たすけてー!」
亜希子は何回か絶叫した。しかし、虚しく声が反響するだけだった。
亜希子はそういうと、涙をこぼした。
彼女はその美しい裸体をむちゃくちゃに揺さぶった。
しかし、一向に縄は解けない。彼女は時々発狂しそうになる思考を、なんとか保とうと、言葉にならない声を上げた。
亜希子は椅子ごと倒れた。もちろん爆弾を抱えたままである。
横たわったまま、亜希子はカメラを睨みつけた。
「助けろよッ! てめぇッ! こんなことしていいと思ってんのかッ!!」
しかし、カメラも、スピーカーからもは何も答えない。
「あ、あたしの彼氏はヤクザだぞ! あたしになんかあったら、どうなるかわかってんだろうなッ!!」
亜希子の声に、誰も反応は帰ってこない。
彼女の股から黄色い液体が漏れた。
「い、いやだ……もうゆるしてぇ」
亜希子は号泣し始めた。
「なんでもする、セックスでも土下座でもなんでもするから、こんなひどいことしないで……」
尿は滴り落ち、地面についた彼女の顔を濡らす。
しかしタイマーは時間を刻み続けている。すでに時間は1分を切った。
『亜希子ちゃん、生きてるー?』
スピーカーから声が聞こえた。
『最後に言い残すことはない?』
「た、たすけてください!!」
亜希子は叫んだ。もうお金取るなんてことしないから!! 真面目に生きるから!!
『もう遅いよ』
スピーカーからの声はそう言い放った。
『そうやって謝っても、君は何もしてくれなかったよね?』
そういうことだから、じゃあね、そう言ってスピーカーの音は切れた。
亜希子はこれまでの人生が走馬灯のように駆け巡った。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああ」
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