2038年、名人戦。それをスマホで見つめる男がいた。
かつて名人3期、竜王11期を獲得し永世竜王資格を持ちながら将棋界から消えた渡辺明さん(54)だ。
「あ、あの頃は若かったですね(笑)」若き日を回想する渡辺さんは、どこか寂しげだ。
「あ、未だに当時の夢を見ることがあるんですよ。あ、名人戦で、僕が藤井聡太相手にタイトルを奪冠するする夢を」
渡辺さんは膝を痛め膝を切断した後、賭博で逮捕され将棋界から除名追放された。
今はもつ鍋屋を営む傍ら、地元で闇カジノを開いている。
「あ、今日はどうされましたか?」。赤羽駅から歩いて3分。
「あ・き・ら」の看板の横をすり抜け中に入ると渡辺さんと奥さんの伊奈めぐみ(58)さんの明るい声に迎えられた。
「あ、去年の4月にオープンしました。あ、看板の文字は将棋連盟名誉会長の羽生永世7冠に書いていただいたものだし、開業に合わせてTwitterやテレビでも取り上げてもらった。
あ、おかげで、日本全国から足を運んでくださるお客さんが多かったのはうれしかったですね」
渡辺さんは本当に嬉しそうに、僕たちに語ってくれた。
とはいえ、その分、プレッシャーも大きかったという。
かつての親友の佐藤天彦さんに渡辺さんについて尋ねると…
「あ、渡辺さんの馬カレーもつ鍋は絶品です」
「今はもう将棋に未練はありません。あ、今度はもつ鍋で日本一になれるよう、がんばるだけです!」
(写真)もつ鍋を頭に乗せガッツポーズする渡辺さん