男の友情 I know not why I am so sad
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アントニオはバサーニオに同性愛を抱いている、こう解釈すればアントニオの不自然な行為には自然な動機が伴っている、こういえるのではないか。

一方アントニオから心を寄せられたかたちのバサーニオは、アントニオの友情につけ込んで求愛の資金を手に入れるが、
アントニオに対して深い友情を抱いてはいても、同性愛は感じていない。アントニオの同性愛は片思いなのだ。だからこそアントニオは憂鬱な気分にならざるを得ない。

相手が女ならアントニオは男らしく求愛できるだろう。だが男が男に求愛したとしたら、いったいどんなことになるだろう。
それを思うと、アントニオは暗澹たる気分に陥らざるを得ないのだ。せめて相手の苦境を救うために、自分の命を差し出す、
こうすることで自分の愛のしるしを示したい。相手がそれをどう受け取るかはわからぬが、愛とは本来一方的な感情なのだ。