>>638の続き
1920ー30年代は世界的には大恐慌の時代だけど、バブル崩壊後から
今までの日本と似てる。だが、文化的にはミニ・ルネッサンスの
ような状況を呈していたのだろう。それを経てきたからこそ、花田は
「復興期の精神」の題名を思いついたのだ。花田が日本の室町時代
後期を日本のルネッサンスとして注目するのはずっと後だ。
龍胆寺や花田も昔のアンシクロぺディストや普遍人気取りだったが、
龍胆寺の実践力はまさにレオナルド気分だった。それは女性作家の
中にも影響を及ぼしていたかもしれない。大体は林芙美子や
片山廣子、吉屋信子などセックス面が強く強調されてるが、尾崎翠は
彼女らとは一線を画して、相当にorder of hermetic golden dawn を
研究していただろう。簡単に言えば、hermeticism.そうでなければ、
fiona macleodの名前を持ち出すはずがない。これほどいわくつきの
名前を、中途半端な知識で出せるはずがないのだ。
1920ー40年代前半は混沌期であり、作家達の文体は急速に
変化して行った。批評家においても、板垣鷹穂のルネッサンス論と
花田のルネッサンス論とでは雲泥の差がある。そういう中での尾崎の
自然主義批判だったことを踏まえておく必要があるだろう。