終盤で、ショーシャ夫人の夫ペーペルコルンが登場して、
ハンスはガツンと殴られたような衝撃を受ける。
学問や理論だけの人間の薄っぺらさに気づいて、
実人生で充実した人物の魅力に心を奪われる。

しかし、これとても物語の本筋なんかじゃない。
この小説世界のどこかに俯瞰する視点があって、
つまり主役は人や理論ではなく、「時間」であるかのような。