>>26のつづき
鈴木「なるほど。その話を少しずらすと、例えばヨーロッパの肉屋には皮を剥がれた生々しい肉がたくさんぶら
   下がっていて、それを見て「あれが自分の友達であっても一向に構わない」というのと同じ事を言ってい
   るわけだけど、それはらもの感覚にも当て嵌まるかも知れない。『寝ずの番』もそうだけど、らもや僕の
   周りでは実際に早くから大勢人が死んだ。それでそれをどうすればいいのか、っていうことがずっとあっ 
   たと思うけど、結局は、あらゆるノスタルジーを排して、色々な封印をすればの話だけど、やっぱり肉屋
   にぶら下がっている肉のようにしか見えなかった。その点では彼も彼女も君も俺も一緒だ、と…。らもも
   多分その事で色々考えたと思う。実際に一挙に肉の塊になってしまったのを、もっと言えば灰になってし
   まった一個の思考の実体を見てしまったのだから。だから、今丹生谷さんが言ったみたいに、こちらが逆
   に一気にさまざまな身体の「様態」に身を置くというか、そこへ行っちゃうというか、はじめからそれら
   全てが同時にあって、その事自体を思考しなければならないというのは僕にも良く分る。喜ばしい事に、
   時間はなにひとつ経過しなかったわけだ。」