ファンだからサイン会とか講演会にいって、作家と直に会ってみたいという人たちがいますよね。
その発想、理解はできるんですけど個人的にあまり共感できないんです。
なんと言うか、作家の実像に触れることによって、自分が作品に抱いているイメージが壊れるのではないかという気がするんです。
好きな作品の作者は、あくまで「神秘的な人物」でいてほしいという感じです。
自分の場合、フィクションを読むことには現実逃避的な要素が強く、現実と直接関係のない世界で自由に遊びたいからこそ文学作品を読むのだという感覚があります。
だから、作家の実生活について知り、現実で作家と親しくなることは、フィクションの魅力を損なってしまうのではないかと思います。
以前、文学研究者の方に、
「なぜ作品の成立背景や受容のされ方を文学者が研究するんですか。そういうことは文学というより社会学の領域なのではありませんか」
と質問しました。
すると、その方は当然のように、
「作品が好きならば、その作品が現実世界においてどのようにつくられ読まれているかとか、現実の出来事が作品にどういった影響を与えているかといったことにも自然に興味がわいてくるものです」
と答えました。
もちろん、古典などの場合、作品の内容を理解するために、最低限の時代背景を知っておく必要はあるでしょう
しかし私は、フィクションはフィクションとして楽しみたい、作家について調べたりして現実との接点を根ほり葉ほりさぐるのは不粋だと思っています。
このような考え方は少数派なのでしょうか。