お話はこんな感じ↓
カナダで亡命生活を送っている男が母親の葬儀のためにエルサルバドルに一時帰国した。
この男が、モヤという名の人物に延々と語り続ける...その内容というのが、なんと悪口。
「モントリオールに移住したのは戦争を逃れるためでも経済的によりよい生活をしたいわけでもない。ただエルサルバドルにいることが嫌なのだ。
Esta país no vale la pena nada.(この国には何の価値もない)」とまで言い切る。
祖国の悪口から始まり、友人、兄弟親族、大学、マスコミ、文化、医師、交通機関、食べ物までありとあらゆるものに対し悪態をつく。

章立ても改行もなく、延々とこの罵詈雑言文章が続くので、
終いには(もう、いいかげんにしれくれ〜)とイヤになってくるのだけれど、我慢して読み続けましたよ。
で、最後の数ページが、、、、まあ、なんと面白いこと!

すわ! パスポートの紛失!?

「このパスポートがなければカナダに帰国することができない」とパニックに陥る男の姿にただただ笑ってしまうのです。(ブラックな笑) 
で、見つかったかどうかは読んでのお楽しみ、ということに。 最後のオチ、これはややネタバレになってしまうけれど、この男、
トーマス・ベルンハルト という偽名を使っていたというところがミソ。

ただ、この トーマス・ベルンハルト を知らないと、この小説のユーモアは伝わらないかもしれません。
といかにも知ったかぶって書いているけれど、これはあとがきにあるロベルト・ボラーニョの書評を読んで知ったこと。(^^;)
以下、調べたこと
トーマス・ベルンハルトはオーストリアの作家で、自国をあからさまに非難するなど数々のスキャンダルを引き起こした。 
彼が書いた『消失』という小説のなかでもオーストリアの読者の神経を逆撫でするような毒舌がたっぷり味わえる。
というわけで、この "El asco" はベルンハルトのパロディーになっているんですね。
あ〜、面白かった。スペイン語は簡単で大変読みやすいです。

"EL ASCO"
【著者】Horacio Castellanos Moya
【出版社】Tusquets Editores 139p
ISBN 978-84-8383-027-7
http://oirahaanko.exblog.jp/11971011/