荒木優太
平野啓一郎『ドーン』読了。うん、面白いんじゃないか。
平野文学の伝家の宝刀こと、読んでるとこっちが恥ずかしくなるセリフ(んなこと言わねーだろ?)のオンパレードも、
元が英語で話してんだよなと思って読んでいると、そこまで違和感ない。考えたな!

背景にアメリカ大統領選があるから現在と妙なシンクロがあって(単行本2009、文庫2012)、今読んでみてもいいのではないか。
…只その場合、キッチンズの頭痛い感にそのままトランプが重なるように見えるから、皮肉な読後感は否めないかも。
あと、どうでもいいけど武田将明って解説上手いな。

あ、そうそう、近未来故、テクノロジー描写が色々誤魔化されている気もするが、
一番納得いかなかったのは現実の二次創作であるネット上の「ウィキ小説」を大衆の多くが読み書きしてるって設定な。
いや、そこはコラージュ画像とかミニ漫画だろ、近未来人リテラシー高すぎだろ(笑)。

「ウィキ小説」の設定は、平野さんの隠れた(?)文学信仰を曝け出しているように思う。
それはそれでいいのだが、飯田一史『ウェブ小説の衝撃』に従えば、
レスポンスのマメな読者コミュニティに囲まれると小説はある種の定型に収斂していくわけで、そういうの興味あんのかな?とか。
2017年1月30日