太宰治については「稀有の才能は認める」としているので評価自体はしている
文学作品とくに私小説を処世の道具として利用したことが許せないとしているだけ
ただ、三島自身が作品と実人生の境界が曖昧になって
ああいう死に方をしたので結局は太宰に過ぎないとも言われている
実際、そうだろうね

ただ、太宰のようにキリストや神を引き合いにして
自分の弱さや劣等感を人間一般のものとすり替え
これをキルケゴール的強さに転換するのではなく
決死の努力で克服して世間に勝とうとしたところが三島の凄いところ

普通の人間は太宰のように自分をごまかして傷を舐め合うんだよ
それを少年のような潔癖さで拒んだところが三島らしい
でもまあ、もののあわれを感じさせる生き方であり死に方だね
三島の哀れさをよく分かっていた同時代人は武田泰淳だろう