>>397
私が五味や柴錬ぜんぶ、てのはあくまで娯楽読物じたいのおはなしです。
あのあといろいろ考えて、30作以上読んだ作家ってなんだろうと思い出して
たんですよ。けっこうありましたね、戸川幸夫、吉村昭、乱歩、島田一男、
多岐川恭、笹沢左保、エドマクベイン、リューイン、AAフェア、ローレンス
ブロック、DEウェストレイク…。
これは翻訳も含めてほとんどが娯楽作品です。読んだのは単行本と、一部が
「小説作品集」みたいな選集本。
私が「読み物大好き!」な人が、元気に作品世界を走り回る足を引っ張る
おそれがあると個人的に考えてるものが二つあります。ひとつは評伝、
いまひとつが全集です。「この作者、いいなあ♪」と思った人が、新書なんかの評伝を買って、
付録の出版リストを見ながら古本屋や図書館を漁るのは、私ありだと思う。
でも、評伝を読んじゃって「○○時代」とか「○○物」みたいな分類や
作品評価に頭デッカチになる人は不幸だと思ってます。鴎外スレでね、
石川淳だけ読んで実際には蘭軒も霞亭も読んでない人が、史伝は最高だ
いやカスだって喧嘩してるのを見るとすごくトホホな気分になる。まずは
作品そのものを読むことですよ。私はね、西鶴の文学史におけるナンタラ
とか、ハナシから落語へと繋がる笑話話芸のカンタラとかの本は一切読まず、
いきなり定本西鶴全集をとにかく全部読んじゃった。リクツのことはいまだに
わかりませんが、西鶴のお話は大好きだったからです。
同様に私は、寺田寅彦って人がどれほど偉い学者で歌人であるかを全く
知りません。ただコドモのときに寅彦選集1期の3冊くらいを読んで、
「好きだ!」と思ったから全部買って読んだ。2期も買って全部読んだ。
読み物読者の姿勢というのは、基本的にこれくらい快楽的でいいと思う。
専門家がどう言ったか、なんてのは、好き嫌いの前には屁のようなもんです。
じゃあ専門家、お前もっと楽しいものを同じだけ書いてよこせ、てだけのこと。
評伝研究本てのは、読まずになんとなくわかった気分にさせるインチキな
一種の毒をもっています。

全集のほうはね、これずっと考えていたことなので、雑談の合間に深夜とかに
長文を投下するかもしれない。嫌な人はスルーしてください。