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【ばふりばふり】蓮實重彦 X+2【120度】 [無断転載禁止]©2ch.net
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0440〒□□□-□□□□
2018/04/10(火) 10:46:25.13ID:wK9ZQaQ9
〜野蛮さについて〜

繊細さと野蛮さと


浅田 実際、ある意味で野蛮そのものの唯物論的な問題というのがあって、映画で言えば、
    照明の問題であったり、カメラの問題であったり、唯物論的な細部においてこそ繊細さが
    問われるわけですよね。それは文章を書くにせよ何にせよ同じです。
    そこのところの判断基準っていうのが随分甘くたっているでしょう。これはやっぱり驚いちゃいますね。

蓮實 こうまで判断基準が甘くなっていくと、こちらが無意味に繊細さを気取ったりするという
    バカなことをしはじめるでしょう。これはどうしたらいいんですか?

浅田 しかし、具体的に言って、批評っていうのはその両方ないとどうしようもないんじゃないですか?
    たとえば音楽だって、ピアノなんていうのは大体誰が弾いても同じ音が出るはずなんだけれども、
    しかしやはり、技術的に指示入る角度と速度の関係で微妙に音色示違うんで、
    そこのところに感動できなければ、まず音楽について語り得ないですよ。

蓮實 資格がない(笑)

浅田 ええ。その辺を括弧に入れた人たちがどんどん音楽について書いてしまう。
    それにまず苛立ちますよね。しかしまた、そのような細部に関する好みが、
    ある文化的な共通了解を形づくってしまって。
    それが野蛮なものの突出を妨げるとなると、それにまた苛立つわけですよ。結局その二重の苛立ち、
    あるいはそれと裏腹になった音楽なら音楽に対するある種のドライヴでもって
    物を書くとしか言いようがないでしょう

蓮實 やっぱり「魂の唯物論的な擁護」でしょうか? (笑)それしかないでしょうねえ。
    但しそれは、到達すべき目的でも何でもなくって、そういう中間をわれわれがひたすら
    横切り続けていればいいわけなんですね。横切るというか、横断するというか、
    そこを通過しつつあるという実感に、皆もう我慢できなくなっちゃったわけでしょう。
    抜けないといけない、と。
0441〒□□□-□□□□
2018/04/10(火) 10:46:53.88ID:wK9ZQaQ9
浅田 だからさっきの『シェルタリング・スカイ』でもね……。

蓮實 抜けないんですよ、抜けないんですよ、あれは。

浅田 あれは全然抜けないんですよね。常に中間地帯にしかない。その中間地帯において、
    しかし驚くべき繊細さが示されていることに目を見はるべきだし、また、それを伴って、
    どこにも行き着くことのない、あの絶対的な退屈と対になった絶対的な美を投げ出してしまうことの
    野蛮さにも驚くべきだし、それを何か問題意識の欠如なり何なりをあげつらって批評し得たと思う、
    その浅はかさは許しがたいですね。

蓮實 「朝日ジャーナル」に鈴木布美子さんが書いていましたけど、あれは許しがたいことですね。

浅田 やはりああい卜うものを、これは無根拠ではなく、断固として擁護しなければならない。
    やはりそういう意味では淀川長治さんは偉大なんじゃないですか?

蓮實 偉大ですよ。淀川さんのみですよ、分かってたのは。

浅田 『ラストエンペラー』の批評も彼のは良かったですね。あれは歴史とは何の関係もないので、
    広大な空間に一人置きざりにされた子供の映画だ、と。正しいでしょう?

蓮實 正しいですよ。

浅田 『シェルタリング・スカイ』もそうですよね。物語は蒸発してしまってどこにも行き着かないんだけれども。
    そこに満ちている極端な繊細さと野蛮さというのは、やはり驚嘆に値しますね。

蓮實 今日の話はほぼそれを結論にしていいのではないかという気が致しますが。

浅田 やはり『シェルタリング・スカイ』を見に行かなければならないということですね。
0442〒□□□-□□□□
2018/04/10(火) 10:47:13.39ID:wK9ZQaQ9
蓮實 『シェルタリング・スカイ』を見に行かないやつとは、僕は付き合わない。別に付き合わなくても
    どうでもいいと思しますけど。

浅田 という辺りでちょうど時間になりました。それでは、また。

蓮賓 どうも失礼致します。また何かの機会に。
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