亀井麻美 @kameiasami

木下豊房さんのサイトで知ったんですが、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を初出誌「ロシア報知」の画像で読めるんですね。
1879?1880 (Русский вестник):

「大審問官」で「彼」を意味する「он」が、初出でのみ大文字の「ОН」(あの方)となっていて、作者の意図は「あの方=キリスト」であることは明白だ、とのことでした。
その箇所を確認したいのですが、PDFファイルが大きすぎて、なかなか「大審問官」(Великий инквизитор)までたどり着けません。

やっとたどり着けました(^^;) PDFファイルの304ページ目です。
「Велик?й инквизиторъ.」
ただ、ざっと見たところ、「ОН」ではなく「Онъ」ですね。頭文字だけが大文字でした。ですから、木下豊房さんの記述も正確ではありません。
やはり、鵜呑みにせず、必ず自分自身で確認しなければならないですね。「онъ」はもともと古スラヴ語の指示代名詞で「遠称」と呼ばれ、
「指示代名詞として他の名詞とともに現れ、それを修飾する機能をもってい」ました(佐藤昭裕「古ロシア語と古教会スラブ語における指示代名詞
sь, onъ, tъについて」)が、後に3人称の人称代名詞「彼」の意に使用されるようになったものです。
たとえば民衆たちが、現行の版でЭто он, это сам онといってざわめく箇所は、初出(PDF 307頁)ではЭто Онъ, это самъ Онъ
となっっており、これを原卓也は「あのお方だ、まさしく、あのお方だぞ」、米川正夫は「これはイエス様だ、イエス様ご自身だ」と訳しています。