「四 信仰の薄い貴婦人」より
 
... ねぇ、 わたくし は よく 目 を つぶっ て、 こんな こと を 考える ので ござい ます―― もし すべて の 人 が 信仰 を 持っ て いるとしたら、 どこ から それ を 得 た の でしょ う?  

ある 人 の 説によりますと、 すべてかういうことは、 初め 自然界 の 恐ろしい 現象 に対する 恐怖 の 念 から 起こっ た もの で、 神だの来世だのというものはないのだそう で ござい ます。

ところで、 わたくし の考えますに、こうして一生涯 信じ 通し ても、 死ん で しまえ ば 急 に 何もかも なくなっ て しまっ て、 ある 小説家 の 言っているように、『 ただ 墓 の 上 に 山牛蒡 が 生える ばかり』 で あっ たら、 まあ どう で ござい ましょ う。