そもそも権利とは定義からして自然法則ではない。
リンゴが落下するのはリンゴに落下する権利があるからではないのは自明である。
なんとなれば権利とは即自的なものではなく、対自的な概念であり、
そこには必然的にある種の遅延が介在する。
だからと言って、自然権が幻想であるとは言えない。
自然権は、存在が対自的であることを始めた瞬間から、潜在的にではあれ発生するものである。
旧約聖書における、自らの窮状を神に訴える口調を見よ。
既にそこには人権思想の根本が存在している。